三辺律子のレビュー一覧
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イギリス海岸沿いに住む幼いダンとユーナの兄妹が近くの牧草地の丘で『真夏の夜の夢』のお芝居をしていると、妖精パックが現れる。
パックは、プークが丘の近くにある海岸都市ペベンシーに関わりのある歴史の人物を呼び出して、彼らの物語を語らせる。ペベンシーは小さい都市ながらもイギリスの歴史的に重要な役割を果たしてきた土地だった。ダンとユーナは、彼らの話を聞きながらイギリスの歴史をしるだった。
キプリングが、イギリス歴史を児童文学として書いた本。二冊セットらしいが、こっちしか買わなかった…。
イギリスの歴史語りではあるが、若者たちの友情や冒険、歴史にこっそり顔を出す妖精たちの存在など、物語としてとても楽しめる。
かつてイングランドに来た民族たちは、それぞれ自分の神を連れてきた。だが土地が合わずに去っていった神々もいる。そんななかでちゃんと働いた神様もいる。鍛冶屋の神ウィーランドだ。人々に混じりすっかり普通の鍛冶屋になったが、仕事を感謝されることにより神々の国に戻ることができる。最後に設えた一本の剣は、見習い僧でサクソン人のヒューの手に渡った。
やがてノルマン人がイングランド征服にやってきて、サクソン人との戦いとなる。そんななかでノルマン人リチャード卿と、サクソン人のヒューの間には友情が結ばれる。ヒューの家の所領はリチャード卿のものとなった。だがヒューはリチャード卿とともに土地を管理した。二人の働きを認めたペペンシー城主アクイラは、正式に二人に土地の所有を認める。
やがて年月が経ち、引退を考えるリチャード卿とヒューは、北海への旅に出る。海賊ウィッタの人質になったり、木の上に住み唸り声を上げる悪魔(ゴリラのことだろう)と戦ったりしながら、海賊ウィッタとも友情を育み、大量の金を手に入れて戻る。
金はペベンシー城のアクイラのもとに預けられ、二人も城に残る。そしてアクイラに仕掛けられた反逆者という罠を既に年寄りとなった彼らは跳ね除けるのだった。
/『ウィーランドの剣』『荘園の二人の若者』『騎士たちの愉快な冒険』『ペベンシーの年寄りたち』
ローマ皇帝がイングランドから撤退すると、残されたブリトン人たちは自分たちだけで、ピクト人たちから土地を守らなければいけなくなった。
グラティアヌス帝の時代に、イングランド生まれのローマ人パルネシウスは(ローマ生まれでイングランドに派遣された兵と、イングランド生まれのローマ人の間には階級の差があった)、軍隊に入り、百人隊長に任ぜられる。
将軍マクシムスの意に逆らったことで出世の道は閉ざされたが、変わり者のパルティナックスと気が合い、ピクト人アロを仲介としてピクト人対策を練る。
/『第三十軍団の百人隊長』『大いなる防壁にて』『翼のかぶと』
聖バルナバ教会再建には多くの人の力が関わった。騎士たち、海賊たち、そして絵や図面ばかり書いていたので図面ひきのハルと呼ばれた若者の物語。
/『図面ひきのハル』
非道な宗教改革の時代、フェアリーたちはイングランドから脱出を試みた。人間の力を借りる代わりに、人間にある約束をしたのだ。
/『ディムチャーチの大脱出』
ユダヤ人カドミエルの物語。ペベンシー城に紛れ込んだ彼は、かつてリチャード卿とヒューが隠した金を見つける。だがこれをイングランド王が見つければより戦争が深まってしまう。
/『宝と法』 -
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ネタバレ19世紀の英領インドで育ったイギリス人孤児キム。チベットからやって来たラマと知り合い、弟子として矢の川を探す旅に出る。
途中で英国エリートとして学校に通うが、クレイトン大佐や馬商人でスパイのマハブーブ・アリからスパイとしての才能を見いだされ、ラマとの旅を再開しながら、イギリスとロシアの覇権争いの中でのスパイ活動にも身を投じる。
スケールの大きな冒険譚&少年の成長物語。
壮大な自然やさまざまな人種や宗教が交わるインドの描き方も素晴らしいが、大国同士の思惑や人々の欲などがドロドロと描かれるなか、心美しいラマとのキムとの師弟愛の物語が際立つ。
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おもしろかったー!
