あらすじ
【第11回日本SF大賞受賞作】マサルと菊丸の兄弟は、行方不明の父親を探しに、マザーK市へと冒険の旅に出た――。そこは、異常発達した広告が全てを支配する驚愕の未来都市だった! 赤舌、地ばしり、蚊喰い虫……珍妙不可思議な生物たちの乱舞。どこかなつかしさを誘う歌声。椎名誠独自の世界を打ち立てた記念碑的長編。
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文庫で読むのは初めてでした。(何も変わらないですが)
何度読んでもおもしろい。
父親になってから読むと、今まで感じなかった「地ばしり」の気持ちに感情移入しました。ちょっと驚きでした。
最新のアニメ技術でぜひ映像化してほしい。
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最初に読んだ時に途中で挫折して、数年後に再チャレンジで挫折したところを頑張って読み進めて最後まで読んだら、あれっなんか分からないけれど凄く良いかもって思って、3回目じっくり読んで何故か透明フィルムで傷まないように表紙コーティングして大切な一冊になりました!
でもやっぱり途中の樹木のところはしんどい(--;)
ソコを乗り越えて頑張って最後まで読んでほしいです!
余談ですが、この本をみると私の頭の中には何故かムーンライダーズの『Y.B.J.(YOUNG BLOOD JACK)』という曲が流れます!
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四半世紀ぶりに再読。やはりこの独特の世界観には強く引き込まれる。この世界の話をもっと読みたいと思うが、未だ他の作品は出ていない。いくらかの重要な謎を残し、いかにも続編がありそうな終わり方なのだが。
とても映像化向きの作品なのに、そうならないのは作者の意向なのだろうか(アニメ化の話はあったそうだが立ち消えたとの噂でもあるし)。
椎名さんのSFを読むと、想像上の事物に対するネーミングに強いこだわりを感じる。「名は体を表す」というが、可能な限り「名で体を表そう」とされているようである。中には、名前だけ出されて説明がなされないことすらある(いきなり出てくる「指巻きや腸出しといった重刑」って何だ...)。
名前を聞いてそのモノの姿かたちを想像するというプロセスは、この本の楽しみのひとつだろう。しかし、一度でも映像化してしまえば、そういった楽しみ方はできなくなってしまう。そういうことなのだろう。
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荒廃した近未来で二人の兄弟が父親を探しに旅に出る話。
SFなんだけれど、もの凄い郷愁をさそう不思議な世界観がたまらなく好き。想像力をかきたてられるネーミングセンスもとてもよい。そして得体の知れない食べ物がおいしそう。自分馬鹿なんじゃないかと思う程、何度読んでも飽きない。たむらしげるさんの絵もイメージにぴったりですばらしい。
旅先で読み終わる事のない分厚さに安心感があるのでよく旅行に持って行きます。でも重い。
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すごく面白い♪ 見たことも聞いた事もないモンスター?がたくさん出てきて想像力をかき立てられる!分厚いけど面白くてすぐに読み終わっちゃう。夏になると読みたくなる1冊。
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読んだのは、ずっと昔。椎名さんのSF3作の一つ。どうしても評価したく、あえて登録しました。読んでは売ってる椎名さんの本の中で、大切に残している一冊です。
行き過ぎは恐ろしい
椎名誠さんがSFを描いているなんて知らずにいたのですが、先日、新聞で「SF三部作」なるものがあるということを知ったので、読んでみることにしました。このお話は、より良い生活や社会を求めて、様々な試行錯誤がされた後の世界を描いたもののように感じました。ただ、その試行錯誤の結果がまさしく「戦争」のようになってしまい、自分たち人間をも食い尽くす「ヒゾムシ」のようなものを生み出したり、それらの混乱等を治めるために、様々な粛清を行ったりするなど、デストピアになってしまったのですね。こうなってしまったのは、「命を顧みない」ということが要因の一つではないかと思います。今の日本などでも、気をつけていかないと、こうなってしまう可能性はあるのではないでしょうか。そう言ったことを示唆している小説だと感じました。面白かったです。次は「水域」ですね。
