【感想・ネタバレ】山椒魚のレビュー

あらすじ

老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作「山椒魚」、大空への旅の誘いを抒情的に描いた「屋根の上のサワン」ほか、「朽助のいる谷間」など12編。

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ネタバレ

ふつうの軽音部から、海と山椒魚、そしてこちらへ。
サブカルから近代日本の名作小説に繋がるのだから、色んな作品に触れるのは大事だなと。

山椒魚の話は人間の照らされたくない本性を描く、非常に本質的な部分に焦点を当てた作品。
妬み、恨み。同じ環境を共有したからこそ来る同情、好意。
一言では表せない複層的な感情が入り混じった作品でとても好きでした。

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2025年11月24日

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孤独と孤高と孤立。この作品を読むたびに、これらの違いをうまく伝えられない自分に気づく。
たった数年籠っていただけで家から出られなくなってしまった山椒魚は、外の景色を馬鹿にしてみたり、闇雲に憎んだり恨んだりする。それにしてはその目に映る景色は色鮮やかに美しく、光が満ち満ちている。そこに憧れや輝きを求めている彼はやがて嘆く。自分を省みるのではなく、ほとんど神に嘆くのだ。これは現代においても覚えがありそうだ。
最後のやりとりを読み、時々ふと考えてしまう。彼らの幸せはどこかにあった気がしてならない。

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2025年09月27日

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「山椒魚」だけで星5つけられる。
短編集の中で面白い話はいくつかあったが、「山椒魚」だけは別格なように感じた。読後感がスゴイ。2025年7月までに読んだ本で今年1番面白かった。

「山椒魚」は以前から気になっており、井伏鱒二の本は今回初めて読んだが、なんとなく独特な雰囲気が伝わった。特に作中のさまざまな地方の方言や、余韻のある読後感がすごかった。終わり方が独特なので、「え、ここで終わるの?」という終わり方のやつも多かった。長編の一章しか読めてない感覚。

好きな作品をメモっておく
「山椒魚」
「屋根の上のスワン」
「夜ふけと梅の花」
「寒山拾得」

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2025年07月17日

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内容云々よりもただただ作者の文章が好きすぎる。
いい意味で庶民感覚のある素朴な風景の描写が好きです。
物語系に疲れた人にぜひ読んでほしいです。
内容でいえば「へんろう宿」「女人来訪」「寒山拾得」が特に好きです。
1/28追記 「屋根の上のサワン」「岬の風景」も大好きです。作者の文章にはかわいらしい、くすっと微笑んでしまう所があり、素朴な描写に加えてそうした点が好きなのかなと思います。

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2024年11月29日

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山椒魚。山椒魚は悲しんだ。から始まるわけだけれども最後のかえるの台詞を受けての山椒魚の気持ちがわからなくて、これ国語のテストに出たら0点だっただろうな。現在46歳。

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2024年08月09日

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なぜいま井伏鱒二を読もうと思ったのか、それが全然思い出せない。
2、3ヶ月まえに青木南八との交流をテーマにした「鯉」を読んだけれど、この『山椒魚』はそれより随分前から積読されていたから、「鯉」を読む前から何かが気になっていたのだろうと思う。それが一体何だったのか。

ただ何となく思うのは、何か「手触り」のある小説を読みたかったのではないかということだ。
歳をとって小説が読めなくなってきた。
原因はよく分からないけれど「世界を立ち上げる力」が弱くなってきたんじゃないかという気がする。
物語を読んでも昔のように世界が現れてこない。だから最初から確かな世界が描かれている、そんな小説を読みたかったのではないだろうか。

井伏鱒二の小説はその点で非常に優れているように思う。山椒魚にせよ、鯉にせよ、サワンにせよ、あるいは朽助にせよ、彼が住んでいる谷間にせよ、そこに描かれているものが、何か固形の重みを持って感じることができる気がする
だから書かれていることが分からなくても読むことができるのではないか。

そんな気がした。

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2024年03月13日

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井伏鱒二の懐の大きな文章が堪能できる短編集。ストーリーとか小説の意味とか関係ないというのは乱暴すぎるかもしれないけどとある視点で絵画的に世界を優しく切り取るというようなふうに感じる。その結果「これは何を言いたいんだろう」という感想を持ってしまうものもあるけど、それが世界というものかもしれない。
代表作とされる山椒魚はそんな観察が浮き出る印象。朽助のいる谷間はストーリー感が強めに出る印象。屋根の上のサワンは全体的なバランスのよさを感じた。そのほか、へんろう宿、掛け持ち、女人来訪が印象に残った。女人来訪の文章は面白すぎる。大空の鷲はすごく実験的な作りの小説のようにも思えるけど語り口は井伏鱒二的で不思議な感触。

