津島佑子のレビュー一覧

  • あまりに野蛮な (上)

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    台湾に暮らした日本女性の愛の手紙・日記。70年の時を経て甦る二人の女性の愛の人生。

    女は思わず、海を振り返る。海に戻りたい。
    女は陸の世界におびえ、つぶやく。わたしは死なない。わたしは生きつづける。

    女性作家の視点から見る愛の人生、わたしは生きつづける人生、・・・

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    2009年10月07日
  • あまりに野蛮な (上)

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    読売新聞の記者の鈴木美潮さんが一気に読んでしまった、とコラムで紹介されていたので、読むことにした。
    1930年代に日本が台湾を統治していた時代を生きるミーチャとその姪にあたる50代のリーリーが主人公。
    過去と現代を行き来しながら物語が進んでいく。
    ミーチャの日常の描写を通して、当時の生活が興味深い。
    統治時代の知識がほとんどなかったので、理解しにくい部分が多くあった。
    また主人公のミーチャは精神疾患を患ってしまうため、現実との描写の違いが混同してしまう場面も。
    最後の参考文献の多さを見ると作者がこの小説を書きあげるためにどれだけの調査に時間をかけ、真剣に取り組んでいたかがよく分かる。
    上下巻で

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    2009年10月07日
  • 火の山 山猿記(上)

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    太くて読みにくいかと思ったが、実は読みやすく、どんどん読み進めることが出来た。登場人物をひとりひとり丁寧に描いており、有森家を身近に感じることが出来た。

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    2009年10月04日
  • 本のなかの少女たち

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     『赤毛のアン』のつぎに読むのは、まったく適切としか言ひやうがなかった。
     プロローグで著者・津島佑子の少女性にたいする疑念が語られる。それは、幼く父親・太宰治を失って、母親・津島美知子から育てられ、少女を小学生までまっとうすることのなかった記録だ。
     そこで、中高生ころ読んでゐた『赤毛のアン』は空想小説でしかなかった。と著者ははっきり書いてゐる。

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    2025年09月19日
  • 寵児

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    高子が子供じみていて違和感が虚構の力を上回れなかった。自立できていない(「自分の気持ちを優先する人」)のに、夏野子を自分の庇護下に置こうとしたり長田や姉の視線をうっとおしく感じていたりして若干イラっとしてしまった。冒頭の透き通った山の描写と想像妊娠発覚後に星雲の夢を見るところ、最後にキッズにおもちゃの銃で撃たれるくだりは良かった。

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    2025年01月24日
  • 火の山 山猿記(下)

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    勇太郎は大学で物理学を専攻し、学問の世界に生きることをめざすものの、日本を取り巻く国際情勢が悪化していくなかで将来の見通しを立てることができません。さらに終戦後も、大学に居場所はあるものの、急激なインフレのために生活がままならず、悩みは尽きません。

    勇太郎のすぐ上の姉である桜子は、婚約者の松井達彦が軍に召集されて連絡がとれないまま、勇太郎を支えます。そんななか、思いがけず達彦が帰還し、桜子は松井家に嫁いで子どもをさずかるものの、病に犯されてこの世を去ります。

    国語教師だった笛子は、画家の杉冬吾のもとに嫁ぎ、彼を献身的に愛するようになります。戦中から戦後にかけて日本中が物質的に窮乏していた時

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    2024年12月15日
  • 火の山 山猿記(上)

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    甲府でそだち、富士山に親しむ少年時代を送った有森勇太郎は、長じてアメリカにわたり、娘の牧子をさずかります。牧子はフランスに移住しますが、彼女の息子のパトリス・勇平のもとに、牧子のいとこである杉由紀子からの手紙がとどけられます。由紀子は、勇太郎の記した長大な「記録」を託されており、勇平は彼女たちの協力を得て、日本語でしるされた「記録」を読み解き、有森家の来歴を知ることになります。

    「記録」の執筆者である勇太郎は、拠点をアメリカに移しており、牧子や勇平は日本語ではないことばを母語として生まれそだちました。そんな彼らに、雄大な富士の山を擁する自然と、そのふもとで近代から現代にかけて日本という国がた

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    2024年12月14日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    純文学作家の発想
     ひとつづつ評していく。

     川上弘美。未来SF。
     発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
     人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
     厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
     未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
     妙にSFが現実路線のわりには

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    2024年10月10日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    普段、ほとんど読むことのない現代の日本人作家のアンソロジー。
    興味深く読んだ。
    もとは、深堀骨 の作品を読んでみたかったから手に取ったが、どれもなかなか良かった。ありそうでない話というファンタジーというか、不気味な話が多い。恋愛要素はどれも少なく見えるが、一応恋愛ものという括りらしい。

    一作だけ、多和田葉子の漢字の話はすでに読んでいた。

    特に印象的だったのは、
    本谷由希子、迫力とリアリティと奇想天外で面白かった。
    村田沙耶香、細かく書き連ねて積み上げるのがうまい。
    吉田知子、多分この中で一番好きなタイプの作家。
    小池昌代、切れ味がよい。
    星野智幸、描写がうまい。

