野坂昭如のレビュー一覧

  • 終末の思想

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    「日本の将来について考える時、ぼくに希望は全くない」

    この一文から、この本は始まります。

    おそらく、こういう歯に着せぬ物言いを、できる人というのは、
    今の社会では、非常に限られていると思います。

    この本で、野坂氏は、食料自給率にやたらこだわっています。

    「人間の一番の基本は食にある。食べることで人は生きている。(中略)
    食はそれぞれの国の生き方と、つながり、そのには歴史があり伝統も息づいている」

    だが、日本は、それを「捨てた」と言う。

    「大事なもの」を捨てた基盤の上で、今の豊かな社会があることへの
    脆弱性を危惧しているのだろう。
    もし、海外からの供給がなくなったら、いとも簡単に崩壊

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    2017年06月06日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    何かの本で、花村萬月が「どんな小説を読んでも泣くことはなかったが、これだけは泣きそうになった。いや、泣いてしまった」と書かれていた。私もこの作品は知っていた。アニメにもなっているのも知っていた。活字としてこの小説を実際に読んでみると読点(、)がほとんどなく、次々と言葉が数珠のように連なっていて、1文の長さも非常に長い。しかし、それが全く苦にならず、作品の世界が現在の自分の目の前に鮮明に広がって、作品の中の人物が生きて私に戦争の悲惨さを教えてくれた。

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    2018年01月20日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    たたみかけるように言葉を並べて、しかもその情景がありありと目の前に浮かんでくる。独特の文体だ。
    まあもちろん、戦争文学なんだから、これっぽっちも楽しくはないのだけど。

    野坂昭如さんは、先日亡くなったそうだ。
    父の母親や祖父が、「アメリカひじき」は正に戦後の日本の風景だったと話していたらしい。だから読んでみた。

    生きるって、きれい事では片が付かない、グロテスクな行為だ。人権のじの字も無かった時代の話だ。今でも、人権は全ての人のものではない。

    目次
    火垂るの墓
    アメリカひじき
    焼土層
    死児を育てる
    ラ・クンパルシータ
    プアボーイ

    火垂るの墓で美化させすぎたから、清太を飢え死にさせて、「死児

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    2016年01月25日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    故人となったので読みました
    火垂るの墓は映画にて初めて知ったのと号泣した思い出
    まさかの短編で映画のように泣けなかった
    死児を育てる、ラクンパルシータ、プアボーイの話しが良かった

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    2015年12月30日
  • エロ事師たち

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     エロに情熱をかける男たちの滑稽さに呆れつつも憎めなくて、ありのままの人間臭さが魅力的な小説。時代と共にコンテンツは多少変わっても、欲するエロのあり方や欲望はほとんど変わらないんだなぁと思うと情けないようなほんのり愛しいような気持ちになる。また、今回はエロを提供するエロ事師の男たちの話だったので、次は働く女側の物語が読みたくなりました。そうすると見え方が変わるだろうなぁと思う。

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    2015年12月20日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    この本は戦争を直接的には扱っていないものの、戦争小説と呼んで差支えない気がする。
    幼児、児童、青少年が戦争によって翻弄され、傷つき、けなげに、したたかに生きていくさまが、不思議な筆致で描かれる。

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    2014年09月23日
  • エロ事師たち

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    戦争が終わった後の日本で生きることを「エロ」を通して描いた名作。エロには人間の歪さや本能、醜悪さ、そして美しさが詰まっている。他人には理解できないとされる嗜好を、共有し実現させる登場人物達は、法律で取り締まれても、その慈愛の精神は尊い。
    戦時中を生き延び、その世界でしか生きられない人間が、その世界で生きることを選びとり、生きる意味を見出そうと必死にもがき続けるなか、戦争を知らない世代があっさりとその境界線を超える残酷さとそれでも知恵を使って生き延びようとする人間の覚悟を、エロを通じることでライトに、そしてストレートに伝えてくる。
    人間の本能と秘事と強く生きようとする意志、生き抜く覚悟は不変のも

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    2013年09月02日
  • エロ事師たち

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    戦争から十数年後の貧しい世の中でエロ事師という不法な商売をするスブやん以下その仲間、そして家族をめぐる話。

    結構露骨な描写をしているのに、古語を交えた関西弁のような文体で、下品にはならない。
    “狼口鯨頭”やら“竜飛虎歩”などと厳厳しく書かれたら、
    馬鹿馬鹿しいのになにか崇高なものさえ感じさせる。

    独特のリズムや哀愁、土地の雰囲気が染み込んだ文章を書けるのは羨ましい。

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    2013年04月01日
  • エロ事師たち

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    舞台は昭和30年代後半の阪神、エロを生業とするエロ事師たちが、大衆の求めるエロを追求しながら生きて行く様が描かれている。

    内容はエロなのにのかかわらず、個性的な登場人物や、大阪弁のゆったりとした文章を中心にストーリーが展開されて行くので、よんでいてとても気持ちがいい作品でした。

    エロに飢える大衆のため、警察に隠れながらエロ商材を提供する様は、エロが満ち溢れてしまっている現代を生きる我々からすると衝撃的であり、将来の日本、いや世界を憂いてしまう。

