井伏鱒二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
冒険小説でありミステリでもあるこの作品は、最後まで先が気になって目が離せなかった。
まあ、最後の最後はちょっと肩すかしではあったけれど、犯人の謎を解き明かすのが本筋ではないのでしょうがないか。
ドリトル先生がその歌声にほれ込み、彼女のためのオペラをつくった、緑のカナリアのピピネラ。
普通カナリアで鳴くのはオスなのだが、ピピネラはメスだって家事や育児に追われていなければ唄える、と。
そんなピピネラの数奇な一生。
籠の鳥として鳥屋で生まれ、宿屋に買われてからも、飼い主が点々と変わる。
貴族の家、炭鉱の労働者、軍隊、裕福な未亡人、そして窓ふき屋。
ここまでが第一部。
第二部では一転、籠から飛び -
Posted by ブクログ
「山椒魚」:言わずと知れた井伏鱒二の処女作(大正12年)です。お話自体は有名な小説ですので、あらかたの筋はみなさんご存知かも。2年間を文庫本12ページで読み切る短編です。標準の文法から逸脱しながら、抑制の効いた文章が綴られています。問題はラストの蛙のセリフですよね。色んな読み方ができると思います。私は「今でも」というセリフから、いつから蛙がそのような心持になったのか非常に気になりました。
「本日休診」:昭和24年に第1回読売文学賞にも輝いた作品です。映画化もされました。本日休診って言うとなんだかほんわかした感じがしますが、実際には、東京蒲田を舞台に、戦後の貧困にあえぎながらも何とか生にしがみ -
Posted by ブクログ
今は少し懐かしいものとなってしまった駅前旅館。私たちの世代からすると、古き良き時代の旅館、というイメージです。
そんな上野駅ちかくの旅館の番頭がこの物語の語り部。
この主人公の番頭、めちゃくちゃ女たらしの助平みたいな行動ばかりしていながら、じつはちょっと肝心なところでヘタレ。でもそのキャラがいい。何より、幼い頃からずっと宿屋と親しみがあるだけあって、宿屋の規律不文律がすべてしっかりと身に付いている。そういう、けじめがきちんとあるところが、お客や同業者になめられず敬意をもって接してもらえるゆえんなのだと思う。
この番頭を中心とする「慰安旅行会」のメンツがなかなかの個性派揃いで面白い。このメン -
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