望月哲男のレビュー一覧
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まさかアンナが自殺してしまうとは。
そこに至るにあたってのアンナの壊れぶりが凄まじい。ここまで自殺者の心境に迫ったトルストイは、物凄く追い詰められたのではないかと思う。目に映るすべてが「負」としてしか捉えられなくなり、すべてが厭世を引き起こし、自己嫌悪の対象になるアンナ。環境がプロセスを作り上げて結果に至るのではなくて、「自殺」という結果ありきで、そこに至ることを目的にプロセスが意識的にゆがめられていく恐ろしさ。「死が明らかに生き生きと彼女の脳裏に浮かび上がった。死こそ彼の心に自分への愛情をよみがえらせ、彼を罰し、自分の心に住み着いた悪霊との間に行われていた戦いに勝つための、唯一の手段」と -
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ネタバレ以前(と言っても2025年の6月の樫本大進)、ヴェートーヴェンのクロイツェル・ソナタを聞いた時に、トルストイがそれを踏まえて小説を書いていると知って、次にもしクロイツェルを聞くことがあったら、読もうと思っていたところ、案外早くその機会が訪れそうなので、読みました。
収録されている「イワン・イリイチの死」も面白かった、し死への向き合いシミュレーションとして、真に迫るものがあって、トルストイすごい…と概ねなっていた。何も背景なく本作を手に取ったら、むしろ「イワン・イリイチの死」の方が面白かった&好きだったかも
「クロイツェル・ソナタ」
…そもそもわれわれ男性だけが知らないこと、それも知りたくない -
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ナターシャとピエールの甘い結婚生活を見ているのは気持ちが良い。エピローグに入ると、しばらく息を潜めていた語り手が登場し、ナポレオン戦争、ひいては戦争についての考えを述べる。
『戦争と平和』の「平和」の部分はこの巻の中に詰まっている。ナポレオンやルイ14世のような、影響力が大きかった指導者、君主1人が歴史を動かしたように思われるが、そうではなく、それを取り巻く当時の諸国民の動きや関係性にも目を向けるべきであるという主張をしている。
読み物としては高く評価しているのだが、フィクション(虚構物語)としては(個人的には)それほどグッと来る感じはない。
ただ、本作を学生時代に読めていたら、違う感想 -
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フランスから帰ったばかりのピエールと悪友たちは、酔った勢いで警察署長に乱暴を働き、ペテルブルクを追放される。ここで、ピエールの「軸がしっかりとしていない危うさ」を感じた。ピエールが周囲の空気を読めない、浮いた存在であることも相まって余計に不安になる。
ピエールが現時点で優れていないのにも関わらず、庶子から嫡子へ昇格し、莫大な財産を1人で相続することとなる。これもまた不安要素である。
『戦争と平和』(2016年、英国放送協会製作)のテレビドラマを先に見たことがあって、ピエール役(ポール・ダノ)の印象が強く、少し太った感じ、根暗そうな雰囲気のイメージがどうしてもある。 -
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原著1999年刊。
「怪物」ソローキンによる、破壊と猥雑化の限りを尽くした、妙な小説である。
読み始めるとすぐに、ボリスなる人物による、何を言っているのか全然わからないような手紙が延々と綴られてゆく。この圧倒的な「わからなさ」「言語の異物感」は、大昔に読んだSF小説『ニューロマンサー』の文章の感覚に似ている。
ひっきりなしに繰り出される妙な造語は、よく見ると巻末に用語解説が載っている。しかし、そこでピックアップされているのはごくわずかであり、このボリスの文章を理解するにはまったく足りない。
やがてボリスのパートが終わり、もっと分かり易い文体が出現する。
第二次世界大戦がロシアとドイツ