野坂昭如のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「死児を育てる」
どうしようもない環境下で死なせてしまった妹と、
全てがある状況下で殺してしまった娘、
でもどちらの場合も1人で幼児に向き合っていて
まずその構成が巧みすぎる…!
時系列が混ざっている文章で読み辛れ〜と思ったけどおかげで主人公のフラバの臨場感が強まったかも。
「なぜ食べ物を粗末にするのか、妹は食べる物が無かったのに」という実子への怒りと、「でも妹を死なせたのは自分」「自分の生だけを優先した」という罪悪感、それを誰にも咎められなかったせいで未消化のまま、
目の前に妹よりも遥かに恵まれた環境にいるにも関わらず、同じように夜泣きが治らない実子がいる。
「なぜ泣き止まないのか」
実 -
Posted by ブクログ
ネタバレ火垂るの墓、死児を育てる を読んで
飢餓がどんなに辛いことか現代を生きる私にはわからない。妹にあげようとしながらも自分の食欲を優先してしまったこと、空襲の恐怖から妹を置き去りにして逃げ出してしまったこと、親戚の家で冷遇に遭い泣き止まぬ妹を泣き止ませるために殴ってしまったこと。
まだ子どもであるのに、自分より更に幼い子を抱えて生きなければならず、苦しむ姿に心が痛んだ。
アニメでの火垂るの墓の描かれ方に何が意図されているかはわからないけど、清太と節子は本当によく頑張って生きたのだと思う。大人も子どもも皆自分達が、最終的には自分が、生き延びるのが精一杯な時代だったと思う。そこには綺麗ごとでは済まさ -
Posted by ブクログ
高畑勲さん監督のアニメ映画の悲しくも美しい映像から原作を手にした。
私は東京大空襲に続く、横浜・名古屋・大阪・神戸の東海道大空襲なる無差別爆撃をあまり知らなかった。
栄養失調の4歳の妹の、汗疹とノミ湿疹だらけの背中を海水で洗う優しい14歳の兄は、三ノ宮駅の構内で、他たくさんの浮浪児の死体と一緒に、駅員に葬られるのである…
著者の野坂さんは、実際に亡くした妹へのレクイエム、として火垂るの墓、を書いたよう。年齢的に兵士としては召集されず、集団疎開に行くでもない狭間の世代に入り、、生き恥を晒して生きるのが辛かったそうだ。
戦争孤児は12万人とも言われ、植民地からの引き揚げ孤児やもちろん原爆孤 -
Posted by ブクログ
先週NHKで高畑勲のジブリ作品「火垂るの墓」の制作にあたっての下準備過程を記した7冊のノートを題材にしたドキュメンタリーが放送されていた。亡くなってから東京近代美術館で高畑勲展を観に行って美術館でアニメ作家の展覧会をやることに多少違和感を感じていた。しかし「火垂るの墓」「平成狸合戦ぽんぽこ」やテレビアニメ「狼少年ケン」「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」など多くの名作を世に送った高畑勲はアニメ監督としてただ者ではないと展覧会を観て感じその後高畑勲の本も読んだ。
「火垂るの墓」の原作本は数年前購入して積読状態だったが、今週このアニメがテレビ放送されるようで昨日今日で読んだ。35ページほどの短 -
Posted by ブクログ
美術館でアニメーション作品に使用された画を観て『火垂るの墓』に関心を寄せた。アニメーション作品の雰囲気を伝える別な本にも触れたが、原案となった小説をゆっくり読んでみたくなった。そういうことで手にして読んだ。
本書は短篇集ということになる。『火垂るの墓』、『アメリカひじき』、『焼土層』、『死児を育てる』、『ラ・クンバルシータ』、『プアボーイ』の6篇が収められている。各作品、各々の味わいが在って引き込まれるが、共通項のようなモノも強く感じた。
各作品は昭和40年代前半頃(1960年代後半)に登場しているようだ。作者自身、野坂昭如は1945(昭和20)年の終戦時に15歳であったそうだ。「焼跡闇市派」 -
Posted by ブクログ
