あらすじ
かすみの秘密は、頬をぴしりと打つと涙をこぼす等身大の男の子の人形。学校で嫌なことがあると、彼の頬を打つのだ(「ぽろぽろドール」)。美しい容姿のあきらは事故で顔に酷い火傷を負う。事故前と全く違う人生を送る彼は、醜い恋人と別れた後、昔の恋人によく似た美しい人形に出会う(「僕が人形と眠るまで」)。人形に切ない思いを託す人々の物語。
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匿名
意外な引き出し
この作者には内向的な若者の青春をみずみずしく描いた作品が多いので、こんな引き出しもあるのかと驚いた。あとがきで語られるように、作者の凄まじいコンプレックスと、それでも捨て去ることはできない美への憧憬が人形に強く息を吹き込んで、執念すら感じられる濃密な物語を形作っている。
ここに出てくる主人公たちは、生きた時代から容姿のレベルに至るまで、いつもの短編集以上にバリエーション豊か。また、人形の性質や姿かたち、物語の起承転結にも想像力が炸裂している。人形や「美」というものが、いかに深いインスピレーションを作者に与えているのかが伝わってくるようだ。
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人形に色々な思いを託す人々の6編の短編集
駅で切符を買うときに後ろに人が並んでいるのにもたついてしまう時、道を間違えて人の流れに逆らって歩かなければならない時、しまったなあという行動をする時、「ああもし私が美人だったら、今舌打ちされなかっただろうな、苛々させなかっただろうな」と思ってしまう。
それは自分の性格が歪んでいるからだと分かっても、反射的にずっと。
だからこの本のあとがきに書かれていたのは、私にも共感できることで、この短編集はそれぞれ救いようがないようで、救われるような美しいものだったように感じた。
働いて、広い社会に出て、何十年間か後に読んだらまた違うかも。
「手のひらの中のやわらかな星」と「僕が人形と眠るまで」が特にすき
Posted by ブクログ
綺麗で可愛いお人形に心を引き寄せられた人たちのお話。
ドールが好きで容姿にコンプレックスありと、思い当たる節がありすぎる自分にはグサグサと突き刺さりすぎて痛い内容でした。
(僕が人形と〜はスーパードルフィーをモチーフにしてる?いや、でもなんか憶測で書いてるから実際のドール界と色々ずれてるぞ!と、勝手にモヤモヤしてしまいましたが)
瑞々しくて痛々しくて淡く儚い、美しいお話でした。
Posted by ブクログ
お人形はこわいから、実物は苦手なんです。でも、何故かテーマに惹かれ、表紙やタイトルにも惹かれ読みました。
一般的に共感を多く集められるのかはわからないけれど、私にはとても馴染む世界でした。あとがきを読んで納得。作者さんも私も同じ「ヒエラルキー」の中で苦しんできたんだ。
文章がまた美しいです。お人形の美しさを表しているような。
最後のお話だけはなかなか人形が出てこなくて、あれあれ?と読み進めて……いやはや、うまく纏まっていました!
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人形は人間が作るから、作るのに、その人間は人形に及ばなくて、人形って不思議なものだと感じました。
人形にまつわる短編集ではあるけれども、かえって人間の感情が繊細に表れているような気がしました。
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喪女の思いを描くことにかけては他の追随を許さない作家、豊島ミホの「人形」をモチーフにした短編集。装丁の美しさ、美しくも残酷なストーリー、どれをとっても素晴らしく、何度も読み返したくなる作品。
特に「手のひらの中のやわらかな星」、「サナギのままで」が切なくて泣けた。
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ドール好きにオススメ。
ドールにはまるひとの気持ちがわかっている著者だと感じた。表題作のぽろぽろドールではドールに対する歪んだ愛着も描かれており、読んでいて怖い反面面白く感じた。
Posted by ブクログ
2012/3/3
人形にまつわる短編6編。
「手の中のやわらかな星」と「きみのいない夜には」が好きかな。
なんとなく自分の居場所を見つけた感じのラストが。
逆に「僕が人形と眠るまで」は痛々しくてしんどい。
これが最後に来るのがイジワルだなーと思う。
Posted by ブクログ
人形を軸に物語られる6つの短編集。
あとがきにもあるように、人形は美の象徴として描かれていて、直間それぞれで美が語られる。
途中まで、というより最終話までは面白いけど軽い印象で読めていたんだけれども、最終話の最後数行でガツンと打ち据えられた。そんな印象。
最終話は14歳で交通事故にあった男の子の話で、冒頭の交通事故にあった瞬間「あ、僕の整った顔が」と感じたということから始まる。
その後主人公は諦観というのだろうか、己の不幸を呪うでなく、失ったものを悔やむでなく、やや淡々と事実を俯瞰するように生きていく様子を描かれる。
それでも、ある日街で見かけた人形によって「昔自分がいた世界、調和があった世界」の存在を忘れていたことに気づかされる。
この最後の物語の何がすごいって、過去と現在の対比というか明暗というか、それははっきりしたもののはずで、ややもすれば不幸が強調されがちになりそうに思うのに、過去を淡々と美しく描くだけで、現在はさほど悲壮な描かれ方をしない。だからだと思うんだけど、読んでいても気持ちが落ち込んできたりはしない。
明らかに心は過去に囚われているのに、たとえば「秒速5センチメートル」みたいなギリギリとした心の鬱屈みたいなものは感じない。
自己愛に完結してゆくからだろうか?
