豊島ミホのレビュー一覧
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匿名
購入済み意外な引き出し
この作者には内向的な若者の青春をみずみずしく描いた作品が多いので、こんな引き出しもあるのかと驚いた。あとがきで語られるように、作者の凄まじいコンプレックスと、それでも捨て去ることはできない美への憧憬が人形に強く息を吹き込んで、執念すら感じられる濃密な物語を形作っている。
ここに出てくる主人公たちは、生きた時代から容姿のレベルに至るまで、いつもの短編集以上にバリエーション豊か。また、人形の性質や姿かたち、物語の起承転結にも想像力が炸裂している。人形や「美」というものが、いかに深いインスピレーションを作者に与えているのかが伝わってくるようだ。 -
匿名
購入済み地味だけど、ドラマは濃い
出だしがあまりにむさ苦しい雰囲気なので、なかなか入り込みづらかった。でも何とか前に進んでみたら、嘘みたいに「読んでよかった」という感想に変化した。
この短編集に書かれているのは、どれも「あるある」「ありそう」と思えることばかり。と同時に、「こんな物語は見たことがない!」「よくこんな状況をすくい取って物語にすることができるなあ…」という感想も抱かされた。
ここに描かれているようなことは、あまりに繊細な揺れであるために、大抵の人間には感知するのが難しく、それゆえに今まで物語化されてこなかった風景なんじゃないかと思う。
だから、「ありそう」なのに「見たことがない」のだ。
私はこの本に -
Posted by ブクログ
学校という場所にいる、傍若無人に振舞う「あいつら」が嫌い。人を侮る「イケてる組」を呪う(呪ってないか?)地味女子だった作者のエッセイ。
美形やお笑いでテレビや雑誌に出ている人達は、人口比率からするとわずかなので99%の普通の人は見る側になる。
なのに、高校というところは、ミニ世界なので、そこで謎のスター枠、お笑い枠、スポーツヒーローの役割が割り振られるのだ。
その枠に入らない大部分の学生は、何故か劣等感を感じさせられるのだと思う。
中学や前のクラスでは、そのスター枠にたまたま入っていたりすると、二軍落ちした時の落胆は並では無い。ただし、ほとんどのスター枠の子達は卒業したらただの人に -
Posted by ブクログ
ラジオドラマがきっかけで購入。
高校生活のありふれた日常かと思いきや、友人・孝子が未来からやってきたという設定で、面白かったです。
もし、孝子が主人公となると、北村薫さんの「スキップ」の逆バージョンな展開?などと想像を掻き立ててしまいました。
未来がわからない主人公・沙織と未来がわかる貴子とのアンバランスな関係ながらも他のクラスメイトを交えながら、高校生活を送る様が、甘酸っぱく爽やかでした。SFな設定なのに青春小説の雰囲気を醸し出していて、あまり違和感なかったです。
一応、タイムスリップものですが、孝子は本当に未来から来たのか?タイムスリップの真相は?というものはなく、ひたむきに生きる高校生 -
Posted by ブクログ
2019/10/7
初めて豊島ミホさんの本を読みました。以前から気になってた本だったので読むことができて良かったです。
内容は青春小説ですが、なんだか絶妙なバランスがあってすごく読みやすいし話に引き込まれる感じです。短編ですが話が連動していて、それぞれの話の主人公的な人物が次の話の主人公となんらかの形で繋がっていたりするので、ストーリー仕立てにもなっているような気がします。
すごいバランスがいいという印象を受けたのはあとがきを読んだ時に納得したんですが、ストーリーが派手なことに極端になってなくて、学校だったり日常だったりで、いわゆる普通の人にスポットを当てた話になっているからだと書いてあって、 -
Posted by ブクログ
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じわっと泣くか、
ぶわっと泣くか、
今でも胸が痛くなる......。
あの頃を思い出すと切なくなる。
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豊島さんの作品が本当に好きで好きで、
ずっと勿体なくて読めなかった一冊です。
サマバケ96
コスモスと逃亡者
椿の葉に雪の積もる音がする
僕と桜と五つの春
短編なんですが、
それぞれがそれぞれに「詰んでる」閉塞感を抱えてます。
私はどれも好きです。
読み終わったあとに、ふるえるんです。
なんか、心がざわざわするんです。
いてもたってもいられなくなるような。
学生時代に出会えて良かった。
一気に引き戻してくれる。あの頃の感情