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いつの時代とも判らぬ、荒廃した地球。K二十一市に住むマサルと菊丸の兄弟は、マザーK市からやってきたという男から生き別れの父の名を聞き、父の足跡を追ってマザーK市へと旅立つ。街の外に広がる荒野には、人体を浸食するヒゾムシや全長数十メートルに達する地ばしり、声高に宣伝文句をわめき散らすアド・アードなど、独自の進化を遂げた生物たちが跋扈し、マサルと菊丸は幾度も危険な目に遭いつつもマザーK市をめざす。途中出会った謎の男・キンジョーの助けも借りつつ、ようやくマザーK市へと辿り着いた兄弟は、この世界が荒廃した原因を知ることになる・・・
いやいやいやいや、鴨的に椎名誠と言えば「とぼけた味わいのエッセイスト」というイメージだったので、この作品が日本SF大賞受賞作ということは存じておりましたが果たしてどんなもんだろー、と低いハードルで読み進めて、深く反省。正に直球どストライク、堂々たるSFです。
マサルと菊丸の兄弟が父を捜して冒険の旅をする、という、極めてシンプルなストーリーです。余計な伏線は一切ありません(物語の途中で兄弟が一切出てこない章が挟まり、よくわからない情景が描写されますが、これらの章の意味は読み進めるうちにわかってきます)。マサルと菊丸の心理描写も実にあっさりした淡白なもので、平易で淡々とした筆運びで物語が展開されていきます。
その淡白さを埋めて余りあるのが、圧倒的な情景描写、そして椎名誠節炸裂の言語感覚。特に、何の説明もなくいきなり登場する異形の生物たちの躍動的な描写といったら、なんだかよくわからないんだけど存在感だけはやたらとあるという(笑)強烈なインパクトを脳裏に残します。こうした生き物にも土地や建物や食べ物といったものにもいちいち極めてユニークな名前が付けられており、独特の諧謔味すら感じさせます。必要以上に登場する変な擬音も素晴らしい!どの場面でも、常に何かの音が響いています。
要は変な生き物と変なネーミングがわんさと登場する、ファンタジー寄りのライトな作品よね・・・との第一印象を持ちつつ読み進めると、次第に明らかになるSFの骨格。
世界が荒廃したのは二大広告企業同士の「広告戦争」がきっかけであり、跋扈する危険生物たちは「広告戦争」により生み出された生体兵器が制御不能な進化を遂げた成れの果て。わずかに生き残った人間は広告企業により搾取され、脳髄を兵器として使用されている・・・
もはや商品を買う人間が激減した世界で、日夜流れ続けるケバケバしい広告。その広告の意味を何ら理解しない異形の生物が、広告の灯りに照らされながら蠢く。なんという想像力の極北。
さらに鴨がこの作品にSF魂を感じたのは、語弊を恐れずに言えば、主役の兄弟二人の深みの無さです。
ステロタイプな感情表現しか描写されないので感情移入できず、そもそも突然父親を捜す旅に出る動機付けがよくわかりません。この二人よりも、アンドロイドのキンジョーや脳髄だけで生きるターターさん(ビジュアルがジェイムスン教授そのもの(笑))の方が、よっぽど個性があって魅力的です。
おそらく、主役の兄弟二人はこのストーリーを先に進めるためのドライバーに過ぎず、真の主役はこのユニーク極まる世界観そのものなのでしょう。人間ドラマがなくても十分物語として成立するのが、SFというジャンルの面白さ。そうした意味からこの作品は、実は相当ハードコアなSFと言えると思います。
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こりゃすごいと興奮して読んだ記憶があります。部分部分しか覚えていないのですが、一番印象に残っているのは男性型の性的な奉仕をするロボットに追い掛け回される下りです。結局下ネタが印象強いのか。
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唯一無二の世界観。
解説で、椎名誠自身が好きというオールディスの『地球の長い午後』をオマージュしたものであることが触れられているが、どちらも非常に独特な未来世界を描き出していて、甲乙はつけられない。
生物の生存競争と広告戦争が混ざり合った奇妙ながら壮絶な生き物たちの姿は初めて見る光景だった。
特に巨樹同士の争いは圧巻。樹が動かす枝の動きに合わせて虫たちが踊り、広告の文字を浮かび上がらせ、それを阻止しようと鳥が群がる。そんなマクロなスケールの描写と共に、蠢く小さな虫たちの一匹に焦点を当て、ディティールの見事な闘いも描く。
この生物のディティールは本当にいいなあ。
