豊島ミホのレビュー一覧
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人形を軸に物語られる6つの短編集。
あとがきにもあるように、人形は美の象徴として描かれていて、直間それぞれで美が語られる。
途中まで、というより最終話までは面白いけど軽い印象で読めていたんだけれども、最終話の最後数行でガツンと打ち据えられた。そんな印象。
最終話は14歳で交通事故にあった男の子の話で、冒頭の交通事故にあった瞬間「あ、僕の整った顔が」と感じたということから始まる。
その後主人公は諦観というのだろうか、己の不幸を呪うでなく、失ったものを悔やむでなく、やや淡々と事実を俯瞰するように生きていく様子を描かれる。
それでも、ある日街で見かけた人形によって「昔自分がいた世界、調和 -
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神田川デイズは都内のとある大学を舞台にした、主人公が次から次へと変わっていく、長編とも短編ともいいきれない「連作(あとがきの著者のコメントより)」です。
しかも、登場人物のほとんどが何かしらの「コンプレックス」を持っていて、それが絶妙で全体として「妙なリアリティがある青春小説」に仕上がっています。
例えば、最初の「見ろ、空は白む」に登場するいけてない3人組は、大学の明るい雰囲気に馴染めず、同類相憐れむのごとく、半分引篭もり生活を送っていますが、それではいけないと一念発起して「お笑いコンビ」を結成します。
また、「雨に飛び込め」に登場する準は、本当の自分と少し違う『クレバーな俺』を演じよう -
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1話目読んだ時、「暗っ」って思った。大学生ってこんなだったかって。でも次々と読み進める内に(ちょっとオムニバス的に主人公が変わりながらも脇役で前の話の人が登場したりする)「そうだよな、現実ってこんなだよな」って思った。私は体育会系の部活やってたし彼氏も居たから試合に勝つこととか恋愛のこととか(当時にすれば最大の悩みごとだったけど)毎日どうでもいいことで悩んだり笑ったりして過ごしてきたけど、実際大学生活が華々しいかと言えばそんなことは全くなく、本当は地味で鬱屈したものなのである。そういうのって周りにはわからないものだろうけど。
この話に出てくる1人1人がどこにでも居てそうで同じようでありながらそ -
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秋田の高校時代のことを書いたエッセイなのですが、これがすんごく良かった。地味女子だった自分と通じるところがあって、底辺女子高生の気持ちに何度もうなづいていた。家出、保健室通い、赤点とネガティブだった当時の気持ちがが赤裸裸に描かれる。あの頃もがいていた自分を思い出す。並の高校生のこころをリアルにきめ細かく書いていて主人公が好きになる。球技大会や下宿の話は面白い。なにひとつ大きな事件は起こらなかった美術部の話もいい。その自由な時間と空間が高校時代にしか得られない宝物のように思える。思い出と重なりそうで感傷的になった。この作者はやはり美しい文章を書きます。卒業前、作者が階段を上りながらふっと思った場