井伏鱒二のレビュー一覧

  • 山椒魚

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    ネタバレ

    ふつうの軽音部から、海と山椒魚、そしてこちらへ。
    サブカルから近代日本の名作小説に繋がるのだから、色んな作品に触れるのは大事だなと。

    山椒魚の話は人間の照らされたくない本性を描く、非常に本質的な部分に焦点を当てた作品。
    妬み、恨み。同じ環境を共有したからこそ来る同情、好意。
    一言では表せない複層的な感情が入り混じった作品でとても好きでした。

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    2025年11月24日
  • 黒い雨

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    戦争の恐ろしさ、原爆の惨たらしさ。
    じっくりと読み進めながら、私の想像力では到底及ばないほどの凄まじい光景だったのだろうと思う。
    「何もかも情けない。」という一文が、戦争の全てを物語っているような気がした。

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    2025年11月22日
  • 厄除け詩集

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    朝ドラ「あんぱん」で、やなせたかしがモデルの柳井嵩が読んでいたのを見て気になって読んでみました。古語で書かれているのに新鮮に感じます。なるほど、詩人やなせたかしが影響を受けたのがわかります。

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    2025年10月07日
  • 山椒魚

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    孤独と孤高と孤立。この作品を読むたびに、これらの違いをうまく伝えられない自分に気づく。
    たった数年籠っていただけで家から出られなくなってしまった山椒魚は、外の景色を馬鹿にしてみたり、闇雲に憎んだり恨んだりする。それにしてはその目に映る景色は色鮮やかに美しく、光が満ち満ちている。そこに憧れや輝きを求めている彼はやがて嘆く。自分を省みるのではなく、ほとんど神に嘆くのだ。これは現代においても覚えがありそうだ。
    最後のやりとりを読み、時々ふと考えてしまう。彼らの幸せはどこかにあった気がしてならない。

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    2025年09月27日
  • 黒い雨

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    渡辺謙さん朗読のオーディブルが素晴らしい。最初から最後まで淡々と静かに読み進められ、その淡々さが恐怖を増します。広島原爆被曝者が長期間にわたり重症に耐え、生き延びる意志を持ち続けたことに感銘を受けました。あの時代を生き抜いた日本人は本当にたくましく賢明でした。私たちもどんなに辛くても、生きたいという希望を持ち続けなければと感じました。

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    2025年09月07日
  • 黒い雨

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    audible 。井伏鱒二のこの本、いつか読もうと思っていたが渡辺謙が朗読するとわかって飛びついた。
    想像以上の内容だった、これまでに読んだノンフィクション、フィクション、広島平和公園の資料館で見た数々の展示品、被爆者の語りなどなど、自分が受け止めていたことをすべてひっくり返すほどの衝撃だった。
    原爆や戦争の真実を知りたい人、この1冊できっとわかります。それほどの作品だ。

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    2025年08月25日
  • 黒い雨

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    全世界の人に読んでほしい本でした。こんなことを繰り返してはいけない。読み終わった後、なんとも言えない、言葉にならない気持ちになって泣けてきました。全世界が平和になってほしい。

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    2025年08月18日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    読み返したいなと思っていたドリトル先生シリーズ。
    まずは初めの『アフリカ行き』は昔からの井伏鱒二翻訳、次の『航海記』は河合祥一郎の新訳完訳で読んでみます。

    ヒュー・ロフティング本人の挿絵が懐かしい!!(^o^)
    翻訳の口調は「ドリトル先生は〇〇をなさって」のように丁寧です。
    巻末が豪華!
    翻訳者井伏鱒二や、井伏鱒二に紹介した石井桃子のあとがきからは、戦後に子供たちに豊かな児童文学に触れてもらいたい!という真摯な気持ちが感じられます。
    日本に紹介してくださったみなさまへの「ありがとうございます!」の気持ちを深く感じます。

