井伏鱒二のレビュー一覧

  • 駅前旅館

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     昭和30年代初頭、駅前旅館の番頭の独白形式で描かれる悲喜交々。業界の内幕や客の起こす騒動、番頭の仲間内でのあれこれがユーモアたっぷりに描かれていて面白い。
     しかし、着実に時代の流れが押し寄せていて、昔気質の番頭は絶滅寸前。今の番頭ときたら⋯と口にするも、ふとした時に寂しさを感じさせる語り口が巧みで引き込まれた。

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    2025年10月31日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    この物語は第一次世界大戦の戦場から、ヒュー・ロフティングが自分の息子たちに書き送った手紙がもとになっているそうです。
    現代とはまったく違う環境で生まれた物語が、長いこと読み継がれ、今読んでもおもしろいということに感動します。
    自分がヒュー・ロフティングの子どもになった気持ちで、戦地にいるお父さんから送られてくる手紙に書かれている物語だと思うと、より一層楽しめます。

    井伏鱒二訳で描かれる動物たちの口調が可愛らしいです。

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    2025年10月26日
  • 黒い雨

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    奥付は昭和45年初版、昭和57年30刷。国語の教科書に採用された作品と言うことで購入した記憶がある。同じ広島出身のこうの史代さんの作品を読んで「読まねば!」と思い立った。戦後、主人公・閑間重松の姪の見合い話が次々破談。それは、原爆症の女性かも知れないという憶測が生んだ悲劇だった。書名にもなった放射能を含んだ「黒い雨」や死の灰が、図らずも姪・矢須子の原爆症の引き金になるのだが、重松が姪の誹謗中傷を晴らすべく書いた被爆日記によって、広島の原爆被害の悲惨さを追体験する作品だった。

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    2025年10月02日
  • 太宰治

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    昔断片的に読んだことのあった井伏さんからみた太宰の姿が生き生きと立ち現れる。一息で読んだが、懐かしい旧友と久しぶりにあったよな感慨を覚えた。中学時代読破して以降読んでいなかった太宰を、改めて再読する契機としたい。

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    2025年09月18日
  • 山椒魚

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     井伏さんは人も動物も、ユーモアと切なさの入り混じった視線で見つめているのだろうなと、そんな風に感じさせる短編集だった。
     収録作の内だいたいの作品で主人公は旅に出ている。井伏さんは旅が好きだったのだろうか。旅情が良いアクセントになっている。

     ベストは「屋根の上のサワン」だ。空という名の自由を渇望する鳥のサワンと、サワンの気持ちが痛いほど分かりつつ迫る別れを淋しく感じる想いに葛藤する「わたし」の姿が心を揺さぶる。文体が敬体なのも好みだ。

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    2025年09月05日
  • 黒い雨

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    戦争を題材にした小説で有名な作品、井伏鱒二さん著「黒い雨」
    前々から、それこそ30年前から知っている作品だったが今回初めて読む事ができた。
    調べてみれば1966年初刊との事、1945年8月が原爆•終戦の年なので、戦後20年に書かれた作品ということになる。
    現在戦後80年、となれば約60年前の作品でありながら、投下された原爆のもたらした凄惨さ、生々しさ、人々の混乱、都市の壊滅状態等々が恐ろしくリアルに伝わってくる。
    現実にあった惨劇だけに恐ろしい作品。
    それこそ自分が生まれる前の惨劇なのに、人々の声が今まさに真に迫って聞こえるようだった。

    現在のように事ある情報が瞬時に得られ、その情報やそれに

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    2025年08月28日
  • 黒い雨

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    オーディブルにて。
    8月に入り、終戦記念日に近づくにつれて増えるコンテンツの1つとして読んでみた。年に一度でも戦争について考えるこのような機会は必要だと感じた。

