磯田道史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
磯田氏が2003年から2015年までに文芸春秋などの雑誌に書いたももの21編をまとめたもの。
内容別に
「中世の武士と近世の武士の違い」
「歴史を動かす英才教育」
「古文書を旅する」
「歴史を読む」に分かれている。
中世の武士は家臣団といっても寄せ集め、主人が不利とみるや逃げ出すが、織田信長あたりから戦の最後まで主人に付き添っている形になった。また現代のものの考え方のルーツも鎌倉とかまでは遡らず、江戸時代で、それは織田・豊臣・徳川の美濃・尾張・三河の濃尾平野で作られた、と考えていいいという。
教育が成果を出すには3代かかる。
なぜ太平洋戦争で軍部は独走したが、それは教育システムのせいだという。江戸も中期になると家柄にとらわれず優秀な者もとりたてようと藩校などが作られた。維新の英雄は教育に力を入れた藩から出ており江戸時代からの生き残りで下級武士が多かった。次の世代、日露戦争あたりの乃木将軍や大山巌などは第一世代をみつつ新しい組織になじんだ。次の第3世代、東条英機あたりになると維新は知らず、出世するのは筆記試験に強い秀才が集まり、人材の多様性が無くなり、専門知には長けているが総合知が無かったから、という。
そして現代、重要視されるべきは技術知だろうという。
最後の「語り下ろし日本史「必読の百冊」」では、原始から現在まで古今の著作100冊を引き合いにざっと、日本史を通観していて、これがとても分かりやすい。
氏が当たった史料の多さには恐れ入る。それでこそプロなのだなあ。ただ文が、ですます調と、だ調が混じっているので読んでて調子が狂う。 -
Posted by ブクログ
このような本をつい手に取ってしまうのも、パンデミックと災害に、非日常という点で一脈通じるところがあるからだろう。
ワーヘナールによる明暦の大火の記録はまさにパニック映画さながら。江戸で大火事に巻き込まれるオランダ人一行だなんて本当に絵になるのではないか。そこまで直接的に災害に巻き込まれた商館長は他にはいないものの、頻発する余震の描写など東日本大震災後の日々を思い出させる。
江戸の町が焼けても焼けても懲りずに瞬く間に再建される様子も。日本人の災害に対する一種の無常観は、同時代のオランダ人から見てもなにか特異なものに見えたようだ。
オランダ人(この本の著者はベルギーの方ですが)と江戸の災害といえば『鯰絵』が思い出されるが、『鯰絵』は構造主義人類学で日本人の深層に迫るみたいな感じで、個人的にはちょっとついていけなかったのだが、こちらはより世俗的というかストレートでわかりやすい。 -
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中編「穀田屋十三郎」「中根東里」「大田垣蓮月」の3作品所収
「穀田屋十三郎」は最近、映画「殿、利息でござる!」になっている
この中編も感動したけれども、「中根東里」に強く惹かれた
中根東里
天才詩人と言われていても(当時、江戸時代は漢詩であるが)後世に名を知られず
作品がほとんど遺されていず、生涯もあまりわかっていない人らしい
作者の磯田さん「じゃあ、どうやって調べて、書くのか?」
という疑問がわくが、文学研究者で社会経済史的な史料を読みこなす術にたけた方
『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』
と、これも映画でブレイク「武士の家計簿」の原作者でもあり
司馬遼太郎さんの史観とはまた一味違う、どちらかと言えば山本周五郎さんに近い
この3編をまとめて「無私の日本人」としているところが
性善説に富んだ史観から書いていらっしゃると思う
さて
「中根東里」という儒者の人物像
書物が好きで朝から晩まで寝食忘れて読んでいる人
貧なるが故、小坊主としてお寺に出される
そこで成長したが好奇心旺盛な彼は
漢詩を極めるため唐音(中国語)を学びたいとて京都黄檗山万福寺に行く
(余談だが、わが家はこの黄檗宗の宗派、親近感を持ったけれど)
彼は初期の目的、中国語はすぐ上達したが
禅宗とは「禅の心は行住坐臥のふるまいに宿る」で書見を禁じる場所
書物からも学びたい彼は失望し、そこも離れる
(えええっ、わたしも興を削がれた、というのはどうでもいいが)
