あらすじ
老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作「山椒魚」、大空への旅の誘いを抒情的に描いた「屋根の上のサワン」ほか、「朽助のいる谷間」など12編。
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Posted by ブクログ
ふつうの軽音部から、海と山椒魚、そしてこちらへ。
サブカルから近代日本の名作小説に繋がるのだから、色んな作品に触れるのは大事だなと。
山椒魚の話は人間の照らされたくない本性を描く、非常に本質的な部分に焦点を当てた作品。
妬み、恨み。同じ環境を共有したからこそ来る同情、好意。
一言では表せない複層的な感情が入り混じった作品でとても好きでした。
Posted by ブクログ
読む態度について反省している。
僕は集中力がつづくほうではないので、ちょこちょこ読んでは一度SNSを開いたりと、そうやって本を読んでいくことがおおい。しかし井伏鱒二のこの小説はそうやって読もうとしても、続きが頭に入ってこない。前半の何作か、そうやって意味を取りこぼしたまま、物語を終わらせてしまった。
五作目の『掛け持ち』から、一作品読み終わるまでは本を離さないと決めて取り掛かった。
今回、読書をちゃんとし終えられたのは後半の四作だけだったと思う。
しかしちゃんと読めた自信のある作品はどれもこれも、読み終えて作品世界から抜け出したときの自分のいる場所がなんだかおもしろいような気がした。