望月哲男のレビュー一覧

  • 青い脂
    未来から過去へ、そしてまた未来へ戻る時系列に少々体力を使った。
    ソ連時代の社会的リアリズムと実在したあらゆる人物たちが、ドストエフスキーよりも多く出てくる。
    注釈でロシアの歴史の勉強になった。
    歴史や人物などかなり詳しく書かれていた。
    エロ・グロ・ナンセンスなので、サド的要素があり好みが別れると思う...続きを読む
  • アンナ・カレーニナ 4
    初トルストイ長編

    幸せな家族はどれもみな似ているが、
    不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。

    圧巻の世界観
    登場人物がみんな生きている
    熱情や妬みに翻弄されていく貴族たち

    確かに昔存在していた時間たちが蘇り、
    そこに生きていた人間たちの鼓動が感じられる。

    本筋だけを追っていけば、
    今日目新...続きを読む
  • 白痴3
    公爵のナスターシャとアグラーヤへの煮え切らない態度に、途中までもやもやしていた。しかし、結末を知ると公爵への評価は変わる。ムィシキンはこの世界で生きるには純粋すぎたのだろう。或いは、この世界はムィシキンのような人物を生かすには、残酷すぎたのかもしれない。ナスターシャもムィシキンもアグラーヤも、ロゴー...続きを読む
  • アンナ・カレーニナ 4
    長いけど訳が重厚すぎず、何より面白くてどんどん読み進められた。自分が恋愛に依存気味の時期の思考の流れにありがちな視野の狭さがアンナの一人称語りによく出てたりと人物の心理描写も素晴らしい上、リョーヴィンと対になる構成も面白い。タイトルロールなのにアンナは冒頭もなかなか登場しないし、死んでからも物語が結...続きを読む
  • 戦争と平和1
    全巻読み終わりましたが、今まで読んだ小説でベストと言える作品でした。
    この光文社版は、登場人物が解説されたしおりがついていて、とてもわかりやすかったです。
    一方で解説には少し物足りなさを感じました。
    歴史的背景が少し頭にあると、面白さが何倍も変わる作品なので、解説で触れてほしかった、と残念に思う点が...続きを読む
  • 戦争と平和6
    全て読み終えて、自分が読んだ小説の中でほぼ一番となるほど面白かった。
    以下二点がこの物語の印象だ。

    一つは、この対ナポレオン戦争がロシアを防衛する戦闘的な意味での愛国戦争というだけでなく、当時ヨーロッパの文明や文化に支配されつつあった伝統的ロシア自体を取り戻すという象徴的な役割を持った出来事であり...続きを読む
  • 戦争と平和5
    1812年のフランス軍のモスクワ侵攻を受け、5巻前半は市民たちの逃走劇、そして後半はいよいよナポレオンの入城と敗走を描く。

    この巻では、これまで見られなかったほどにトルストイの愛国心と、ナポレオンへの憎悪が垣間見える。
    或いは、侵略する側を非難するがためにナポレオンを批判し、事実の勝者側としてロシ...続きを読む
  • イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ
    トルストイ後期の中編2作を収録。普遍的なテーマ「死」「性と愛」をめぐる葛藤を鋭く描き、共感と議論を呼んだ。

    【イワン・イリイチの死】
    冒頭でいきなり死亡が告げられるイワン・イリイチ。45歳で死んだ彼の生涯は、果たしてどのようなものだったのか、死の間際に何を思ったのか、をたどるのが概要。

    外聞をは...続きを読む
  • 戦争と平和4
    この巻では、いよいよナポレオンがロシア本土に遠征し、領主たちの東方への避難や、ロシア軍とフランス軍の戦闘の様子が描かれる。
    砲弾が降り注ぐ激戦の中で、人間が感じる死への恐怖や負傷の痛み、或いは実在の人物であるナポレオンの戦場での心境など、非常に読み応えがあった。

    さらにここに至って、従来になく作者...続きを読む
  • 戦争と平和3
    3巻は戦時ではなく、それぞれの理由からモスクワに集まった主人公たち(20代前後の貴族の子息令嬢)の人間関係と人生の岐路、とりわけ誰を結婚相手とするかという問題について描かれる。

    登場人物はおおよそ以下の通り。

    ─アンドレイ・ボルコンスキー
    幼い息子を遺して妻に先立たれ隠居を志すが、ナターシャに出...続きを読む
  • 戦争と平和2
    2冊目のクライマックスは、フランスのナポレオンとロシアのアレクサンドル皇帝の調印式。

