野坂昭如のレビュー一覧

  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    戦時中は、道徳なんて考える余裕がない。どんな手段を使ってでもいいから生きのびることに皆必死だ。だから、家族の分まで食べてしまったり、幼い妹を置き去りにしてしまったりしたことを責める人なんていないと思う。残酷で卑しく欲に突き動かされて生かされてるのが人間なのだなぁと思う。だけど人間には大切な人を思う心があって、それが失われるとたちまち生きる意味を見いだせなくなってしまう。だからこそ、作者は生き延びながらも、自分が許せず、犠牲にしたものへの後悔にずっと苛まれている。辛いよう。

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    2026年08月28日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    『アメリカひじき・火垂るの墓』



    第58回 直木賞




    初めまして♪ 野坂昭如さん ( ͡ ͜ ͡ )



    8月もやってまいりました♡♥♡
    【月イチ文豪生活】
    今月は 8月ということで戦争に関する本です。
    姐さん♥の 選んでくれた本はあと2冊あります


    『野火』/ 大岡昇平
    『悪女について』 / 有吉佐和子

    (*´艸`)フフフッ♡




    姐さん♥は 読むのは1冊でいいよ♡ と
    仰ってくれていたので とりあえず 今回は
    お言葉に甘えちゃいます ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ
    ただ…余裕があったら 読みますよ♪




    今回の『火垂るの墓・アメリカひじき』には
    6編の短編作品が収録されています。
    野坂さんの文体は ちょっと独特なんです。
    ページを捲ると…ギッシリ文字が書かれていて
    ちょっぴり驚いちゃったんです‪(  ・᷄ ᴗ・᷅ )ゝ



    冒頭の一文をご紹介…


    省線三宮駅構内浜側の、化粧タイル剥げ落ちコンクリートむき出しの柱に、背中まるめてもたれかかり、床に尻をつき、両脚まっすぐ投げ出して、さんざ陽に灼かれ、一月近く体を洗わぬのに、清太の痩せこけた頬の色は、ただ青白く沈んでいて、夜になれば昂ぶる心のおごりか、山賊の如くかがり火焚き声高にののしる男のシルエットをながめ、朝には何事もなかったように学校へ向かうカーキ色に白い風呂敷包みは神戸一中ランドセルせおったは市立中学、県一親和松蔭山手ともんぺ姿ながら上はセーラー服のその襟の形を見分け、そしてひっきりなしにかたわら通り過ぎる脚の群れの、気づかねばよしふと異臭に眼をおとした者は、あわててとび跳ね清太をさける、清太には眼と鼻の便所へ這いずる力も、すでになかった。



    これが…冒頭の九行 (*´艸`)フフフッ♡


    すごいでしょう? こんな感じで 続くんです。
    息がきれちゃうわぁ
    会話の部分も改行とかもせずに とにかく
    ずーーーーーーっと続くんです( ・᷄-・᷅ )



    最初は読みづらい文章だなぁ……なんて思って読んでいたのですが…本当に不思議なんですが
    徐々に 読みやすくなってくるんです。



    無駄がないからなのか ちょっぴり戸惑うけど
    要点だけが頭に入ってくるの!!



    これは不思議な感覚でした(-Ò。Ó-) はい!



    「火垂るの墓」
    親を亡くした 中学生の清太と 4才の妹の節子。戦火の下で懸命生きようとする二人に胸を打たれます。
    原作者の野坂さんご自身の原体験を元に描かれた作品でもあるそうです。


    「アメリカひじき」
    TVCM制作会社を主宰している俊夫。
    妻と息子がハワイで お世話になったという
    ヒギンズ夫妻 が来日するという。
    俊夫は 一生懸命 過剰なほどに接待をする。


    「焼土層」
    十二年間育ててくれた養母が亡くなったと報せを受けた男が、二十年ぶりに養母の住んでいたアパートへと向かう。


    「死児を育てる」
    自分の娘を絞め殺した 久子。
    彼女にいったい何が起こったのか…


    「ラ・クンパルシータ」
    六畳に 狭いながらも重なり合い十六人を収容
    している 少年院に鑑別所からやってきた高志。
    何故 彼は少年院に入所することになったのか…