江戸にもどって「荻生徂徠」なる博識・文章家の評判を聞く
そしてそこでもかれは失望するのだ、紆余曲折があって
書物を読みに読み
ついに道をさとるというか、今でいう哲学を知るのである
磯田さんの文章による東里の到達したことは
「みなさん、書物には読み方というものがあります。書を読む人は、読む前に、まず大どころは、どこかを考え、そこをきちんと読むことを心掛けてください。(後略)・・・みなさんは道を得るために、まっしぐらに、書物のなかの大切なところをみつけて読んでいかなくてはなりません・・・」
書物は解説を解いていくのではなくみつけるもの、言うなれば書物は読まなくてもいいくらい
「天地万物一体」がわかればいいらしい
なんか、わたしもこう書いてきてわかったようなわからないような(笑 -
Posted by ブクログ
発売当初、書評欄で紹介されてから気になっていた本で、書店でいったい何回手に取っては棚に戻すを繰り返したことか。
日本史を題材にした小説を読みたいと思い、司馬遼太郎作品は、「竜馬が行く!」のほかは挫折の連続。小説の途中で、司馬氏の説明、独演が挟み込まれるのに抵抗有り。本当に魅力的な作品を知りたくて、尚且つ、司馬歴史観満載の日本史をひも解く作品として読むならば、という心構えを教えてくれる本として手にとった。
結果、読みたい本として挙がってきたのは、「花神」「峠」。
こうやって誰かに解説を加えてもらうと興味が勢いづいて、本を読もうという気持ちが倍増するから不思議。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルで想像していた江戸時代に起こったエピソードを記したもの、とはちょっと違った。
必ずしも江戸時代に限らない。
何しろ夏目漱石の奥さんのことまで書いてあるのだから。
でも今の日本は、敗戦で劇的に姿を変えた部分と、それでも変わることのなかった部分があり、この本を読んでいると日本人に生まれたことがむふむふと嬉しくなる。
昔から、そして世界で一番へその緒を大事にする日本人なんて書かれた暁には、ご先祖様とも子孫たちともへそで繋がっている気がしてきます。(今の私のへそは人工物ですが)
徳川将軍家の起床時間は朝6時、大名は7~8時、天皇は8時ころに起床していたらしい。
現在の重役出勤なんてのとは逆で、将軍が一番早起きだなんだって。
信長と親しかった細川幽斎が信長が滅んだわけを語っている。
一度敵対したものは謝ろうが家来になろうが許そうとせず、一度でも信長の不興をかった家臣は殺されると思いこみ、次々に背いたのだって。
さて、大河はどう切り込んでくるのかな? -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。経済関連の話はあまり得意ではなく、というのもお金って増やして商品増やして消費を増やして、その先のビジョンって何なの?って思っててそれがなんかよくわからないからなんだけど、
経済状況をこうやって、家計簿っていうふうに残すことで、その当時の暮らしや思想や価値観を丸ごと残すことが出来るんだ、と思って、それは経済の特筆すべきところだなあと思った。
出費と収入をおさえれば、どんな仕事をしていたのか=その社会の産業 も、何の浪費をしていたのか=その当時の流行やサービス もわかるし、出産グッズやちょっとした買い物で家族の歴史が追える。特にこの本では丁寧な解説もあって、当時の人がどんなことを考えていたのかというのが丸分かりなのが、すごいと思った。武士の刀をうっぱらったりとか。
本書はある一家を丸々追ったルポタージュのようになっていて、物語風なのが面白く読める。歴史の研究の醍醐味を感じた気がした。成之が死んだのが、うちのまだ生きている曾祖母とちょうどタッチの差だというのも、歴史と言えど、つい自分の鼻先くらいの場所の出来事だったのだなと思われて、現代に繋がってる感が面白かった。
時代は変われど人はそれを嘆かず、こつこつとやれることをやる、というのもよかった。こんな幕末に比べたら、今の世は落ち着いているようには思う、だからと言ってどちらがよいとは言えないし生きている限りどんな世でも不幸の種はつきないと思うけど、
だからこそ他の時代の苦労もわかるし参考になるところもあるのかもしれない。やっぱりサラリーマン世代の、特にリタイア少し前の人とかに、おすすめだなと思う。