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一高生時代の〈美しい旅の踊子との出会い〉以来、伊豆は著者にとって第二の故郷となった。青春の日々をすごした伊豆を舞台とする大正から昭和初期の短篇小説と随筆を集成。小説は代表作「伊豆の踊子」ほか「伊豆の帰り」など七篇、随筆は「伊豆序説」「湯ヶ島温泉」「温泉女景色」「伊豆の思い出」など二十五篇を収録する。〈解説〉川端香男里
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Posted by ブクログ
伊豆旅行のお供にぴったりの1冊だった。 竹西寛子は『川端康成 人と作品』で、「それらの作品を観光小説風に扱う冒瀆はまことに耐え難い。」と書いてはいるが、こちらのアンソロジーは「伊豆へ旅するひとにも 伊豆を旅したひとにも 伊豆の旅を想う人にも なつかしい愉しい本」。 名作のもととなったエピソードが...続きを読む多く読めて面白い。たとえば『伊豆の踊子』で踊子が「私」を評する「いい人」という言葉について。私たちは「いい人どまり」などと言うように、「いい人」をあまり字面どおりに取れなくなっている。孤児根性をこじらせていた川端康成はこの「いい人」という言葉に心から救われたという。
4月のGuruGuruBooks読書会で使用 伊豆の踊子を課題図書にしたので、伊豆の踊子を読むからにはセットで読みたいこの本の中からも、いろいろと紹介をして読書会を進めた。 担当より
著者の伊豆にまつわる随想や掌編小説を集めたもの。大正から昭和初期にかけた伊豆の様子が偲ばれる。図らずも、伊豆の踊子を再読。また、「湯にもいろんな肌のあることは、女と同じである」は蓋し至言か。
川端作品はいくつか読んだけど、有名どころの雪国は嗜好にあったけれど、伊豆の踊子の良さは実はさっぱり見いだせなかった。 この伊豆の旅には、川端さんが長年、第二の家の様に逗留した湯ヶ島の湯本館での滞在記に近いものなど、伊豆における文豪の素顔も垣間見れる短編集となっていて、ちょっと面白い。 川端ファンな...続きを読むら、同じ過ごし方をしてみたくなるかもしれない、るるぶ前の観光本といった趣。 伊豆序説は、そのまま数ページで伊豆の紹介文。 伊豆温泉記は、昔の仲居さんのちょっと商売女的な様子(お客と混浴したり)や、湯質、湯ヶ島以外の伊豆の温泉、文壇友人の来訪した際の思い出など。 正月三が日から、伊豆の帰りまでは小説。 正月三が日は、伊豆の温泉に旅行に来た二組の夫婦の心の機微の話。太宰治が女性の気持ちがよくわかると思っていたのと同じくらい、川端さんはあまり女性の気持ちには敏感でないと思っていたけど、この初対面に近い妻同士、しかも片やおおらかなタイプで、もう一方はなよっとした弱げで、ちょっと女子受けは悪そうなタイプと違う組み合わせの牽制とは違うやりとりは、リアル。 旅によくある、リーダーシップのとり具合による不満が出たり、夫婦2組混浴による相手の伴侶の見極めなどによって、夫婦の心の関係に変化が生じる話。 思い出したのが、一度、仕事の懇親で温泉旅行があった。その時、一緒に旅する同僚女が嫌いで、とても一緒に入る気にはならず、何か理由をつけて、時差で一人で入った覚えがある。裸の付き合いっていうのは、誰とでもできるわけじゃないよね。 椿は、川端を顔見知りの客として信頼し、残したご飯を食べていた貧しい仲居の女の子の話。その子に、上から目線で、そんなことをする君を愛しく思う的な手紙を書いたり、彼女の出身の村を見に行く話。ちょっと、後の川端のフェチ的な部分が見え、みずうみなどほど浄化されてなく、少し気持ち悪い。 夏の靴は、感化院に来てる(最後にわかる)女の子が、馬車のただ乗りをしようとして、それを最初は阻止しようとする馬車屋との丁々発止の闘い。うんざりして、もう乗せようとすると、それを返って、哀れみの様に受け取り嫌がり出す女の子。 数ページの作品で、タイトルの意味など、色々含むところはあるけれど、あまり爽快な気分になるようなその内容ではない。 有難うは、セリフとしては「ありがとう」しかない、礼儀正しいバスの運転手と、そのバスに乗り合わせた娘を都会へ売りに行く母親の親子の話。所謂、ハッピーエンドなのだが、何も問題は解決されておらず、先送りされただけのような読みもできる。ありがとうが発する言葉の殆どである人も、怒る時があり、その影響は大きいといったことか。それとも、善人が運をもたらし、他人にも幸運をもたらすという冒頭の母親の発言に近いものがテーマだろうか。 処女の祈りは、集落の墓地から石が転げ落ちるのを見て、厄払い的に、処女を集めて笑わせるというちょっと気持ち悪い話。 伊豆の帰りは、後の伊豆の思い出に書いているが、それに近い元日記があり、川端との婚約を解消した最初の恋人を思い出させる(しかも幸せに生きていたらこうなっただろうという美化した姿)女性が旦那らしき人といるのを電車で目撃するという話。こっちは、先方の幸せそうなのを喜んでいるのに、目をそらしているらしき態度に、段々と悲しくなるという話。最初は、旅好きな川端さんらしく、電車に乗ると、その地での淡い恋は泡沫の様に、電車にのっていくうちに忘れていくというスタート。それから、忘れられない女の話になり、その人?との会合を経て、それを忘れるために前の地、伊豆の仲居の女の子を思い出そうとするが、過去の人の面影が強く、思い出せないというような話。 伊豆の思い出は、エッセイで、病気療養に来ていた梶井基次郎の話が多い。その他に、印象的だったのは2文に分けて引用した、伊豆の踊子に対する自己分析。伊豆の踊子一家とのその後の文通の様子や、踊子姉夫婦が病気に悩んでいたことを「伊豆の踊子」に書くべきだったかを未だに逡巡していて、かつそれをここに告白すべきかをも迷っていることなど、「伊豆の踊子」の背景もしれるものとなっている。 雪国の方が好きなので、雪国のこういった本もあれば良かったのにと思った。
「伊豆へ旅するひとにも伊豆を旅したひとにも伊豆の旅を想う人にもなつかしい愉しい本」と編集者の方が結論づけたことに同意です。 今回は、伊豆旅行の道中で読み出し、本文中の美しい自然描写を実感。2月に関わらず、河津桜と温かい日差しに迎えられて、まさに「美しく晴れ渡った伊豆の小春日和」でした。 偶然にも...続きを読む川端氏が「伊豆の踊子」を書いた二十八歳になって、幼い頃に比べてじんわりと文章を味わえるようになって感慨深い。 ただし、「椿」に書かれているように、「少年の夢みたいな」赤裸々な部分は、表現が豊かすぎるが故に恐ろしくも感じます。また、その感覚を知りながら「伊豆の踊子」を読むと違う手触りがします。 「六月の町の女は 、さっとゆでた野菜のように美しい 。」くらいは可愛いけれど。
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