望月哲男のレビュー一覧

  • 白痴1

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    いわゆる5大小説の中では最も読みやすく、19世紀末のペテルブルクを楽しめました。世俗にまみれた人々の中に天使のような人物が舞い降りたらどうなってしまうのか。

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    2024年01月07日
  • 戦争と平和1

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    ネタバレ

    (2023-05-10L)(2023-06-03L)(2023-06-28L)(2023-07-18L)

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    2023年08月04日
  • イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ

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    黒沢明監督の現代映画『生きる』がイシグロカズオ氏の脚本でリメイクされたと聞き、改めて生きるを視聴しよう!と思った矢先に出会った一冊です。

    黒沢監督はこのトルストイの短編から着想を得て、死を間際にした男が何を考えるか、説こうとしました。
    本作品はその原型として読んでみたのですが、似た展開をしつつ、違うものです。

    黒沢映画は、作中で主人公の死を突然挟むことで、観るものに驚きを与える効果を狙ったようにみえます。
    前半だけ観ていたら『もしかしたら彼は助かるかもしれない』と思うこともできる。

    対して、トルストイはそういった驚きよりも、不可避の死を冒頭数ページで描写します。
    助かるかどうかという可能性はゼロにして、必然的に起きる死に対して、その過程が書かれます。
    最期の数時間の描写は三度読みするほど迫真です。

    この原作と『生きる』、そして2023年公開の『living』を一気見して、三者三様の死との向き合い方を比べてみようと思います。



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    2023年03月01日
  • 死の家の記録

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    ドストエフスキーによる監獄の記録ということになる。自身の体験を元にしたフィクションであり、モデルと思われる人もていねいに解説があってわかりやすい。大きなストーリーが流れているというわけでもなく、期待感もないのだが人物の観察が妙におもしろく読める。監獄とはいえ、かなり開放的になっているのは今とは違うようだが、ロシアとはこんなものなのかもしれないと思わせる。

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    2022年09月04日
  • 青い脂

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    2068年。シベリアの遺伝子研18に所属するボリスは、かつての恋人へ猥語だらけの手紙をクローン伝書鳩で送りつける。その文面から明らかになるのは、ロシアの偉大な文学者のクローンを造り、彼らが作品を書いたあとに体内で生成される反エントロピー物質〈青脂〉を取りだすという計画。だが全てのクローンから青脂を採取した日、パーティー中の遺伝子研をシベリアの地下に拠点を持つカルト教団のゲリラが襲う。未来のインテリが操る中国語とロシア語のチャンポン言葉、プログラム言語のような猥語、クローンが書いた文体模写小説、歴史改変された1950年代ロシアの狂乱などで組み上げられた、鮮烈なヴィジョンと嗤いの書。


    なーんもわからん(笑)。ボリスの手紙に始まり、受取人の姿が明らかになって閉じる構造は美しいのだが、そのあいだには全く違う物語が語られるので、読後はカタルシスというよりポカーンとしてしまった。でもソローキンを読むのは初めてだけど、"この人にしか書けない"という強烈な個性を持つ書き手なのはよくわかった。
    造語まみれの手紙からスタートするのはかなりハードルが高いけど、登場人物の言葉遣いから未来の世界像を明らかにしていくSFは、小説が言語芸術であることに正面から向き合っているので好きだ。同性愛者であるらしいボリスが駆使する猥語と罵倒語だらけの文章はロシア語と中国語と英語のチャンポンで、わかりそうでわからないところが好奇心を唆られる。原文は中国語を音に変換したロシア語で書かれているらしいけど、こうして翻訳されたものを読んでいると、〈漢字表記にルビ〉という必殺技を持たない言語でこの小説が書けるなんて不思議だ。
    本作には場面転換で何度も驚かされたが、最初のビックリは遺伝子研が襲われ、視点が地下のカルトに移る場面。私はこのパートが一番面白かった。ゲリラ兵は末端なので青脂について何も知らず、神秘の物質がリレーのように手渡されて地下深くへ進んでいくのがオカルティズムそのもののパロディになっている。(ところで、青脂=精子で童子=同志?とか思ったけど、これは日本語読者の穿ち過ぎ?)
    2番目のビックリは、なんとこの教団がタイムマシンを持っていること。しかも青脂と技術的な関係はない。なんなんだ(笑)。まさかの展開で物語は1954年のソ連へ移るが、そこはスターリンが独裁を続け、ヒトラーの第三帝国と手を組んでヨーロッパを牛耳っているパラレルワールド。
    このパートは私が近現代のロシア(ソ連)史に無知すぎるので、注釈と名前を照らし合わせるだけで目が回ってしまった。スターリン政権は徹底的にカリカチュアライズされ、非スターリン政策を進めたはずのフルシチョフはスターリンと非常に親密な愛人関係になっている。それ自体は強烈なブラックユーモアなんだけど、二人のベッドシーンは意外と愛に溢れていて困惑。
    歴史パートと同じく、クローンが書いた設定のロシア文学パロディ小説も、ナボコフくらいしか読んだことのない私には充分に味わいきれていないと思う。でも決まり文句やそれっぽいメタファーを繰り返す文体模写のスタイルは、「AIのべりすと」に書かせた小説に近いものを感じて面白かった。クローン作の設定ではないけど、「水上人文字」が一番好き。と思ったらこれは独立した短篇としても発表された作品だそう。
    結局青脂はマクガフィンで、スターリンも使い道を知らず、カルト教団パートをなぞり直すような情報リレーは秘密結社や陰謀論のカリカチュアめいていくが、そこから衝撃のラストを迎える。スターリンの脳が世界の半分を潰していく描写は映像的だが、前半にさりげなくボルヘスへの言及があるし、もしや「アレフ」のオマージュ? 平和の象徴である鳩が最後に殺されるのも示唆的だけど、こういう解釈学をこそ嗤っている小説なんだよな。

