冲方丁の作品一覧
「冲方丁」の「血契のアナスタシア」「光圀伝」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「冲方丁」の「血契のアナスタシア」「光圀伝」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
早稲田大学第一文学部中退。1996年『黒い季節』でデビュー。『マルドゥック・スクランブル』、『天地明察』、『蒼穹のファフナー』、『光圀伝』など多数の作品を手がける。代表作『マルドゥック・スクランブル』での日本SF大賞受賞をはじめ他の作品でも多くの賞を受賞している。
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Posted by ブクログ
「たとえ君主が人品愚劣であっても、武力でこれを誅し、自ら君主に成り代わろうとしてはいけない。」これは朱子学の考え方の一つである。
そもそも、授時暦が間違っているという発想をすること自体、とても難しいことだと思う。多くの天才たちが集まり、長い年月をかけて作り上げたものに対して、「本当にこれが正しいのか」と疑うことができるのも、一つの才能なのだと思う。そして、間違いに気づくだけではなく、それを超えるものを自ら作り上げることもまた凄いことだ。
歴史を動かし、後世に名を残す人たちは、当たり前とされているものを疑い、それを実現するために最後までやり遂げる力を持っているのだと思う。しかし、それは決して一人だけで成し遂げられるものではなく、周囲の人たちの協力があってこそ実現できる。そして、その協力を得るためには、人柄も非常に重要なのだと感じた。それは、渋川春海が誰に対しても低姿勢で接する姿からもよく分かる。
若い頃の春海は、決して精神的に安定しているとは言い難く、予想外のことが起こるたびに狼狽えていた。しかし、大和暦を上奏する頃には、大名の器を見極めたり、入念な根回しをしたりすることで、落ち着いて物事に対処できるようになっている。その姿からは、春海が暦を作ることだけでなく、人としても成長していったことが感じられた。
最後に、春海と関孝和が一緒に江戸城の城内を見る場面がある。もしこれが、宣明暦に挑み始めたもっと早い段階であったなら、二人はさらに多くの人に、革命的ともいえる新しい世の中を見せることができたのではないかと思ってしまう。
しかし、それも含めて人生なのだと思う。何かを成し遂げるには、それぞれの人にそれぞれの時期があり、すべてが思い通りに進むわけではない。それでも、周囲の人々との出会いや協力を得ながら、自分の信じるものを追い続けた春海の姿が、この作品を通して強く印象に残った。
Posted by ブクログ
下巻もとても良かった。
長い年月をかけて観測と計算を積み重ね、ようやく進んだと思ったところで何度も壁にぶつかる。それでも諦めず、間違っていたならまた考え直して前へ進む春海の姿が印象に残った。
特に、ここまで順調に進んでいた授時暦が予報を外したところはかなり苦しかった。周囲の人を失いながら、それでも積み上げてきたものまで崩れる。そこからまた立ち上がっていくところには、学ぶものも多かった。
そして最後の関との出会いは強烈だった。
ずっと直接会わず、算術の問題と解答だけでつながってきた二人だからこそ、最後に実際に会う場面がより印象に残った。
一方で、最後の「天地明察」の章は、それまでの積み上げに比べると少し展開が早く感じた。春海が自分の暦に辿り着き、改暦を成し遂げるまでをもう少しじっくり読みたかった気もする。
春海自身も、歳を重ねたからなのか、急にかなり落ち着いた人物になっていて、根回しや先読み、幕府の動きまで把握しているような振る舞いをする。その成長に少しついていけない感覚もあった。ただ、そこはこの作品の本質ではないので、大きく気になるほどではなかった。
それでも、諦めないこと、学び続けること、間違っていたらまた考え直すこと。物語として面白かっただけでなく、学ぶところも多い作品だった。
10段階評価: 8.5点