人間たちのパートよりも、こうした人間不在の場面の方が強烈な印象を残す。
椎名さんの小説は初めてだったので、他のSF作品も読んでみたい。
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未来の廃墟都市を舞台に冒険する兄弟と、奇妙なアンドロイドや生き物が出てきて、ドタバタする話。これは面白いわー。敵とか戦いとか何かを救うとか、大きなワクワクはないんだけど、ただ、冒険する話。でも楽しいことばかりじゃないし、危ない生物もいたり、悲惨な運命を迎えることになる人もいるし。でも楽しめる絶妙な軽さとか、好き。
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読んだのはハードカバーで新刊が出たときだから、ずいぶん前のこと。こまかいところは忘れちゃったけれど、独特な言語感覚で、筒井康隆とはまた少し違う面白さが印象に残っている。楽しみながら書いているような、わくわく感が伝わってきた。
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さびれた未来都市
解説の目黒考二も書いてゐるとほり、オールディスの『地球の長い午後』のオマージュ。
第1章はまあ冒険の始まりとしてワクワクして面白い。広告戦争が過剰になった世界。アドバードのアド。広告。
第2章「戦闘樹」になると、酸出しだのなんだの、架空生物の生態が事細かに綴られて、興味がない。となる。実際、しんどい。
題材は、椎名の業界紙を扱った経験から。架空生物はもともとの嗜好から。着想を得たのではないかと思った。
しかし、現実としてこのやうな広告戦争は起きてないし、実際は少子高齢化で日本全体では購買意欲が減退してゐる。そこが時代性を帯びたSF小説として感じられるところだ。
また、ソニーが保有してゐる、商品名を叫ぶことでCMをスキップできる特許のやうな「させる広告」は出てこない。すべて機械や新生物が「見せる広告」ばかりだ。
オノマトペが独特でおもしろい。
後半につれて描写と文章が雑になっていく。会話も説明的冗長になる。冒頭、弟が兄を「あにき」と呼んでゐたのに、いつのまにか「兄さん」としか言はなくなる。
アンドロイドと脳髄男がケーブルで頭を繫いで、1日かかる議論を数秒で済ませてしまふところが斬新でおもしろかった。
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?3部作?なんて言われているもののひとつ、広告戦争とアンドロイドという近未来、正直文体が眠たい、匍匐前進を連想するようなだるさ、これを読んで一番驚いたのは新井素子との因縁だった
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予想してた話とは違ったけど、それもSFのいいところ。父親を探して冒険する兄弟、という手垢のつきまくった話だけど、それを筆力で読ませる力の強さに感服でした。
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山田正紀 『最後の敵』につづき、第11回日本SF大賞受賞作(1990年)の本書を読んでみる。内容は村上龍著『歌うクジラ』(2013年)を思わせる。荒廃した未来都市を旅する兄弟のはなし、歌うクジラ同様に人類の姿は変容し、機械(または動物)と融合しているというファンタジーな世界観が好きな人にはおすすめ。
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椎名誠のSF三部作のひとつ。
広告戦争の結果、荒廃した世界を父を探して旅をするマサルと菊丸の兄弟。
はじめは設定やストーリーを理解するのに苦労した。著者の自由奔放な言語感覚についていくのも大変だった。
だけど、その世界観はとても想像力豊かで楽しいものだった。肩の力が抜けたSFストーリーに次第に愛着がもてるようになり、アンドロイドのキンジョーをはじめとする奇想天外な登場人物たちも憎めなくて楽しいもの奴らだった。他のSF作品も読んでみたい。
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広告によって戦争がおきてしまい、人がいなくなって、
アンドロイドや人造人間だけになってしまった町。
廃墟な雰囲気の世界観が、そんなこともあるかもな~と
思い結構好みでした。
ストーリー的には行方不明の父を探す旅と、単純で
分かりやすいです。最後の場面はよくありがちな展開だけど
それがいい感じでした!