最後の数行はただただはっとさせられる。
最後の一話を読むためだけに買ってもいい本だと思う。
すごい。
Posted by ブクログ
豊島さんがあとがきで書かれてるように、この短編集にでてくるのは「綺麗でかわいいお人形」に憧れる普通の、いやどちらかというと目立たない子。
私含め見た目に自信が無い人なら共感しちゃうことがいっぱいだと思う。
やっぱり豊島さんは平凡な子たちを切り取ってくれて、でもそれを「特別」にするんじゃなくて
ちゃんと等身大で書ききってくれるところが好き 。
個人的に好きなのは、『サナギのままで』。
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人形愛について。
本の装丁が綺麗だったのでジャケ買いしたのですが、内容はどろどろとした自己愛や容姿への羨望やコンプレックスにまみれていて、とても怖かった。故に幸せな夢を見ているようなドリーミン乙女なカバーイラストなのかな〜なんて、思いました。長井朋子さんという画家さん、気になる◎
*追記
調べたら、長井朋子さんも人形愛好者なのですね。ということはこの本は、やはり人形愛の一冊なのですね。
お人形さん、特別好きでもなかったけど、なかなか興味深いものだ〜。
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人形にまつわる6つの短編集。
私は人形について特に意識する事も無かったので、この短編集を読んでそれぞれ違った人形に対する想いがあるんだな…と思いました。
憧れの人を人形に重ねて、ってパターンが多いような。。
「ぽろぽろドール」って響きが印象的。
「手のひらのなかのやわらかな星」の主人公は、好きな事に対してすごい行動的で、読んだ後に微妙に焦った。
見習いたいなぁって思う。
表紙や扉絵のデザインや、フォントの感じが好きだ。
それこそなんか人形っぽい。
Posted by ブクログ
人形に想いを寄せる人たちの短編集。
マネキンサイズの人形は、お店で服着て立ってるものしか
見たことが無いし、りかちゃん人形にもそんなに執着が無かった
自分にとっては、新しい世界を見たようでした。
同じ表情でただそこにいるだけの人形が、人の気持ちによって
どんどん「人」に近づいていくような感じがとても生々しかった。
何も語ることなく自分の思い通りになるからこそ愛着が沸くのは、
ぬいぐるみでもそうだよな、と、自分のまわりにあるものたちを
改めて考えてしまいました。
Posted by ブクログ
☆サナギのままで
思い出っていうのは不思議なものだ.
どんなものだって時間が経てば色褪せていくけれど、
それは、その思い出の価値による.
例えば10年も前のことでも、まるで昨日のことのように
鮮明に光を放っていることもあれば、
ほんの最近のことでも、記憶の彼方に追いやられてしまって
もうぼんやりと霞んでいることもある.
大切な思い出は、いつもすぐ傍に感じられるものなんだろう.
共有している思い出を、相手も同じように大切にしてくれて
いたらいい.
それだけで、体の深いところでつながっているような気が
するから.
Posted by ブクログ
美しい人形に切ない思いを託す人々の物語。
全体的に悲しい色に覆われているが、なぜか温かさを感じる。特に「手のひらの中のやわらかな星」には、深く感銘を受けた。
Posted by ブクログ
人間は死ぬまで自分のコンプレックスとうまく折り合いをつけて生きていく。美しいものの概念は人それぞれ違ってくるが、もしそれを独り占めできればその瞬間だけ救われる。虚しいだけだと知っていても求めてしまうのかなって感じた。
Posted by ブクログ
さて。。。。
6つの短編で構成されているのですが、その内の幾つかは納得できないと言うか、共感できないと言うか。
それらは一般的に男性が理解できない女性の感覚なのか、それとも豊島さんの個性なのかは良く判りません。
まあ、人形と言うものに思い入れのない私には理解が難しい話なのかもしれません。