津島佑子のレビュー一覧

  • 光の領分

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    とにもかくにもひとつひとつの生活。死を捨て、子を必死に育てる四捨五入の生活。必死になってやりくりするシングルマザーの私で、死が脳裏にやってくることは滅多にないけれど。たとえば人身事故。たとえば子の夜泣き。ためいきのような出来事がふっと死をよぎらせるけれど、ぶんぶん。私ゃこの子を育てねばならぬのだずんずんと進むそれしかないのだ。

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    2025年11月23日
  • 本のなかの少女たち

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    『源氏物語』の紫の上、ローマ神話のディアナ女神、『ロミオとジュリエット』のジュリエット、ゲーテ『ファウスト』のグレートヘンといった文学・物語の中の「少女」たちに焦点を当てた読書エッセイ。取り上げられている作品だけでなく、同著者の別作品、類似テーマの別の作品、歴史的背景などを含めた多角的な読み方をしている。

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    2025年06月18日
  • 火の山 山猿記(下)

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    6代の物語である。下巻は山梨で空襲にあい、その先祖代々の家がなくなり、東京の江古田やそれ以外の所に移るという家の問題である。記録を書いている勇太郎が妻と一緒に米国に行っているが、そこのところの記録は書かず、米国に旅立つところで記録は終わっている。生まれては死にまた生まれては死にの繰り返しである。

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    2024年05月16日
  • 火の山 山猿記(下)

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    凄まじい大作だった。
    上巻では、津島佑子らしくない創造力で意外性を見たが、後半は正に女性讃歌の一冊だった。
    有森家の女衆の1人、桜子の魅力が物語を牽引している。彼女の顛末に関しては本作はおろかここ最近数作の中のハイライトだと思った。

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    2023年02月25日
  • 寵児

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    なんで高子は想像妊娠をしたのか?というなぜを紐解く話。
    妊娠を女性の本能の帰結、と位置付けることから実は自分を縛り付けていて、それに気がつき自力で歩いていくために殻を破れた高子の姿が静かにカタルシスだった。後半一気に話が動くのに無理なく読める。
    津島祐子さん、お父さんよりもずっと文才があるのでは‥。

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    2021年07月04日
  • 黄金の夢の歌

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    黄金の夢の歌 (100周年書き下ろし)
    (和書)2011年03月01日 21:22
    津島 佑子 講談社 2010年12月7日


    柄谷行人さんの書評で興味を覚えました。

    とても良い作品だと思います。

    回帰としてあるという評者の意見にも興味があります。

    中国の北京・洛陽・西安・内モンゴルなどへ旅行へいったことをもリアルに思い出しもしました。

    いろんな見方で読めるこの作品に感心しました。著者の作品をもっと読んでみたい。

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    2020年09月27日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。

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    2019年09月14日
  • 火の山 山猿記(上)

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    上下巻にに分かれておりかなり長いですが、
    その長さを感じないほど深く入り込んで読める作品でした。

    とある一家の物語をこれほど見事に描ききっている作品は
    そんなに多くはないのではないでしょうか。

    貴重な一作だと思います。

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    2010年07月25日
  • 火の山 山猿記(下)

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    『純情きらり』ファンにとっては上より下のほうが面白いかも。あー、この場面あったなー、とドラマを思い起こしつつ楽しめること請け合い。

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    2009年10月04日
  • 火の山 山猿記(下)

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    ドラマとは違う魅力。登場人物が多いにもかかわらず、ひとりひとりの人物像を丁寧に描いていると思う。「家族」とは何か?を考えさせられる。

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    2009年10月04日
  • 火の山 山猿記(下)

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    『純情きらり』はこれからどうなっていくのか原案と比べながらすごく楽しみ。達彦さんは死なずに戻ってくるかな〜?

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    2009年10月04日
  • 山を走る女

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    ネタバレ

    ゼミで読むので読んだ本。長かった。
    大筋は、私生児を孕ってしまった21歳の女性、小高多喜子が息子の晶を生んでからの1年間を描く子育て小説。1980年という時代柄もあり、婚外子に対する家族と世間の視線は厳しく、晶が生まれるまでの間、母は多喜子に中絶を勧め続け、父は家の恥として罵声と暴力を浴びせ続け、会社は辞める意思を訊き、同僚の女子社員は多喜子を相手にしなくなった。誰からも祝福されることなく、晶は多喜子のお腹の中で育つことになる。
    それにしても、多喜子の暮らす家は、迷路のような路地の先にあり、日のささない暗闇の中にある。それは、多喜子の置かれた状況をそのまま象徴するようにも見える。