    「プアボーイ」
    高志と同じ少年院に入所している辰郎。
    ある日、少年院に弁護士が来て 辰郎は少年院を出る事ができる。


    どの お話も 背景には 焼跡闇市派としての野坂氏の
    体験にもとづくものでもあるらしい。
    火垂るの墓 の清太は死んでしまっているが
    これが野坂さんだとしたら…
    それぞれ赤裸々に綴られている。
    読み終わってからは 読むのが大変なのにも拘わらず 鮮明に光景が目に浮かんでしまう。



    納得の直木賞だなぁって感じました。
    どれか選ぼうと思ったんですが…
    どれもいいんです。



    姐さん♥
    今月も素敵な選書ありがとうございます。
    素晴らしい作品でした。
    ジワジワ…ってきます…ジワジワって
    理解しながら読むのに時間がかかってしまいました
    (*´艸`)フフフッ♡


    なんとも言えない この文体の
    リズムが癖になりそうです♡


    9月もよろしくお願いします(*•̀ㅂ•́)و✧

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    2026年08月20日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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     短編6作。いずれも戦中、戦後の物語。
     日をまたいで読むには辛い内容と思い、一気に読んだ。と言っても、独特な文体になかなか読み進めず、終日かかった。

     しだいに戦況の悪化する中、人々は自分が生きるので精一杯。そして、終戦をむかえたところで生活が急に良くなるわけもなく、きれい事だけでは生きていけない。
      80年前の日本の姿だ。

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    2026年08月14日
  • エロ事師たち

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    素晴らしく面白かった。AVメーカーの元祖メンバーたちの話。またしてもトゥルゲーネフの初恋や武者小路実篤と友情と同様、最後の数ページで衝撃の結末に驚かされた。

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    2026年05月13日
  • エロ事師たち

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    戦争文学を読みたくて、火垂るの墓を漁っていたら、本書に辿り着いてしまった。最高に面白い本だった。

    現代のように性といったものをある種のタブーとして忌避するのではなく、エロ事師という職に生きるスプやんの視点から詳らかにしていくのが面白い。

    とてもここに書けるような内容ではないものの、人間の欲は恐ろしく、興味深いなと。AVなどない時代から、人の性癖は無数にあるし、エロ事師のニーズは普遍なのかもしれないと。

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    2026年03月03日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    一気に引き込まれるように読みました。6つの短編 すべて空襲や配給 終戦時の混乱期、またその時代と現在を対比させての物語。 多分全て自分の体験を元に書かれていると思う。すごいこと体験して妹を殺してしまったという自責の念から逃れられないのだろう。生き残ったもののしぶとさも感じた。

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    2026年01月11日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    ネタバレ

    「死児を育てる」
    どうしようもない環境下で死なせてしまった妹と、
    全てがある状況下で殺してしまった娘、
    でもどちらの場合も1人で幼児に向き合っていて
    まずその構成が巧みすぎる…!
    時系列が混ざっている文章で読み辛れ〜と思ったけどおかげで主人公のフラバの臨場感が強まったかも。

    「なぜ食べ物を粗末にするのか、妹は食べる物が無かったのに」という実子への怒りと、「でも妹を死なせたのは自分」「自分の生だけを優先した」という罪悪感、それを誰にも咎められなかったせいで未消化のまま、
    目の前に妹よりも遥かに恵まれた環境にいるにも関わらず、同じように夜泣きが治らない実子がいる。

    「なぜ泣き止まないのか」
    実子への憎らしい気持ち、妹を死なせた自身への罪悪感、共通して自分以外誰もこの子に向き合わない孤独…。

    自分の持つ痛みを誰も知らない、
    自身でも気づいていない、痛みを増幅させる目の前の存在を排除して、自分の痛みを終わらせたい。

    「誰に話しても伝わらないから言わない
    だから私のことを殺してほしい
    妹を齧っていたネズミが踏み潰されたみたいに」

    元気な時は読めない作品でした。

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    2025年11月16日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    映画は未だに見れないけど、原作をと思い。消えていく罪悪感、でも消えない空腹感、文章から伝わるおぞましい情景と死の匂い、他人に頼らないと生きれないまだ子供であるコンプレックス、生々しい死。他の作品も良い。

