磯田道史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
現代の日本社会が江戸時代の武士組織に由来したものであることを論じたものだが、中世に地方が役を果たせば職業を保護するかたちの下で発展し、江戸時代になると、検地をしてもらうことでの百姓が土地の所有権を持ち、自立して市場経済が発展していったという流れもおもしろい。
騎馬民族征服説は今はほぼ否定されているが、応神・仁徳政権が強力な騎馬を持っていたことは確からしい。蘇我氏あたりが中心になって、大陸や朝鮮半島に学んで軍隊と官僚制をつくったと考えられる。
8世紀に発行された貨幣の流通は畿内に限られ、11世紀の初めから150年間は貨幣が使われなくなったが、12世紀半ばに中国からの宋銭が大量に輸入されて以降 -
Posted by ブクログ
ネタバレNHK「英雄たちの選択」の放送の中から、「江戸無血開城」に関連する4回分の放送とそれに著者が加筆し、再構成したものです。
主要な登場人物は、徳川慶喜、勝海舟、和宮、篤姫等です。そして最後は勝利者であったはずの西郷はなぜ非業の死を遂げたのか・・・というテーマで切り込んでいます。
幕末の時代に対して、私が予てから持っていた疑問は、
①幕府は外国に対して開国するにあたり、禁じ手である天皇の勅許を必要としたのか?
②鳥羽伏見の戦いに敗れた後、徳川慶喜は何故いとも簡単に政権を放り出したのか?
③勝海舟は元々の直参旗本でもないのに、何故老中格となりえたのか?
④西郷や大久保は下級武士なのにどうして、藩政 -
Posted by ブクログ
無知なもので、歴史学はてっきりもう「終わった」学問なのかと思っていた。先人たちによってほぼ研究され尽くし、たまに誰かの蔵で眠っていた書物から新事実が発見、なんてニュースが世間を賑わせることはあっても、それはよほどのレアケースなのだと。
ところが磯田さんのこの本を読むと、歴史にはまだまだ日の当たるのを待っている事実が山積しているらしい。
磯田さんはフットワークも軽く地方を飛び回り、膨大な古文書を読み解き、わずかなキーワードを頼りに一つひとつの謎に迫っていく。
そりゃ7時のニュースで読まれるほどの大発見ではないかもしれない。でも、井伊直政なんて、あまたの歴史小説やドラマで描かれて来た人の最期が、 -
Posted by ブクログ
坂本龍馬の人気は絶大で、まるで英雄扱いですね。
それは司馬遼太郎の小説【龍馬が行く】が多大な影響を与えているようです。(読んでいませんが(^^ゞ)
彼は過大評価されすぎているのじゃないかというのが、ぼくの感覚です。
彼が評価される実績は:
1)薩長同盟を仲介した
2)大政奉還を実現させた
3)船中八策によって新政府の青写真を描いた
でしょうが、彼が独自に編み出したのではなく、受け売りだったというほうが正しいのです。
それより、彼が主導したのではなく、そういう方向に上手く利用されたとぼくは勘ぐっています。
だって、彼ほどフットワークが良く、各方面との顔が利く人物はとても利用価値 -
Posted by ブクログ
ネタバレ毀誉褒貶の多い(「毀」「貶」の割合が勝ってるかな?)今年の大河ドラマ『西郷どん』。その時代考証を担当している磯田道史氏による「大西郷とは何者か?」論。
その生涯を軸とし、幕末の薩摩藩の状況、取り巻く人々、歴史の流れなど、史料を駆使してさまざまな視座から“西郷どん”の人となりを語り下ろす。
【以下、ネタバレあり】
やはり西郷さんは「純」そのものの人だったんだな。と言うのが率直な感想。ただ、「純」という言葉にもいろんな意味があるわけで、まさにつかみどころがない。文中にもあるとおり「面倒くさいヤツ」だったのだろう。
けっこう躁うつ気質だったみたいだけど、そのあたりを中野信子先生にも解き明 -
Posted by ブクログ
ネタバレ帯には「小説や教科書ではわからない魅力」とある。
著者ご本人も、まえがきで「教科書的な、表向きの歴史理解にとどまって、歴史常識を維持したい方は、読まれないほうが良い本かもしれない」と述べている。
自分はどちらかというと、「歴史は暗記」というイメージを持ち続けていた。これは学生時代の教師が良くなかったのだと、本書を読んでやっとわかった。小学校や中学校の先生が、著者のような先生だったら、きっと歴史の授業は楽しくて仕方がなかっただろう。
著者は、古文書を読める。ダイレクトにその時代と接点を持つ。誰かから聞いた間接的な情報ではなく、自分の目で直接真実を追求し、そこから見えてくるものをさらに深堀して