    さらには登場人物・動物紹介、二巻以降のあらすじ紹介もあります。
    さすが

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    2025年08月16日
  • 黒い雨

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    人々は暮らし、生きている。その影から付き纏い、引き裂き、壊し、奪っていく戦争。井伏鱒二氏の文章の書き方から、「人が生きる日常の中に起こっていたことだ」と痛いほど感じた。

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    2025年08月14日
  • 黒い雨

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    ★五つです
    『白紅、日を貫く』、、、こんな虹は見たくないてす。
    井伏さんの作風なのか淡々と話が進み、悲惨な情景がサクサクと描かれ、話が先に進みます。
    とはいえ、映画やドラマなどより、井伏さんの描かれる文字の方が悲惨さが伝わります。

    玉音放送を聴いている姿は過去映像で観ますが、聴いた直後などは観たことがないので、当時の情感が伝わります。

    戦争はダメ

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    2025年08月14日
  • 黒い雨

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    他の戦争映画に比べて、心がひどく痛むことがなかったのが不思議。自分の想像力が貧困なせいなのか。
    一般市民の日常風景が淡々と描かれていて、やたらと戦争を非難する書き方はされていない。
    重松が泣いたり喚いたりすることなく、原爆前と変わらず性格がぶれることなく、生活を続けているからだろうか。その点は、妻シゲ子も矢須子も大袈裟に悲惨な顔はしていない。

    壁にかかった「撃ちてし止まん」が虚しさの象徴に思えた。広島長崎の人たちは終戦のラジオ放送を呆然と聞いただろう。安心と不毛な気持ちがごちゃ混ぜになったような。
    “もう負けていることは敵にもわかっていたはずだ。ピカドンを落とす必要はなかったろう”
    そのとお

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    2025年08月13日
  • 黒い雨

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    ネタバレ

     戦時中であれ存在していた「日常」を原爆は無残にも奪い去った。日記形式で語られる被爆後の広島の様子はとても惨い。
     閃光は一瞬だが、戦後数年経っても日常を侵し続け、黒い雨を浴びていた主人公の姪はついに原爆症を発病してしまう。
     主人公が虹に祈りを託す場面で物語は幕を閉じる。姪はその後どうなったのだろう。悲しい運命の想像ばかりが頭を過る。

     市井の人の視点且つ、抑えた筆致だからこそ余計に悲惨さが伝わるし、反戦の直接的な表現が無いにも関わらず、作者の抱く怒りや悲しみが全体から浮かび上がる。原爆の恐ろしさを今に訴える不朽の戦争文学だと思う。

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    2025年08月12日
  • 太宰治

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    神奈川近代文学館で井伏鱒二展をしていたので、予習を兼ねて購入。井伏が太宰の人格と才能を愛していたことが伝わる。二人の出会いは自死を仄めかす脅迫めいた太宰からの手紙だったこと、井伏が太宰の精神科病院入院や二度目の結婚を世話してあげたこと、太宰の死後は佐藤春夫に協力を仰ぎ『正義と微笑』の一節から碑を作ったことなど、同じエピソードが何度も出てくるので、概ね空で言えるようになってしまった。井伏鱒二展では二人の手紙や、二度目の結婚に際した太宰の宣誓書を見られて大興奮。二人の関係がわかる良い本だと思った。

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    2025年08月11日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    ネタバレ

    ドリトル先生が何でも動物語をしゃべれるのでびっくりしました。 最後、ドリトル先生たちがお金持ちになってよかったです。なぜなら、動物たちが食べる量がとてつもなく多いからすぐにお金がなくなってしまうからです。

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    2025年08月12日
  • 黒い雨

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    戦争文学としてあまりにも有名な井伏鱒二の『黒い雨』
    戦後80年だしと思ってようやっと手を出したのであった。小学校のころから知っていた作品だけど『黒い雨』というタイトルが禍々しすぎてずっと読まずにいた
    『黒い雨』を読み、戦争の終わりが必ずしも平和の始まりではないことを痛感した。原爆投下の惨状は、日記を書き写すという形で再現され、過去の記録と現在の生活が交錯しながら物語が進む。その構成が出来事の記憶とその影響がなおも続いていることを強く印象づける。被爆による病や偏見、婚姻問題など、原爆が奪ったのは命だけでなく、人としての未来そのものである。これからも日本が唯一の被爆国であるべきだと強く思う。同じこ