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    2025年09月20日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    高畑勲展を見た後に買って帰ってきた一冊。火垂るの墓以外の野坂昭如作品を読んだことがなかった。大阪弁の口語で長回しの文が多く、臨場感があった。まるで、横で話している人の声に耳を傾けていたような読後感だった。特に「死児を育てる」の酷い描写は、目を背けたくなるくらいだったけど、戦争をより身近に感じたと同時に、今の生活が当たり前じゃないことに立ち返ることができた気がする。

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    2025年09月12日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    ネタバレ

    火垂るの墓、死児を育てる を読んで

    飢餓がどんなに辛いことか現代を生きる私にはわからない。妹にあげようとしながらも自分の食欲を優先してしまったこと、空襲の恐怖から妹を置き去りにして逃げ出してしまったこと、親戚の家で冷遇に遭い泣き止まぬ妹を泣き止ませるために殴ってしまったこと。
    まだ子どもであるのに、自分より更に幼い子を抱えて生きなければならず、苦しむ姿に心が痛んだ。
    アニメでの火垂るの墓の描かれ方に何が意図されているかはわからないけど、清太と節子は本当によく頑張って生きたのだと思う。大人も子どもも皆自分達が、最終的には自分が、生き延びるのが精一杯な時代だったと思う。そこには綺麗ごとでは済まされない人間の本能が、悲しく強く印象に残った。


    アニメとは引き離して考えれば良いのだけど、考察動画(?)で節子が亡くなったのは清太のせいとか、節子が亡くなった後に節子の分のご飯を食べた、とか、駅で野垂れ死にかかっている所おにぎりを差し出されたのに食べなかったのは大人から差し伸べられた手を清太が拒絶していることの象徴、などと言われてるのを見て、とても心が痛む。私は清太は極限の状況下で、本当に一生懸命に、妹を守ろうとしていたと思う。


    ー せめて『火垂(ほた)るの墓』にでてくる兄ほどに、妹をかわいがってやればよかったと、今になって、その無残な骨と皮の死にざまを、くやむ気持ちが強く、小説中の清太(せいた)に、その思いを託したのだ ー 野坂昭如

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    2025年08月25日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    高畑勲さん監督のアニメ映画の悲しくも美しい映像から原作を手にした。

    私は東京大空襲に続く、横浜・名古屋・大阪・神戸の東海道大空襲なる無差別爆撃をあまり知らなかった。

    栄養失調の4歳の妹の、汗疹とノミ湿疹だらけの背中を海水で洗う優しい14歳の兄は、三ノ宮駅の構内で、他たくさんの浮浪児の死体と一緒に、駅員に葬られるのである…

    著者の野坂さんは、実際に亡くした妹へのレクイエム、として火垂るの墓、を書いたよう。年齢的に兵士としては召集されず、集団疎開に行くでもない狭間の世代に入り、、生き恥を晒して生きるのが辛かったそうだ。

    戦争孤児は12万人とも言われ、植民地からの引き揚げ孤児やもちろん原爆孤児は有名だが、彼らはGHQによる児童福祉政策や新憲法、教育基本法制定、でもまだまだ飢餓や親戚の家での子守り等の仕事、、で学校に行くこともままならず、人権は守られていないような状況が続いていたのだ。