1.著者;野坂氏(2015年没)は、作家・作詞家・歌手・政治家。実母の死別後に養子に出され、2人の妹も養子となる。野坂氏は神戸で罹災し、養父母を失い、浮浪児生活を送った。上の妹を病気で、下の妹を栄養失調で亡くす。「エロ事師たち」で作家デビュー。「火垂るの墓」等で直木賞、「同心円」で吉川英治文学賞などを受賞。他に「おもちゃのチャチャチャ」で日本レコード大賞、参議院議員に当選する等、マルチ人間。
2.本書;浮浪児兄妹の餓死までを描いた短編小説。「主人公の清太(14歳)は、病弱な母の死後、妹(節子)と遠縁の未亡人宅に引取られます。実子との食事差別。清太はそれが嫌で、二人は川辺の防空壕で生活。満足な食 -
Posted by ブクログ
あなたが作家を目指しているとしましょう。
読んだ人が感動するような作品が書きたい―。
立派な動機です。
テーマも明確。
筋立ても固まりました。
もちろん、力量は十分にあります。
さあ、では、執筆に取り掛かろう。
ちょっと待ってください。
その前に、本書「エロ事師たち」を読みましょう。
打ちのめされます。
登場人物は、ブルーフィルム(ポルノ映画)の制作に勤しむ裏社会の男たち。
一筋縄ではいかない、一癖も二癖も三癖もある男ばかりです。
より過激で刺激的な作品を作ろうと、男たちは官憲の目をかいくぐりながら暗躍します。
たしかにエロい。
グロテスクでもあります。
でも、文学的な香気が確かに漂っている。 -
Posted by ブクログ
たぶん誰もが知っている「火垂るの墓」が掲載されている
野坂昭如の書いた短編集がギュッと凝縮された本。
最初は改行とか句読点がすごく読み辛くて、これ全部読み切れるかな…と思ってたけど
なんだかんだで読めた、というより気付いたら慣れてた。
火垂るの墓も然ることながら「アメリカひじき」はコミカルかと思いきや
いや、まじで笑えんよ…って。
紅茶をひじきだと思ってってたという話。
あと「死児を育てる」が一番まーじで強烈過ぎるほどに強烈!!
餓えって本当に(餓えもそうだけど衣食住の全てが整ってないと)
正常じゃないというか、ここまでなるかって思うくらい
狂う感じがまじで恐ろしい。
興味本位で読んでみたけど -
Posted by ブクログ
自分が中学生くらいの頃には既に文庫化され、興味はもちろんあった訳だが、これまで未読。なんとなくこのようなテーマは自分には難しく、敷居が高いもののように思われたからだ。
読んでみて、やはりこの歳になってから読んでよかったと思った。若いころに読んでいたら、おそらく本書の価値の半分も理解できなかっただろううと思うのだ。投獄を覚悟してまでもエロ事を追求する主人公の矜持というものに嫉妬さえ感じるくらいだ。
野坂氏といえば、田中角栄に対抗して新潟三区から立候補して、雪の中でビールケースの上に立って街頭演説している映像を思い出す。もうこういう人は出ないのだろうか。 -
Posted by ブクログ
第58回(昭和42年)直木賞受賞作。
有名な火垂るの墓を含む短編集。
独特の言い回しに直木賞というより、より純文学的な芥川賞に近しい気すらしてくる。
火垂るの墓はアニメで有名だが、それを見たことが無い自分はその先入観がなく、野坂昭如の実体験に基づくその思いを十二分に感じられたと思う。
誤解を恐れずに言えば、文章を読む限り、アニメ(文庫本の表紙がアニメの火垂るの墓)のようなエンタメにはなりえない。そもそもアニメみたいなふくよかな肉付きの良い絵になるわけがない。
著者の実体験に基づいているので、兎に角ディテールが圧倒的に凄いし、それが、根底にあるので、ひとつひとつの出来事に対する価値観とし -
Posted by ブクログ
日活映画で小沢昭一と坂本スミ子で映画化された紹介をテレビでみて内容に興味を持ったのが中3くらいの時。
なんとなしに当時の風俗事件エロ映画っぽかったので行ってみようかと思いそのままスルー。高校2年時に野坂昭如原作って本屋に展示されてた文庫本を購入。当時、体制批判家ってイメージでイレブンピーエムによく出演されてて、タレントとしての好感も持ってた。ちなみに似たようなキャラで小中陽太郎がいたがこっちはヘドが出るほどキライだった。題名からくる三流エロ小説とは違って好きだった梶山季之っぽい内容ではないかと購入した。読後に唸った。スブやんに共感を持つというよりオレもこんなになりたいって今後の将来展望の選択肢