磯田道史のレビュー一覧

  • 明治維新で変わらなかった日本の核心

    Posted by ブクログ

     日本社会には律令政治から脈々と受け継いだ権威構造が保存されていて、それが近代化のための資源をスムーズに準備した、というのが本筋。たとえばサラリーマン根性的なものは江戸時代にはすでに始まっていた。領地はまとまってなくてバラバラだし、年貢米も直接受け取るのではなくいったん大名や幕府の蔵に入ったあと切米(給料)という形でもらうと。武士社会の残滓は、長くいる人が得をするだとか、意思決定の主体があいまいだとか、兼業を許さないとか、いろんなところにあると。
     発見の多い本なのだが、対談なのでいまいち焦点が絞り切れていないのが惜しいところ。

    0
    2018年12月09日
  • 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

    Posted by ブクログ

    大好きな火神の見方がとてもお気に入り。
    国取り物語とか世に棲む日々とかも、また読みたくなってくる。

    考えてみるとこういう仕事は大切。一度読んでいろいろインパクトを受けた作品は、再度読むとまた新しい何かを与えてくれるけど、常に積読がある自分が既に中身知ってる本に向かうには、それなりのきっかけが要る。十分な考察と愛着が詰まったre-introductionはまさにそのきっかけを与えてくれる。

    0
    2018年11月25日
  • 天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災

    Posted by ブクログ

    NHK「英雄たちの選択」の司会をしている磯田先生、本でもテレビ同様に語りが熱いです。
    災害を研究するようになると、もう誰も災害で死んでほしくないと思うようになる、というのは自分にも経験がありますが、磯田さんもそんな思いがあるのでしょうな。

    0
    2018年11月18日
  • 日本史の内幕 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで

    Posted by ブクログ

    結局、磯田先生の「専門」というか、「志向」は「古文書」なんだなと。
    「古文書」が何かを調べる「手段」では無く、もはや古文書に触れるのが「目的」にすり替わってるんじゃね?ってのが感想。

    ああ、こんな薄っぺらい親書で「戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで」ってあるんだから、断片的で薄い記述しか無いのは事前に気付よ、俺(^^;

    まあ、箇所箇所にいろいろと示唆するモノが無いわけでは、無いけどな。

    0
    2019年09月14日
  • 素顔の西郷隆盛(新潮新書)

    Posted by ブクログ

    今年の大河ドラマの主人公の西郷隆盛。
    そのドラマ『西郷どん』で時代考証を担当している磯田道史さんが、様々な文献から西郷隆盛の人物像を掘り下げる。

    西郷は純粋すぎるからこれだと思ったらひたすらそれに向かって突き進む熱い男。 
    それゆえに人を惹きつけ魅了するが、事を成す為には手段を択ばないので周りには常に死の影が。

    そんな西郷の為人がどのように形成されていったのかに興味がある人におすすめ。

    0
    2018年10月02日
  • 明治維新で変わらなかった日本の核心

    Posted by ブクログ

    現代の日本社会が江戸時代の武士組織に由来したものであることを論じたものだが、中世に地方が役を果たせば職業を保護するかたちの下で発展し、江戸時代になると、検地をしてもらうことでの百姓が土地の所有権を持ち、自立して市場経済が発展していったという流れもおもしろい。

    騎馬民族征服説は今はほぼ否定されているが、応神・仁徳政権が強力な騎馬を持っていたことは確からしい。蘇我氏あたりが中心になって、大陸や朝鮮半島に学んで軍隊と官僚制をつくったと考えられる。

    8世紀に発行された貨幣の流通は畿内に限られ、11世紀の初めから150年間は貨幣が使われなくなったが、12世紀半ばに中国からの宋銭が大量に輸入されて以降

    0
    2018年10月31日
  • NHK英雄たちの選択 江戸無血開城の深層

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    NHK「英雄たちの選択」の放送の中から、「江戸無血開城」に関連する4回分の放送とそれに著者が加筆し、再構成したものです。
    主要な登場人物は、徳川慶喜、勝海舟、和宮、篤姫等です。そして最後は勝利者であったはずの西郷はなぜ非業の死を遂げたのか・・・というテーマで切り込んでいます。

