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オランダのハーグ国立文書館には、歴代の長崎オランダ商館長の日記が残されています。1633年から幕末におよぶこの日記は、日本の社会や文化を知る情報の宝庫で、なかでも火災や地震、噴火など当時の災害が克明に記録されているのです。明暦の大火、元禄地震の災害のなか人びとはいかに生きたか。磯田道史氏解説付!
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Posted by ブクログ
江戸時代は戦争がなく平和な時代だというイメージがあったので、地震や火事、噴火といった災害が多発しているのが意外でした。災害で大変な中、焼け野原の上にすぐ新しい家を建て、被害を冷静に受け止める日本人のたくましさにオランダ商館長と同じように驚きました。地震の被害に遭っても、オランダ商館長達をできる限りサ...続きを読むポートする日本人の姿に、日蘭の絆の深さを感じました。
第一章、第二章では、江戸時代に火災が非常に多かったということに驚いた。細かな火災に関する記録だけではなく、商館長の心情も記録されていて興味深い。また、火災が多い理由や明暦の大火以降に発展していく深川の町についても書かれており江戸時代を知ることができる部分もおもしろいと思った。第六章の島原大変肥後迷惑...続きを読むに関する記載は、細かく描写され、頭の中で映像化されやすく、津波が起きた時の海の様子はとても印象に残った。
江戸初期から幕末まで日本との貿易が続けられたオランダ。布教目的を持たない東インド会社で、商館長をはじめ幹部には報告書を兼ねた日記を義務付けていたことで、はからずも江戸の災害を記録・保存できた。明暦の大火、元禄地震など商館長が体験した大災害の様子がよく理解できた。長崎でも地震が頻発していたとは、管見に...続きを読むして知らず。しかし、雲仙岳という活火山の近くに位置する長崎であることを考えると納得できる。人工島である出島では、地割れが起きた記録はあるが、液状化の記録がないことに驚く。当時の土木工事の技術力の高さもすごい!
江戸時代というのは、戦乱のようなことが無かったことから、様々な社会制度や経済活動が色々と進歩して種々の文化が花開いた平和な時代であったが、その他方で地震や洪水や火山噴火、更に年が壊滅的被害を受ける大規模火災というような災害が相次いだ時代という一面も在った。 地震や火山噴火や大規模火災というような出来...続きを読む事の衝撃、被害状況の伝聞、現場や近くに居合わせた場合の経験というようなことに関しては種々の記録も伝えられていて、それが現在も研究されている。そういう種々の記録の中に、少し異色かもしれないが、非常に興味深いモノが在る。「欧州の人達が綴ったモノ」である。 江戸時代を通じて、「欧州の人達」と言えば、公に滞日することが許されたのは<オランダ商館>の人達位なものである。そのオランダ商館の商館長の大切な役目の一つに、「日記」と呼び習わされているというが、業務関係のメモから交際の状況や慣例、諸々の見聞等に関して「詳細な報告記録を綴る」ということが在ったのだという。 この歴代の商館長の手による「日記」はオランダで研究史料として大切に保存されているというが、本書の著者はそれらを紐解いて、商館長が綴った事柄に依拠しながら彼らの経験や同時代の見聞を整理して説いている。そして本書では、内容の一部に、江戸時代の色々な事情に関する解説的内容も付されている。 本書では4代将軍家綱の頃から11代将軍家斉が登場というような時期に至るまで、17世紀半ばから19世紀初め頃までの時代に歴代の商館長が綴った“災害”を取上げている。 「17世紀半ばから19世紀初め頃」と一口に言うが、十分に長い期間で、歴代の商館長も大勢であり、商館の業務や周辺事情も変わっていて、各商館長が書き綴ったモノにもそれぞれに特色が見受けられる。また商館長も“人間”であるのだから、各々の性格や生い立ちや経歴から来る考え方が綴られたモノに反映されていて興味深いという側面も在る。そういうことで、本書は商館長による災害の経験と見聞とを軸にした、「列伝:オランダ商館の人達」という物語を想わせるような面白さも含んでいると思う。 本書で改めて意識せざるを得なかったが、本当に驚く程に多く火災や地震の報が在って、商館長地震が経験した例も枚挙に暇が無い。そして商館長達が驚きを交えながら綴っていることでもあるが、災害を被った都市等は急速に復興をしている。更に何度も被災と復興を繰り返しながら街の歴史が刻まれているとさえ言える状況だ。 「17世紀半ばから19世紀初め頃」にはオランダや周辺の国々―長崎のオランダ商館には、オランダ以外の出身者も在った…―から日本へは、日本での滞在制限を度外視しても、簡単に訪ねられるのでもない。そういう場所での活動故に商館長は詳しい報告記録を求められたということになる。それが本書のような研究に見事に活きている…そして同時に、どんなに便利な世の中になっても、簡単にいくことが叶うでもない場所に在るという機会が生じたなら、可能な限り色々な記録を行って、それを公にすべきであろうというようなことも思ったが… 何れにせよ、本書は「17世紀半ばから19世紀初め頃」という“江戸時代”を「少し違った切り口」で鮮やかに見せてくれる、なかなかの労作だ。著者や、彼を補佐した様々な関係者に敬意を表しながら、一読の価値が高い一冊として広く御薦めしたい。 積み重ねられた専門的な研究の成果を、幅広い層の“門外”の人達にも判り易いように整理して、知識を拡げる…「新書」というようなモノが持つ役割なのだと思うが、本書はそういう役割を確りと果たしてくれる!!