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    2022年07月18日
  • アンナ・カレーニナ 4

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    ネタバレ

     19世紀当時の帝政ロシアの貴族社会を背景とした物語としての歴史的荘厳さを保ちながら、アンナとリョーヴィンという愛に悩む等身大の人間像を絡めることで、不変的な一大叙情詩かつ一大叙事詩に昇華させたトルストイの古典的名作。光文社の翻訳・編著の妙もあるだろうが、いま読んでも全く古さを感じず面白い。
     ヴロンスキーの愛を猜疑しアンナの鉄道自殺で衝撃的に幕を閉じる第7章。これにて終焉としても良かったであろうが第8章のヴロンスキーの自棄的行動やリョーヴィンの啓示的開眼が単なる「不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」人間模様から数歩抜きん出た深みある印象を与える。

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    2022年05月07日
  • 戦争と平和6

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    長かった物語もようやく終わりを迎えた。フランス軍は敗北し、生き残ったピエール、ナターシャ、ニコライ、マリヤの結末については読んで確かめてみてください。しかし個人的に印象に残ったのは実は物語の本筋よりも、途中で著者が戦争について、というか戦争にとどまらず歴史論だとか、あげくの果てには宇宙論なんかまで自説をとうとうと述べているところだ。第4巻あたりから徐々にこの形で描かれていたけど、最終巻に至っては分量的に恐らく半分以上、エピローグの第2編に至っては丸々この形式だったので、さすがにこれって小説って呼べるの?と疑問を抱いてしまった。まあ当時としては斬新だったのかもしれないけど、こういうのは物語とは分けて別の作品でやって欲しかったかなあ。
    まあ、なんだかんだ言いつつも、読み応えのあるいい作品だったことは間違いないと思う。いずれ『アンナ・カレーニナ』も読みたいけど、さすがに海外の古典作品はお腹いっぱいだし、当分先になるかなあ。

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    2022年04月22日
  • 戦争と平和4

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    物語も後半に入ってきた。ナポレオンがついに動き始めてあっという間にモスクワに迫り、ピエールは戦場に向かい、アンドレイはナターシャとの婚約を破棄する。彼ら彼女らの運命も気になるところだが、個人的には物語の本筋よりも、本巻から地の文でトルストイの戦争に対する思いが徐々に述べられ始めているのが大きな特徴であるように思う。初読時はまあこういう趣向があってもいいかな程度に考えていたのだが・・・。

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    2022年04月20日
  • 戦争と平和3

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    第三巻では戦争は小休止し、もっぱらモスクワおよびペテルブルグを舞台にした人間関係の描写に重きが置かれている。主役はやはりナターシャだろう。行動自体は俗っぽいといえば俗っぽいのだが、やはりいつの時代でも人の心は移ろいやすいもの、ということなのだろうか。加えてますますフリーメイソンにのめり込んでいくピエール、カタブツなのか思い込みが強すぎるのかよく分からないアンドレイを中心に話は展開していく。

