野坂昭如のレビュー一覧

  • アメリカひじき・火垂るの墓
    火垂るの墓はもちろん、最後の関連した二つの感化院の少年の話も面白かった。野坂さんは戦争の悲劇の真摯な語り手であり、同時にエログロの狂気の提供者でもある。
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    1968年出版,第58回直木賞受賞作。「焼け跡闇市派」の金字塔ともいえる作品である。

    「火垂るの墓」:戦時を駆け抜けた者による,その過程で犠牲になった者たちへの鎮魂歌。作者の自伝要素もあるそうだ。曳光弾はほんのわずか向こう側でありながらも,生命の切迫すら感じされる文章。蛍は確かに印象的だ。削られた...続きを読む
  • エロ事師たち
    名前は知っていたが,野坂昭如の作品を読むのは初めてである。当時は作家のみならず広範囲のタレント的な存在だったようだ。

    本作はデビュー作だというが,既に安心して読める滑稽さが感じられる(新人らしさというか,危うさがない)。自らをエロ事司と名乗る「スブやん」とその周辺の人々。戦後と現代をつなぐ部分とし...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    「火垂るの墓」は、言わずと知れた戦争文学の傑作。
    アニメにもなっているので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
    私も子供時分に、たしか学校の視聴覚室で視聴した記憶があります。
    節子がドロップではなく、おはじきを舐めている場面を見ると、恐らく今でも人目をはばからずに泣くと思います。
    ただ、原作...続きを読む
  • エロ事師たち
    カバー絵がちょっと下品だが、中身の文章はとても魅力的だ。
    関西弁のやりとりが心地よいリズムで押し寄せて来る。
    ついつい時間を忘れて最後まで読んでしまった。
    カバー絵でとても損をしていると感じた。
  • エロスの記憶 文藝春秋「オール讀物」官能的コレクション2014
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    悲しいお話です。とても有名なのでそれ以上語る気もしない感じが現状です。原作は短編です。故海音寺潮五郎氏は「結末の明治調の展開にはやや辟易」と言っていたようですが…。彼自身苛烈な戦争を体験したのに戦後や早落ち着いてくるとこんなものなのでしょうか。確かにこの物語の主人公のような悲惨な最後を遂げた子供はい...続きを読む
  • エロ事師たち
    面白かった。解説は澁澤龍彦。独特の雰囲気で関西を舞台にエロ事師たちを描く。独白ではないけど、会話とか内省的な感じがメインで描かれている。これで一回読み終えた。面白かったけどこれなんやろう? という感じもする。再度読むかはわからない。もう少し年取ってから読むと違う気もする。作者が33歳の時にこれを発表...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    この2編以外にもいくつか話が入っていたのだが、この2つに関して言うと、どちらも話の途中で「回想シーン」のようなものが入り、分かりづらかったのだがドラマチックになっていた。「ほたるの墓」は、映画そのままだった。「アメリカひじき」は・・・戦争を知る人たちは、今の日本をどう思っているんだろう、と思った。
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    6つの短編集。ただただ飢えと暮らしの惨めさがリアルで、読んで暗い気分になります。多分これは誇張ではなく、現実に戦後の日本の至るところで起きていたはずなのだ。それからもう?まだ?72年。
    読点が少なく畳み掛けられるような文体が、あっという間の転落、流れるような時と行動の移り変わりに読者を連れていきます...続きを読む
  • 終末の思想
    「日本の将来について考える時、ぼくに希望は全くない」

    この一文から、この本は始まります。

    おそらく、こういう歯に着せぬ物言いを、できる人というのは、
    今の社会では、非常に限られていると思います。

    この本で、野坂氏は、食料自給率にやたらこだわっています。

    「人間の一番の基本は食にある。食べるこ...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    何かの本で、花村萬月が「どんな小説を読んでも泣くことはなかったが、これだけは泣きそうになった。いや、泣いてしまった」と書かれていた。私もこの作品は知っていた。アニメにもなっているのも知っていた。活字としてこの小説を実際に読んでみると読点(、)がほとんどなく、次々と言葉が数珠のように連なっていて、1文...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    たたみかけるように言葉を並べて、しかもその情景がありありと目の前に浮かんでくる。独特の文体だ。
    まあもちろん、戦争文学なんだから、これっぽっちも楽しくはないのだけど。

    野坂昭如さんは、先日亡くなったそうだ。
    父の母親や祖父が、「アメリカひじき」は正に戦後の日本の風景だったと話していたらしい。だから...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    故人となったので読みました
    火垂るの墓は映画にて初めて知ったのと号泣した思い出
    まさかの短編で映画のように泣けなかった
    死児を育てる、ラクンパルシータ、プアボーイの話しが良かった
  • エロ事師たち
     エロに情熱をかける男たちの滑稽さに呆れつつも憎めなくて、ありのままの人間臭さが魅力的な小説。時代と共にコンテンツは多少変わっても、欲するエロのあり方や欲望はほとんど変わらないんだなぁと思うと情けないようなほんのり愛しいような気持ちになる。また、今回はエロを提供するエロ事師の男たちの話だったので、次...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    この本は戦争を直接的には扱っていないものの、戦争小説と呼んで差支えない気がする。
    幼児、児童、青少年が戦争によって翻弄され、傷つき、けなげに、したたかに生きていくさまが、不思議な筆致で描かれる。
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    日本の敗戦を感じる 火垂るの墓
    黒い福音(ドラマ見た方も楽しめる 黒い福音)に続き、
    日本は敗戦国なのだ、と感じさせる一冊。
    黒い福音よりもはるかに、戦争色が強い作品集でした。

    火垂るの墓は映画版を何度も見ていますが、まさにこの文章を
    そのままアニメーションにしたものだ、と冒頭びっくりしました。
    ...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    火垂るの墓は「反戦文学」のような紹介をたまに見るが、結果としてはそうであっても、むしろ描かれているのは大人たちの身勝手さと無力感ではないだろうか。大人たちが、アメリカさんが来るのに(こんなところに浮浪児が寝転がっているのは)恥ずかしい、という場面なんかは象徴的である。大多数の大人にとって、戦争は自分...続きを読む
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    六篇の短編から印象強いものだけ感想に……

    「火垂るの墓」
    言わずもがな、な超有名映画の原作。
    凝縮された内容ながら、中身はわずか30枚程度の短編。
    独自の句読点の多い文章は慣れるまで少々読みにくいですが、
    変わらず感涙する想いが詰めこまれています。

    「焼土層」
    この作品が一番素晴らしいと思いまし...続きを読む
  • エロ事師たち
    戦争が終わった後の日本で生きることを「エロ」を通して描いた名作。エロには人間の歪さや本能、醜悪さ、そして美しさが詰まっている。他人には理解できないとされる嗜好を、共有し実現させる登場人物達は、法律で取り締まれても、その慈愛の精神は尊い。
    戦時中を生き延び、その世界でしか生きられない人間が、その世界で...続きを読む