    というかんじ。
    編者は岸

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    2023年03月22日
  • ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語 下

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    美しい愛情で結ばれていたジュリアンとチカが下巻で離れてしまったように思えて少し寂しかったけど。今とは違い手紙を送ることが、時と空間を超えて、もしかしたらもう2度と会えないかもしれない人へ呼びかける祈りのような行為になっていて美しい。終着点があるわけではなく、アイヌと、キリシタンの情緒に満ちた歌と祈りの詩のような小説。

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    2023年01月12日
  • 狩りの時代

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    夭折したダウン症の兄がいる絵美子が、いとこから「フテキカクシャ」と囁かれた思い出、、ヒトラーユーゲントを歓待したというおじおばたちの後悔とか、差別をテーマとして扱った小説。登場人物の関係をつかむのに手間取った。津島佑子にとって最後の作品とのこと。

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    2022年05月26日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    川上弘美さんの、愛した人の骨の話が、秀逸だった。自分には、強烈な作品もあったが、面白い企画だと思う。

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    2021年11月18日
  • 火の山 山猿記(下)

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    やっと読み終えた感じ。
    何度もギブアップしかけた。特に上巻では。
    どういう意図で書かれたのか、今もわからない。
    妙な注釈が記入されているのは海外向けの用意だろうか。
    「純情キラリ」を見ていないこともあって、語り部が次々と変わるのは感情移入が難しい。
    下巻は敗戦を主軸とした一家離散滅亡への物語と読んだ。
    人は必ず死ぬ。血もまた拡散されてしまう。

    この物語の中には画家として登場する太宰治が居る。
    娘から見た太宰の姿は目新しい。
    拾いものである。
    太宰治論に何か影響がsるのだろうか。

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    2021年08月01日
  • 半減期を祝って

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    津島祐子を読むのは初めて。
    短い文を連ねる文体と独特の読点の打ち方で、そこはかとなく叙情的な雰囲気を醸す文章だなという印象。
    ちなみに、そうした文章の特徴は太宰の作品にも通じるところがあるような…?と思ったのは私の色眼鏡かしら。
    しかし、穏やかな叙情的な文章を書く人なのかと思いきや、社会風刺のような表題の短編で締め括られたのにや驚いた。

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    2021年07月09日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    恋愛でも偏愛でもなく、変愛。変な愛の短編集。変だけど当人たちにとっては大真面目。
    幻想小説を読んでいるときみたいな、いつの間にか背後にこことは違う世界の気配がぶわっと広がって迷い込んでいくような没頭感を覚える作品が多め。
    一部文章が合わなくて読みづらい作品もあったけれど、そこを乗り越えたらすいすい読めた。
    形見…川上弘美さん
    梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる…吉田篤弘さん
    クエルボ…星野智幸さん
    あたりが好み。

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    2020年04月06日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    恋愛ではなく「変」愛を集めたアンソロジー。 
    どこへゆくやら全くわからない。
    予想も付かない展開、意味さえわからなくなるけれど、なぜか読むのを止められない引力。
    奇妙な、強烈な印象を残す読後感です。
    面白かった。

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    2018年08月16日
  • 寵児

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    ネタバレ

    後半に読み進めていくて面白くなります。想像妊娠をしてしまった高子。離婚した元旦那の中立的な立場の人に相談して、次第に関係をもつようになる。まさかのプロポーズされるが1人で生きていくことになる。

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    2018年05月27日
  • P+D BOOKS アニの夢 私のイノチ

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    遺作「ジャッカ・ドフニ」を読み終えたところであったため、アイヌ世界を描いた遺作の執筆動機が垣間見られる「アイヌ叙事詩翻訳事情」は、理解を深める上で重要なエッセイだと思えた。

    マオリ、アイヌ、ブルターニュなど、少数民族言語の現在地点をめぐるエッセイ集ともとれる。東京で生まれ育った津島佑子にとって、周縁から中央を見る視点というものが重要な意味を持ったことが、本書を読むと理解できる。

    巻頭の一章は、盟友であった中上健次を追悼する内容。中上は周知のとおり、日本を熊野という周縁から見つめた作家であるが、その中上文学への、おもねらない率直な限界の指摘もあり、興味深い内容。

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    2018年03月04日
  • 半減期を祝って

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    ネタバレ

    ニューヨークを語る元妻のトヨ子の生前の話を
    ファミレスで息子の薫とする男。

    学生の曾祖母が乗ったというオートバイから、
    景子が昔付き合っていた妻子持ちの男も、伯父もオートバイに乗っていたと思い出す記憶。

    トウホクで起きた災害と事故から30年経って
    すっかり変わり果てたニホン。

    著者がちょうどだいたい1年前に亡くなっているとは。
    トヨ子の話は読みやすかった。
    半減期はちょっと暗くて、気が、滅入る。

    戦争が終わって、もう何も起こらないとは
    限らないわけね。

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    2017年02月17日
  • 半減期を祝って

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    短い短編集、3つ。
    標題の作品が、印象的。セシウムの半減期の近未来小説。
    ああ、そういう事を考えたのか。怖くなる。

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    2016年06月22日