    家は曲がり

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    2025年10月06日
  • 光の領分

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    文体が懐かしい。
    はっきりした描写も、終わりがすっきりするわけでもない、それでもどこか読まずにいられない不思議な本です。母親として、女としての苦悩が丁寧に描写されています。随所に出てくる光の表現と心情の対比がとても美しく、ゆっくりと小説の中に引き込まれます。

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    2025年09月25日
  • 光の領分

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    ゼミで扱われる関係で読んだ小説。先生が、「心が元気なときに、そこそこ気合いを入れて読んだ方がいい」と言っていたので、かなり身構えて読んだのが、思ったよりすんなり読めた。
    こういう言い方をしていいのか分からないが、不穏な空気の流れる母子家庭の物語、というのが第一印象。読めば読むほどに、語り手である母を、どこまで信用していいのかが分からなくなっていく感じを受けた。本当は、母と子の関係と生活が壊れかけているのだが、その壊れていることを最後のところで隠そうとしている語りが、ものすごいリアリティをもって迫ってくる感じ。

    正式に離婚をして、娘は自分のもとで育てたい、と思っている。と私は答えた。父親の方も

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    2025年06月23日
  • 山を走る女

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    シングル・マザーとなって、家族との葛藤や仕事をするうえでの苦悩をかかえながら生きる小高多喜子という女性の物語です。

    役所に勤める前田宏という男と数回関係を結び、彼の子どもを身ごもることになった多喜子は、中絶という道を積極的にえらぶことのないまま、子どもとともに生きていく道をあゆんでいきます。ただし彼女は、自分の人生の選択として積極的にシングル・マザーとして生きることを決断したのではありません。自分と子どもとの具体的なつながりをしっかりとつかんでおくことで、彼女の進んでいく道はおのずと定まっていったのです。しかし、家族をはじめとする周囲の人びとは、そうした彼女と子どもの具体的なつながりについて

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    2024年12月07日
  • 我が父たち

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    表題作のほか、短編二作品を収録しています。

    「壜のなかの子ども」は、駄菓子屋の店主を務める父親と、おとなになっても身長が1メートル10センチにしかならないと医者に告げられている小学生の息子の物語。父親は、大学病院で小学生の少女と出会い、のどにこぶのある生体実験のためのヤギを連れて町をあるき、息子は自分を取り巻く人びとのまなざしについて醒めた眼で考えています。生まれつき障がいをもつ動物に向けられる父親の視線は彼の息子に対する態度とかさねられ、ヤギに芸を仕込もうと考える少女に反発を感じながらも彼女に引きずられるようについてあるくことしかできないところに、彼が自分のそうした態度に無自覚であることが

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    2024年12月07日
  • 寵児

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    36歳の高子は、離婚した畑中とのあいだに生まれた夏野子という娘とともに暮らしています。彼女はときどき土居という男と関係を結んでいますが、土居は高子や夏野子の気持ちを慮るような男ではなく、妻にも子どもを産ませてもいっこうに平気な顔でいます。

    その後高子は、畑中の友人の長田という男とも関係をもつようになります。やがて彼女は、長田の子どもを身ごもったと信じ込み、しだいに彼女の身体にも変化が生じます。夏野子は、母親としては奔放にすぎる高子との生活に疲れ、高子の姉のもとに身を寄せ、姉も高子の振る舞いに眉をひそめて苦言を呈します。

    ところが、病院をおとずれた高子は、お腹に子どもがいないという驚くべき事

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    2024年12月03日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
    「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
    その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得

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    2024年11月13日
  • 半減期を祝って

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    文章は読みやすいし、テイストも嫌いじゃない。絶筆だと言う表題作は、「ASD」の件をもう少し抑えめにした方が良いような気がするが、その余裕はもうなかったのだろうか。

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    2023年06月03日
  • 火の山 山猿記(上)

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    大江健三郎や『楡家の人びと』を彷彿とさせる圧倒的創造(想像)力のクロニクル系大長編。
    有森家の1人が、連綿と続く有森家の歴史・家族の事件を綴った手記を、更にその子供たちが読み進めていくという内容。
    現代の会話ではどうやら誰が生き誰が亡くなっているか窺い知れるが、手記は著者の幼少期から丁寧に進んでいく部分が肝な気がする。
    津島佑子の作話力に驚きを感じる一作。

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    2023年02月18日