井伏鱒二のレビュー一覧
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昔読んだはずのオットセイの脱出劇が、どんなんだったかなーと思って再読。記憶にあった感じより脱出劇は短くて、後半4・5部はサーカスいろいろだった。
読んでみて思ったこと
・登場する動物(と人間)たちがイキイキしてやっぱりわくわくするな~ということ。どこを切り取っても自分だけの絵ができあがるような。人間でも動物でも同じ所、人間と視点が全然違う所、両方を感じながら、場面を想像して読ませる面白さは変わっていなかった。それって今更だけど結構すごいと思う。
・小学校中級以上対象とあったけど、欧米文化の下敷きがないと意味が分からん部分あるかなーと。「ズングリムックリ・デッカク」(マザーグース)とか、「日 -
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戦後間もない悲惨な社会生活を背景にしつつも、どこかユーモアを湛えている井伏鱒二の短編2編。
『搖拝隊長』は元陸軍中尉で任務中の事故が原因で頭がおかしくなった岡崎悠一を中心に、周囲の皆が彼の言動に困惑・翻弄されながらも、戦中と戦後の分かち難い社会思想の断絶をユーモアを交えながら描いた作品です。
何と言ってもこの作品の可笑しみは、いまだ戦争中だと錯誤している岡崎元中尉が突発的に繰り出す軍隊号令で、たまたま周囲にいた人間が否応なく巻き込まれてしまう様がとても面白かったです。狂人の言うことだとわかってはいても、これに面倒くさいながらも波風立てず従うか、あるいは逃げ出すか、または彼の自宅へ連れ戻すかの -
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1937年(昭和12年)。
訳詩が素晴らしい。孟浩然『春暁』を直訳と井伏訳で比較すると(カッコ内が井伏訳)、
春眠暁を覚えず
(ハルノネザメノウツツデ聞ケバ)
処々啼鳥を聞く
(トリノナクネデ目ガサメマシタ)
夜来風雨の声
(ヨルノアラシニ雨マジリ)
花落つること知んぬ多少ぞ
(散ッタ木ノ花イカホドバカリ)
直訳の格調高さも良いけれども、井伏訳の大らかな自然体も捨てがたい。
そして何と言っても、于武陵『勧酒』の訳の完成度は一頭地を抜いている。いつか自分がこの世に別れを告げる時もこんなふうに飄々と去っていけたらいいな、なんて思ったりする。
君に勧める金屈巵(きんくっし)
(コノサカ -
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堅気な商売のようだが実は江戸前の粋な世界に浸りながら、駅前旅館の番頭におさまる主人公の、活き活きとした立ちまわりを回想体の文章により表現した著者ならではの面白小説。
まず、その語り口が「古き良き」昭和の旅館とその周辺を再現していて面白い。べらんめい調だったのが、語り調になったり、旅館の隠語がみだり飛んだりと変幻自在だ。
ひとつの話も脱線して別の話になっていきそれがまた面白く、実はさっきの話の前振り話だったのかと戻ってくることもしばしば。なかなかついていくのも大変です。(笑)
番頭仲間でつるんだりとぼけたりする話や、旅館の泊まり客の様子も面白いが、主人公の派手だが結局はしぼむ淡い恋愛模様もそこは