オランダ商館長や関係者など当時の滞在外国人が残した日本の災害が記されています。この本での”江戸”は、江戸時代と考えるのが良いでしょう。大火、地震、火山災害と主な災害について書かれていて、彼らの在任期間にほぼ全ての災害が網羅されている印象がありそれは改めて日本が災害大国であることを強く感じさせます。...続きを読む 翻訳者の名がないのを訝しんでいたのですが、著者が日本語で書いたようです。歴史は単国では存在しないのですから多国語が操れることは良いことだと思いました。
江戸時代、鎖国下の日本。オランダ商館長が残した日本の災害の記録。国内資料とは異なる冷静な事実の記載は貴重な一次資料。 鎖国下の日本で交易を続けられたオランダ。商館長が残した日記。それは奇しくも災害大国日本の記録でもある。 たまたま江戸参府に際し、明暦の大火に遭遇し江戸の街を逃げ惑った記録。元禄地...続きを読む震で大きな被害を受けた小田原ほか東海道沿いの被害地域。長崎からも近い島原での「島原大変肥後迷惑」など。 母国オランダに比べ地震も多く火災も多かった日本。被害の状況と共に災害慣れしてすぐに復興に向けて動き出す人々。 後世の創作や解釈の余地のない貴重な記録である。 現在の日本人には分かりづらい、江戸時代の風習などはあの磯田直史氏が解説。そもそも本書の成り立ちも筆者と磯田氏の会話から始まったそうだ。 長期スパンで見ると災害は繰り返される。本書のように過去の埋もれた記録を調べ、未来に向けて対策する企画は素晴らしい。
このような本をつい手に取ってしまうのも、パンデミックと災害に、非日常という点で一脈通じるところがあるからだろう。 ワーヘナールによる明暦の大火の記録はまさにパニック映画さながら。江戸で大火事に巻き込まれるオランダ人一行だなんて本当に絵になるのではないか。そこまで直接的に災害に巻き込まれた商館長は他...続きを読むにはいないものの、頻発する余震の描写など東日本大震災後の日々を思い出させる。 江戸の町が焼けても焼けても懲りずに瞬く間に再建される様子も。日本人の災害に対する一種の無常観は、同時代のオランダ人から見てもなにか特異なものに見えたようだ。 オランダ人(この本の著者はベルギーの方ですが)と江戸の災害といえば『鯰絵』が思い出されるが、『鯰絵』は構造主義人類学で日本人の深層に迫るみたいな感じで、個人的にはちょっとついていけなかったのだが、こちらはより世俗的というかストレートでわかりやすい。
江戸の災害、この場合は江戸時代の災害の話。災害大国と言われる日本は、鎖国時代に日本に来ていた外国人の目にどう映ったのか。実際に見たことから人伝に聞いたことまで色々なことが載っていた。誤記なのか通訳のミスなのか当時の人々の心境なのか被害数字は誇張されたものもあるが、それが当時の情報の混乱を表してるよう...続きを読むにも思えた。外国人の目に映った災害が細かく知れる資料。
新書であまり5は付けないんですが、いやー これは良かった。日本人ならぜひ一読すべき。 長崎にいたオランダ商館長が、毎年将軍への謁見として江戸参府を義務付けられていて、 その過程の中で火災や地震に巻き込まれており、その詳細を商館長それぞれの個性で日記に描いている、という新しい視点で 日本の江戸災害史...続きを読むをまとめた1冊。 明暦の大火を生き抜いた冷静なワーヘナール、 神経質で元禄地震に敏感なタント、 地震が怖すぎて描写が全て悲劇的なハルヒト、 京都大火に偶然にも遭遇したファンレーデ、 全て個性が違ってて非常に面白い。またわかりやすい文体で読みやすい。 随所に入る磯田さんの解説もいい。 面白いなと思うのが、昔から日本人は地震や災害に慣れすぎてて、地震が起きても 悲しむ間もなく、すぐに復興活動を始める。 その姿がオランダ人からすると「????」となってるのがすごく面白い。 なんだこいつらと思ってたんだろうな、文化や考え方の違いが現れてて非常に面白かった。
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オランダ商館長が見た 江戸の災害
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フレデリック・クレインス
磯田道史
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