井伏鱒二のレビュー一覧

  • さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記

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    「さざなみ軍記」は読んでいる時はなんだかやけに淡々とした話が続くなあ、と言う感覚だったのだけど、解説を読んで足かけ9年かけて少しづつ発表して主人公の成長を描こうとした作品だったと知ってなるほどと納得がいった。それにしてもそれだけ長い期間かけて割と短い期間7月から3月までの必ずしもクライマックスがあるわけでもない作品を淡々と書くのもなかなか。
    「ジョン万次郎漂流記」はとても面白く読めた。数奇な運命というしかないけど、どこまでが史実でどこまでが井伏鱒二の創作なのかはわからない。もちろん基本的な出来事は実際の記録に基づいているのだろうけど小説的なセリフや行動は登場するアメリカ人たちの振る舞いが井伏鱒

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    2023年08月04日
  • 太宰治

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    井伏鱒二文学忌 1898.2.15ー1993.7.10
    井伏忌 鱒二忌 平成5年までご存命だったですね。今年は没後30年で、神奈川近代文学館や杉並文学館で記念展が開催されています。(広島のふくやま文学館でも)涼しくなったらお出かけします。

    井伏鱒二は、太宰治をとても可愛がって(お世話をして)いました。出会いは、太宰治からのアプローチ。14歳で井伏の作品に心酔して、東大入学で上京して、会ってくれなければ自殺するからという、手紙をだす。まだ良い時代だったから、井伏も会う機会を作ってあげる。そこから続いた太宰治の事を書いた物を一冊にまとめた逸品です。
    太宰治は青森の資産家の息子で、出会った時から浪

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    2023年07月10日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    自分が小学生の頃、

    ドリトル先生シリーズが好きで、

    面白く読んだ記憶があり(ハードカバーのやつ)、

    再読しました。

    訳が井伏鱒二とは知らずビックリ。




    面白かった記憶がある割に、

    ストーリーを全く覚えていなくて、

    新鮮な気持ちで読んだ。

    ただ、ダブダブ、チーチー、ポリネシアといった動物の名前は記憶がありました。

    子供にとって面白いものは、

    大人にとっても面白いものもあるけど、

    今の自分なら積極的には読まないかなぁ、と思いました。

    想像力が逞しい子供の頃に読んだ方が面白かったと思う。

    小学生の時には、

    独特の挿絵、知らない動物(オカピとか当時は知名度無かったので)

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    2023年04月15日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    名前は誰でも聞いたことがあるであろう名作をこの年になって読んでみるという試み第一弾。

    決して子供用だから簡単、ではなく、見どころがたくさんある小説でした。私も動物語を話せたら…と思いながら読みました。

    人種差別的表現については気になる部分もあったけど、時代の産物なので読み手がきちんと理解して読めば問題ないと思う。

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    2023年03月18日
  • 荻窪風土記

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    昔荻窪に住んでいた時に買ったけど結局読まなかった本を30年近く経ってから読んだ。井伏鱒二の文章はなんとなくおおらかさと洒落た味わいがあって「黒い雨」を読んで以来好きだ。昭和初期の荻窪あたりの今からは想像がつかないような田舎びた感じや、戦争に向かう時期の緊張、その中でしたたかに生きる街の人々や今よりは生きる余裕もあったように見える文人たちの姿が飾らない雰囲気で馴染みのある地名の中で描かれる。荻窪タウンセブンの建設前のワクワク感のようなものも書かれていて身近なところもあって嬉しい。1993年に亡くなったということは実は私が荻窪に住んでいた時と重なっていた部分があったのかもしれない。

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    2023年02月25日
  • 山椒魚

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    作品の出来不出来が激しいように思えた。旅する主人公と、その旅先の人々との交流を描いた話が多かったが、同じ型の作品を並べるとこうなってしまうのかもしれない。
    似た作家として、漫画家のつげ義春を思い出した。特に「言葉について」などは彼の「紅い花」とよく似ている気がする。比較して読んでみるのも面白いかもしれない。(じぶんはやらないが)