    火垂るの墓、含めて6編、独特な関西弁の文章がどしり、ときて、そして無知な私は読み終えることが出来て良かった…

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    2025年08月23日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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     先週NHKで高畑勲のジブリ作品「火垂るの墓」の制作にあたっての下準備過程を記した7冊のノートを題材にしたドキュメンタリーが放送されていた。亡くなってから東京近代美術館で高畑勲展を観に行って美術館でアニメ作家の展覧会をやることに多少違和感を感じていた。しかし「火垂るの墓」「平成狸合戦ぽんぽこ」やテレビアニメ「狼少年ケン」「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」など多くの名作を世に送った高畑勲はアニメ監督としてただ者ではないと展覧会を観て感じその後高畑勲の本も読んだ。
    「火垂るの墓」の原作本は数年前購入して積読状態だったが、今週このアニメがテレビ放送されるようで昨日今日で読んだ。35ページほどの短編だが、終戦直前の4歳と14歳の兄妹にふりかかる戦争の悲惨さを淡々と描かれて、淡々と描かれればかかれるほど現実の戦争がいかに残された市民、子どもたちに犠牲をしいているか、これでもかと表現されてます。母親が空襲で焼け死に、父親は海軍軍人として戦場に行って音信不通、遠い親戚の家をたよりますが、おばから邪見にされ兄妹はそこをでて、壕で生活します。母親の形見を金に変え食べ物を調達します。それもつき空襲にあったときに農家の畑に盗みに入り、また民家の家に入って金目のものをうばったりして飢えをしのごうとしますが、妹は終戦直前に飢え死にし、兄も20年9月22日に三宮駅構内で野垂れ死にします。
     短編だけど分厚い本なみの人間の起こす戦争の醜さ、悪を充分訴えてます。
     高畑勲は反戦映画ではないとして戦争のリアルを忠実に表現した作品としてます。
     この8月にこの半日で読める本に触れるのは充分意義があります。

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    2025年08月12日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    はじめは読みにくい文体だと思うが読み進めていくうちに読みやすく感じてくるのは落語や講談のように文章のリズムがいいからだろう。戦争の残酷さを淡々と描写していて、数ヶ月の間にまるっきり生活が変わってしまう状況や、アメリカ人に対する感情などはこういう本を読んで想像することはできるが、実際にはその時代にある程度の年齢になっていた人にしかわからない複雑なものであり、そういう年代の人と接する機会があっても普段はまったく感じさせないが、きっと記憶としていつまでも残っているものなのだろう。これは後世に読み継がれてほしい一冊。