    ナポレオン皇帝は、フランス革命の産物。
    離島生まれで身分が低く、従来なら要職に登用されない彼が、フランス革命によって立身出世、さらには周辺国との戦争にも次々と勝利する。
    一方のアレクサンドル皇帝は、ロシアロマノフ...続きを読む
  • アンナ・カレーニナ 4
    完結編。第7部と第8部を収録。2つのカップルの圧倒的な結末に魂が震撼する。そこに見出したある一つの答え。

    前巻の新婚生活から続いて出産シーンへ。リョーヴィンの慌てっぷりがユーモラス。お互いに何でも話し合い、隠し事をしない理想的な夫婦像ともいえるリョーヴィンとキティも、時々は細かいことでぶつかったり...続きを読む
  • アンナ・カレーニナ 3
    第5部と第6部を収録。リョーヴィンの結婚にまつわる諸事と、徐々に行き詰まるアンナとヴロンスキーを描く。

    リョーヴィン編は婚礼から新婚生活にいたるまで、出来事や心理が微細に描かれていて楽しい。しかし身近な人の死によって、自らの生死観に向き合わなくてはならなくなり、深い思索を重ねていくくだりには、誰に...続きを読む
  • アンナ・カレーニナ 2
    第3部と第4部を収録。農業経営の理想に燃えるリョーヴィンと、妻の不貞行為に苦悩するカレーニンを描く。

    第3部はほぼリョーヴィン編。農業の労働の描写は新鮮。いっぽうかなりのページ数が割かれる経営の話は1861年の農奴解放という背景からくる難しい状況があり、巻末の読書ガイドに頼らないとわかりづらい。し...続きを読む
  • アンナ・カレーニナ 1
    19世紀後半のロシア。ひとつの不倫から始まるドラマを軸に、貴族社会の多様な人間模様を描く恋愛小説の名作。

    「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」
    有名な書き出しから始まる第1部は、不倫から始まり不倫に終わる。『出会ってしまった!』という感じ。美しいロシ...続きを読む
  • 戦争と平和6
    最終巻。第4部第3~4編とエピローグ第1~2編を収録。フランス軍との決着、生き残った主人公たちのその後。

    立場が逆転し、逃げるフランス軍と追うロシア軍。戦場ではそれぞれが過酷な状況のなかで、人間の醜さが露呈し、親しい人たちが死んでいく。捕虜に対しての「やっぱし、おんなじ人間なんだな」という言葉が印...続きを読む
  • 戦争と平和5
    第3部第3編と第4部第1~2編を収録。ナポレオンのモスクワ占領から放棄までの多様な人間ドラマが描かれる。

    迫るナポレオン軍、逃げるモスクワの人々。脱出間際の騒動のなか、ロストフ家がとる決断が感動を呼ぶ。

    負傷したアンドレイが到達する「魂の本質としての愛」――すべてを愛するということは、すなわち神...続きを読む
  • 戦争と平和4
    第3部第1~2編を収録。ついにモスクワに迫るナポレオン軍――ロシアの一大危難に立ち向かう人々を描く。

    軍務に復帰したアンドレイは、悲しみと憎しみのためか、例の「空」のことも自由を満喫した生活のことも忘れていく。多言語が入り交じる軍務会議のなかで、「戦争の科学」など存在しないという結論に達するのは作...続きを読む
  • 戦争と平和3
    第2部第3~5編を収録。舞台は戦場から貴族社会へと移り、青年たちの恋愛と結婚についての騒動が描かれる。

    人生の新たな局面に取り組むアンドレイとピエールだったが、虚飾に満ちた社会にぶち当たり、それぞれに行き詰まっていく。直接からむ場面は少ないものの、この二人の友情は強いものに育っており、アンドレイが...続きを読む
  • 戦争と平和2
    第1部第3編と第2部第1~2編を収録。戦場から戻ったアンドレイとニコライ、遺産相続後のピエールの苦悩。

    ボルコンスキー家における求婚騒動では、マリヤの下す決断に感動。美人の軽薄さと、不美人の美しい心根。人間、何が幸せなのかと考えさせられる。

    いっぽう兄のアンドレイはアウステルリッツの戦いで負傷す...続きを読む