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    2023年01月25日
  • 荻窪風土記

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    ネタバレ

    荻窪に住んでいた井伏鱒二による大正末期から昭和前期の東京の様子や世相、近隣に住む文士(阿佐ヶ谷将棋会)との交遊の記録。

    当時はまだ青梅街道を馬が野菜を乗せて通っており、阿佐ヶ谷や荻窪、高円寺に鉄道の駅を誘致の話が出ている。関東大震災の際には東京が3日間燃え、菊池寛が横光利一を探して幟を立てて東京中を歩き回ったなど、文士の絆の強さを思わせる。井伏鱒二は立川まで歩いて広島に列車で帰ったという。
    2・26事件に小林多喜二の獄死など当時ではどのように受け止められていたのかリアルタイムな目線での記録となっている。
    不世出の作家小山清など知ることができてよかった。

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    2022年10月16日
  • ドリトル先生航海記

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    オリジナルのドリトル先生は初めて読んだ。
    せっかくなら井伏訳をと思い、岩波少年文庫をチョイス。

    シリーズがたくさん出ていて困ったけれど、スタビンズ君がちゃんと登場するのと、教科書に紹介されているらしいといういことで『航海記』を読んでみた。

    動物たちの、実際の習性とファンタジーがうまく融合していて、面白い。

    福岡ハカセの『新ドリトル』を先に読んだけど、それぞれ楽しめた。

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    2022年09月20日
  • 晩春の旅 山の宿 現代日本のエッセイ

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    井伏鱒二の紀行文ですね。
    井伏さんらしい気さくな文章で、あたたかな筆遣い面白く可笑しく読み進めました。
    井伏さんは観察力と描写力に優れているので臨場感溢れるあきさせない文章が魅力ですね。
    旅先の一幕とご自身の内面の心理描写も手に取るように描き出されていて、画面が目に見えるようです。
    井伏さんの詩心も優しく心を打つものがありますが、この紀行文も心温まる作品ですね。

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    2022年07月10日
  • 井伏鱒二全詩集

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    有名な「勧酒」と、他の詩も読んでみたくて購入。
    のどかでありながら、どこか醒めた感じも受ける詩が多かった。
    高校時代に教科書で読んで印象に残っていた「秋夜寄丘二十二員外」が収録されていて、懐かしい気持ちになった。

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    2022年03月31日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    動物と話ができる獣医。子どもにとってはなんと夢に溢れた世界だろう、と思う。

    差別表現等の問題は、石井桃子さんが述べておられるように、作家自身、生きた時代や文化と無関係ではいられない、という、それだけの問題かと思う。
    これが人種差別による白人至上主義を述べたい本であるのならともかく、作家が作りたかった世界はそんなものとは基本的に無関係な、子どものためのファンタジーでしかない。
    現代の日本の価値観に照らせば、悪としか言いようがない記述や展開に、大人が嫌悪感を抱くのは仕方がないと思うが(読む自分自身が文化や時代と無関係でいられないのだから)、一方で、頭の柔らかい子どもたちの方が、その辺りを柔軟に処

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    2022年02月19日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    ホームズの次は怪盗ルパン!と決めていたら1~3巻が貸出中のままになっているので方向転換。実家の子供本棚に1冊ずつだけあったムーミンとドリトル先生、10代の頃に全シリーズ読もうと思ったけれどムーミンはパパが海へいった辺りで、ドリトル先生は月から帰った辺りで?頓挫して、ムーミンはその後30代と40代で全編通しで読んでいますが先生はお月さまで止まったままになっていたのでこの機会に。覚えていたこと、読み出して思い出したこと、ぼんやりは知っていたけど改めて確認できたことなどをしみじみと味わいながらの読書体験はちょっと特別で、思った以上に楽しかったです。奥付を見たら原著が公表されたのが1920年で百年前と

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    2021年11月13日
  • ドリトル先生と月からの使い

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    こどもへの読み聞かせ、ドリトル先生シリーズ7冊目。今年の3月からだいたい月に一冊くらいのペースで読んでいるので、もう半年以上は続いているのだが、まったく飽きる気配がない。僕が子供の頃は、この辺でつまらなくなって挫折した記憶があるのだが、40年ぶりくらいでシリーズ通読にチャレンジできそうな雰囲気だ(もっとも、まだシリーズの半分をようやく過ぎたところだが)。

