豊島ミホのレビュー一覧
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田舎の進学校を舞台に繰り広げられる普通の人々の普通の日常を鮮やかに青く酸っぱく美しく表現した短編集
各章の主人公たちがほぼ全員ラジオリスナーっぽい人種というか…思春期特有の不器用さと真っ直ぐさを持つ人物なのが凄く好感が持てる
各章の登場人物が他の章に顔を出すのも「学校」という閉鎖的で濃厚で複合的で、そこでしかありえない人間関係を表していると感じました
特に劇的な何かが起こるわけでもない、大きくなったら忘れてしまうような事が書かれていますが、あの日常時代っていわゆる「想い出」の他にも楽しいことって山ほどあったはずで、それでも日常の出来事だから時が経つとどんどん上書きされてしまって、「何となく楽し -
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「成瀬は天下を取りに行く」の著者 宮島未奈さんが旧TwitterXで殿堂ゾーンとして本棚の一部を公開していました。豊島ミホさんの作品ばかりだったのでその中の1冊(20年程前の作品)を手に取ってみました。
短編か?と思いきや、意外な所で繋がっていて「おっ!」と思わず声が出てしまう連作短編集です。著者が「底辺」だったという高校時代。底辺でもそこには人が存在していて必ず物語があります。そしてそこでは誰もが主役です。
解説で「豊島ミホは、ふつうをかがやかせる達人」と称してましたが、この本を読みながら昔を思い出し、私も都合よく自分自身の記憶を改ざんして高校時代を輝いていた事にしておきました。
リアルタイ -
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ネタバレ文自体は少し子供っぽく書かれていて読みやすかった。これも7個の短編が入っているけど、全部1つの「北高」というキーワードに関連している人たちで、先生だったり卒業生だったり生徒の視点で書かれていた。私は高校生になったらきっとこういう青春生活を送るものだと小学校の頃から思っていて、その思っていた理想にぴったりのようなお話。実際は全然そんなことなくてかけ離れてるけど、でも今の開智での高校生活は勿論すごく楽しい。特にお話についての感想は、1つ選ぶなら『レモンとルパン』が好き。
ずっと長年片思いしてきた相手に、やっとのやっとで想いを伝えた主人公に女の子が「痛いの。」の一言で片付けられてしまうとこが辛くてヒ -
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学級全体を挙げての無視や暴力などという強烈な「イジメ」を経験したわけではない、それでもクラスからの疎外されていることを痛切に感じ、保健室登校となった筆者。
高校時代の人間関係の失敗の原因を自分自身に原因があると固く思い込み、相手(当時の敵)への復讐と人間不信に陥って10年以上苦しんだ、その様子を赤裸々に語っています。
「つらい」と感じる事柄は人それぞれですし、「筆者よりもつらい経験を、今自分はしているんだ」という人もいると思いますが、(言葉を選ばずに言えば)暴力を伴ったり逃げ場が全くないというほどの過剰な「いじめ」ではないからこそ、多くの読者にも思い当たる(共感できる)ことが多いのではないかと -
購入済み
みずみずしさとぎこちなさと
高校生活の様々な出来事を、それにつきまとう みずみずしさとぎこちなさを、とてもよく表現している。短編 でまとめ上げているが、その後の経過を中編小説程度に描き続けたほうがより収まりが良いような気がする作品である。途中でぶった切られたような印象を受けた。
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豊島ミホは自分でもあちこちに書いているように、決して幸せで楽しい充実した学生生活を送ったタイプの女子高生だったわけではなくて、どちらかというとその対極に位置するような、彼女自身の言い方をすれば「底辺」の女子高生だったわけだ。
その彼女が紡ぎ出す物語はどれもこれも繊細でナイーブな登場人物がキレイでまるできらきらと結晶化しそうなくらい美しい。
なんでこういう、高校時代にロクな思い出のない、友人の名もほとんど思い出せないような不遇な青春時代を送った者の琴線に触れるようなストーリを次から次へと作り出せるのかなぁ、と常々思っていたのだけれど、やはりそれは彼女自身の資質もさることながら、独特の「底辺」