野坂昭如のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「日本の将来について考える時、ぼくに希望は全くない」
この一文から、この本は始まります。
おそらく、こういう歯に着せぬ物言いを、できる人というのは、
今の社会では、非常に限られていると思います。
この本で、野坂氏は、食料自給率にやたらこだわっています。
「人間の一番の基本は食にある。食べることで人は生きている。(中略)
食はそれぞれの国の生き方と、つながり、そのには歴史があり伝統も息づいている」
だが、日本は、それを「捨てた」と言う。
「大事なもの」を捨てた基盤の上で、今の豊かな社会があることへの
脆弱性を危惧しているのだろう。
もし、海外からの供給がなくなったら、いとも簡単に崩壊 -
Posted by ブクログ
たたみかけるように言葉を並べて、しかもその情景がありありと目の前に浮かんでくる。独特の文体だ。
まあもちろん、戦争文学なんだから、これっぽっちも楽しくはないのだけど。
野坂昭如さんは、先日亡くなったそうだ。
父の母親や祖父が、「アメリカひじき」は正に戦後の日本の風景だったと話していたらしい。だから読んでみた。
生きるって、きれい事では片が付かない、グロテスクな行為だ。人権のじの字も無かった時代の話だ。今でも、人権は全ての人のものではない。
目次
火垂るの墓
アメリカひじき
焼土層
死児を育てる
ラ・クンパルシータ
プアボーイ
火垂るの墓で美化させすぎたから、清太を飢え死にさせて、「死児 -
Posted by ブクログ
戦争が終わった後の日本で生きることを「エロ」を通して描いた名作。エロには人間の歪さや本能、醜悪さ、そして美しさが詰まっている。他人には理解できないとされる嗜好を、共有し実現させる登場人物達は、法律で取り締まれても、その慈愛の精神は尊い。
戦時中を生き延び、その世界でしか生きられない人間が、その世界で生きることを選びとり、生きる意味を見出そうと必死にもがき続けるなか、戦争を知らない世代があっさりとその境界線を超える残酷さとそれでも知恵を使って生き延びようとする人間の覚悟を、エロを通じることでライトに、そしてストレートに伝えてくる。
人間の本能と秘事と強く生きようとする意志、生き抜く覚悟は不変のも -
Posted by ブクログ
ネタバレわたし、先月末で67歳になりました。いえ、おめでとうはいりません。なぜこんな事を言うかと申しますと、こんな歳になってもこの本の感想を書くのははずかしくて、読んでも知らん顔しようかと思ってしまう、そのかまととぶってるいくじなさにあきれてしまうからです。
題からも想像がつくように、文面を引用したらきっとネットの規制が入ってしまう文字が踊っております。でもちっともいやらしくないんです。読んでいるとふきださずにいられません、そういう自分が「おとな」になったなーと思うのです。えっ、やっぱりかまととぶってて気持ち悪い?それがこっぱずかしいのです!
直木賞の『火垂の墓』『アメリカひじき』もいいけれど -
購入済み
女性にオススメ
初めてこういった分野に足を
踏み入れてみました。
内容は総じてソフトな印象で
幸いでしたね。ノーマルな志
向の?女性向けの一冊だと思
います。 -
Posted by ブクログ
あの戦争をどう伝えていくのか、時の経過とともに、ますます伝えることの難しさを思いながらも、幼い妹を死なせてしまった原体験を一生抱えて生きてきた著者が、戦時下の日々を記した作家や市井の人々の日記に拠りつつ自身の体験を振り返った表題作に、戦争体験に触れた関連エッセイを収録した一冊。
著者野坂昭如は"焼跡闇市派"を自称していたが、無差別空襲を直接経験し、家を失い、近親者が亡くなった自分が、何とか戦争体験を伝えて行かなければならないとの使命感を生涯持ち続けた作家だったのだなと、本書を通読して強く感じさせられた。
小さい妹に食事をあげなければならないのに、つい自分が多くを