    物語は、まだ宇宙空間がエーテルで満たされていると信じられているころのお話で、にわかに信じられると困るので、たびたび注釈を入れながら読んだ。

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    2021年10月30日
  • ドリトル先生の動物園

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    子供への読み聞かせシリーズ。僕が読み聞かせ終わった後、畑正憲の解説はもう自分で読んでいたので、「だったら最初からもう全部自分で読めるじゃん」とも思うのだが、まあ貴重な父子の時間なのでいいことにする。

    ネズミの挿話やミステリー仕掛けの後半など、小説としての完成度も高く、ドリトル先生シリーズ中興の佳作。

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    2021年08月02日
  • さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記

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    『ジョン万次郎漂流記』のみの感想。
     幕末から明治初期にかけての実在の人物についての小説。資料にない部分は井伏氏の空想で補われている。
     冒険譚として非常に面白かった。
     土佐で貧しい漁師だった万次郎は15歳の時の正月に他の四人とともに漁船に乗っていて、嵐に会い、一週間ほど漂流した。
     ようやく周囲が一里ばかりの無人島に到着し、そこを当座の棲家とした。彼らは島でただ一箇所岩の窪みに水が溜まっている所だけを“井戸”として大切に使い、あほう鳥を取って食べるなどして命を繋いでいたが、それも限界に達した頃、そばを通りかかったアメリカの漁船に助けられた。
     身振り手振りでかなり言葉が通じ、そのアメリカ人

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    2021年07月27日
  • ドリトル先生のサーカス

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    子供への読み聞かせ、ドリトル先生シリーズ4作目。このあたりはドリトル先生の中でも秀眉の佳作で、現代の大人が読んでも童心に戻って楽しめる。子供も楽しんでくれているようだが、僕の方が先を読みたくて毎晩遅くまで読み聞かせている始末。

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    2021年06月26日
  • 山椒魚

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    ネタバレ

    読む態度について反省している。
    僕は集中力がつづくほうではないので、ちょこちょこ読んでは一度SNSを開いたりと、そうやって本を読んでいくことがおおい。しかし井伏鱒二のこの小説はそうやって読もうとしても、続きが頭に入ってこない。前半の何作か、そうやって意味を取りこぼしたまま、物語を終わらせてしまった。

    五作目の『掛け持ち』から、一作品読み終わるまでは本を離さないと決めて取り掛かった。
    今回、読書をちゃんとし終えられたのは後半の四作だけだったと思う。
    しかしちゃんと読めた自信のある作品はどれもこれも、読み終えて作品世界から抜け出したときの自分のいる場所がなんだかおもしろいような気がした。

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    2021年06月06日
  • 太宰治

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    師であり友人である井伏鱒二による太宰治との想い出がつづられる。時に批判のような口調にも、行間に太宰への愛情が見える。
    だれしも、矛盾を抱えて生きている。注目されたいと思うが注目されるのが苦手、人に好かれたいが人が苦手、強い自己主張をするが実は気が弱い。そういう矛盾を人一倍背負った太宰は、井伏にとって太宰は、ほっとけない人だったのだろう。

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    2020年07月23日
  • ドリトル先生航海記

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     福岡伸一さんのお薦め本だったので、「この歳になって」という気がしますが手に取ってみました。
     読む前に私が勝手に想像していた“航海記”というイメージとはかなり違っていましたが、確かに良質の物語だと思います。 読む人によってさまざまな刺激を受けることのできる素晴らしい作品です。
     読むとしたら「小学校の中高学年」ぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。

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    2020年05月16日
  • さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記

    匿名

    ネタバレ 購入済み

     平家の若者が源氏との戦の中で成長していく物語。抑揚のきいた古風な語り口が私たちを源平の時代にいざなう。平氏の敗走の姿を平氏の側から描いたものである。若者と村の娘との合挽きの場面が印象的である。

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    2020年02月26日