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    2022年04月19日
  • 戦争と平和2

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    アウステルリッツの戦いで挫折を味わい、奇跡的に帰還したアンドレイに待ち受けていた妻の悲劇。クラーギン公爵の娘と愛のない結婚をし、案の定奔放な妻がやらかした不義に怒りドーロホフに決闘を申し込み、あげくの果てにはフリーメイソンに入会してしまったピエール。そのドーロホフは求婚に失敗し、ニコライはドーロホフに賭博で大負けし・・・といった感じで、第二巻では登場人物たちがいよいよ本格的に動き出し始めた印象だ。彼らの中ではやはりドーロホフがヒール役ながらもどこか間抜けでカッコよく、魅力的に思えた。

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    2022年04月18日
  • 戦争と平和1

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    いやー長かった。今年の1月から読み始めて約4か月、文庫本にして3000ページ超えの大長編をようやく読み終えた。実は私、恥ずかしながら本作のことを小説であると思っていなくて、思想書か批評の類だと思っていた(だって普通『戦争と平和』なんて大仰なタイトル、小説につけないでしょ?)のだが、昨年ふとしたきっかけで小説であると認識。帯にある「世界文学の最高峰」との言葉に惹かれ、いつかは読もうとずっと思っていた次第だ。(実は最後まで読むと、最初のカンは一部当たっていたことが分かったんだけど)
    1805年のロシア・ペテルブルクでの華やかな社交界の描写で幕を開けた本作。第一部・第一編では大体の主要登場人物が顔をだし、一癖も二癖もある登場人物たちのやり取りが今後の展開に期待を抱かせる。第二編ではナポレオンとロシアの最初の戦い(アウステルリッツの戦い)の様子が描かれるが、やはり戦場の描写は躍動感があって面白い。ところがタイミングの悪いことに、読んでいる途中にウクライナとロシアの間で戦争が…。ロシアにとっては侵略する側とされる側で立場が異なるとはいえ、登場人物はほぼロシア側なので、彼らへの感情移入は正直難しかった。ちなみにトルストイは本作を読む限り、戦争を含めた暴力に対しては総じて批判的なようだ。

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    2022年04月17日
  • スペードのクイーン/ベールキン物語

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    200年近く昔の作品とは思えないくらいおもしろい。

    特に短編5篇からなるベールキン物語の中の『吹雪』のプロットが、近年の映画でよくあるように、時間軸が行ったり来たり入れ替わってドラマティック。偶然と気まぐれから他人の結婚式で誓いを立ててしまった青年が、「自分には妻がいる」と思い悩む場面は、誓約が重要なキリスト教社会ならでは、か。日本人だったら戸籍に反映されない限り気にしないだろう。。

    スペードのクイーン
    ギャンブルに取り憑かれた青年が殺人の報いを受ける寓話。
    競馬の三連単で、3-7-1に賭けてみたくなる。

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    2022年04月16日
  • イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ

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    イワン・イリイチの死、病床、介護や会話や苛立ちや自己嫌悪や父の言動やを思い出させた。どういう思いがあってトルストイはこれを書いたのだろう。

    クロイツェル・ソナタ、男性に意見を聞いてみたい。
    いいとか悪いとかではなく、そういうものなのかどうか知りたい。女性もか。大っぴらに話さない話題だし、女性は女性の、男性は男性の感覚で把握してるだろうからお互いそんなに違うと思っていないだろうから人によって違うくらいに思ってた(少なくとも自分は)。が、これを読んで、一般的な傾向なのか(一般的っておかしいのかもしれないが)、疑問に思った。世の中に性描写がある小説が多いのはそういう背景があるからなのか、、、?入れる意味がある?って思う本も結構あり、意味が理解できないのは何か理解できてないからなのか、、、?
    以前に男性と女性は全く違う生き物で、ただ女性は男性を別種と思ってるくらいの違いだけど、男性からみた女性は異星人クラスの違いと読んだことがあったけど、どうなんだろうこの話、と思う。「そうそう」って思うのか、「そういう人もいるよね」なのか、「おはなし」と感じるのか。

    それにしてもクロイツェル・ソナタって実在のベートーヴェンの曲だったのか。聴いてみよう。音楽に無知すぎて情けなくなる。

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    2022年03月20日
  • アンナ・カレーニナ 2

