Posted by ブクログ
2013年09月26日
唯一無二の世界観。
解説で、椎名誠自身が好きというオールディスの『地球の長い午後』をオマージュしたものであることが触れられているが、どちらも非常に独特な未来世界を描き出していて、甲乙はつけられない。
生物の生存競争と広告戦争が混ざり合った奇妙ながら壮絶な生き物たちの姿は初めて見る光景だった。
特...続きを読むに巨樹同士の争いは圧巻。樹が動かす枝の動きに合わせて虫たちが踊り、広告の文字を浮かび上がらせ、それを阻止しようと鳥が群がる。そんなマクロなスケールの描写と共に、蠢く小さな虫たちの一匹に焦点を当て、ディティールの見事な闘いも描く。
この生物のディティールは本当にいいなあ。
人間たちのパートよりも、こうした人間不在の場面の方が強烈な印象を残す。
椎名さんの小説は初めてだったので、他のSF作品も読んでみたい。