【感想・ネタバレ】シェイクスピア全集 ハムレットのレビュー

あらすじ

滑稽、悲哀、苦悩、歓喜、陶酔……。奇蹟としか言いようのない深い洞察力によって人間のあらゆる感情を舞台の上に展開させたシェイクスピアの全劇作を生きた日本語に移した名翻訳。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

根拠ないけど考えたことのまとめです。

■ハムレットの覚悟とは何だったのか?
後半に出てくる名言に「覚悟がすべて」という言葉がある。何の覚悟なんだろうとずっと思ってたけど、今回の再読で「自分の行動に責任を持つ」という覚悟ではないかと思った。
主人公ハムレットには、ラストで「社会が悪いんだ! ホレイショー暴れてくれ!」と従者のホレイショーに頼む選択肢があったかもしれない。そうじゃなくても、「俺可哀想だから一緒に死のうよホレイショー」と言う展開もあったかもしれない。
でもハムレットはそうしなかった。ホレイショーには「生きろ」と言った。
自分の不幸に他人を巻きこまない、という態度は、ハムレットがこの物語を通して学んだことなんじゃなかろうか。この話のハッピーエンド的な部分じゃなかろうか。


■復讐は必要だったのか?
上記の考え方を元に想像していくと、復讐の必然性が気になってきた。
ハムレットの父は亡霊になった後、息子ハムレットに告げた。「自分の弟であるクローディアスが自分を殺したのだ」と。
だからクローディアスに復讐しろと言った。
もちろん、殺したのは悪い。被害者であるハムレットの父がブチギレるのは当然。
でも現代人の私の安直な考えでは、本当に復讐って必要? と思った。
もし仮に、ハムレット父にも何か原因があったとしたら、息子を巻きこむのは何か違くね? という気がした。
本当に落ち度はなかったのか?
例えば『テンペスト』のプロスペローさんは、弟が悪者になった理由のひとつとして「自分も悪いところがあった」(政治をほったらかしにして魔法の研究に没頭した)と言っている。
ハムレット父は、自分の落ち度について考えてから復讐を命じていたんだろうか。
復讐が時代的に立派な位置付けだったとしても、ハムレット父は勢いで言ってはいないだろうか、と余計なことを考えた。


■「上の者の意見に愚直に従うな」がテーマ?
現王クローディアスの命令を素直に実行した、家臣ポローニアスや、ハムレットの友人であるローゼンクランツとギルデンスターン。この3人は亡くなった。
父親の言葉をそのまま喋る女性、オフィーリアも亡くなった。
父親の復讐の意志を継ごうとしたハムレットも同様だ。
このことから、私はこの話を「上の立場の人の意見に愚直に従うと死ぬ」劇だと考えた。
17世紀の初めごろは、現代よりもっと上下関係が厳格だったはずだ。その中でこのテーマ、だとしたら興味深い。
上の者の言うことを聞くのは大事。でも自分で判断することも忘れちゃいけない。
これは実はいつの時代でも通じる価値観だったのかもしれない。


◾️オフィーリアの自己主張について
前述の「父の言葉をそのまま喋るオフィーリア」という表現は、新潮文庫の『深読みシェイクスピア』で言及されていた内容だ。その本によると、ハムレットからの贈り物を本人に返すシーンで、オフィーリアの喋り方が「ポローニアスそっくり」なんだとか。たぶんこの場面で彼女は、父ポローニアスから事前に吹きこまれたことをそのまま喋ったんでしょう。
オフィーリアはとにかく自己主張が苦手な子のようだ。一人称もほとんど使わないんだとか。


■オフィーリアが花を配るシーンについて
そんな彼女の好きな人であるハムレットが、彼女の父を殺した。この異常事態に、彼女はどう反応する?
オフィーリアは「狂う」ことを選んだ。意味不明な言動で周囲の涙を誘う。
悲劇のヒロインのオフィーリアは、父が殺された直後、何故か楽しそうに花を配る。律儀に花言葉を教えてくれる。
しかしその花言葉、奇妙なことに皮肉が効いている。王さまやお妃さまにも、おべっか使いだの不誠実だのと容赦がないようだ。優しい彼女はどこへ行ったのだろうか。狂ってしまって悲しいな。
……本当に?


■オフィーリアは狂っていない?
彼女は本当に狂っていたのだろうか。
彼女はわざと「狂ったふり」をしたと言っても納得できる。気がする。
この物語の作者は、千の心を持つと言われるほど登場人物の感情をたくみに表現するシェイクスピア。狂気にも何か意味があるはずである。
狂った素振りをして、今まで抑えてきた本心をぶちまける。これが彼女の周囲に対する「復讐」なのかもしれない。


◾️オフィーリアの死の理由?
花を配るシーンの後、オフィーリアは水死に至るわけだけれど……。
この水死も何か理由があるんじゃなかろうか。
オフィーリアは元々「他者の言動をトレースする」性格だった。だとすればこの耐えがたい状況に対する対処方法も、普段と同じではないだろうか。
ハムレットが狂った。だから自分も狂うことにしよう。そんなふうに、ハムレットの行動をトレースした結果が、あれなんじゃなかろうか。
オフィーリアはハムレットがこの後に死ぬことを予期していて、その先の部分も含めてトレースした結果、自分も死ぬことになった……。
さすがに考えすぎだろうか。


◾️オフィーリアの「言葉」
自分の言葉を持たなかったオフィーリア。
そんな彼女が「復讐」の際、言葉の代わりに使ったのが、花言葉、歌、そして水死。
「言葉ではない言葉」によって、オフィーリアがこの後の物語を動かしていく。
そう考えると不思議な感じがある。


◾️余談 ポローニアスの性格
オフィーリアの父、ポローニアスさんはコントロールしたいタイプなのかもしれない。息子レアーティーズに「2、3アドバイスさせて」って言ってめちゃくちゃ喋ってるし。
ちょっと怖い人なのかも。


■真の主人公は「言葉」?
この話では「言葉」が独特の立ち位置を得ているように思える。
「何を読んでいるんですか?」という問い対してハムレットが「言葉、言葉、言葉」と答えるシーンが印象深い。
さらに気になるのはハムレットの父の死因。「耳に毒を注いだ」という殺し方は違和感がある。シェイクスピアの劇にはさまざまな種類の死因が出てくるが、とりわけトリッキーなのがこの死因。何でこんな奇妙なものを選んだのか。
意味がありそうだ。
「上の者の命令に愚直に従うな」がこの話の肝だとしたら、「上の者の言葉」=「耳に注がれる毒」と表現しているんじゃないだろうか。
上の者の、と限定しなくても、人が人に伝える意志を「毒」と呼んでいるのかもしれない。
この話は、登場人物の言葉の中に表の意味と裏の意味が存在している気がする。(主人公の独白が多いのもそれを象徴している印象だ)
世の中を真に支配するのは「言葉」。もしそうだとしたら、ハムレットの最期のセリフが「あとは沈黙」なのは象徴的でかっこいい。

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■本作のあらすじ
デンマークの王子ハムレットの元に、亡き父の霊が現れる。その亡霊は「私を殺した男に復讐しろ!」と告げてきて……。

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2026年08月23日

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2011年06月08日

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