津島佑子のレビュー一覧

  • 火の山 山猿記(下)

    凄まじい大作だった。
    上巻では、津島佑子らしくない創造力で意外性を見たが、後半は正に女性讃歌の一冊だった。
    有森家の女衆の1人、桜子の魅力が物語を牽引している。彼女の顛末に関しては本作はおろかここ最近数作の中のハイライトだと思った。
  • 寵児
    なんで高子は想像妊娠をしたのか?というなぜを紐解く話。
    妊娠を女性の本能の帰結、と位置付けることから実は自分を縛り付けていて、それに気がつき自力で歩いていくために殻を破れた高子の姿が静かにカタルシスだった。後半一気に話が動くのに無理なく読める。
    津島祐子さん、お父さんよりもずっと文才があるのでは‥。
  • 黄金の夢の歌
    黄金の夢の歌 (100周年書き下ろし)
    (和書)2011年03月01日 21:22
    津島 佑子 講談社 2010年12月7日


    柄谷行人さんの書評で興味を覚えました。

    とても良い作品だと思います。

    回帰としてあるという評者の意見にも興味があります。

    中国の北京・洛陽・西安・内モンゴルなどへ旅...続きを読む
  • 変愛小説集 日本作家編
    さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。
  • 火の山 山猿記(上)
    上下巻にに分かれておりかなり長いですが、
    その長さを感じないほど深く入り込んで読める作品でした。

    とある一家の物語をこれほど見事に描ききっている作品は
    そんなに多くはないのではないでしょうか。

    貴重な一作だと思います。
  • 火の山 山猿記(下)
    『純情きらり』ファンにとっては上より下のほうが面白いかも。あー、この場面あったなー、とドラマを思い起こしつつ楽しめること請け合い。
  • 火の山 山猿記(下)
    ドラマとは違う魅力。登場人物が多いにもかかわらず、ひとりひとりの人物像を丁寧に描いていると思う。「家族」とは何か?を考えさせられる。
  • 火の山 山猿記(下)
    『純情きらり』はこれからどうなっていくのか原案と比べながらすごく楽しみ。達彦さんは死なずに戻ってくるかな〜?
  • 半減期を祝って
    文章は読みやすいし、テイストも嫌いじゃない。絶筆だと言う表題作は、「ASD」の件をもう少し抑えめにした方が良いような気がするが、その余裕はもうなかったのだろうか。
  • 火の山 山猿記(上)

    大江健三郎や『楡家の人びと』を彷彿とさせる圧倒的創造(想像)力のクロニクル系大長編。
    有森家の1人が、連綿と続く有森家の歴史・家族の事件を綴った手記を、更にその子供たちが読み進めていくという内容。
    現代の会話ではどうやら誰が生き誰が亡くなっているか窺い知れるが、手記は著者の幼少期から丁寧に進んでい...続きを読む
  • 火の山 山猿記(下)
     投げ出してしまいたくなるほどではないものの、少々味気ない話が続き、下巻の中頃までは作品の意図を掴みかねた。しかし、桜子によるメモが挿入されることでこの作品が持つ意義が分かりやすくなった。石を巡る作品であったことに改めて気が付かされたのである。石にもそれぞれ名前がある。同じ土地から産出したものでも、...続きを読む
  • 寵児

    想像妊娠の主題が生々しく、男性として興味深い。
    主人公のプライドや自己中心性、他者との物差しなど、こういった女性の解像度が非常に高く、少し怖気が走る場面もあり。
    ただこの描写に作者のパーツが幾つか投影されているのは間違いなく、愛着すら感じる。
    表題の見事さ含め面白く読めた。
  • 光の領分

    生活能力の低い女が、未成熟な娘と孤独やストレスに耐えながら生活する中で、何となく光が見えてゆく過程に心が洗われる。
    全篇に透き通った雰囲気があり、読後もサッパリした良短編集。
  • ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語 上
    海、歌、時空、迫害される少数の民、きりしたん。アイヌとも違う、北方少数民族ウィルタの博物館ジャッカドフニ。アバシリ、マツマエ、シレトコ、地名が全てカタカナであること、行間を繋ぐ言葉がアイヌの歌であることが文字を持たない文化圏の物語と情緒を出してる。わかるようなわからないような。
    母を呼び唄う子チカと...続きを読む
  • 変愛小説集 日本作家編
    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自...続きを読む
  • 火の山 山猿記(下)
    読むのに苦労した上巻とは打って変わって、随分と読みやすく感じた。
    富士の裾野に住む有森家の年代記とはいえ、物語のほとんどは語り手である勇太郎の父である源一郎と、彼の子どもたちについてである。

    上巻は父・源一郎を中心に、何の不安もなく過ごした故郷での子ども時代の幸福な日々に大きくページを費やしている...続きを読む
  • 火の山 山猿記(上)
    アメリカで生まれフランスで暮らす娘に、先祖代々甲府で生きてきた一族の歴史を父が書き残した記録―を、いとこが預かって、数十年後にようやく送り届けるという態の小説。

    長年アメリカで暮らしながら根っこの部分で日本人が抜けない父親が、日本語を読めない娘に日本語で記録を残すので、間に何人か人が入って日本語を...続きを読む
  • 変愛小説集 日本作家編
    タイトル通り変愛を集めた短編集。

    「お、おう、そんなところに」「そんなのと」「え、何この設定」とか本当にそれぞれ変な愛ばっかり笑

    吉田篤弘目当てだけど、電球交換士が出てきていたとは。
  • 変愛小説集 日本作家編
    「恋愛」ではなく「変愛」…変わった形の愛が描かれたアンソロジーです。
    面白かったです。
    ディストピア文学が大好きなので、「形見」が好きでした。工場で作られる動物由来の子ども、も気になりますが、主人公の子どもがもう50人くらいいるのも気になりました。色々と考えてしまいます。
    「藁の夫」「逆毛のトメ」「...続きを読む
  • 堤中納言物語・うつほ物語
    宇津保物語。琴を縦軸に貴族と楽人のかかわり。源氏物語にも勝る王朝絵巻である。意外な発掘であった。
    堤中納言 短編集 素材が豊富で、様々な視点から人物造形がなされている。