女人来訪の一番印象に残った部分。
「あなたも岡アイコさんも、どちらも愚劣です。不自然なロマンスはむしろ猥褻です。あなたは榛名山の譬え話で、ふんわりしてしまったんでしょう?」彼女はそれから笛の音に似た声でピイという声をあげて泣き出した。

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2023年06月23日

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 井伏さんは人も動物も、ユーモアと切なさの入り混じった視線で見つめているのだろうなと、そんな風に感じさせる短編集だった。
 収録作の内だいたいの作品で主人公は旅に出ている。井伏さんは旅が好きだったのだろうか。旅情が良いアクセントになっている。

 ベストは「屋根の上のサワン」。空という名の自由を渇望する鳥のサワンと、サワンの気持ちが痛いほど分かりつつ、迫る別れを淋しく感じる想いに葛藤する「わたし」の姿に心揺さぶられた。文体が敬体なのも好みだ。

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2025年09月05日

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小さなプライドを持ち、虚勢を張りながらいきていく。でもやっぱり最後はそこを捨てていかなければならない。そんなことを、気づかせてくれる作品

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2025年01月29日

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改めて読んでみた。表題作は幾通りもの解釈ができそう。『掛け持ち』が最高。屋根の上のサワンも好きです。自然描写が細かいとおもったら、作者は絵をよくする人だったそうなので納得。太宰治が有名だが、多くの現代作家も憧れる人らしい。新潮文庫は表紙が安西水丸。すてきです。

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2024年12月31日

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滑稽な
ほのぼの
朗らか
ユーモア
庶民的な
生き生き
可笑しみ
飄々

↑読んでいて思い付いた言葉
文章に愛嬌があって
本人の性格が出てる気がする

古本トワサンにて購入

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2024年02月06日

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近代文学って慣れてないと読みにくいイメージだけど井伏の文章はスラスラ読めた。掛持ち、寒山拾得、夜ふけと梅の花、女人来訪、辺りが面白かった。主人公の語尾が「〜だぜ」なのもシャレてて好きだな。全体的にフワフワしてる感じとかも他の作家とは違った魅力の一つなのかも。

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2024年02月04日

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12の短編集であり、一気に読めた。
方言や見慣れない表現に難しさもあるものの、それぞれ描かれる風景や心情に惹き込まれた。
共通して動植物が印象を深め、各編に一貫性を感じさせる。

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2024年01月08日

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作品の出来不出来が激しいように思えた。旅する主人公と、その旅先の人々との交流を描いた話が多かったが、同じ型の作品を並べるとこうなってしまうのかもしれない。
似た作家として、漫画家のつげ義春を思い出した。特に「言葉について」などは彼の「紅い花」とよく似ている気がする。比較して読んでみるのも面白いかもしれない。(じぶんはやらないが)

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2023年01月25日

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ネタバレ

読む態度について反省している。
僕は集中力がつづくほうではないので、ちょこちょこ読んでは一度SNSを開いたりと、そうやって本を読んでいくことがおおい。しかし井伏鱒二のこの小説はそうやって読もうとしても、続きが頭に入ってこない。前半の何作か、そうやって意味を取りこぼしたまま、物語を終わらせてしまった。

五作目の『掛け持ち』から、一作品読み終わるまでは本を離さないと決めて取り掛かった。
今回、読書をちゃんとし終えられたのは後半の四作だけだったと思う。
しかしちゃんと読めた自信のある作品はどれもこれも、読み終えて作品世界から抜け出したときの自分のいる場所がなんだかおもしろいような気がした。

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2021年06月06日

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表題作を含むいくつか作品を除けば、その場の空気感を描いたスケッチ的作品が多い。いずれも短すぎて散漫な印象は拭えず。

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2025年11月11日

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読んでると、なかなか映像として浮かびにくい文章だった。作家との相性が悪いのかな?と一瞬思ったけど、屋根の上のサワンとか夜ふけと梅の花とかはめっちゃ入り込めるしちょっと泣いちゃいそうになったりもしたりして、なんだろこの魅力。それにしたって古典の中でも文体がすごく独特な気はする。井伏節ってやつなのかな。どちらにせよおばちゃん、おばあちゃんになったときまで本取っておいて、何回めたも読み返したくなる系の作品だった。