    これは現代人がエロを見つめ直すために読むべき一冊かもしれない。

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    2012年07月24日
  • 東京小説

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    1988年から1989年にかけて『小説現代』に連載された連作短編シリーズ。バブル景気のまっただ中、そして昭和から平成へと年号が変ったまさにその時に連載されていた作品。野坂作品でよく出てくるテーマを扱いながらどこか冷めて漂白されたような体温のない雰囲気が当時の世相を色濃く反映しているような気がする。「純愛篇」の乙女的なロマンチシズム漂うオチと「隅田川篇」の意表を突く着地点と物悲しい余韻が個人的にはお気に入り。

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    2012年07月03日
  • エロ事師たち

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    エロにまつわることならなんでも商売にしてしまうスブやん。
    ブルーフィルム、女の斡旋(今で言うデリヘル?)、乱交パーティ主催などあらゆる分野に切り込んでいくが、当の本人は仕事にのめりこむにつれて不能になっていく。

    終わりがおもしろおかしくてよかった。

    背徳感0ですがすがしい。

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    2012年03月04日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    まだ読み終わってませんが、野坂さんの独特の文体が気に入っています。ジブリの「火垂るの墓」の原作が含まれています。「火垂るの墓」は別物のような雰囲気ですが、読みながら、シーンが思い出され補完され、短い話ですが印象に強く残ります。

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    2009年10月04日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    野坂さんと言えば「火垂るの墓」ですねー。アニメとは別のお話として読みましょう。個人的には「アメリカひじき」の主人公の無意識の「媚び」がグッときます。

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    2009年10月04日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    全体的に、戦争の傷痕と、それでも人は自分が思うようにしか生きられないという希望と諦念を感じる。もちろん時勢や社会規範に照らして好きに生きるからこその転落や陥穽もあるのだけれども、人間簡単に変われるものでもなのだなという印象が強い。

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    2025年08月27日
  • エロトピア(1)

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    お色話
     主に陽物のちんまりとした小話、野坂はなんでこんな話をしやがるんだか、それがむしろ本職か、いや男ならば小気味よく、下卑た笑いもお茶の子さいさい、むしろをなごには解らぬ通な味。てのもまたキザなんで、では男子がをめこの話を読んでたのしいかといはれれば、それはまあ判らない。お江戸時代のオナホールなどの話もあり、くだらねえに拍車がかかる。

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    2025年03月30日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    子供に読ませるつもりなら、新潮文庫版は併録する短編を再考するか、ジブリの表紙を変えるかしたほうが良いと思う。

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    2022年09月15日
  • エロ事師たち

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    ネタバレ

    わたし、先月末で67歳になりました。いえ、おめでとうはいりません。なぜこんな事を言うかと申しますと、こんな歳になってもこの本の感想を書くのははずかしくて、読んでも知らん顔しようかと思ってしまう、そのかまととぶってるいくじなさにあきれてしまうからです。

     題からも想像がつくように、文面を引用したらきっとネットの規制が入ってしまう文字が踊っております。でもちっともいやらしくないんです。読んでいるとふきださずにいられません、そういう自分が「おとな」になったなーと思うのです。えっ、やっぱりかまととぶってて気持ち悪い?それがこっぱずかしいのです!

     直木賞の『火垂の墓』『アメリカひじき』もいいけれど

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    2021年08月22日
  • エロスの記憶 文藝春秋「オール讀物」官能的コレクション2014

    購入済み

    女性にオススメ

    初めてこういった分野に足を
    踏み入れてみました。
    内容は総じてソフトな印象で
    幸いでしたね。ノーマルな志
    向の?女性向けの一冊だと思
    います。

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    2021年02月26日
  • 新編 「終戦日記」を読む

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     あの戦争をどう伝えていくのか、時の経過とともに、ますます伝えることの難しさを思いながらも、幼い妹を死なせてしまった原体験を一生抱えて生きてきた著者が、戦時下の日々を記した作家や市井の人々の日記に拠りつつ自身の体験を振り返った表題作に、戦争体験に触れた関連エッセイを収録した一冊。

     著者野坂昭如は"焼跡闇市派"を自称していたが、無差別空襲を直接経験し、家を失い、近親者が亡くなった自分が、何とか戦争体験を伝えて行かなければならないとの使命感を生涯持ち続けた作家だったのだなと、本書を通読して強く感じさせられた。 

     小さい妹に食事をあげなければならないのに、つい自分が多くを

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    2020年08月10日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    ネタバレ

    平成2年ごろ、映画との比較で読んだ。
    短編集で、表題の『火垂るの墓』はわずか30ページほど。なかなか文体にも癖があり、この作品があの映画になるのかと、現ジブリの作品の完成度に驚いた。
    他の作品も、敗戦にまつわるものなのだけど、これは『火垂るの墓』の世界観とは少し異なるので、ある程度、気持ちをフラットにしておかないと、読めない人もいるかもしれない。

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    2020年06月17日