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    2025年08月06日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    美術館でアニメーション作品に使用された画を観て『火垂るの墓』に関心を寄せた。アニメーション作品の雰囲気を伝える別な本にも触れたが、原案となった小説をゆっくり読んでみたくなった。そういうことで手にして読んだ。
    本書は短篇集ということになる。『火垂るの墓』、『アメリカひじき』、『焼土層』、『死児を育てる』、『ラ・クンバルシータ』、『プアボーイ』の6篇が収められている。各作品、各々の味わいが在って引き込まれるが、共通項のようなモノも強く感じた。
    各作品は昭和40年代前半頃(1960年代後半)に登場しているようだ。作者自身、野坂昭如は1945(昭和20)年の終戦時に15歳であったそうだ。「焼跡闇市派」と自称したそうだが、戦時の様々な事柄、戦後の混乱期を潜り抜けて、その時期から20年余りを経て「自身の中で終わったような、終わっていないような“時代”の記憶」が何時も在ったのかもしれない。本書の各作品については、そうした作者自身の経験、想いの遍歴というようなことを細かく切り取り、適宜組み合わせて脚色する形で小説各篇の主要視点人物を編んでいるというように感じられた。
    『火垂るの墓』はアニメーション作品でもよく知られている。14歳の寄る辺の無い少年が、神戸の三ノ宮駅で力尽きてしまう場面から物語は起こる。そしてそこへ至る迄の、戦禍の中で幼い妹と2人になり、妹を護って生きようとして果たせなかったという顛末が綴られている。何か、少年の魂が何処か遠い所、更に未来にでも在って、そこから自身の顛末を見詰めて語っているかのような、不思議な雰囲気が漂う文章であるとも思った。
    『アメリカひじき』は会社を営む男が、妻をハワイ旅行に出したことが契機で、ハワイで知り合った米国人夫妻が来日するので自宅に迎えたいと言い出すという辺りから物語が起こる。戦時のこと、戦後の様々なことに想いを巡らせながら、米国人夫妻との交流というようなことになる顛末が綴られる。戦後20年程を経ている時期の物語だ。
    『焼土層』は戦禍で少し身体が不自由になった実母により、親類へ養子に出されたという経過の男の物語となる。戦後20年程を経た或る日の出来事が在り、色々なことに想いが巡る。
    『死児を育てる』は2歳を過ぎた娘を絞殺してしまったという若い女性が出て来る。そういう挙に出てしまう背後に何が在ったのか、その複雑な想いが解かれる物語だ。戦後10年余りを経ている時期の物語である。
    『ラ・クンバルシータ』と『プアボーイ』とは1947(昭和22)年頃というような時期の物語である。『ラ・クンバルシータ』では、或る少年が少年院に収容されるということになり、そこへ至る迄が振返られる。『プアボーイ』は『ラ・クンバルシータ』の主要視点人物である少年と少年院で同房であった別な少年が主要視点人物となる。新潟で会社を営むようになっていた叔父夫妻に引き取られるのだが、少年院に入るに至った顛末や、新潟での顛末という物語となる。
    6つの篇を大まかに振り返ったが、作者自身の経験、想いの遍歴が様々に反映された形で物語が創られている様子が凄く伝わった。戦禍という異常で過酷な様子、そうしたモノに何か捻じ曲げられたような人の心や人生、少し長い時日を経ても澱のように人の中に溜まっている何か、場合によって人を突き動かす何かというような共通項が6つの篇から感じられた。
    6つの篇の中、『火垂るの墓』の少年は力尽きてしまって「戦後」を長く生きるのでもない。他の5篇は「戦後」の経過を各々に経ている。年代の設定が少しだけ違う、また『死児を育てる』は少年ではなく少女ではある。それでも『火垂るの墓』以外の各篇は、「力尽きることを免れた場合の人生」というようなことであるかもしれない。
    作者の野坂昭如の名を聞けば、自身が中学生や高校生であったような頃、更に大学生位の頃に、様々な活動で耳目に触れることも在った「個性的な文化人」というようなことを思う。「みんな悩んで大きくなった〜♪」というようなCMソングも歌っていたと思う。そういうことではあるが、彼は常々「作家 野坂昭如」と紹介された。その「作家」としての仕事には、自身では触れたことが無かった。今般、美術館で観た画が契機で、「作家 野坂昭如」が遺した仕事に確り触れることになった。善かったと思う。
    2025(令和7)年は「戦後80年」ということになる。戦禍の記憶等を忘れずに考えるというような問題意識も在るのかもしれない。そうした中、戦禍という異常で過酷な様子、そうしたモノに何か捻じ曲げられたような人の心や人生、少し長い時日を経ても澱のように人の中に溜まっている何か、場合によって人を突き動かす何かに「経験者」として向き合った作家が綴った作品に触れるのは価値在る営為であると観る。
    更に言ってしまうと、「今でも激しい戦禍に見舞われている国や地域」というような例も見受けられる中なので、「戦禍」というモノと「人間」というモノに想いを巡らせなければならないようにも思う昨今である。そういうことで、本書は考えるための好い材料になり得ると観る。
    御蔭様で好い読書体験をさせて頂いているというようなことを感じる。本作は手軽に入手して気軽に読めるような文量の文庫本であるので、広く御薦めしたい。

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    2025年05月25日
  • エロ事師たち

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    谷崎潤一郎賞候補に挙がり、純文学とは何か?を考えた一冊。
    性にひたむきなダメ男達が、無い頭を試行錯誤しながら(たまにちょっと頭が良い)馬鹿な事に突き進む会話劇。
    悔しいが終始愉快で話の展開も退屈せず楽しめた。陰毛が落ちてるに違いないと、女子学校に拾いに行く所など頭を抱えたが、他作では絶対に読めないシーンだろう。