ターターさんとオットマン両者の広告の
犠牲になってしまった生物の回想みたいな場面が
ちょっと分かりにくかったです。
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私が一番面白い小説だと思う「水域」と並べて(三部作として)紹介される本。
地下に閉じ込められたり、大海原に落ちたり、大勢の鳥に襲われたり、およそ「嫌な死に方」に隣り合わせの環境を、逞しく、たまに途方に暮れて進む。「こんな状況だから」と、お互いの憎しみを棚に上げて頼る・連れ立つ関係性に、妙な説得力があり、微笑ましい。
非実在虫を描かせたら日本一。
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広告に支配された世界を描く
カエルからジュースを作るシーンが印象的
あの機械が欲しいあれがあればどこででも生きていける
あれがもし10トントラックぐらい大きければ砂漠でも生きていけるとか想像してた
砂漠の砂の中にはわずかばかりの水分があるし虫、小動物もいるだろう
一日10キロぐらい前方から砂を取り込み後ろから排出しながら砂漠を爆走する光景を妄想したりしてた
たまに人間とか取り込んじゃって「おお今日はジュースの量がおおいぞ」とかいってりして
Posted by ブクログ
世界が終わり、残ったのは広告だけだった。僕はそれらにモチーフとしての意味は見いだせない。現代社会への皮肉とも受け取れなかった。ただあるのは異世界を探検するというエンターテインメントだけだ。ギリギリのネーミングセンスで名前の付けられた彼らの中にはキンジョーのようなロボット(アンドロイド?)もいるが、彼らはエロチックなまでに生物的である。
Posted by ブクログ
なんだかさっぱり意味不明な世界で爽快。しかし何故に未来の世界ではロボットだけは動き続けているんだろうか。そういうイメージなんかな。そういう意味じゃ植物の永久機関っぷりは考えてみたらスゴイ。
Posted by ブクログ
いつの間にか盛り上がってきてて
うわあって思ったけど
どこがピークなのかわからないまま気がついたら終わってた。
残りのページ数の少なさに気付いた時の気持ちは絶望に似ている。
虫のことを詳細に想像してしまうような描写ではなくてよかった。
Posted by ブクログ
「ワンの絨毯」を読んで、絨毯的生き物が出てきたよなあ、と読み返し。
着想と細部は素晴らしい!闘う樹とかホテルの朝とか今読んでも凄い!
が、なんかストーリーが入ってこない、というか細部に圧倒されてストーリーが吹っ飛ぶ。
Posted by ブクログ
シーナワールド全開のSF三部作第一弾。
二大資本の宣伝戦争が創り出した摩訶不思議な生き物たちと,それによって破壊された都市に暮らす人間たち。
「タイムマシン」における未来のような,恐ろしさを含んだ世界であるはずなのに,どこかユーモラスなのは,その生き物たちのネーミングセンスにもよるだろう。言語感覚がとにかく秀逸なのである。
ストーリーは一般的な冒険小説の体だが,あふれ出るアイディアを止められず,無闇に長くなっている感も。特に後半は無理矢理に収束させた印象があり,前半ほどの躍動感がないのが残念である。また,物語の目的である「父捜し」も,事前に結末が読めてしまうので意外性はない。
とはいっても,最後に主人公兄弟が「夕空晴れて秋風吹き」と歌う場面は,彼らの抱えている気持ちを思うと切なくなる。しかし,その切なさが直接表に出てくることはない。一抹の寂しさを感じさせつつも,あくまで,爽やかでヘンテコな冒険小説なのだ。