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    髭を蓄えた世捨て人のようなトルストイがここまで繊細で機微ある愛を描けることに感嘆。特に13章のキティとリョーヴィンとの愛が通じ合う瞬間は、これまでのリョーヴィンの葛藤や苦悩や自尊心を深く描いただけに、何とも言えない感動を覚える。一方で寛容が破滅を呼び崩壊が自由をもたらすアンナとカレーニンのさまは面子を重んじる帝政ロシアの貴族社会の世相を映し出しているように感じる。

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    2022年01月23日
  • 戦争と平和4

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    ナポレオンによる、ロシアへの侵攻の場面が語られている。宮廷貴族の状況、攻め込まれたロシア地域の状況、決戦地での戦闘の状況が、丁寧に描かれており、興味深く読み進められた。戦場の地図もあり、物語のイメージがわきやすい。

    「戦争においてはどんなに深く考察された計画も何の意味も持たず、すべては不意の、予測不可能な敵の動きにどう対応するかにかかっており、戦闘の全体がいかに、誰によってリードされるかにかかっているのである」p86
    「結果がどう転がろうが必ず「俺はすでにあの時に、こんなふうになると言ったんだ」という者たちが現れる」p215
    「(略奪禁止命令)そうした案件はすべて火にくべたまえ。(味方が)麦を刈ろうが薪を燃やそうが、かまうんじゃない。私はそういう命令は出さんし、赦そうとも思わんが、賠償金を取ることはできん。そういうことは、なしでは済まないんだ」p366
    「チェスの場合、ナイトは常にポーンより強いし、ポーンが2つなら1つよりも強いに決まっている。ところが戦争では1個大隊が1個師団よりも強力なこともあれば、また1個中隊よりも劣ることもある」p445
    「お嬢様は仔牛が殺されるのを見ると気分が悪くなる。優しさのあまり血を見ることができないというわけだが、そのお嬢様が、同じ仔牛の肉にソースを付けておいしく召し上がるのだ」p451

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    2021年11月22日
  • アンナ・カレーニナ 1

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    古典的名著。活発で気高くも愛への熱情が抑えきれぬアンナとヴロンスキーとの情事の変遷、そして夫の貴族としての面子と誇りを持った仕打ち、一方でキティに振られ傷心のリョーヴィンの立ち振る舞い。文豪トルストイの壮大な時代背景と機微ある人物描写がある一方、大衆向けメロドラマの趣で面白い。

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    2021年11月03日
  • 戦争と平和2

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    ロシア貴族の優雅な生活や戦争シーンの他に、カード博打、決闘、フリーメイソンについてのシーンがあり、ロシア社会の当時の特徴的な一面を垣間見ることができた。登場人物の感情の動きの表現が巧み。

    「自分の好きな人間以外、俺にはどうだっていいんだから。好きな人間のことは命がけで大事にするが、他の連中は、もしも行く手を遮るようなら構わず踏みつぶしてやるさ」p340

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    2021年10月28日
  • 死の家の記録

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    ■死の家で生きる。99%の苦痛と1%の楽しみ。■

    19世紀ロシアの流刑地シベリアでの監獄生活の実態が生々しく描かれる。21世紀の平和な日本に住む僕らには想像もつかない世界が繰り広げられる。
    登場人物がやたらと多いが、本書を通して継続したストーリーや明確な起承転結のようなものがあるわけではなく、章ごとにある程度独立した小話がオムニバス的に進行するため、あまり問題にはならない。

    タイトルから廃人のような暗い無気力な人間ばかり登場するのかと勝手に想像していたが、そんなに悲壮ではない。囚人・看守含め、とにかく癖が強すぎる個性的なキャラが次々に登場する。まるで動物園だ。そんな奴らが一つ屋根の下(塀の中)で繰り広げるドタバタ劇の中に人間らしい喜怒哀楽がぎゅっと詰まっている。

    また、酒、賄賂、たばこ、賭博に女、はては脱獄まで、様々なエピソードからどんな状況下におかれても、精神的な自由を求める人間としての本能が浮き彫りになっていると感じる。

    個人的に印象に残ったのは入浴シーンの描写だろうか。その映像がお風呂大好き日本人としては耐えがたく、鼻をつまみたくなる。
    この浴場にしずかちゃんが入ったら気絶するに違いない。

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    2021年05月28日
  • アンナ・カレーニナ 1