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2025年07月19日

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井伏鱒二の短編集

山椒魚は示唆していることがわかりやすかったですが、そのほかの作品はストーリーだったり情景などを楽しむ感じかな

余韻のある終わり方が特徴よね

朽助のいる谷間
掛持ち
大空の鷲
上記の作品が面白かったです。

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2025年06月02日

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井伏鱒二氏による短編集
はっきり言うとそこまで読みやすくはないし、わかりやすい文章ではない。しかし、文章の表現、言い回しの面白さと丁寧さは抜群であり、ある程度教養のある読み手であれば場面を想像することもできる。
また、登場するものも人間でないながらも、人間よりも生々しく人間らしいものやどこか偏屈でネジが足りていない人々など個性豊かな(もはや狂気と言ってもいいかもしれないものもいるが)ものが多い。
ちなみにわたしは通学中の電車内で読んでいたので、話がよく飛び読み直すことが多々あった。なので、読む際は短編集ごとに一気に読むことを薦める。
なお、軽いネタバレになるが、短編同士に直接の繋がりはないのでどれから読んでもいいと思う。ただ、やはり彼の作風を知るためにはまずは山椒魚を読むべきだろう

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2025年05月18日

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読みやすくはないし、単調な雰囲気もあるが、絵が浮かぶ文章で、ところどころ引っかかるところもある。正直そこまで好きな作風ではないが、どこか心に残り、ふと思い出すことになりそうな気もする。解説にもあったがたしかに老人の登場が多い。

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2025年04月20日

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言葉を発することはつねに、意味を裏切ることと同じだな、と思った。
心にある本当を表すことはできないから、すれ違いや、諍いが生じるのかもしれない。

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2024年08月27日

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短編集で、タイトルになっている『山椒魚』は、短い(10ページと少し)ですし、読後に山椒魚とカエルのやりとりや関係性に考えを巡らせることができてとてもよかったです。
自然の描写がきれいだなと思いました。

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2024年08月20日

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目が滑って読めたもんじゃない。
初井伏鱒二だったのだけれど、特色も魅力も掴むことができず。小説の中に突然2コマ漫画が乱入してくるような。意味のあることを言ってるんだけど意味がまるでないような。もう少し私の経験値が必要なのは明らかなので、それまで積読。

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2024年03月23日

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時代物の文学作品を読むのは厳しいな

表題作を含めて12の短編集だが、山椒魚を読んだあとは1番少ないページ数の「へんろう宿」を読んで終わりにした

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2024年01月29日

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18年ぶりくらいに読んだ。

最後の蛙の台詞の「てにをは」が気になって仕方がない。

「今でもべつにおまえのことを怒ってはいないんだ。」

「今で『は』」じゃなくて?
現在の蛙の心境として『は』よりも『も』の方が適当なのだろうか、としばらく考えていた。

完全なるフィクションなのに、心に期する感情は誰もが共感できるほどの圧倒的なリアリティー。

この作品が名作として伝わっていくなら、僕はこの国が好きだ。

2016.5.11

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2023年09月28日

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初めての伊伏鱒二でした。表題作の「山椒魚」が一番好きかな。これ彼のデビュー作なんですね。天才だ...。

全体通しては、大きな山が何もないのに文章が上手いから話が先に進んでいく...という印象。いや、勿論山はあるんですけど、いつの間にか文章が終わっている。結構突然ラストが来るので余計そう感じるのかも。後書きでも評されてましたが「ストイック」「大袈裟を嫌う」というのがこの人の文章を言い表しているかな、と思いました。
割と初期の作品が多そう?なので、中期、後期の作品も読んでみたいです。

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2022年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

夜ふけと梅の花に出てくるセリフで、
「僕は、酔えば酔うほどしっかりする。」
というセリフがあるんだけど、このセリフが個人的には1番好き。酔っ払った時に言ってみようと思う。
あとは山椒魚グッズが欲しくなった。

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2021年08月20日

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詩を読んでいるかのような文章。
ユーモアのセンスの良さ。
心地よい文体。
また、読み返そうと思う作品。

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2020年09月18日

Posted by ブクログ

奇妙な短編集。

表題の山椒魚をひさかたぶりに読みたく、手に取る。

山椒魚とはまさにひきこもりである。
やがて無為自閉へ至るが。

主人公は誰もが、「常識人」風である。(『山椒魚』は除く)

自然描写の精緻さは言わずもがな、だけれども、自然描写の影に、心性の描写は限定的だ。

従って、「察する」という作業を読書に強いる文体なのかもしれない。

これが、精緻なバランスというものだろうか。

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2020年06月13日

Posted by ブクログ

辻原登の本の中で、井伏とコルタサル二つの「山椒魚」の読み比べを進めていたので再読。まだ、コルタサルな読んでないが。

今では、井伏氏の描く日常がピンとこないので作品を理解するのに苦労するものもあったが、この短編集はバラエティもあり、サスペンス風のもの、掛け合い漫才風のもの、動物もの色々あり楽しめました。あまり名作だからと構えて読まないほうがいい。

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2017年07月02日

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