磯田道史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
災害という視点で見ていくことで、日本史をより深く理解できるようにもなる一冊。
日本に住む以上、地震、津波などの天災と無縁ではいられない。これは多くの日本人が肌感覚でわかっていると思う。
古来より日本は天災の多い国だった。本書を読めば、それがよくわかる。
歴史から学ばなければ、僕らは命を奪うような天災には対処できない。なぜなら、一人の人間が幾度も経験できることではないからだ。人は失敗からしか学べないともいわれるが、失敗すなわち死に直結するような災害を何度も乗り越えながら学んでいくのはあまりにもリスクが高い。
だから思う。すべての日本人の基礎教養として、この手の知識をもっと学ぶべきであると。 -
Posted by ブクログ
新型コロナウィルスで世界が一転した現在だからこそ読んでほしい一冊
日本はいかにして感染症を乗り越えてきたか?
感染症の歴史や予防、そしてワクチンやウィルスという概念のなかった時代にいかにして日本人は戦ってきたのか?
平安の史記、江戸時代の随筆、政治家や文豪たちの日記や記録から見る感染症の歴史を記した本。
日本人のゾーニング文化
疫病を忌神としてとらえた「張り紙」護符文化
歴史を変えた「はしか」パンデミック
攘夷を加速させた「麻疹」
スペイン風邪の脅威
皇室や宰相を襲った感染症
文学者たちが残したスペイン風邪の記録
などなど…
目に見えないウィルスと戦ってきた日本人の歴史
今も昔も変わらな -
Posted by ブクログ
天然痘や麻疹、スペイン風邪など、ワクチンもなかった時代に日本人はどのように感染症に対応してきたのか。感染症はどのようにして広まり、終息したのか。患者はどこで感染したのか。学者による研究や当時の人々の日記などから考察する。特に大正時代のスペイン風邪は、現代のコロナウィルスと似たところもあって興味深い。
2020年9月発行で、コロナ第1波が落ち着いたあたりに執筆されたようだ。その後だいたい予想されている通りの展開になっている。
非常事態宣言下で自粛中、タイムリーな読書だった。今のコロナウィルスのパンデミックは、歴史にどういう影響を与えるんだろうか。 -
Posted by ブクログ
私は普段バリバリの理系派なのですが、「江戸」というワードに何故か言葉では形容し難い粋な魅力を感じます。そこに、現代的な「お金」の側面を示唆するタイトルがありついつい購入しました。
カラー版で合間合間に文献資料もあり、大変魅力的でした。難しい言葉も多く、もう少しルビや注釈付きだと熟読でき、助かるかなと個人的には感じました。
本書を通すと、現代に比べてインフレを考慮した、貨幣制度や社会システムが未熟なせいか、当時の物価が極めて高いことを感じさせられます。
その反面、貧しい農民と大名たちの様な上位役職との二極化が顕在化していることも理解でき、ある意味現代に通ずるものかもしれません。
年収という -
Posted by ブクログ
ネタバレ第二次大戦中、陸軍の戦車(走る棺桶)連隊に配属され終戦を迎えた司馬遼太郎が、終戦後「なんとくだらない戦争をしてきたのか」との思いに悩む。これが、司馬の日本史に対する関心の原点となったという。
その陸軍を作り上げた権力体のもとを辿っていくと、織豊時代に行き着く。その戦国から、幕末、明治の小説を取り上げながら、司馬遼太郎が「鬼胎」と呼んだ昭和初期の「日本人の姿(メンタリティ)を見つめ直す」構成になっている。
日本人には2つの側面(p.54)があるという。
○合理的で明るいリアズムをもった、何事にもとらわれない正の一面
○権力が過度の忠誠心を下のものに要求し、上意下達で動く負の一面
歴史を動かす人 -
Posted by ブクログ
コロナ前から「感染症の歴史」的な本は、数多くあっていろいろと読んできたのだが、コロナ以降は日本の感染症を扱った本が増えた。
ふだん古い時代を考えるとき、つい戦前と戦後、明治と江戸では断絶された世界のように感じがちだ(教科書の記述から受ける印象もそんな感じ)。
しかし、数々の日本の感染症にまつわるエピソードを読むと、日本(人)の歴史は途切れることなくつながっていて、そして震災同様、日本人は忘れっぽい(教訓が生かせない)のだなあと改めて感じさせられた。政治や行政の対応が遅れがちなのも、今に始まった話じゃない。
と読んできて、、、
最後に、著者の師匠である、速水融氏のことを描いた章が登場する -
-
Posted by ブクログ
江戸時代、鎖国下の日本。オランダ商館長が残した日本の災害の記録。国内資料とは異なる冷静な事実の記載は貴重な一次資料。
鎖国下の日本で交易を続けられたオランダ。商館長が残した日記。それは奇しくも災害大国日本の記録でもある。
たまたま江戸参府に際し、明暦の大火に遭遇し江戸の街を逃げ惑った記録。元禄地震で大きな被害を受けた小田原ほか東海道沿いの被害地域。長崎からも近い島原での「島原大変肥後迷惑」など。
母国オランダに比べ地震も多く火災も多かった日本。被害の状況と共に災害慣れしてすぐに復興に向けて動き出す人々。
後世の創作や解釈の余地のない貴重な記録である。
現在の日本人には分かりづらい、江