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    アンナが生きた時代のロシア
    鉄道の発達(急速な近代化)ペテルブルク=モスクワ鉄道
    農奴解放。
    貴族文学の破綻。。

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    2021年05月20日
  • アンナ・カレーニナ 4

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    モスクワへ移ったリョーヴィン夫妻。臨月を迎えたキティはみんなからあたたかく見守られながら幸せな気分で妊婦生活を満喫している。
    一方のリョーヴィンはいよいよ自分が父親になるのだという重圧で押しつぶされそうになっており、いざ出産という段での慌てっぷり、狼狽ぶりはもはや喜劇のようでおかしかった。
    キティの分娩がなかなか進まず何度もしつこく医者に進捗を確認しては、「もう終わります(もう産まれます)」という返事を「ご臨終です」という意味に勘違いする始末。
    出産という偉業を成し遂げたキティを見て、歓喜の慟哭と滂沱の涙を流しキスをするリョーヴィンの姿はまさに愛そのもので、でもその後に息子と対峙して「子供は何かしら無駄なもの、過剰なものと思われ、長いこと子供の存在に慣れることができなかった」という感想を抱いているのは矛盾のように思えるけれど、父親になったばかりの男性とはこういうものなんだろうか。
    ただここらへんのエピソードは、リョーヴィンという個人がアンナ・カレーニナという大作の中で、多元的で複雑な日常世界の思考の代表であることをいかにも象徴しているようだった。
    生きるとは、死ぬとは、信仰心とは、愛とは、幸福とは。出来合いの解答のない人生の問題にぶつかっては悩み、考え抜く等身大の存在。

    それに比べてアンナとヴロンスキーの不倫関係は破滅への一途をたどる。嫉妬心と猜疑心のかたまりになってしまったアンナはヴロンスキーの行動すべてに言いがかりをつけ、もちろん彼もそれに忌々しさを覚えあからさまに鬱陶しがる。決定的に心の通わなくなった二人の間には喧嘩が絶えず、あれほど燃え上がっていたはずの愛はいとも容易く憎しみに変わる。
    彼は私のつらさを理解してくれない、私は寂しくて、私はただ愛されたいだけなのに、と嘆き続けるアンナの自己愛と被害者意識には読んでるこっちも辟易しちゃって、メンヘラ!と一刀両断したくなるね。アンナは別にヴロンスキーじゃなくたって、自分を愛してくれる誰かなら誰でも良かったんじゃないかな。
    これまでずっと優雅で快活で聡明な美貌の女性としてみんなの憧れだった彼女が、こうやって激しく取り乱す様子が書かれて初めて、なんだかようやくアンナという一人の女性の人生に理解の及ぶ距離まで近づけたな、と思った。
    結局カレーニンと離婚もできず、息子とも会えず、ヴロンスキーからは愛想をつかされ、苦しみに耐えられなくなったアンナが復讐の自殺を決意してからはあっという間で、鉄道車両が轟音とともに容赦なくやってきて彼女を暗闇へと永遠に消し去る。

    田舎で堅実に農業をしてあたたかな家庭を築き、悩みつつも平凡な日常に幸福を見出して暮らすリョーヴィン。
    華やかな社交界で劇的な出会いをして激しい不倫に走り、すべてを投げ捨てドラマチックに死んだアンナ。
    とても対照的な人生、いったいどちらが幸せなんだろう?と頬杖ついて考えずにはいられない。
    や、どう考えてもリョーヴィンなのは分かるけど、私は自分の中におそらくアンナが住み着いてることも認めざるを得ない。ドラマチックに生きたい、そしてドラマチックに死にたいという願望はどうしたって無視できないし、貫いて成し遂げたアンナを羨ましくさえ思う。このまま生きてたら鉄道自殺まっしぐらなので、ちょっとこれからの人生考え直さないといけないかもしれないなぁ。
    あるいはリョーヴィンとアンナがくっついたら、という可能性もそれはそれで想像できなくて面白いかもね。

    『家庭生活で何か新しいことを始めるためには、夫婦が完全に反目しあっているか、それともぴったりと和合しているか、いずれかの状況が必須である。夫婦の間がはっきりせず、反目とも和合ともつかない状態のときには、何事も始められない。』
    という地の文では爆笑した。いや本当にその通り。

    なんにせよ読み終えた…長かった…。これから先も続いていく読書人生の山場をまた一つ超えたような気がする。

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    2021年02月17日