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    2025年07月23日
  • 山椒魚

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    「山椒魚」だけで星5つけられる。
    短編集の中で面白い話はいくつかあったが、「山椒魚」だけは別格なように感じた。読後感がスゴイ。2025年7月までに読んだ本で今年1番面白かった。

    「山椒魚」は以前から気になっており、井伏鱒二の本は今回初めて読んだが、なんとなく独特な雰囲気が伝わった。特に作中のさまざまな地方の方言や、余韻のある読後感がすごかった。終わり方が独特なので、「え、ここで終わるの?」という終わり方のやつも多かった。長編の一章しか読めてない感覚。

    好きな作品をメモっておく
    「山椒魚」
    「屋根の上のスワン」
    「夜ふけと梅の花」
    「寒山拾得」

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    2025年07月17日
  • ドリトル先生アフリカゆき

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    本読まず嫌いのまま高校生くらいまで行ってしまい、手に取る機会がないまま、自分の子どもが小学生になって読みました。
    面白い。動物と話のできるお医者さんなんてとても夢があるけれど、その前に人間の患者さんが1人もいなくなるのが効いていると思う。
    また、井伏鱒二の文章は、濁りや澱みのない文章なのにちゃんと適度な重さがあるので、サーッと流れて行かずに読みごたえもあって本当に素敵だと思います。

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    2025年07月15日
  • ドリトル先生と秘密の湖 下

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    ドロンコが話してくれる大昔のこと。その頃から生きものはみんなきっと平和を願って求めていたのね…今もそうだけど、ドロンコが大事に思ってくれた地球や人間のありようとかけ離れていくようで哀しい。最後の、新井満さんによる文章もよかった。ロフティングがどういう状況で、どういう世界情勢の中これを書いたのか。本文でもだけど、読んで涙が出ました。ドリトル先生が今の地球の、この世界の現状を見たら何て言うだろう。まだ希望はあると言ってくれるだろうか。

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    2025年06月03日
  • 遙拝隊長・本日休診

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    ネタバレ

    ゼミで取り扱われるので、「遥拝隊長」だけとりあえず読んだ。一言で言って、どう読んだらよいものか、よく分からなかった。

    復員しても、いまだに戦争中だと錯覚している元中尉の以上な言動を描いて、戦争と戦争思想の愚劣さを痛烈にあばき、真の戦争犠牲者に対して強い同情をよせた『遥拝隊長』
    (新潮文庫版、裏表紙のあらすじより)

    文庫版のあらすじの書き方からすると、「戦争と戦争思想の愚劣さ」に対する批判の物語ということになる。
    戦争中、陸軍中尉で小隊の隊長としてマレーに派遣された悠一は、遥拝が好きであった。ラジオで朗報があるたび、自分の小隊を整列させ、遥拝をさせていたことから、彼の小隊は「遥拝小隊」と呼ば

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    2025年05月14日
  • 駅前旅館

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    時は昭和30年頃、上野駅近くの大きな旅館、酸いも甘いも嚙み分けた番頭のまわりで起こる数々の出来事。脇役たちもいい味を出していて、文句なくおもしろい。
    客の呼び込みと案内の一部始終、修学旅行や社員旅行の「おのぼりさん」たちが繰り広げるドタバタ、当時の上野界隈の賑わいや熱気も感じられる。
    もちろん、色恋もある。主人公が思いを寄せる女性と、飲み屋のカウンターで膝と膝とが触れ合う場面は、読んでいて胸がどきどきする。
    番頭にも脇役たちにもモデルがいる。ほぼ同時期に出た『珍品堂主人』もそうだが、井伏は、驚くほど丹念に取材している。しっかりしたディテールをもとに要所要所をちょっと脚色、これぞ井伏流の魔法。

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    2025年05月04日