    5月にイギリスに行った際、VEデーという終戦記念日があった。イギリスにとっては戦勝記念の晴れやかな日であること、ドイツ降伏の日である5月8日で定めているため、その後日本は3か月間も孤軍奮闘していたことに今更ながら衝撃を受けた。
    本作の主人公が言うように、ピカドンが落とされる前に降伏できたのではないか、というのは本当にその通りだと思う。広島や長崎の人は原爆を落とされる必要があったのだろうか。あまりにも大きすぎる代償である。

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    2025年08月14日
  • 黒い雨

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    夏には必ず昭和の戦争を題材にした本を読むことにしている。
    井伏鱒二「黒い雨」。映画にもなりました。
    普通の市民の手記という形で被爆の状況やその後の悲惨な生活を綴る。
    この歳にして今更のことではあるが、あらためてその恐ろしさ、愚かさを知る。
    「原爆投下が戦争を終結させた」とか「核武装が最も安上がり」などと口走る方々に読ませたい。

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    2025年08月11日
  • ドリトル先生と月からの使い

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    ネタバレ

    前半は読み応えのある、動物や虫のおもしろ体験記で、後半は巨大な蛾がドリトル先生の元に舞い降りて、その蛾に乗って着の身着のまま月まで行くという話。子供が描く夢のような話だが、物語の中での月とはどんなものかがとても楽しめる。

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    2025年07月22日
  • さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記

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    ジョン万次郎に興味があって、3つの短篇のうち「ジョン万次郎漂流記」を最初に読んだ。勝手に司馬遼太郎の『菜の花の沖』(やはり江戸時代にロシアに拿捕された商人、高田屋嘉平を描いた小説)みたいな壮大な娯楽物語を想像しながら読み始めたが、すいぶん雰囲気が違う。大げさな感情描写や細かい時代背景の説明などはほとんどないまま、淡々とした描写が続く。それでいてじわじわ伝わる何とも言えない滋味深さ。読み始めの拍子抜け感から一転、うなりながら読み終えた。次に読んだ「さざなみ軍記」にはさらに感じ入った。一度では味わい尽くせない、文学作品の魅力がすみずみに。またうなる。再読必至。(「二つの話」はちょっとピンとこなかっ

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    2025年07月12日
  • 厄除け詩集

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    「サヨナラだけが人生だ」はとても有名なフレーズ。他にも「逸題」や「再疎開途上」、「夜の横丁」が良かった。

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    2025年03月23日
  • 山椒魚

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    小さなプライドを持ち、虚勢を張りながらいきていく。でもやっぱり最後はそこを捨てていかなければならない。そんなことを、気づかせてくれる作品

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    2025年01月29日
  • ドリトル先生航海記

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    今回の航海は大変でした!
    ドリトル先生お疲れ様です!

    P37「わしは、荷物をたくさん持って歩くのはすかんのだ。ひじょうにやっかいだからね。人の一生は短いものだ。荷物なんかで、わずらわされるのは、じつにつまらんことだ。いいかね、スタンビンズ君。荷物なんてものは、ほんとうに必要なものではないのだよ。~」

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    2025年01月22日
  • 山椒魚

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    改めて読んでみた。表題作は幾通りもの解釈ができそう。『掛け持ち』が最高。屋根の上のサワンも好きです。自然描写が細かいとおもったら、作者は絵をよくする人だったそうなので納得。太宰治が有名だが、多くの現代作家も憧れる人らしい。新潮文庫は表紙が安西水丸。すてきです。

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    2024年12月31日
  • 黒い雨

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    息子の中学の課題図書として購入したためついでに読んでみました。
    読んでいる間にちょうど広島出張も重なり広島の現地でこの作品を読むことが出来
    80年近く前の広島に思いをはせました。
    本当に市内は川が多くて橋だらけだなぁとそんなことを思いました。

