磯田道史のレビュー一覧
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ネタバレ著者は最近はマスコミに売れに売れ、毎週どこかのテレビ局に出演している影響で堕落したのか、出版される本は、新聞の連載で書き散らしたものを集めた雑文が読き、同じ歴史学者の本郷和人の方がじっくりと読ませるような感じがしていた。
しかしこの本は、最近としてはやっとまともな姿に戻った感じがした。
面白かったのは、「江戸から読み解く日本の構造」で、中国の科挙と日本の世襲(宗族と小家族)との比較でその弊害を見ると、どっちもどっちという感じがした。
日本では1000年も続いた武士の時代の後に、最後の300年で世襲制が完成された。このシステムを著者は、信長・秀吉・家康が完成させた「濃尾システム」と呼んでいる。 -
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★★★2019年5月★★★
『武士の家計簿』などの著作で知られる、磯田氏による西郷論。西郷こと吉之助少年は、周囲から「ややこしい奴」だと思われていたらしい。自らの高い志のため、妥協する事がなかったからだろうか。
君主斉彬の死、自らの入水自殺未遂、弟吉二郎の死、多くの出来事が西郷に影響を与えた。命知らずの西郷はこうして形成されてゆく。
西郷は征韓論者であったかという議論については、西郷は積極的な征韓論者ではなかったと筆者は述べる。
岩倉らが欧州視察に赴いた際の留守政府が非常に優秀だったという考えは、井沢氏の意見と一致。そもそも「留守」政府という言い方自体がおかしいという考えには僕 -
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天災は忘れた頃にやってくる、昔の人の言い伝えは言いえて妙ですね。私に関するものでは、1995年の阪神大震災、それを忘れた頃に実際に18階の勤務先で体験した、2011年の東日本大震災です。
この本では天災という視点から、磯田氏が日本史を解説してくれています。日本史という一つの流れを色々な切り口で眺めてみると、また違った面白さを発見することが出来ます。
以下は気になったポイントです。
・江戸時代の大名時計の目盛りは、一刻(約120分)を10分の1に刻んだものが多い、聖職者が鐘をついて時刻を下々の者に知らせる時間知識のエリートの地位を失った時こそが、近代社会の到来である(p3、4)
・天正地 -
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かつて実際した日本人で私利私欲を捨てて、ひたすら人のために活動した人達の物語。
3人紹介されてますが、一番有名なのは穀田屋十三郎のエピソードだと思います。
私は観てませんが「殿、利息でござる!」というタイトルで映画化されています。
予告編だとひたすらテンション高めの音楽で楽しげな雰囲気を醸し出してますが、原作は悲壮感漂ってます。
仙台藩の吉岡宿はこれと言った特産もなく、米作と宿街の収益によって細々と生活していた。
時代は江戸時代。
参勤交代の莫大な費用負担によって農民の生活は苦しく、さらに夫役によって疲弊していた。
仙台藩は救済のため公的補助的なものを出したが、吉岡宿は家老に与えたれた -
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今をときめく歴史学者・磯田道史さんの本。
『武士の家計簿』や『殿、利息でござる!』(そういや羽生結弦くんも出演していた)などの原作を書いた方。
古文書を、まるで新聞を読むようにスラスラ読めるという磯田さんが、古文書から拾い上げた色々な人物のことをわかりやすく紹介してくれている。
この本を読んで良かったのは、東芝の祖になった「からくり儀右衛門」こと田中久重について知れたこと。
9歳で金庫の鍵構造と同じ物を独自に作ったことから始まって、文字書き人形を作り、蒸気機関を作り、蒸気船を作り、アームストロング砲を作り、自転車を作り、通信用電信機を作り……。
こんなレオナルドダヴィンチみたいな天才 -
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西郷隆盛という人がいなかったら、今のこの国のかたちはなかったかもしれない。
しかしそのキャラクターは子供のように自然体すぎる。人にはない大きな愛と力を持ちながら、ときには全てをほりだして逃げ、脱力し、自然へと帰っていってしまう。
子供みたいな純真な側面がありながら、策謀をはじめるといくらでも悪辣なことを思いつく頭脳、自分が思う世の中を創ると決めたら、それに必要な作業へと変換できる天才的な革命家、人を選ぶ時の抜群の上手さ(西南戦争時の桐野、篠原らは例外?)、そして理不尽な身分制や差別に対する怒り、いずれ人は死ぬのだという諦観。
「人間、いかに大きな仕事をしても、後を残さないことこそ -
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日本人をよく知ろうシリーズ。教科書に載ったりするような人ではないけれど、地域のため、人のため、国のために尽力した3人の史実を描いたもの。伊達藩吉野宿の極貧の民を救うべく、全財産を投げ打って資金を集め、藩に貸し付け、金利を取るという前代未聞の策を実現した穀田屋十三郎。このエピソードは映画化もされている。史上最高の儒者、詩文家と言われた中根東里。西郷の江戸攻めの際、自重をもたらした影の張本人と言われる大田垣蓮月。なんでも金で解決しようとしたり、成長のみが成功であり幸福であるという価値観や強迫観念。このままではもう保たないというぼんやりとした懸念を持っている所に、こう行った無私、憐憫の情、献身、謙虚
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