流石の山口周さんの一冊。
リーダーシップ論からその根幹となるコンテキストの概念・歴史的な変遷までカバー.
●リーダーシップは受け手とのコンテキスト次第
最高の上司 / 最悪の上司の言動・発言、という調査において、
仕事を任せてくれる / 仕事を丸投げするという一見同一の”行為”がランクイン。
また仕事を任せてくれるを選んだかと思えば、”指示が明確・適格”というのも理想の上司の要件として入ってくる。
リーダーシップは”行為”ではなくコンテキスト。
●リーダーシップは”関係性”に関する概念
そもそも"ship"と名の付く概念は相手が会って成立する。friendship, partnership,
membership, leadership。その中でLeadershipだけ”優れた個による卓越した思考・行為”という神話染みた前提で語れることがあるが誤り。
能力やスキルの様に”個人の内側”に生まれるものではなく、周囲との関係性のあり方
から生まれる一種の減少であり、高度に社会的なもの。
●事実--->解釈ではない。上司の発言の前にそもそも受け手側は”この人はxxな人だ”
という解釈(コンテキスト)を有してその情報(上司の行動)を判断する。
信頼できない人、という前提があれば、同じ”任せる”であっても”丸投げ”に映る。
●人は、”都合がいい(=辻褄が合う)ナラティブ/コンテキストを生成して世界を知覚
本来、人の性格や能力は見えないものだが、過去の複数の言動から”この人はxxな人”という納得のいくナラティブを生成している。
---> ナラティブと辻褄が合わない言動を目にすると当惑する(それが自分自身のことであればidentityの崩壊につながる
--->そもそも相手が自分に対して抱いているナラティブ/コンテキストを把握しない限り適切なコミュニケーションにならない。だからそれを対面で開示/すり合わせる必要がある。
●人々は”ナラティブ”を求めている
戦後/高度経済成長期と異なり、物質的な豊かさがある程度保証された(所与の条件)となっている現代では、”次に何をするべきなのか”という目標の喪失感に苛まれている。故に、単に戦略や計画を示すリーダーではなく仕事や人生にポジティブな意味づけを与えてくれるナラティブを提供できるリーダーの元に人は集まっていく。
●ナラティブを編集する
困難が予想されるプロジェクトに対して、”名誉なこと・成長のチャンスだ”と捉える人もいれば”不運なこと・家庭と健康にとってのリスクだ”と捉えるメンバーもいる。
部下それぞれのナラティブをまずは理解する事。一方的に否定せず、尊重しながらも
組織全体が共有すべき大きなナラティブの中に統合していく必要がある。
リーダーの果たすべき役割は、部下のナラティブを読み取り、それに適切な編集を
加え、全体の文脈と響きあう物語に接続する事。
--->やらされ仕事ではなく、自ら進んで動くようになる。
--->この共鳴がない限りは遠心力が働き続けて人の心は動かない。
●リーダーの組織介入のスタイル
①指示命令:短期的にやるべきタスクを指示し、進捗をチェックするというスタイル
②ビジョン:チームの進むべき方向性を示し、”なぜそれが重要なのか”を理解させる
③関係重視:本人や家族の状況を気にかけ、人と人の情緒的な関係を築くスタイル
④民主:メンバーに意見も求め、意思決定に反映させるスタイル
⑤率先:自ら率先してタスクに取り組み、模範を示すスタイル
⑥育成:人材育成に配慮して仕事を与え、指導やFBを与えるスタイル
①:いつまでに何をやるのかを細かく指示し、進捗をつぶさにチェック
---> 言ったとおりにやれ(=即座の服従)
②:チームの進むべき方向性を示しなぜそれが重要なのかを理解させる
---> ”なぜ”を分からせる(=長期視点の提示)
③:本人や家族の状況を気にかけ、情緒的な関係・人と人の繋がりを重視する
--->まず人、次に仕事(=調和の形成)
④:メンバーから意見を吸い上げ、意思決定の際に衆知を結集させる
--->メンバーの参画(=情報の吸い上げ)
⑤:仕事の進め方を行動で示し、困難の際には自ら対応する
--->先頭に立つ(=模範の提示)
⑥:多少時間がかかっても部下の成長を優先し、相手に合わせて指導やFBを行う
---> 長期的な育成(=能力の伸長)
マネジメントは”行動”ではなく”コミュニケーション”である。上の①-⑥は全て
コミュニケーションの話。
●短期的な成果:①⑤
playing mgrに多いタイプ。自分でやった方が早いがベースにある。
事実、短期的に結果を出すならこれが有効。ただしずるずるとこのスタイルを継続
すると、イノベーションの停滞 / 人材育成の遅れ / 貢献実感の減少/メンバー離反に.