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    2023年08月16日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    1.著者;野坂氏(2015年没)は、作家・作詞家・歌手・政治家。実母の死別後に養子に出され、2人の妹も養子となる。野坂氏は神戸で罹災し、養父母を失い、浮浪児生活を送った。上の妹を病気で、下の妹を栄養失調で亡くす。「エロ事師たち」で作家デビュー。「火垂るの墓」等で直木賞、「同心円」で吉川英治文学賞などを受賞。他に「おもちゃのチャチャチャ」で日本レコード大賞、参議院議員に当選する等、マルチ人間。
    2.本書;浮浪児兄妹の餓死までを描いた短編小説。「主人公の清太(14歳)は、病弱な母の死後、妹(節子)と遠縁の未亡人宅に引取られます。実子との食事差別。清太はそれが嫌で、二人は川辺の防空壕で生活。満足な食事が出来ず、妹が栄養失調で死に、清太も同様に死ぬ」という、野坂氏の原体験小説。著者は「妹への贖罪のつもりで書いた」と言います。「(妹)が泣けば、深夜におぶって表を歩き、あせもとシラミで妹の肌はまだらに色取られ、海で水浴させた。(妹)の無残な骨と皮の死様を悔む気持ちが強い」と回想。本書は他に5編収録。「戦争がなければ」と、涙せずには読めない力作。
    3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
    (1)『火垂るの墓』より、「死んだ清太が持っていたドロップ缶の蓋がとれ、白い粉がこぼれ、小さい骨の欠片が三つ転げ、草に宿っていた蛍が驚いて二、三十慌しく点滅しながら飛び交い、やがて静まる。白い骨は清太の妹、節子、・・防空壕の中で死に、死病は急性腸炎とされたが、実は四歳にして足腰立たぬまま、眠るように身罷ったので、兄と同じ栄養失調症による衰弱死」
    ●感想⇒本書を再読し、度々涙します。その訳は私事にあります。物心つかない幼少の頃、疫痢(伝染病)にかかりました。医師から余命一週間と宣と言われていたのに、姉は隙を見て入室し、高熱で苦しむ私の顔を冷たいタオルで拭いたそうです。姉に病気が転移し、その後亡くなり、私は元気になったそうです。成人した頃に、祖母がその事を話してくれ「お前は姉の分まで健康に生きなければいけないよ」と言われました。幼少だったので、姉の顔を思い出せません。悲しい気持ちが込みあげます。「火垂るの墓」を読むと、戦争がもたらした悲劇とは言え、他人事とは思えない感動に包まれ、人間愛の貴さを再認識します。
    (2)『火垂るの墓』より、「“せめてあんた(清太)、(節子)を泣かせんようにしたらどないやの、うるそうて寝られへん”ピシャリと襖を閉め、その権幕に益々泣きじゃくる節子を連れ、夜道に出ると、相変わらずの蛍で、いっそ節子さえおらなんだら、一瞬考えるが、すぐ背中で寝付くその姿、気のせいか目方もグンと軽くなり、額や腕、蚊に食われ放題、ひっかけば必ず膿む」
    ●感想⇒友人に苦労人がいます。彼は夜間高校から大学に進み、弁護士になりました。聞けば、高校時代は弁護士事務所で書生として働き、住み込み生活を送ったそうです。「食事をするにも、トイレに行くにも、遠慮の連続で、身が細る苦労だった」と述懐していました。その体験から、今では弱者に寄添う弁護を軸とした活動をしています。某大学での講義や、本を出版したりの活躍です。若き日の厳しい体験があったからこそ、世間の片隅に追いやられがちな人々の弁護に精を出しているようです。頭が下がります。これからも社会的弱者の後ろ盾として、行動してほしいと願います。
    (3)『ラ・クンパルシータ(タンゴの名曲)』より、「百姓の子弟の多い同級生は、卵焼きタラコ塩昆布梅干し、懐かしい昼弁当を当り前のようにひろげ、高志のみは無くて、学校の購買部で売る一皿十円の芋パンを買うそぶり、だがその金もなく、ひたすらにじみ上がる唾を飲み込み」
    ●感想⇒「ラ・クンパルシータ」は少年院に収容された戦争孤児の話。戦争で家族や家を失い、生きる為に盗みを働き、犯罪者になる者が多かったようです。私事です。私の家は裕福とは言えず、よく麦飯を食べました(麦は今こそ健康食ですが、当時は貧乏人の代名詞)。小学生の頃、弁当に麦飯を持っていくと、同級生によくからかわれました。「お前んちの飯は色付きだなあ、白米は無いのか」と。「いつか見ていろ」との思いでした。一方で、貧しくとも祖母から数々の人生訓を学びました。「三度のご飯を頂ける事に感謝しなさい」「恩を忘れたら、犬畜生にも劣る」「三つ子の魂百まで」・・・、私の行動指針です。人間は、辛い事を経験し、克服する毎に成長出来ると信じています。
    4.まとめ;本書は6つの短編構成。「火垂るの墓」は勿論、「焼土層(生活保護をうけず、少額の仕送りで生活し、プライドを守る義母)」にも心を動かされました。「野坂氏は、既成の権威や秩序が音をたてて崩れ落ちるのを、その目で見、その肌で感じた世代」と解説にあります。想像を絶する日々を生き抜いたのでしょう。戦争は人々に大きなダメージを与えるだけです。アインシュタインが戦争の起因について語っています。「知識人こそ、大衆操作による暗示にかかり、致命的な行動に走り易い」と。保身の為に、自身の哲学無き政治リーダーには閉口です。戦争回避の為に、庶民感覚でバランスの取れた世界観を持つ指導者を選択したいものです。所で、私は、多彩な顔を持った野坂氏が「火垂るの墓」書いたと思えませんでした。本書は氏の体験が滲み出おり、他人には書けない作品です。戦争がもたらす悲劇に心が痛みます。レビューに個人的な事を書き過ぎました。ご容赦を。(以上)

