三辺律子のレビュー一覧
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誕生と同時に母を亡くし、父の虐待に耐えるアリソン。父のパートナーで母親代わりのケリーアンすら家を出ていってしまった。父親の暴力に耐えられなくなって家を出た先で、認知症のマーラに出会う。マーラがアリソンを昔の友人タフィーと思い込んだのを良いことに、アリソンはマーラの家に居候しながら傷付いた心を癒していく。
不思議な詩のような文体。ボリュームがあるのにあっという間に読めてしまう。でもアリソンの傷付いた心の有り様はくっきりと浮き彫りになっている。
タフィー。甘いキャンディのようなお話かと思いきや。ほろ苦いカラメルの効いた堅い飴でした。。。
10代からの海外文学、ということだったけど、10代の人が -
Posted by ブクログ
約150年前に書かれた本なので、今のウェルメイドな小説に慣れている人にとっては、小説の作りとしては古い感じもするが、読む価値はある。
これが社会に与えた影響はとてつもなく大きいものだったろうし、この本があって本当に良かったと思う。
動物福祉なんて言葉がない時代、人間ですら労働者階級はボロボロになるまで働いて死んでいた時代(この本に出てくる「おんぼろサム」のように)、動物の苦しみに思いを馳せるなんてことは、ほとんどなかっただろう。そこに、馬が語り手となって、いかに苦しんでいるかをわかりやすく語った本書がでた。馬も苦しむことに初めて気づいた人がたくさんいただろうし、本の力が今よりずっとあった時代に -
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赤ん坊の頃にジャングルに迷い込んだ人間が獣たちとともに獣たちの世界で育ち生き抜くという物語。
であると同時に、インドで生まれ幼少期を過ごしたイギリス人がインドのジャングルを舞台に1894年頃に出版した小説である。
これだけでもいろいろ対比が感じられて興味深い。
と言いつつ、物語からはインドとイギリスとか帝国主義みたいな香りはほとんど感じられない。(もしかしたらこの岩波少年文庫版がたまたまそういうエピソードだけになっているのかもしれない。)
獣たちの種ごとの個性とか獣社会の規範とか、その中で人間の子モウグリが獣(狼やヒグマや黒豹など)に育てられ徐々に師を超える存在感を身につける様子、モウグリ自 -
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「人間たちはなんのために戦うんです?」
「わしは知らんよ。馬にはわからないことさ。だが、敵というのはよほど悪い連中なんだろうな。わざわざ海を渡ってはるばる殺しにいくくらいなんだから」
はい、ヴィクトリア朝時代の動物文学の名作『黒馬物語』です
なんと、黒馬ブラックビューティーの視点で書かれた馬の自叙伝です
すげーなヴィクトリア朝!
なんでもあるやんヴィクトリア朝!
人間のために働いてくれているお馬さんたちをもっと大切に扱わないといかん!と思いました
人間のために働いてくれているお馬さんたちをもっと大切に扱わないといかん!と思って書かれた小説ということなので100点の感想です
100点しかとら -
Posted by ブクログ
やったことがないからあくまで想像だけど、各国の背景のみならず、時代や宗教などまで絡んでくるだけに、ただ右から左へ訳せばよいというものではなく、目に見える遥か上の労力が必要となるに違いない翻訳という作業。基本的には自分が気に入った作品を訳するとはいえ、並々ならぬ決意的なものが裏には存するはず。となると、その翻訳者自身が評する場合、批判的なものにはなり得ない。知る限り、書評はポジティブなものが大半だし、本書の趣旨に何ら反対はなく、本作も前作同様、楽しく味わわせてもらったんだけど。そして読みたい本もまたたくさん見つかり、列挙するのも大変な量だったから、本書の中に直接チェックを入れました。