三辺律子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
"【儀礼殺人(ぎれい・さつじん)】ある儀式にのっとって、人体の一部を得るために行われる殺人。"
著者は、ボツワナで女性初の最高裁判事となったユニティ・ダウ
そんなお堅そうな人がなぜこんな手に汗握るサスペンス小説を書けるんだろう!
フィクションの体は取っているけど、今でも呪術薬の材料にする目的で殺害される少女たちがいる事実、超階級社会の男たちの醜悪な姿、そしてライオンやゾウがいる環境が実際にそこにあるから、日本人からしたら現実離れしすぎている現実に打ちのめされた
"「文化」というものは、固定されたものではありません。本当の意味で「自分たちの文化を存続させ、繁栄させたい」と願うのであれば(どんな文化圏の人もそう願っていると思いますが)、本書で取り上げたような儀礼殺人のように、人を傷つけ、殺してしまうような文化的慣行に挑んでいかなくてなりません。"(著者へのインタビューから)
[Ritual Killing] A murder committed according to a specific ritual to harvest parts of the human body.
The author, Unity Dow, was the first female High Court judge in Botswana. It’s hard to believe that someone with such a seemingly rigid, elite background could write such a gripping, heart-pounding suspense novel!
Although it takes the form of fiction, I was completely overwhelmed by the reality of it all—a reality that feels so distant to us in Japan. There are still young girls being murdered today just for their body parts to be used in witchcraft medicine; the hideous nature of men in a rigid, upper-class society; and the actual environment where lions and elephants roam just outside.
"Culture is not something static. If you truly want to make sure your culture survives and thrives—and I think people in every culture do—then you have to challenge those cultural practices that hurt people and kill people, like the ritual killings that I discuss in the book." (From an interview with the author) -
Posted by ブクログ
誕生日にはケーキがいるし、ケーキにはロウソクと名前がいるんだよね。
両親にあまり温かく接してもらえていないようで、ツリーホーンが少しかわいそう……とは今でも思っている。だけど、最後にセーターがもらえてよかった。去年と全く同じセーターだけど、少なくとも「サイズ」は大きなものを選んでもらえたわけで。
それに精霊(ジン)が、ケーキに「ハッピーバースデー」という言葉を添えていたのも嬉しかったな。ツリーホーンは「誕生日ケーキ」が欲しいとは言ったけど、「ハッピー」をつけたのはたぶん、ツリーホーンの願いでもあり、ジンの考えでもあるはずだ。
ケーキのろうそくを消すとき、ツリーホーンは何を願っていたんだろう。それはきっと、他の人から見ればつつましい願いごとだろうけど、ツリーホーンにとっては重大なことだろう。
なんだか淡々とした物語で、祝っていいのかどうか分からないような終わり方でもあったけど、不思議と心に残ったし、ツリーホーンの幸せを願う気持ちが生じていることにも気づいた。 -
Posted by ブクログ
トルコ系アメリカ人のシラは、ずっと落ち込んでいた。トルコに一時帰国した母親が、アメリカに再入国できなくなって何ヶ月も経っていたからだ。何もかも興味を失っていたシラだったが、ひょんなことからジオという老人が飼うアジアゾウのヴェーダと出会い、日々に輝きを取り戻していく。主要な登場人物全員の一人語りを含む広がりのある物語でありながら、動物保護と家族の愛という一貫したテーマを描く卓越した物語。
最後の2人の語りに泣いてしまいました。母子の愛は、なんて強く切ないものなんだろう。マテオとシラの関係も、深く入り込みすぎず、それでいて相手のことを曇りのない目で見て受け止めていて素敵だと思った。自閉症というとコミュニケーションが取れないイメージがあったのだけど、マテオのように普通の生活を送れる人もいるのだと、他の作品を通じて最近気付いたので、マテオの様子を読んで「色々な人がいるのだ」とさらに確信しました。
自然の描写、動物の描写が美しく楽しく、ヴェーダのために働くシラとマテオの生き生きとしていて、読んでいて元気になれる本です。素晴らしい作品だと思いました。 -
Posted by ブクログ
オレゴンに住む少女シラが主人公。トルコ国籍の母が、事務手続きのため里帰りしたら、入国書類の不備で帰国できなくなってしまった。何ヶ月も何ヶ月も、ひたすら母の帰りを待つシラ。しだいに学校でも何にも関心を持てなくなり、からに閉じこもるようになる。
そんなシラが、ある日、お父さんに連れられていったロードサイドのドーナツ屋で、妻を亡くした孤独な老人ジオと出会う。何気なく話をするうち、シラはジオとの意外なつながりに気づく。
ジオは、かつて宝くじにあたって、お金の心配はなく、広大な土地も持っているけれども、ただ毎日をさびしくやりすごしている。そんなふたりの前に、つぶれたサーカスの一団があらわれ、なぜだかジオはゾウを買い取ることに……。
とまあ、奇想天外なんだけど、移民の入国手続き、母を恋う少女、妻を亡くした孤独な老人、サーカスで虐待されてきたゾウ(とクマ)、自閉症の少年……といういくつもの要素が無理なく溶け合って、「孤独な魂同士が出会って新たな世界がひらける」という大きな物語が展開していく。ストーリー本位でただただ楽しくも読めるし、深堀することもできるし、すごくいい物語だった。大好き。 -
Posted by ブクログ
帯の売り文句は『ガーディアン賞、エドガー賞受賞の名手が贈る短編集』。読み終わったときフワッとした気持ちになった。不思議なお話が13切れ合わさって一つのケーキになった。小学生高学年から十分に読める内容。ファンタジー好きにはたまらない。三辺律子さんの軽やかな訳に、さかたきよこさんのカバーイラストが彩りをそえる。どれもこれも可愛く不思議。特に『オユをかけよう!』『銀のコップ』が好きかも。珠玉のベイカーズダズン。シリーズ『ルビーが詰まった脚』『お城の人々』も読みたい。
訳者あとがきで紹介されたエイキンの言葉『作家の任務とは、子どもたちにむかって、この世界は単純な場所ではないことを示すことだといえるでしょう。単純だなどとはとんでもない。この世界は途方もなく豊かで、奇妙で、混乱しており、すばらしいと同時に残酷で、神秘的で美しく、説明しがたい謎なのです』(猪熊葉子訳 晶文社)。
まさにこの本はそんな本だ。