※人は自分で考えて、トライして、成功/失敗したことからより多くを学ぶ。
●リーダーは”コンテキストをマネジメント”する存在でなければならない
リーダの意図 ---> 行為・発言 --->メンバーの解釈という中で両者は相手が見えない
二重のブラインドが前提となる。そのため、メンバーがリーダーの言動をどう意味
づけるかという”解釈の土台”にまで働きかけなければならない。
マネジメントとは、業務遂行の指示命令をすることではなく、”コンテキストを
編集し意味をデザインする”という営み。コンテキストを適切に読解・編集できる
リーダは行動や発言が意図通りに解釈されやすい環境を整え、誤解による摩擦や
エネルギーの浪費を最小化することができる。
●効果的なビジョンの打ち出し(モチベの源泉となり仕事の優先度の判断の立脚点に
①ビジョンに戦略合理性があり、メンバーが共感できるものであること
②現状の延長線上に未来がない、という健全な危機感が醸成されていること
③そのビジョンを打ち出したリーダーが組織構成員から信頼されていること、が条件
---> IBMの再生に取り組んだガースナー(元ナビスコ)は最初の1年間ビジョンを
敢えて示していない。不要だと。その時点で打ち出しても誰もfollowしなかった
●リーダーシップスタイルとコンテキストの関係
①指示命令型(Directive)
■効果的なコンテキスト
部下が明確な指示を必要としている、上司が部下以上の情報や専門的知識を持って
いる、指示に従わないと重大な問題が発生する場合
■効果的でないコンテキスト
部下が創造的で自律的に仕事をしたいと思っている時、部下が十分に有能でモチベが
高い時、ある程度の失敗を許容できるとき。
②ビジョン型(Visionary)
■効果的なコンテキスト
変革や新しい方向性が求められる時、リーダーに専門性やカリスマ性があり、部下
から信頼されているとき、大きな成長や変革のビジョンを共有する必要がある時
■効果的でないコンテキスト
リーダーが信頼されていないとき、チームに自主性を尊重する文化が強すぎる時、
カリスマ性のないリーダーが大言壮語しても部下が動かないとき
③関係重視型(Affiliative)
■効果的なコンテキスト
組織の業績が安定しているとき、メンバー間の協力や調和を強化したいとき、
多様な人材をまとめ、チームワークを高めたいとき。
■効果的でないコンテキスト
業績悪化や緊急時で明確な指示や統制が必要な時、協調性だけでは成果が出ない局面
方向性の欠如が致命的な遅れに繋がる場合
④民主型(Demoocratic)
■効果的なコンテキスト
部下が有能で、専門知識や情報を共有できるとき、意見を尊重し、参画意識を高める
こと納得感のある意思決定が必要な時、専門家同士の議論や合意形成に依って革新を
促したいとき。
■効果的でないコンテキスト
緊急時で迅速な意思決定が必要な時、情報や能力が不足してるチームの場合、合議制が遅れや混乱を招く可能性がある場合
⑤率先型(pacesetting)
■効果的なコンテキスト
リーダーが専門分野のエキスパートである場合、即時の成果が求められる時、創業期
や小規模組織でリーダー自らが先頭に立つ必要がある時
■効果的でないコンテキスト
組織が拡大・複雑化しているとき、部下が指示や支援を求めているのにリーダーが
走り続ける時、リーダー個人の力に依存しすぎてチーム全体が疲弊する場合。
⑥育成型(Coaching)
■効果的なコンテキスト
部下が学びや成長に意欲的な時、長期的な能力開発を重視しているとき、次世代リーダーや人材育成プログラムを推進する場合
■効果的でないコンテキスト
