豊島ミホのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレアヤコは漫画家を、シンはミュージシャンをそれぞれ目指していた。
中学の卒業式の日、二人は10年後の再会を約束する。
それまでにお互いの夢を叶えると誓って。
10年の月日が流れ、二人は…。
甘酸っぱい!!
設定、序盤、鼻の奥がつん、となる。
でも、帯にある通り、描かれているのは、甘酸っぱい“思春期”の“終焉”だった。
特に接点のなかった、アヤコとシン。
物語はアヤコの一方的な片想いから始まる。
片想い…とは言っても、恋、とは似て非なるもの…なのかな。
-この人じゃなかったら誰が、私の心をかっさらい続けるんだろう。
これだけ強く想える対象に出会えるって、すばらしい。
終盤にかけても、このアヤコのシンへの想いは恋心というものではなく、もっと大きな力を持った、大げさに言うと畏敬にも似たもののように感じられる。
対して、シンはアヤコのテンションとはまた全然違う。
当時、どちらかというと、自分よりも“下に見”ていたのだ。
シンにとって思春期の自分は“高慢”であり、その象徴的な台詞が、バンド仲間へぶつけたもので、物語が進む中で度々登場し、後に自分への問いかけにもなる、
クソ田舎で一生埋もれて暮らせ!
なんだろうなって。
この台詞はたまたま耳にしてしまったアヤコへも突き刺さっていたわけで…ストレートにどーんと、遅れて自分にも突き刺さるという。
再会の時が近づき、それぞれ状況は違えど、焦燥、不安、期待…色んなものが渦巻く。
そして、再会間近にして、自分自身が変わらなければならない瞬間がやってくる。
アヤコは自分の見ていた“きらきら”を違うかたちで見ることができることに気づく。
シンも現在の自分にしか得ることのできない、“高い空”を見上げている。
夢を叶えることよりもそれを変わらず追い続けていくことの方が難しいのかもしれない。
甘酸っぱいだけでは一生を過ごすことはできない。
けれど、あの日あの時があったから前へ進める、生きていくことができる。
そう思える瞬間が、アヤコとシンにとっては卒業式の日だったんだろうなと思う。
小さくって芯の強い、ひたすらシンに信頼と憧れを寄せるアヤコに、“想う”力の強さ-そして脆さも-を見せつけられた。 -
Posted by ブクログ
豊島ミホさんは、二冊目。
随分前に『陽の子雨の子』を読んでレビューも書かずにいるけれど、湿気を含んだような二人の感じが拭えずに今もある。
この『リテイク・シックスティーン』は、ある本で紹介されていて手に取った。
二十七歳の孝子が、シックスティーンをリテイクするという不思議な設定の話。
じゃあ孝子がやり直した高校生活をどう感じるかが主軸なのかと言うと、視点である沙織、そして大海と村山くん、それぞれの生が描かれていて、楽しめる。
しかし、ずっと残るのは二十七歳という中途半端な年齢で、どうしてリテイクしようと考えたんだろう。
もちろん、ああ、やり直したいなあーと考えることは単なる願望として、ある。でも、やり直したって、今以上の良きものになる自信も、ないのだ。
永遠に回っていればいい、という沙織の言葉の投げかけは、生きていることの意味を見出せない孝子には凶器だっただろう。
ただ、リテイクしたいという執念だけで超越してしまう孝子の闇は、なかなかに凄まじいものがあるのだと思う。
作品では、そんなハードな面はほとんどと言っていいほど描かれない。だから、謎は謎として私の中にぐしぐしと残ってしまう。
沙織の視点から見ると、丸く収まる青春小説。
けれど、孝子の視点から見ると、そこにまったく別の怖さが佇んでいる。
裏リテイク・シックスティーンとして、この前提をひっくり返すようなもう一冊が出て欲しい。 -
Posted by ブクログ
再読ですけれどもね…いや、単行本の方は読んでいたんですけれども、今回、文庫化もされているということで読んでみました…
僕と著者は性器の差こそあれど同じ人間…著者の類稀なる文章センスに脱帽しました…!!
とは言い条、脱帽なんてしてませんけれどもね。 ←え??
さすがに言い過ぎました…だけれども、元気付けられたのだけは本当です…! 著者はワケあって小説家を辞めてしまったのですけれども、これを読んで復帰…とまではいかないまでもちょこちょこ、こういったエッセイとか書いてくれないかなぁ~と思いました…。
20代女子の等身大の姿が表れているやうな、そんなエッセイでした。おしまい…。
ヽ(・ω・)/ズコー -
Posted by ブクログ
ネタバレ表題作「青空チェリー」は“女による女のためのR-18文学賞”第一回読者賞(ネットで公開した応募作品の中から一般の読者が選ぶ賞)を獲得した作品。
R-18文学賞ができた時に、「青空チェリー」がちょうど公開されていて、ちらっと読んで、何だか気になっていた作品。
うーんとね。意外とすきです。
正直、かるーいゆるーいお話を想像していたのですが、胸にくるもんがあるんです。
「青空チェリー」はちょっと“えっち”なお話、っていうくらいで、いやらしい感じというよりは爽やかな感じすらしました。
そして、同時収録の「ハニィ、空が灼けているよ。」と「誓いじゃないけど僕は思った」がまたじんときた。
解説をされている書評家の藤田香織さんが述べられているように「泣ける」小説ではなく、「泣きたくなる」小説だと確かに思いました。
私は教授とハニィの間に挟まれたことはないし(「ハニィ、空が~」)、中学の時から想い続けているひとがいるわけではないけれど(「誓いじゃないけど~」)、こみあげてくるものがありました。
すごく清々しい小説を書く方だな、と。
単行本~文庫化にあたって、けっこう書き直しをされたそうなのですが、単行本の方も読んでみたい。