    今まで原爆については「はだしのゲン」や修学旅行での被爆者の講演など
    で聞いたくらいの知識しかありませんでした。
    黒い雨は当時の日記形式で語られるため(どこまで真実か分かりませんが)
    リアルに市井の人々の状況を想像することが出来ました。
    特に火事が酷い状況で沢山亡くなった方もいたんですね。
    確かに当時は木造住宅も多いですしとんでもない熱で熱せられたら

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    2024年12月13日
  • 広島風土記

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    ちょうど瀬戸内に関心が湧いてきたところで、「広島」のキーワードで購入。
    広島だけでなく、岡山、瀬戸内の島々と、その歴史、文化を含めて興味深い史実も学ぶことができた。
    井伏鱒二の思い出話は、ウイットに富み、時に心が温まる小話がある。
    井伏鱒二は、きっと心優しい人なのだろう。

    以下抜粋~
    ・(宮島)島全体が清浄な御神体だとされている。
    今でも死人があると対岸に埋葬する。墓というものは一つもない。赤ん坊の臍の緒も対岸に持って行って埋めている。犬猫の死骸も島には埋めない。

    ・大崎島は大崎上島と大崎下島に分れ、どちらも内海通いの船乗りたちの間にはオチョロ船で馴染みの深かった島である。オチョロ船は港に

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    2024年12月06日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    少し前の100分で名著で、二作目『ドリトル先生航海期』が扱われていたことから手に取った。
    子どもの頃は読む機会がなく、大人になった今が初読である。

    面白い!特に旅に出てから先は、次から次へとトラブルが目紛しく起きて、次はどうなる?とページを繰る内にあっという間に読み終えていた。
    出来事の中には、他の児童書でも似たようなことあったなぁと思えるものもあり、この作品の古典としての影響力の大きさを感じた。色んな児童書作家が、きっと通ってきたんだろうなと…

    古めの海外児童文学で表現がまどろっこしいというか、読みづらいことがたまにあるのだけど、この作品はとても読みやすかった。井伏鱒二訳か…井伏鱒二!?

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    2024年11月25日
  • 井伏鱒二全詩集

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    井伏鱒二さんの詩集ですね。
    「散文を書きたくなくなるとき、厄除けのつもりで書いた」という『厄除け詩集』に初期の作品を加え、生涯の全詩作70篇を紹介されています。(解説ー東郷克美/穂村弘)。

        「ひばりのす」

     ひばりのす
     みつけた
     まだ誰も知らない

     あそこだ
     水車小屋のわき
     しんりようしよの赤い屋根がみえる
     あの麦ばたけだ

     小さいたまごが
     五つならんでる
     まだ誰にもいわない

     僕はこの詩で君のことを思ひ出した
     陸稲のことにも気がついた

     君のうちの庭は広かった
     それが空地利用で麦畠になった
     あのとき君の唯一の楽しみは
     いまに雲雀が巣をかけて
     卵が宿

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    2024年11月16日
  • 黒い雨

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    原爆犠牲者の話。原爆投下からの当時の広島市の凄惨たる状況が克明に描かれており、読んでいていたたまれない気持ちになった。広島に旅行したことがあるが、その当時の状況からよくあそこまで繁栄した都市を作ったなと思う。原爆という兵器だとまだ知らされていない市民たちはピカドンとそれを呼びその威力に恐れをなして、さらに通常の爆弾ではみられないような症状(下痢、激しい火傷、脱毛、歯の脱落)に対してどうすることもできない無力さが伝わってきた。また戦時中の食事や配給についても言及されており、こんな貧しい生活を強いられていたのかと改めて思い知らされた。
    矢須子は原爆投下時には市内にはおらず直接の被曝はしなかったもの

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    2024年10月19日
  • 広島風土記

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    広島(主に福山)の出てくる随筆集。当時の田舎の暮らしを知る意味でも興味深い。東京の言葉を標準語ではなく東京弁と書いてあって確かに!と思った。本来は言葉にも文化にも、標準などないはずなのだった。

    小山田さんの解説も秀逸。

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    2024年05月28日