あらすじ
ゾウを飼うことになったらどうする?
宝くじを当てて莫大なお金を手にした老人ジオは広大な土地に一人で暮らしていた。
ある日、偶然であった少女シラのために、サーカスのゾウを買い取って庭で育てることになる。
「こんな大きな動物、はじめてみた」
ドーナツ店のだだっ広い駐車場で、シラはゾウのヴェーダと出会った。
これは運命だ!
広大な土地に高い塀を築き、大きなゾウを飼うのは、とても大変なことでもあり、わくわくすることでもあった。
奇想天外な設定の痛快エンターテインメント。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
トルコ系アメリカ人のシラは、ずっと落ち込んでいた。トルコに一時帰国した母親が、アメリカに再入国できなくなって何ヶ月も経っていたからだ。何もかも興味を失っていたシラだったが、ひょんなことからジオという老人が飼うアジアゾウのヴェーダと出会い、日々に輝きを取り戻していく。主要な登場人物全員の一人語りを含む広がりのある物語でありながら、動物保護と家族の愛という一貫したテーマを描く卓越した物語。
最後の2人の語りに泣いてしまいました。母子の愛は、なんて強く切ないものなんだろう。マテオとシラの関係も、深く入り込みすぎず、それでいて相手のことを曇りのない目で見て受け止めていて素敵だと思った。自閉症というとコミュニケーションが取れないイメージがあったのだけど、マテオのように普通の生活を送れる人もいるのだと、他の作品を通じて最近気付いたので、マテオの様子を読んで「色々な人がいるのだ」とさらに確信しました。
自然の描写、動物の描写が美しく楽しく、ヴェーダのために働くシラとマテオの生き生きとしていて、読んでいて元気になれる本です。素晴らしい作品だと思いました。
Posted by ブクログ
オレゴンに住む少女シラが主人公。トルコ国籍の母が、事務手続きのため里帰りしたら、入国書類の不備で帰国できなくなってしまった。何ヶ月も何ヶ月も、ひたすら母の帰りを待つシラ。しだいに学校でも何にも関心を持てなくなり、からに閉じこもるようになる。
そんなシラが、ある日、お父さんに連れられていったロードサイドのドーナツ屋で、妻を亡くした孤独な老人ジオと出会う。何気なく話をするうち、シラはジオとの意外なつながりに気づく。
ジオは、かつて宝くじにあたって、お金の心配はなく、広大な土地も持っているけれども、ただ毎日をさびしくやりすごしている。そんなふたりの前に、つぶれたサーカスの一団があらわれ、なぜだかジオはゾウを買い取ることに……。
とまあ、奇想天外なんだけど、移民の入国手続き、母を恋う少女、妻を亡くした孤独な老人、サーカスで虐待されてきたゾウ(とクマ)、自閉症の少年……といういくつもの要素が無理なく溶け合って、「孤独な魂同士が出会って新たな世界がひらける」という大きな物語が展開していく。ストーリー本位でただただ楽しくも読めるし、深堀することもできるし、すごくいい物語だった。大好き。