暑い夏は『雪国』ですよねー。悲しいほど涼しいです!
新潮文庫の100冊に第一回(1976年/昭和51年)から選ばれているだけあって、さすがのおもしろさです。
なぜ川端康成さんなのか?ちょっと長いけど説明させてください。プレミアムカバー欲しさじゃないですよ。
以前わたしが「日本文学案内」として読んだ、東京在住のチェコ人作家で日本文学研究者のアンナ・ツィマさん『シブヤで目覚めて』が選書のきっかけです。
アンナさんは『シブヤで目覚めて』で、新感覚派の作家「川下清丸」を創りだし、彼の短編小説を作中にチェコ語で書きました。
この短編のモチーフのひとつは島崎藤村のスキャンダルです。一方、文章...続きを読む の参考にしたのが、川下清丸の「友人」である川端さんの、チェコ語に翻訳された小説だったそうです。
わたしは、同じ新感覚派である「川下清丸」(日本語訳です)と川端さんを比べてみたいと、軽い気持ちで読んだのです。
レベチ! テーマが異なるのもあるかもしれませんが、アンナさんには申し訳ないけど、違いますねー。
この『雪国』は、絵画のような、日本画のような印象です。
絵筆の一筆一筆が、文章の一文一文となり、遠近も色鮮やかに、一枚の絵のようにえがかれています。
タイトルは『雪国』で冬のイメージ強めですが、日本の四季と人情がていねいに書かれています。
だから、この一冊は絵画を鑑賞するように読めばいいのかなと思いました。
そんなことを思ったのはよいけれど、わたし、絵画鑑賞ってどうしたらいいのか分かんなかったー。 (T_T)
選んだ文庫本は、読者を手厚くサポートしてくれています。注釈、三本の解説、川端さんの年譜も付いています。
なかでも、郡司勝義さんの「注釈」には助けられました。
川端さんが自分の趣味嗜好と文学性を一致させていく「独特のキーワード」があることを教えてもらいました。ほんと、文章中に繰り返される「独特のキーワード」にびっくりです。
あるいは、川端さんの「肌」への強い思いから、「人肌」や肌触りの織物「縮(ちぢみ)」などに感じる「独特の感性」にも気づかされました。ありがとう、郡司さん!
これらの言葉たちは、絵画のような小説にあって、輪郭を描き出しているようです。
そこに駒子と葉子が紅の色彩を、情景描写が背景を与えていきます。
駒子さん、葉子さんとくればもう一人、島村さんです。物語のなかで、大切なひとです。
解説その二で伊藤整さんが、島村について書かれています(昭和22年7月)。
「島村は決して情人とか女好きという存在ではなく、美しく鋭いものの秤である。」(p198)
島村は、美なるものを読者に可視化してくれるセンサーのようです。
いろいろな感じ方があると思います。
わたしは島村を、絵画の世界に入り込み、好きに動きながら、美を照らし出し、味わう「妖精さん」のように思いました。(笑)
もうひとつ、解説に納得の情報がありました。解説その三の堀江敏幸さんです(令和4年4月)。
それによれば、『雪国』は一つ時の作品として書き下ろされたものではないようです。
少しずつ雑誌に発表され、幾多の推敲、追加、改稿を経て完成したようです。
最初の『夕景色の鏡』(文藝春秋、昭和10年1月号)からはじまり、昭和46年に牧羊社版「定本」として完成したそうです。川端さんがお亡くなりなる前の年です。
それを知り、絵画に固執する?わたしの頭は、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』を思い浮かべてしまします。
この小説は何回でも、どこから読んでも楽しく読めるように思います。名画?とはそのようなものではないでしょうか。