磯田道史のレビュー一覧
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天然痘や麻疹、スペイン風邪など、ワクチンもなかった時代に日本人はどのように感染症に対応してきたのか。感染症はどのようにして広まり、終息したのか。患者はどこで感染したのか。学者による研究や当時の人々の日記などから考察する。特に大正時代のスペイン風邪は、現代のコロナウィルスと似たところもあって興味深い。
2020年9月発行で、コロナ第1波が落ち着いたあたりに執筆されたようだ。その後だいたい予想されている通りの展開になっている。
非常事態宣言下で自粛中、タイムリーな読書だった。今のコロナウィルスのパンデミックは、歴史にどういう影響を与えるんだろうか。 -
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私は普段バリバリの理系派なのですが、「江戸」というワードに何故か言葉では形容し難い粋な魅力を感じます。そこに、現代的な「お金」の側面を示唆するタイトルがありついつい購入しました。
カラー版で合間合間に文献資料もあり、大変魅力的でした。難しい言葉も多く、もう少しルビや注釈付きだと熟読でき、助かるかなと個人的には感じました。
本書を通すと、現代に比べてインフレを考慮した、貨幣制度や社会システムが未熟なせいか、当時の物価が極めて高いことを感じさせられます。
その反面、貧しい農民と大名たちの様な上位役職との二極化が顕在化していることも理解でき、ある意味現代に通ずるものかもしれません。
年収という現実的な側面から書かれた本書の着眼点はとても面白く、江戸時代の社会背景や文化を交えながら楽しんで読むことができました。 -
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ネタバレ第二次大戦中、陸軍の戦車(走る棺桶)連隊に配属され終戦を迎えた司馬遼太郎が、終戦後「なんとくだらない戦争をしてきたのか」との思いに悩む。これが、司馬の日本史に対する関心の原点となったという。
その陸軍を作り上げた権力体のもとを辿っていくと、織豊時代に行き着く。その戦国から、幕末、明治の小説を取り上げながら、司馬遼太郎が「鬼胎」と呼んだ昭和初期の「日本人の姿(メンタリティ)を見つめ直す」構成になっている。
日本人には2つの側面(p.54)があるという。
○合理的で明るいリアズムをもった、何事にもとらわれない正の一面
○権力が過度の忠誠心を下のものに要求し、上意下達で動く負の一面
歴史を動かす人間」とは、もちろんひとつ目の人間である。「思想」で純粋培養されたひとではなく、医者のような合理主義と使命感を持ち、「無私」の姿勢で組織を引っ張っていくことができる人物(例えば大村益次郎)である。
なぜ日本の陸軍では不合理がまかり通ったのか。深く考えないという日本的習慣はなぜ成立するのか。明治時代の日本の軍隊は常に新しい強力な武器を持って相手を圧倒する精神があったかもしれないのに、いつからそのような国になってしまったのか(p.71)。
司馬が「鬼胎」と呼んだ時代の萌芽は、日露戦争の勝利(日比谷焼討事件)にあるという。「日本国と日本人を調子狂いにさせた」(p.149)。多くの軍人が「華族」になり、隣国など他者を貶めて優越感を感じる「歪んだ大衆エネルギー」にも繋がった。もし勇気あるジャーナリズムが日露戦争の実態を正しく伝えていれば、これ以上の長引く戦争は日本を自滅させることがわかったはず(他にも、日本に大きな負の要因要員をもたらした。太平洋戦争で、ソ連が仲裁に働くという期待から、戦争を長引かせ被害を甚大にした。北方領土問題も作り出した)。
時代を変革するために必要なのは、「合理主義」と「客観性」。そして「リアリティ」と「変化に対応できる柔軟な頭」。こうして、国・集団を誤らせない、個人を不幸にしないリーダー像を司馬遼太郎は描く。
そのリーダー像の対極にあるのが、伝統(形式)に囚われた人物や組織の在り方、合理主義とは相容れない偏狭な「思想」にかぶれて仲間内だけしか通用しない異常な行動を平気で採ってしまう人や集団。「思想」は人間を酩酊させる。この結果が、敗戦(300万人を超える不条理な死)であった。
最後に、日本人の最も優れた特徴は「共感性」(いたわり)だという。日本語に主語がないのは「無私の心」があるからだともいう。相手の気持ちになりやすい。気持ちが溶け込んでいる。異文化の人にも適応し理解できる能力、そして「自己の確立」。これらが21世紀に生きる人に重要だと締めくくる。それにしても、司馬遼太郎の小説から受取るメッセージは、現代と未来の日本人に向けた強烈なメッセージでもあると改めて痛感する。 -
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コロナ前から「感染症の歴史」的な本は、数多くあっていろいろと読んできたのだが、コロナ以降は日本の感染症を扱った本が増えた。
ふだん古い時代を考えるとき、つい戦前と戦後、明治と江戸では断絶された世界のように感じがちだ(教科書の記述から受ける印象もそんな感じ)。
しかし、数々の日本の感染症にまつわるエピソードを読むと、日本(人)の歴史は途切れることなくつながっていて、そして震災同様、日本人は忘れっぽい(教訓が生かせない)のだなあと改めて感じさせられた。政治や行政の対応が遅れがちなのも、今に始まった話じゃない。
と読んできて、、、
最後に、著者の師匠である、速水融氏のことを描いた章が登場する。正直、本書の趣旨とは少々ズレているような気がするのだが、実はこの章が一番の読みどころ。
数量史料を駆使する、速水史学の考え方、アプローチがコンパクトにかつ分かりやすくまとめられている。著者と速水氏の関係、速水氏が網野義彦氏、宮本常一氏について語ったくだり等々、読み物としても面白い。この章だけでも本書を手に取る価値がある……とは少々言い過ぎか。
”積ん読”してある、速水氏の名著『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』も読みたくなった。 -
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江戸時代、鎖国下の日本。オランダ商館長が残した日本の災害の記録。国内資料とは異なる冷静な事実の記載は貴重な一次資料。
鎖国下の日本で交易を続けられたオランダ。商館長が残した日記。それは奇しくも災害大国日本の記録でもある。
たまたま江戸参府に際し、明暦の大火に遭遇し江戸の街を逃げ惑った記録。元禄地震で大きな被害を受けた小田原ほか東海道沿いの被害地域。長崎からも近い島原での「島原大変肥後迷惑」など。
母国オランダに比べ地震も多く火災も多かった日本。被害の状況と共に災害慣れしてすぐに復興に向けて動き出す人々。
後世の創作や解釈の余地のない貴重な記録である。
現在の日本人には分かりづらい、江戸時代の風習などはあの磯田直史氏が解説。そもそも本書の成り立ちも筆者と磯田氏の会話から始まったそうだ。
長期スパンで見ると災害は繰り返される。本書のように過去の埋もれた記録を調べ、未来に向けて対策する企画は素晴らしい。