豊島ミホのレビュー一覧
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「手を出すべきか?」と、悩んだ本です。女子小学生が主人公ですからね。50を過ぎたオヤジが読む本か・・・。
ふと気づけば、豊島さんは9冊目。文庫化された小説はほぼ網羅しているようです。若い女性が主人公の作品が多いのですが、その溌剌さより、どこか屈折した思いがあるのが、私の好みにあっているようです。
「誰にとっても小学校時代のアルバムになるように・・・」とあとがきに書かれていますが、まさしくその通りの作品です。主人公センの小学校1年から6年までの小さいけれど不思議と心の底に眠り続けているような出来事を描いた7つの短編。小品ですが豊島さんらしい(ちょっと鬱屈したような)感性が随所に現れて良いですね。
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Posted by ブクログ
豊島ミホに出会ったのは『檸檬のころ』。
なんて素敵な小説を書くんだろう、と、私にはど真ん中の本だった。
高校編だった『檸檬のころ』。
この『初恋素描帖』は、その中学編とも言える。
タイトル通り、初恋が集まった短編集。
中学校の生活よりも、初恋に重きを置いた作品。
一冊の本としては良く考えられていて、一つ一つのお話が短いので、もしかしたら、雑誌の連載になっていたのかもしれない。
“だから”なのか、『檸檬のころ』ほどの思い入れはない。
切なさも楽しさも何もかも、踏み込むほど書かれてはいないからだ。
そもそも、中学の頃なんてそんなものだったのかもしれない。
しかし、悪い作品ではない。
ただ、『初恋素描帖』を先に読んでいたら、豊島ミホの経歴も調べなかったろうし、その後、作品をいくらか読むこともなかっただろうと思う。
豊島ミホらしさは出ているんだけれども。
あとは。
大学編の『神田川デイズ』を読むのみです。
やはり、私にとって一番は『檸檬のころ』になるのか?と思いつつ。 -
Posted by ブクログ
豊島ミホは、なんというか…とにかく味があって良い。
読んだ後に切なさとか虚しさとか可笑しさが入り混じった感情が押し寄せてくる。
現代と戦争をテーマにした「ハニィ、空が灼けているよ。」は大変なことがが起きているのにその影響を何も考えずに暮らす人々や、急に後になって大勢の市民を巻き込んで重大な事実を発表する報道などが現在の状況と重なってすごくリアルな物語のように感じた。収録作品の中ではダントツで面白かった。
中学時代に好きだった人を思い続ける「誓いじゃないけど僕は思った」は、主人公のひねくれ具合やサークルのリア充っぷりへの「どーでもいい」感じが素敵。私も何人か恋人を作りつつ今もなお、中学時代に何もできずに一方的に好きだった人とのほんの少しの会話をいつまでも心のサプリメントとして引きずっているタイプなのですごく共感出来た。 -
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人形を軸に物語られる6つの短編集。
あとがきにもあるように、人形は美の象徴として描かれていて、直間それぞれで美が語られる。
途中まで、というより最終話までは面白いけど軽い印象で読めていたんだけれども、最終話の最後数行でガツンと打ち据えられた。そんな印象。
最終話は14歳で交通事故にあった男の子の話で、冒頭の交通事故にあった瞬間「あ、僕の整った顔が」と感じたということから始まる。
その後主人公は諦観というのだろうか、己の不幸を呪うでなく、失ったものを悔やむでなく、やや淡々と事実を俯瞰するように生きていく様子を描かれる。
それでも、ある日街で見かけた人形によって「昔自分がいた世界、調和があった世界」の存在を忘れていたことに気づかされる。
この最後の物語の何がすごいって、過去と現在の対比というか明暗というか、それははっきりしたもののはずで、ややもすれば不幸が強調されがちになりそうに思うのに、過去を淡々と美しく描くだけで、現在はさほど悲壮な描かれ方をしない。だからだと思うんだけど、読んでいても気持ちが落ち込んできたりはしない。
明らかに心は過去に囚われているのに、たとえば「秒速5センチメートル」みたいなギリギリとした心の鬱屈みたいなものは感じない。
自己愛に完結してゆくからだろうか?
最後の数行はただただはっとさせられる。
最後の一話を読むためだけに買ってもいい本だと思う。
すごい。 -
Posted by ブクログ
神田川デイズは都内のとある大学を舞台にした、主人公が次から次へと変わっていく、長編とも短編ともいいきれない「連作(あとがきの著者のコメントより)」です。
しかも、登場人物のほとんどが何かしらの「コンプレックス」を持っていて、それが絶妙で全体として「妙なリアリティがある青春小説」に仕上がっています。
例えば、最初の「見ろ、空は白む」に登場するいけてない3人組は、大学の明るい雰囲気に馴染めず、同類相憐れむのごとく、半分引篭もり生活を送っていますが、それではいけないと一念発起して「お笑いコンビ」を結成します。
また、「雨に飛び込め」に登場する準は、本当の自分と少し違う『クレバーな俺』を演じようとするも、そんなにうまく行かず自分の中で葛藤を繰り返していく。。。
などなど大学という枠を外したとしても自分の事として経験があったり、同じよな悩みを抱えた友人がいたりと柄にもなく「10代のころ」を思い出してしまいました(笑
設定面での上手さ、そしてネガティブな感情の読み取り方は素晴らしいと思いますが、それ以上に上手いなと感じたのはある人が憧れている人も内容は違っていても同じよな悩みを持っていることをしっかりと描いているところですね。
物語(連作ですが)を通じて、誰が一番ということを強調するのではなく、誰もがみな悩みながら成長している過程描かれているのが、リアリティをより強くさせていると思います。
この例えがいいかちょっと微妙ですけど、人間関係が縦関係の序列じゃなく、円(リング)のようになっている感じですね。