三辺律子のレビュー一覧
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古より慣習として残る「儀礼殺人」、今なおそれにより命を落とす子どもが多くいることを、私は知らなかった。
権力を得るために、呪術師や呪術医を頼る。困り事があると、医師よりも役所よりもまず相談に行くのは彼らの慣わしである。問題や事件は彼らに占いで解決してもらおうとする。そんな風に一見馬鹿げたような話がごく当たり前にされている地域があると思うと、なんとも言えない苦い気持ちが胸に広がる。
ノンフィクションではなくフィクションで書いた理由は読者が読みながら自分の考えを紡いでいく余地を残すためだと著者は言う。
正直なところ、フィクションだとはいえ、実際に起こっていることだと思うと、創作された物語としては読めない。
この物語では、アマントルというたまたまその地域に派遣された外部の人間がその慣習に口を挟む形になっている。けれど、彼らはそんなことでは全くびくともしない。それは心の底から何も悪いことをしていないと思っているからなのか、それとも悪いと思っていても行うことが当たり前で仕方がないことだからなのか。
こういった出来事とは無縁の読者に対しては、それを信じるものたちが固く戸を閉ざしているようにも見える。我々は黙って見ているしかないのだろうか。
実際に起こる事件をフィクションとして書き、その問題点の本質を浮き彫りにしている手腕はすごいと思う。
すごいと思うだけに、もどかしさの残る読後感となってしまった。 -
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13、14世紀に実在したとも言われる森に住む盗賊達のエピソード。森に差し掛かった人たちから半ば奪い取るように貰いつつも鹿肉やエールでもてなし、芸や武勇伝を聞かせて楽しませることで例え悪役でも愉快な時間を過ごす。
弓使いの名手にして人望のあるロビンが仲間を従えて法に縛られない自然に満ちた生活を送る様は痛快であり、憧れる。読んでいる際ロビンと恋人のエピソードがないのは不思議ですが、そこはやや納得は出来ないものの解説にて触れられていますね。
終盤のフィンズベリーで弓使いの大会に出場したあたりからのエピソードが特に好きです。
シャーウッドの森にはロビンフッドゆかりの観光地があるとのことで、いつか訪れたいと思いました。 -
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ボツワナでの儀礼殺人事件を下敷きにしたアフリカ発のサスペンス。著者のユニティ・ダウは現職のボツワナ国務大臣である。
『テスカトリポカ』もそうだったが、陰惨な殺人を扱った小説は言葉で感想を述べるのが難しい。主人公であるアマントルが権力に果敢に挑み、事件の内容を掘り起こしていく様は痛快なように見える。しかし、ラストの衝撃を考えると彼女は単なる狂言回しであるようにすら感じる。
権力の腐敗やジェンダー格差は勿論問題であろう。だが、根本にあるのはボツワナ人が持つ呪術への信頼と恐怖である。ボツワナ人は何かあると「呪術医」を頼り、実際に他者を呪おうとしたり、あるいは呪いに対抗したりしようとする。
彼らを非科学的だと、非合理的だと笑うことはできるだろうか。我々が神社に詣でる心、勝負の前に験を担ぐ心と、彼らが呪術に頼る心は同一線上にある。ダウもまた、呪術信仰については決して否定しない。彼女自身、伝統と近代のコンフリクトに対し結論を自分のなかで出せていないのだろう。そこにある歯切れの悪さが却って人間臭い。 -
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気候変動で雨がふらなくなり、水が配給制になっている未来が舞台。世界中で水を求めての戦争が起こっていて、成人男性はほとんどが戦場に送られている。
11歳のオーデン・デアは、母親といっしょに、最近なくなったおじさん(母親の兄)の暮らしていた家へ越してきたところ。おじさんは科学者だったが、とつぜん心臓麻痺で倒れて帰らぬ人になった。
家についてみると、部屋の中がめちゃくちゃに荒らされていた。そして数日後、オーデンがひとりでおじさんの大学、トリニティカレッジの研究室に入りこんでみると、そこもやはりめちゃくちゃに荒らされていた。おじさんには何か秘密があったのでは。もしかして……殺されたのでは?
そんなときオーデンは、クラスメートで、トリニティカレッジの構内に住んでいるヴィヴィという少女と仲よくなる。ヴィヴィは生前のおじさんとも親しかったらしい。そしておどろいたことに、おじさんがオーデンに残したのと同じ隕石の片割れをおじさんからもらっていた。その隕石と、おじさんからのメモを手がかりに、オーデンとヴィヴィはおじさんの物置を捜索。なんと地下の部屋からロボットを見つけだした。ロボットは「パラゴン」と名乗った。
身内が科学者で、その研究ゆえに何者かに命をおびやかされ……というのは、けっこうよくある展開なのだけれど、ロボットのパラゴンがからむことで、ぐっと魅力が増している。シェークスピアやエミリー・ディキンソンを暗唱し、「皮肉」や「ユーモア」を解するパラゴン。おじさんはいったいなんのためにパラゴンを作ったのか。
じつはオーデンは「先天性色覚異常」で、ほとんどの色が判別できない。だからきっとおじさんは、生前に語っていたように、色覚異常を治す装置をつくってくれたのだとオーデンは信じている。しかし実は、パラゴンにはそれ以上の使命が課せられていた。そして、パラゴンを追う者たちの包囲網がしだいにせばまる……。
パラゴンのなかに秘められた謎。追っ手たちとの息詰まる競争。色覚異常をめぐる、そして戦場にいるはずの父をめぐる、オーデンの葛藤。終盤はスピーディな展開でぐいぐい読まされる。ヴィヴィの意外な能力と活躍もいい。
【このあと、ネタバレではないけど少しツッコミ】
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ひとつだけ難を言えば(こういう科学者モノにはつきものなんだけど)おじさんがこれ(レインボーマシン)を秘密にしていたこと、なんだよねえ。いちおうかつての研究仲間のトレブル博士もツッコミを入れていたけど。すべて完成してから公表したかったというけど、こういう趣旨なら協力者をつのりながらやったほうがぜったいうまくいくんじゃないのかな。
もっとも、当局(水配給庁)は、防衛のためのロボットを開発することに血道をあげていたから、それ以外のわけのわからない研究には横やりを入れていたかもな。
大人のSFだったらそこらへんをもう少しくわしくごちゃごちゃと書かないと、納得してもらえそうにないけど、児童書だとかえって邪魔になっちゃうかな?