全編、書簡体(メール体)小説。
父親同士がいきなり恋人としてつきあいはじめたふたりの少女、エイブリーとベット。性格も好みも何もかもが正反対なふたりは、はじめ、なんとかして父親たちを別れさせようとするが、互いに顔を合わせていやいやながら交流するうちに、すっかり仲よくなってしまい、姉妹になる日を楽しみに待つようになる。ところが……。
途中から、話がワイルドに展開して、ゲラゲラ笑いながら読んでいたかと思ったら、うわーと息をつめてページをめくったり。最後にもまたびっくり。ストーリーそのものも面白かったし、「どういう形が家族で、どういう形がそうでないかは、だれにも決められないこと。……聞かなければならないのは、自分の心の声だけだから」という、エイブリーとベットの(あらゆるワイルドな経験を経たあとにたどりついた)見解もよかった。
ふたりの距離感が変わるにつれて、メールの文体も変化していく。そこらへんの訳は、いつもながらみごと。
あと、ガガおばあちゃん、最強。とってもすてきでした。 -
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いつぞや、たまたま立ち寄った出張先の書店で、表紙のイラストと、CDサイズのかわいい装幀に惹かれて、”これが無料とは!”って、ちょっとビックリしながら手にしたのがBOOKMARKとの出会い。その号では、はじめ書きの担当が村上春樹のときだったんだけど、そんなビッグネームが寄稿しているのも衝撃だった。一冊にまとまったということで早速入手し、通読した次第。YA作品からガッツリ文学ものまで、かなり広い範囲からセレクトされている作品たちも見もので、かつ新刊という限定もないから、個人的には理想的な選出に思える。まだ触れたことのない作品が殆どだし、これからの大いなる参考としたい。
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翻訳本を翻訳者が紹介するというフリーマガジン12冊分が1冊の書籍になってます。
フリーマガジンを企画・編集・制作した翻訳者お2人と、デザイナーでありイラストレーターであるオザワミカさんの鼎談も掲載されていました。
鼎談で初めて知ったんですが、フリーマガジンBOOKMARKって、凄い部数印刷されているんですね!そして、人気があって手に入らないこともあるんですね!…私はオザワミカさんのギャラリーで、いつも苦労なく入手できていたから、そのありがたみを知らなかった!
で、中身の話。
実は、私は、このBOOKMARKを手に取る前までは、翻訳本をあまり読んでなかったのですが、翻訳者さんが書く紹介文を読んで、いくつかの小説に興味を持ち、だんだん翻訳小説を読むようになりました。まだ数冊だけではありますが、どれも、BOOKMARKがなければ出会わなかった本だったし、出会えてよかったと思える本ばかり。
本は読みたいけど、何を読んだら良いのかわからない人に、ぜひとも手にとってもらいたい本です。参考にさせてもらってます。
このところ忙しくてギャラリーに寄れてないのですが、BOOKMARKをもらいに(いやいや、展示が一番の目的ですよ!)、またお邪魔しなくちゃ、と思いました。 -
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通勤時に丁度いい文庫だと思った。
「みんなの話を聞いて」 忘れられた墓地で 十代の十人の子どもたちが語る 彼らの生きた証から死ぬ瞬間までの物語。
十人の子ども達が話す物語の中で私が特に心に残ったのは「ジーナ」の話。
シカゴの名前はないが固い絆で結ばれた地域で「うそつき」呼ばわりされているジーナ。しかし、ジーナはぱっと浮かんでくる物語を語っているだけ。そんなジーナは転校生のアントニーと出会い、本当の嘘つきというものを知る。
ヤングアダルト小説といっても奇想天外な死のストーリーの数々に引きづりこまれページをめくるうちにいつの間にか駅を乗り越してしまう危険性があります。 -
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夜中車を飛ばしてた少年マイク。
偶然道で拾ったメアリアンに導かれ彼が辿り着いたのは、十代の子供ばかりが眠る忘れ去られた墓地。
マイクはそこで幽霊となった子供たちが語る死に際に耳を傾ける事に……
ジュブナイルなテイストのゴーストストーリー。文章は読みやすく茶目っけがきいている。
一遍ごとに語り手が交代する連作短編集で、語り手の生前の境遇は勿論のこと時代背景や舞台設定なども各自異なっており、人喰いモンスターが巻き起こす騒動に兄妹が巻き込まれるB級パニックものから精神疾患の少年のグロテスクな妄想を扱ったサイコホラー、確執を抱く正反対の双子の姉妹が不思議な鏡に翻弄されるゴシックホラーまで、多彩な趣向で楽しませてくれる。
幽霊や悪魔など超自然的なモノから人の心の闇を扱った話までよりどりみどり。「猿の手」や「黄色い壁紙」など、古典をオマージュした話をさりげなくもぐりこませる演出も憎い。
既に死んだ子供たちが忘れられた墓地で話す物語というシチュエーションは、好きな人にはぐっとくるのでは?
子供たちが死んだ年代は100年程遡る昔から2012年の現代まで多岐に渡り、彼らの語り口からその時代ごとの価値観が透けるのも興味深い。
ド直球のホラーではなく、子供たちのユーモラスな語り口やコミカルな日常のエピソードにくすっとしたあと背筋がぞくっとするような感じ。
昔NHKで放送していた「グースハンプス」を思い出した。
ほぼ傍観者に徹するマイクの存在に疑問を呈す向きもあるが、そも彼という一夜限りの「聞き手」が存在しなければ「語り手」も存在しえないので、物語を成立させる重大な要素だと思った。
生きた聞き手を得て初めて物語は完結し、過去にスポットライトがあたるのだ。 -
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福音館書店古典シリーズの木島始訳(1979年)で読み継がれてきたキプリングの『ジャングル・ブック』がこの度新しい翻訳で岩波少年文庫になって出版されました。ジャングルで狼に助けられ育てられた人間の子、モウグリと、ジャングルの掟を教えるヒグマのバルーと黒豹のバギーラの物語は、今も読む者を引きつけていきます。キプリングが『ジャングル・ブック』と『続ジャングル・ブック』を著したのは1894年と1895年のこと。舞台となったインドのジャングルは大英帝国の植民地でした。そうした時代背景は今の子どもたちにはあまり意味をもたず、さまざまな解釈ができるファンタジーとして読んでもよいと翻訳者の三辺さんが訳者あとがきに書いています。ディズニーアニメとは違う、インドのジャングルを舞台にした冒険物語を ぜひ今の子どもたちにも読んでほしいと思います。