    幕末の時代に対して、私が予てから持っていた疑問は、
    ①幕府は外国に対して開国するにあたり、禁じ手である天皇の勅許を必要としたのか?
    ②鳥羽伏見の戦いに敗れた後、徳川慶喜は何故いとも簡単に政権を放り出したのか?
    ③勝海舟は元々の直参旗本でもないのに、何故老中格となりえたのか?
    ④西郷や大久保は下級武士なのにどうして、藩政

    0
    2018年09月16日
  • 歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ

    Posted by ブクログ

    無知なもので、歴史学はてっきりもう「終わった」学問なのかと思っていた。先人たちによってほぼ研究され尽くし、たまに誰かの蔵で眠っていた書物から新事実が発見、なんてニュースが世間を賑わせることはあっても、それはよほどのレアケースなのだと。
    ところが磯田さんのこの本を読むと、歴史にはまだまだ日の当たるのを待っている事実が山積しているらしい。

    磯田さんはフットワークも軽く地方を飛び回り、膨大な古文書を読み解き、わずかなキーワードを頼りに一つひとつの謎に迫っていく。
    そりゃ7時のニュースで読まれるほどの大発見ではないかもしれない。でも、井伊直政なんて、あまたの歴史小説やドラマで描かれて来た人の最期が、

    0
    2018年09月10日
  • 戦乱と民衆

    Posted by ブクログ

    戦乱の中における民衆の生き方、というような視点で、日本史を見る視点を変えてみましょう、という啓蒙的新書です。その意味では現在の日本で十分役割は果たしていると思います。
    けれど、同じような視点での研究、著作ならこれまでも少なからずあったんじゃないの?という気がしてならないのですが。たとえば藤木久志さんとか。

    0
    2018年09月02日
  • 龍馬史

    Posted by ブクログ

    H30.8.6-8.14

    明るくて合理的、自由で行動的。貿易を行い戦争もする「海軍」として、亀山社中を創設し、薩長同盟を実現させた坂本竜馬は土佐藩で、どのように育まれたのか?どんな世界を見ていたいのか?誰に暗殺されたのか?竜馬をめぐる数々の謎に歴史家の磯田道史が挑んだ。竜馬を知れば、幕末が見えてくる。

    (感想)
    この著者、文章上手ですね、読ませてくれました。

    0
    2018年08月15日
  • 龍馬史

    Posted by ブクログ

    坂本龍馬の人気は絶大で、まるで英雄扱いですね。

    それは司馬遼太郎の小説【龍馬が行く】が多大な影響を与えているようです。(読んでいませんが(^^ゞ)

    彼は過大評価されすぎているのじゃないかというのが、ぼくの感覚です。

    彼が評価される実績は:

    1)薩長同盟を仲介した

    2)大政奉還を実現させた

    3)船中八策によって新政府の青写真を描いた

    でしょうが、彼が独自に編み出したのではなく、受け売りだったというほうが正しいのです。

    それより、彼が主導したのではなく、そういう方向に上手く利用されたとぼくは勘ぐっています。

    だって、彼ほどフットワークが良く、各方面との顔が利く人物はとても利用価値

    0
    2018年07月13日
  • 素顔の西郷隆盛(新潮新書)

    Posted by ブクログ

    西郷隆盛について、知らなかったエピソードがいっぱい。西郷隆盛が矛盾の塊でありながらも人気が高く、大久保利通がなぜ不人気なのか、の理由の一端がわかる。

    0
    2018年05月22日
  • 素顔の西郷隆盛(新潮新書)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    毀誉褒貶の多い(「毀」「貶」の割合が勝ってるかな?)今年の大河ドラマ『西郷どん』。その時代考証を担当している磯田道史氏による「大西郷とは何者か?」論。
    その生涯を軸とし、幕末の薩摩藩の状況、取り巻く人々、歴史の流れなど、史料を駆使してさまざまな視座から“西郷どん”の人となりを語り下ろす。