でも、全体としてはとてもよくできていて、すっきりしたエンディングも爽快でした。 -
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深夜のシカゴ郊外を自動車で飛ばしていた16歳のマイクは、突然現れた少女に導かれ、うち棄てられた墓場に辿り着く。怯えるマイクの元に、早すぎた死の物語を聞いてくれと霊たちが続々集まってくる。そこは十代の子どもばかりが埋葬された墓地なのだった。古今の物語をマッシュアップしたヤングアダルトホラー。
面白かった!枠物語はジェントルゴーストものだけど、墓地の子たちの来歴はちょっとワルい話しが多くて、例えるなら『チャーリーとチョコレート工場』で脱落してった子たちの話を本人視点で聞くような感じ。
語り口の書き分けが上手で、思いっきり現代のティーネイジャー口調の子もいれば、ことあるごとにシェイクスピアを引用する子、古典的な怪奇小説を思わせる独白をする子もいる。最後のパターンに属する「エドガー」はその名の通りポーのオマージュなのがわかるけど、話の筋自体はサキやビアスに近い。ホラー映画のオマージュもたくさん。「デイヴィッド」はグレムリンすぎる。
〈因果応報〉という言葉は出てくるけど、特に反省を促すような教訓話になっているわけではない。「エドガー」の終わりでマイクがすっかりエドガーの肩を持っているところなど、この墓地特有の倫理観に呑まれていて笑える。
後ろのエピソードほど面白く、特に最後の「トレイシー」にでてくるヴィオラ叔母に関しては、この人の一代記で長編一本書いてほしいと思うくらい、派手なモチーフがてんこ盛りに詰め込まれている。問わず語りのように見えて各話にテーマ的な繋がりを持たせていたり、幽霊たちの生前の暮らしぶりからシカゴの歴史を浮かび上がらせていたり、小ざっぱりしているがセンスの良い作品だった。 -
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ニューヨーク在住のベイヴリーへ知らない人からメールが届く。カリフォルニアに住む同じ12歳のベッドから。
「そっちのお父さんとうちのお父さんは、付!き!合!っ!て!い!る!!!」
お父さんたちは娘たちを同じサマーキャンプに送り込み仲良くさせようとも目論んでいる。
そんなの絶対いや!
それから二人のメール交換がはじまった。
本文はメールのやりとりで構成されている。
だから横書き。
父親たちの思惑を阻止しようと協力する中で、意に反して仲良くなっていく2人。それなのに…!
ベットとベイヴリーがすごい。子どもは大人の都合の中で生きている。だから与えられた状況の中で最善に向けて努力し、大人への配慮をし、適応力もある。いじらしいくらいだ。
それは本来どの子どもが備えている資質なのではないか。
登場する大人それぞれが、自分の人生(恋愛も)を楽しみながら、親として、祖母として、家族が繋がっている。同性愛、家族の在り方はこれほど多様なのだ。
日本でこの設定のお話があったら、もっと重く暗い話になってしまうのではないか。同性愛への容認だけでなく、家族の在り方の文化の違いだろう。
底抜けに明るく、ホロっとする優しい家族のお話しだった。意外な結末も素敵。 -
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ネタバレキムは学校の休暇の際にスパイとして必要となる技術を学び、仲間の何人かとも顔を合わせる。3年間で学業を終了し、ラマと再び矢の川を探す旅に出る。ラマが故郷の高地の話をたびたび持ち出すので、キムは高地への旅を提案する。元気のなかったラマが高地ではキムよりも早く歩くのが面白かった。実は高地へ向かったのはスパイ活動のためでもあった。旅の途中で初めて会った仲間を助けたキムの評価は高く、それを聞いたハリィが高地に一緒に行って欲しいと頼み込んできたのだ。やがて、ラマを巻き込む事件が起こり、キムもラマもフラフラで高地を後にする。
キムの自分は何者なのか、という問いは世界中の人々の悩みだろうと思う。キムは周りの人に恵まれているが、それを自覚できるほどに成長する。若い人に読んで欲しい。旅好きの人にも。 -
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ネタバレ英国人の孤児キムはインドで育ち、貧しいながら楽しく暮らしていた。その頭の回転の速さや感の鋭さが買われて、金持ちの馬商人の秘密の任務を手伝うことになる。それはスパイとしての適性をはかることでもあった。馬商人は英国のスパイだった。
ある日、チベットからやってきたラマ(僧侶)を助けたキム。ラマが嘘をつかない信じられる人だ、聖なる人なんだ、と思う。そして何故かラマはキムのことを弟子と呼ぶ。キムは自分の目的のため、ラマの聖なる矢の川探しを手伝う事にする。
キムが口から出まかせを次々と繰り出すのが面白く、ラマは、キムのにじみ出る人の良さに、いつしかキムを息子のように愛するようになる。
その旅の途中で偶然キムの父が属していた軍隊に捕まり、キムとラマは引き離されてしまう。しかし、ラマはキムの学費を送ってよこした。キムは学校に通うことになる。
100年以上も前のインドの様子がわかるのが、興味深い。さまざまな人種、宗教が雑多に入り混じるインド。