Posted by ブクログ
2013年12月25日
今回も心に沁み入る話でした。泣かないつもりで読んでいましたが、だめでしたね…じわじわときて、最後の最後にやられました。要ティッシュでした。
とても優しい人々が登場します。じっくりじんわりふくらんでいく切ない想い、そしてそれが「片恋」だからこそ尚更その気持ちに共感してしまいました。
自分の性的指向が...続きを読む周囲に受け入れられないと気付いて、「死にたい」とまで思いつめた高校生の文人を救ったのは、ネットで知り合ったaltair。同性しか好きになれないことを自覚した文人が、その手の掲示板で趣味の天体観測の話をしたり、悩みを打ち明けていた唯一の相手です。altairもまた自分のセクシュアリティと社会生活との折り合いをつけるのに苦労しているようで、文人は彼の優しさに癒されとても惹かれていきます。
3年間のHNだけでの交流が、文人の突然のSOSで思いがけなく顔を合わせることになって、互いに惹かれあうものの絶対に好きになってはいけない運命だと知ることになる二人。
そこから文人の想いはずーーっと停滞していきます。前に進むこともできなければ、消すこともできない苦しい状態がずっとずっと続くのです。
会わなければ辛いだけなのに、会わなくちゃいけない状況が度重なっていって、どんどん忘れられなくなってしまう悪循環。
片想いの切なさに、どっぷり浸ってしまいました…
想いが相手の新開にもちゃんとあることが伝わってくるんですよね。そして、新開もまたその気持ちを封じ込めようとしているのがわかるのが、また切ないです。互いにもう会わないようにと決意するけれど、やはり想いは心から消えなくて、会わないと思っていてもまためぐり合ってしまうことに。
vegaとaltair。この使い方もものすごくぴったりでよかったです。天の川に隔てられた織姫と彦星に二人の姿が重なっていて、思い通りに会えないところなんかまさしくそのもので。
自分達の幸せだけのために自我を通したりしないのも、家族や姉に対する深い思いやりが感じられて胸がいっぱいになりました。本当は全て投げ出して、みんなを傷つけても愛する人と一緒になりたいはずなのに、ぐっと我慢してあふれる気持ちを押さえ込んだ文人と、そして新開の気持ちを思うと切なくて切なくて…
小物の使い方もすごく印象的でした!
特に、万年筆と置いてきた傘は泣けました。
切なくて泣けるけど、その分ちゃんとロマンティックなところもあって、とても「恋愛」というものを堪能できた気分にさせられました。
これはまた読み返してしまうでしょうね。