野坂昭如のレビュー一覧

  • エロ事師たち
    戦争から十数年後の貧しい世の中でエロ事師という不法な商売をするスブやん以下その仲間、そして家族をめぐる話。

    結構露骨な描写をしているのに、古語を交えた関西弁のような文体で、下品にはならない。
    “狼口鯨頭”やら“竜飛虎歩”などと厳厳しく書かれたら、
    馬鹿馬鹿しいのになにか崇高なものさえ感じさせる。
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  • アメリカひじき・火垂るの墓
    私は6つの短編集のうち、火垂るの墓、アメリカひじき、死児を育てるの3つを読んだ。
    まず、火垂るの墓では、清太が死んでいく場面から始まり、戦時中への回想となるが、ひとりで最後は力もつき果てて死んでいく様子が本当に切ない…戦時中で、居候の2人にまで手が回らないのも分かるが、叔母さんの仕打ちもひどいし、ど...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    戯作調の文体だからこその、胸に訴えてくる感じがあった。涙や情けで飾らない淡白な心理描写がリアルで、どの話も心に残りました。
    餓鬼に取りつかれてしまった高志くんが、なんだか読んでてすごくつらかった…。
    あとがきで、清太くんのようにやさしくしたかったという思いを、野坂さんが持っていたと知り、涙が滲みまし...続きを読む
  • エロ事師たち
    舞台は昭和30年代後半の阪神、エロを生業とするエロ事師たちが、大衆の求めるエロを追求しながら生きて行く様が描かれている。

    内容はエロなのにのかかわらず、個性的な登場人物や、大阪弁のゆったりとした文章を中心にストーリーが展開されて行くので、よんでいてとても気持ちがいい作品でした。

    エロに飢える大衆...続きを読む
  • 東京小説
    1988年から1989年にかけて『小説現代』に連載された連作短編シリーズ。バブル景気のまっただ中、そして昭和から平成へと年号が変ったまさにその時に連載されていた作品。野坂作品でよく出てくるテーマを扱いながらどこか冷めて漂白されたような体温のない雰囲気が当時の世相を色濃く反映しているような気がする。「...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    アニメ化もされた表題作「火垂るの墓」とそれと裏表の関係にある「死児を育てる」、一種の連作である「ラ・クンパルシータ」と「プアボーイ」に野坂昭如という作家の形が色濃く表れているように感じた。生きると言うことが漂わせる臭気がここにはある。
  • エロ事師たち
    エロにまつわることならなんでも商売にしてしまうスブやん。
    ブルーフィルム、女の斡旋(今で言うデリヘル?)、乱交パーティ主催などあらゆる分野に切り込んでいくが、当の本人は仕事にのめりこむにつれて不能になっていく。

    終わりがおもしろおかしくてよかった。

    背徳感0ですがすがしい。
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    短編集になっています。
    淡々と戦時下からその後の期間を舞台に話が書かれています。
    可哀想だとか悲しいだとかよりも、
    個人的にはエグいと思いました。
    生々しくも感じられるほどに淡々とした語り口は、
    物語を鮮明に脳に流し込んできます。
    火垂るの墓はジブリ作品としても有名ですが、
    その他の話もそれに劣らぬ...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    戦後焼け跡闇市派と言うのは、サバイバーズギルトが根底にあるのだろうし、これはもう太古から日本人的なものの一つなんだろうか。実際 常に自分はいただいてるもの以上を与えてるだろうかという不安感と戦ってきた気持がするが、価値になるものを他人に与えることは難しいし、それは量ではないし質でもない。人に与えられ...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    まだ読み終わってませんが、野坂さんの独特の文体が気に入っています。ジブリの「火垂るの墓」の原作が含まれています。「火垂るの墓」は別物のような雰囲気ですが、読みながら、シーンが思い出され補完され、短い話ですが印象に強く残ります。
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    野坂さんと言えば「火垂るの墓」ですねー。アニメとは別のお話として読みましょう。個人的には「アメリカひじき」の主人公の無意識の「媚び」がグッときます。
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    子供に読ませるつもりなら、新潮文庫版は併録する短編を再考するか、ジブリの表紙を変えるかしたほうが良いと思う。
  • エロ事師たち
    わたし、先月末で67歳になりました。いえ、おめでとうはいりません。なぜこんな事を言うかと申しますと、こんな歳になってもこの本の感想を書くのははずかしくて、読んでも知らん顔しようかと思ってしまう、そのかまととぶってるいくじなさにあきれてしまうからです。

     題からも想像がつくように、文面を引用したらき...続きを読む
  • エロスの記憶 文藝春秋「オール讀物」官能的コレクション2014
  • 新編 「終戦日記」を読む
     あの戦争をどう伝えていくのか、時の経過とともに、ますます伝えることの難しさを思いながらも、幼い妹を死なせてしまった原体験を一生抱えて生きてきた著者が、戦時下の日々を記した作家や市井の人々の日記に拠りつつ自身の体験を振り返った表題作に、戦争体験に触れた関連エッセイを収録した一冊。

     著者野坂昭如は...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    平成2年ごろ、映画との比較で読んだ。
    短編集で、表題の『火垂るの墓』はわずか30ページほど。なかなか文体にも癖があり、この作品があの映画になるのかと、現ジブリの作品の完成度に驚いた。
    他の作品も、敗戦にまつわるものなのだけど、これは『火垂るの墓』の世界観とは少し異なるので、ある程度、気持ちをフラット...続きを読む
  • 終末の思想
     野坂昭如(1930。10.10~2015.12.9)著「終末の思想」、2003年脳梗塞、自宅でリハビリ中の2013.3執筆・刊行されてます。ご自分の思いを吐露した作品とお見受けしました。「質素・清貧・分を知る」といったかつての文化に思いを寄せ、「街は便利で清潔、全体に美々(びび)しくなり、人もまた...続きを読む
  • 絶筆(新潮文庫)
    野坂昭如氏が2015年末に亡くなっていた事を知った。彼の作品との出会いは、有名な火垂るの墓よりも先に「エロ事師たち」であった事は、今となっては私の黒歴史。耳や鼻やに男性器を挿入などの文章に大人の闇を除き、気持ちが悪くなったものだが、この辺は大人になった今も気持ち悪さは変わらず、自らの正常さに安堵。さ...続きを読む
  • エロ事師たち
    西川美和さんの「名作はいつもアイマイ」に出てきて、興味を持って読んでみた。
    標準語では表現できない作品だといえば、そんな気もする。
    僕は兵庫出身なので、それなりに大阪弁を使ったことはあるんだけれども、時代のせいか、地方のせいか、ちょっと知っているのと違う言葉遣いだった。
    乱行パーティが描かれていたが...続きを読む
  • エロ事師たち
    お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の美しきまぐわいやオー...続きを読む