部下が短期的な成果や即時の指示を求めている場合、リーダーに十分な専門性がない
場合、過度に育成に時間を割くことでスピード感が失われる場合
--->書いていて思うのは、やはりリーダーとして立つ前にある程度の専門性と実績を身に着けておく方が楽。それを欠いた状態で”management”のプロとしてある程度の水準の部下を率いていくのはかなり苦しい。逆を言えばあえて専門外の組織でMgrを
務めることで④などはmanagement skillを伸ばす上では有効か。
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●適切なタイミング(=コンテキスト)で市場に出る事
市場に一番乗りすることが常に最善な戦略にはならない。適切なタイミングで出る事。早すぎることは致命傷にもなりうる。
---> Youtubeの成功。既に動画ストリーミングサービスは複数あった。
ただYoutubeが成功した時代には、ブロードバンド回線の普及率が50%を越えた、
Flash技術の進化によってブラウザ上でスムーズな動画再生が可能に、携帯やデジカメ
による動画撮影の一般化、SNSの普及により個人が自己表現する欲求が拡大、という時代的な潮流(コンテキスト)があった。
後5年早ければ、動画は重すぎ、再生は不安定、投稿者も少ないとなっただろうし、
後5年遅ければ、Facebook / Vimeo / ニコニコ動画などに埋もれていた。
●5つのコンテキスト
①経済 ②社会・文化 ③人口動態 ④テクノロジー ⑤歴史
例⑤:現代は”500年続いた世界の西欧化プロジェクトの終焉”という変革期。それまでは常に”覇権国”がありそれが世界の主軸を作ってきていた。
15~16世紀:ポルトガルとスペインが大航海時代の覇権国として海を制した
17世紀:オランダが金融と会場交易の力を背景に黄金時代を築き、
18~19世紀:日の沈むことがない大英帝国が産業革命と海軍力で世界の覇者に君臨
20世紀:アメリカが経済・軍事・文化の面で世界の基準を形作る
--->この構図が初めて崩れつつある。これまでは覇権国が凋落し、新たな覇権国が生まれる構図だったが、アメリカが自ら”立場を降り始めた”。国際機関からの脱退もだし、自国中心主義を抱え、覇権国として世界を制する(治安を維持する)コストよりも自国に向き始めた。
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●流動性知識 / 結晶性知識
■流動性知識:推論、思考、暗記、計算などに用いられる知能。新しいテクノロジー
を用いて画期的なサービスや製品を生み出すにあたって求められる。
---> peakは20歳前後
■結晶性知識:知識や知恵、経験値、判断力など経験とともに蓄積される知能。蓄積した経験に基づいて、関係者が納得できるような落としどころや論理的な解決が難しい、利害が複雑に絡み合うような社会問題に向き合う際に求められる。
---> peakは60歳前後.
映画マイインターンもだが、シリコンバレーで口下手な創業者のアイデアをメンター訳の年長者が説明するシーンが多くあるのはこれ。非常に合理的・理想的な補完関係
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●人間の仕事は”両端”に移る
AIは過去データに基づく統計的パターンを学習しそれを再構成する仕組みで動いているので、”社会に共有された前提を疑う”とか、多数派に認められた価値判断を転換する”といった知的営為は原理的に苦手。それこそが人間にできる仕事。