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国史研究史上、初めての発見! 「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が完全な姿で遺されていた。仕事は経理、小遣い5840円、借金地獄、リストラ……。タイム・カプセルの蓋を開けてみれば、江戸時代史や日本近代史の見直しを余儀なくされる驚きの連続。気鋭の研究者による意欲作。
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筆まめの極地
ドキュメンタリータッチの導入部から一気に読者を引き込む筆致は、学者の著作とは思えないほど巧みである。描き出し方が上手な上に、描かれている内容が十二分に称賛に値するものである。日記をつけている当人たちは将来この資料がどれほどの値打ちを持つものである ということをまるで意識していないと思われるが、今日 ...続きを読むこれほど詳細で 些末な 生活記録というのは、実に貴重であると思わざるをえない。 中国の史書は、将来の人にどう読まれどのように評価されるかを、常に意識しながら書いたようだが、その分 内容が歪められることも多かったように思う。本書のように他人に読まれることを気にしていない資料こそ、精度が高いと思ってしまう。
Posted by ブクログ
ある日古本屋で入手した一冊の家計簿から武士の生活を読み解き、映画化までしてしまった。歴史学の面白さは、磯田先生が本書を通じて教えてくれた。
武士は貧乏だったと聞いていたが実態は知らなかった。猪山家の家計簿から武士の生活を読み解き、当時の社会とその価値観を味わえた。 内職以外の副業が許されなかったことや、親族の行事への多額の出費など、身分費用が収入を超えてしまうという話が面白かった この割に合わない身分制度のおかげか、明治維新になると武士...続きを読むたちがあっさり身分を捨てることができたからこそ、短期間に日本社会が大きく変化を遂げることができたという考察も良かった。 また、土地から税収を受け取れる武士たちが、その土地へ行くことや影響を与えるようなことを控えるようにされていたことから、地行を剥奪されることに抵抗を示さなかったり、逆に土地に積極的に関わっていた九州の藩では強い抵抗感があったから西南戦争に繋がったという考察も面白かった。 武士たちが親族同士で助け合い、小規模の金融システムを構築していたことや、投資にも積極的だったことを知り、自分たちの生活を良くしたいという気持ちは過去も現代も変わらないのだと思った。
家計簿だけでなく手紙も解析されているからなのか、ものすごくドラマに満ちた猪山家の生き様を覗かせてもらった。 武士は食わねど高楊枝、とはなんとなく聞いたことがあったものの細部に至るまでを丁寧に見せてもらって腑に落ちた。 猪山家を通して時代を俯瞰するならば、 御算用者として評価されても借金に苦しむこと...続きを読むが避けられないような制度・構造だったから、武士の時代が終わりを迎えたのだと頷ける。 御算用者として評価されてきたからこそ、激変する明治維新の荒波の中でも実力を示し、最終的に海軍に出仕することができるような時代が来たとも言える。 おじいちゃんになってからも教育熱心なのは、やっぱり学問の大切さが身に染みていたんだなあ。ソロバンで頭ぶちのめすのは勘弁して欲しいけど。 いずれ士業はAIに取って代わられるのかもしれないけど、御算用者のように緻密な計算の鍛錬によってしか磨かれない視座というか世界があるのだろうか。 不安定な世の中で身を助けるのは実学スキル、というあとがきも込みで、刺さりました。
おもしろい。 タイムカプセル開封感がたまらない。旧金沢藩士の猪山家は代々「御算用者」という会計•経理の家柄だった。幕末に新政府の会計方を任され、明治以降は海軍に出仕した。経理のプロが自家の借金返済のために付け始めた家計簿が、現代までよく残っていたものだ。関連する手紙類も含めて、取りまとめて保管した几...続きを読む帳面さも驚嘆に値する。 一応、大学で歴史学を学んだ身としては、何となく『こうじゃないかな』と類推していた幾つかのことに正答を得られた感じで満足感が高い。 だが、私がこの本を読んで何よりも感じいったのは別の所にある。それは"藤沢周平の小説のもつ時代描写の的確性"だ。ご存知の通り、藤沢周平は学者ではない。様々な文献にあたったり取材したりして書いたのだろうが、描かれたフィクション(時代小説)は江戸期の武家生活を見事に活写していたと言わざるを得ない。何か、『事実が後から追いついた』…そんな感覚に陥ったのだ。 …という訳で、藤沢周平ファンはぜひ一読してみる事をお薦めします。家計のやり繰りに苦心する歴代の猪山家の人々が、藤沢周平作品に登場する無名の人々に重なって見えるかもしれません。