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    2022年11月21日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

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    どれも、悲しかったり、怖かったりするのに、閃光が残るような、話でした。おもろいのに、強いこころが在るなど、なんだか一生忘れないような タマシイですかね。妙に現実的に、残りますね。特に、アメリカひじき が妙に好き。

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    2022年02月05日
  • エロ事師たち

    Posted by ブクログ

    面白かった。
    澁澤龍彦やサドっぽくて好き。
    男性の情けなさ、それも究極の情けなさはやはりあれだったのか。
    登場人物が変な男ばかり!
    そこが良かった。
    ノーマルな男の話ではないので、まあ変態ばかりなのですがエロ事師たちが陰で棲息していてその後どうなるのか気になりページを捲る手が止まらず。
    うまく紡ぎ合わせてあり無理もなく、野坂昭如のテーマをふんだんに楽しめました。

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    2021年09月10日
  • アメリカひじき・火垂るの墓

    購入済み

    でもこのように戦闘員以外の子供が悲惨な目に遭っていることを描いた本は、あまり読んだことがなかった。野坂昭如の本で初めてその悲惨さを知った。

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    2020年09月25日
  • エロ事師たち

    Posted by ブクログ

    あなたが作家を目指しているとしましょう。
    読んだ人が感動するような作品が書きたい―。
    立派な動機です。
    テーマも明確。
    筋立ても固まりました。
    もちろん、力量は十分にあります。
    さあ、では、執筆に取り掛かろう。
    ちょっと待ってください。
    その前に、本書「エロ事師たち」を読みましょう。
    打ちのめされます。
    登場人物は、ブルーフィルム(ポルノ映画)の制作に勤しむ裏社会の男たち。
    一筋縄ではいかない、一癖も二癖も三癖もある男ばかりです。
    より過激で刺激的な作品を作ろうと、男たちは官憲の目をかいくぐりながら暗躍します。
    たしかにエロい。
    グロテスクでもあります。
    でも、文学的な香気が確かに漂っている。
    野坂33歳のデビュー作。
    脱帽するほかありません。
    昭和48年生まれの自分が物心ついた時には、野坂は既に「テレビの人」でした。
    それが原因で、ずっと彼の小説をスルーしてきました。
    もっと早く読んでいれば良かったですね。
    本書が文学だとすれば、自分の文学観はいかにも浅いと認めざるを得ません。
    文学は、自分が考えているよりももっと深いところで蠢いている何かです。
    もちろん、どんな文学があってもいい。
    ただ、本書を読めば、文学の深さと広さが、ともに6センチは大きくなるはずです。
    共に頑張りましょう。

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    2019年04月17日