    【以下、ネタバレあり】





    やはり西郷さんは「純」そのものの人だったんだな。と言うのが率直な感想。ただ、「純」という言葉にもいろんな意味があるわけで、まさにつかみどころがない。文中にもあるとおり「面倒くさいヤツ」だったのだろう。
    けっこう躁うつ気質だったみたいだけど、そのあたりを中野信子先生にも解き明

    0
    2018年05月21日
  • 歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ

    Posted by ブクログ

    初めての磯田さんでした。テレビで拝見するのと同じ歴史愛を感じました。常に古文書に当たり、それをもとに健全な想像力で楽しませて頂きました。 特に第4章「震災の歴史に学ぶ」には深く納得。今日の科学を以ってしても大地震の予測は困難。でも歴史は、「必ずこの日本には定期的に大震災が起きる」ことを明らかに示している。その大きさまで。科学的探求は勿論必要だが、素直に歴史の力を借りることは極めて重要だと感じました。

    0
    2018年05月06日
  • NHKさかのぼり日本史(6)江戸 “天下泰平”の礎

    Posted by ブクログ

    綱吉の治世や寛政の改革は批判的に扱われがちだが、今の日本人の道徳観を形作った、素晴らしい面があることを知れた。

    0
    2018年05月01日
  • 素顔の西郷隆盛(新潮新書)

    Posted by ブクログ

    私自身が今までふれたことのある西郷隆盛像とは一線を引く、聖人君子ではない描かれ方に興味を惹かれました。

    緩慢な自殺としての、人生。
    死の影。

    偉人であることには変わりなく、影の部分にも魅力を感じることのできる姿がそこにありました。
    当時の考え方についても具体的に紹介されており、背景と合わせて人物のあり方が描かれているのもいいなと思いました。

    0
    2018年04月23日
  • 龍馬史

    Posted by ブクログ

     龍馬の生涯を語れば、幕末史の生きた教科書となる。龍馬を巡る謎に歴史家が挑む。

     若かりし頃、小説の影響で熱烈な龍馬ファンになって以来、最近は、やはりあれは所詮小説だからと少し冷めてきたいたので、この作品を読んで、改めて龍馬の魅力を感じることができました。

     龍馬の手紙を始め、数々の史料をもとに語っていく龍馬像は、小説とは違った冷静な視点で龍馬に迫ることができました。

     龍馬暗殺の真犯人説も説得力があり、自分もこの著者の考え方に納得しました。

     自分の中で龍馬の存在がまた少し大きくなりました。

    0
    2018年02月19日
  • 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

    Posted by ブクログ

    司馬遼太郎が作家になった経緯の戦車の話、本書を読む前からいつも頭に残っている。◆国盗り物語、花神、坂の上の雲か…◆◆歴史的英雄ばかり書いていると思っていたが、脇役の目を必ず入れていたのかねぇ。◆◆南北朝時代をあまり書いていないのは、戦争への道に行った原因とは思っていなかったのか。◆◆やっぱり花神だよね。倅にDVDみせよう。

    0
    2020年07月27日
  • 日本史の内幕 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    帯には「小説や教科書ではわからない魅力」とある。
    著者ご本人も、まえがきで「教科書的な、表向きの歴史理解にとどまって、歴史常識を維持したい方は、読まれないほうが良い本かもしれない」と述べている。

    自分はどちらかというと、「歴史は暗記」というイメージを持ち続けていた。これは学生時代の教師が良くなかったのだと、本書を読んでやっとわかった。小学校や中学校の先生が、著者のような先生だったら、きっと歴史の授業は楽しくて仕方がなかっただろう。

    著者は、古文書を読める。ダイレクトにその時代と接点を持つ。誰かから聞いた間接的な情報ではなく、自分の目で直接真実を追求し、そこから見えてくるものをさらに深堀して

    0
    2021年02月12日
  • 明治維新で変わらなかった日本の核心

    Posted by ブクログ

    ハンコは、江戸時代の農民もみんな持っていて、読み書きはもちろん、企業家であり、農地の所有権も移動も自由にできた。なんか時代劇のイメージなのか悪代官の圧政に苦しめられていたように思っていたので、新鮮だった。磯田道史の本をしばらく追いかけてみたい。

    0
    2018年01月12日