はしがきから引き込まれました。その筆致も見事なのですが、積み上げられた膨大なナレッジから飛躍のない考察を展開する点はいかにも歴史学者らしく、それらのバランスが本書を良書たらしめています。 明治維新は家の由緒で禄を食んでいた旧弊な士族を没落させた一方で、実務の才覚を頼りに細々とやりくりしていた士族に...続きを読むスポットライトを当てました。磯田先生も折に触れて述べられているように、維新後の士族についての一面的な理解を改める必要があります。 目を見張るべきは、猪山家が現代の平均的な家庭より遥かに高い金融リテラシーを有していた点です。 ・自力で債務整理。債権者を相手に有利に交渉し残額を無利子に ・家禄奉還を申請。制度廃止のリスクと現在価値計算上の優位性を踏まえ一括支給を選択 ・支給された家禄は運用。期待リターンを比較し許容可能なリスクを考慮した上で、地価の下げ止まり・要用会社の信用リスク低下を待って投資 理財の才に長けていたとはいえ、動乱期に安直に貯金に走らず、熟慮を重ねて私財を運用しようとした合理的で冷静な判断力は推して知るべしです。
ゲームのルールはいつか必ず変わる。その時に、今いる状況の外に出ても必要とされる能力を持っているかが人の死活をわける。 かつて家柄を誇った士族の多くは、家柄など、過去を懐かしみ、現状に不平を言い、そして将来を不安がった。 一方、自分の現状を嘆くより、社会に役立つ能力を身につけようとした士族には未来が...続きを読む来た。 恐れずに真っ当な事をすれば良いのである。
面白かった~! 幕末から明治にかけて、約37年間にわたって記録された武士の家計簿。この家計簿を残したのは、金沢藩の御算用者である猪山家だ。この貴重な記録をもとに、幕末の武士の経済状態はどうだったのか、何にいくら使っていたのかを考察する。また、猪山家は家族間の書簡も残していて、幕末から明治にかけての激...続きを読む動の時代に、藩という組織を失った士族たちの暮らし向きがどうなったのか、何を思っていたのかも伝えてくれる。 幕末の武士の暮らしを知ることができる意味でも、激動の時代を生きた親子三代のドラマとしても面白い。
武士だって生活がある。おカネのやり繰りをしないといけない。そんな当たり前の事を生々しく教えてくれる。 でも、この本の本質はそれではないのかも。。。
時代は幕末。新しい時代を築くべく行動を起こした若きリーダー達(坂本龍馬や高杉晋作など)ではなく、歴史上無名の一介の士族・猪山家がこの激動の時代をどう生き抜いたかが家計簿と手紙のやり取りから手に取るように見える。 "歴史とは過去と現在のキャッチボールである” テクノロジーによって日々目まぐ...続きを読むるしく進化する今の世の中をどう生き抜けば良いのかという問いを持って本書を読んだ時、過去から返ってきたボールに学びを得た。幕末という激動の時代に生きた士族の運命は、世襲によって得た肩書や特権の上にあぐらをかいていた者と、”既存の組織の外に出ても、必要とされる技術や能力をもっている”者で大きく分かれた。これからどんな時代が来ようと、求められる人材というのは変わらないのだろう。これだけは誇れるという技術や能力を磨き続ければ、未来を恐れることはない。
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武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―
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磯田道史
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