三辺律子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
原題はBrack Beauty ,1877
名作。
読む手が止まらない一冊だった。
現時点で今年のNo. 1かもしれない。
児童文学のガイドブックで見て気になっていた作品。
訳もいろんなバージョンがあるようだが、この光文社古典新訳シリーズの本作り思想が私には合っていることが多いので、今回はこれのバージョンを選んだ。
結果、大正解だったと思う。
訳者さんの日本語が素晴らしくて、ストレス低くガンガン読めた。
今後も翻訳で三辺律子さんのお名前を見かけたら読んでみたいと思います。
馬が語る、繁栄の陰にあるロンドンの物語。
馬の視点の自伝ものなんて、(マキバオー以外では)はじめて読んだので新鮮だっ -
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『月のケーキ』より大人向けの印象。子どもが楽しめそうなのは「ハンブルパピー」。あとは「キンバルス・グリーン」くらいか。「葉でいっぱいの部屋」もいいかもしれない。ちょっと怖いけど。
「上の階が怖い女の子」は救いはあるがかなり怖い。
しかし「希望(ホープ)」や「聴くこと」はちょっと子どもには無理じゃないかと思う。「変身の夜」もシェイクスピアのセリフしか喋らない狼憑きの紳士というのが、子どもにはイメージしにくいかも。
じゃあこの本はあまり良くないかというと、そんなことはなく、私は「希望」と「聴くこと」はかなり好きだ。特に「希望」。
辛辣で愛想が悪く、人から好かれないオールドミスのハープの先生、ミス・ -
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ツリーホーンは、おこづかいで新しいマンガを買いたい。
おとうさんにおこづかいをもらいたいと言うが、その間もおかあさんとしゃべっている。
おとうさんは、金というのは、貯めるためにあるんだと使うためじゃないと言う。
ツリーホーンは、庭の木のはっぱが、1ドル札になっているのを見つける。
それをペンキぬりの人にも言うが、話にならない。
おかあさんも、バーサおばさんも話を聞いてくれない。
少しだけの1ドル札が、木にいっぱい1ドル札になっている。
取りに行かなくちゃと思って、はしごを持って行きのぼるとそれはもう…。
エドワード・ゴーリーのイラストが癖になるのは、奇妙なんだか小気味良いのか、なんだか -
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横書きの散文詩を繋げ一つのストーリーにした興味深い作品です。
作者はアイルランドのダブリン生まれ。2015年に発表した『わたしの全てのわたしたち』でカーネギー賞を受賞しました。
主人公は、虐待を繰り返す父親の元から逃げ出した16歳の少女アリソン。表紙に描かれた彼女の眼差しと赤くただれた左頬を何度も見返す読書となりました。
母親は産後すぐに亡くなった。
父親の恋人のケリーアンが出て行くと、アリソンへの暴力はさらに加速する…
彼女の嫌な記憶が蘇るたびに、読む手が止まり息が苦しくなりました。
認知症を患うマーラから「タフィー」と呼ばれ同居生活を始めたアリソン。
父親にいつ見つかってしまうか、 -
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ネタバレ散文詩形式で書かれた作品。読むのは難しくないのだが、読むのが辛かった。胸が苦しくなる内容。
アリソンは支配的な父親の暴力から逃れるため、家を出るしかなかった。少し前に家を出た、父親の恋人を探したが、会えずに、古い家の納屋に潜り込む。家主は認知症のマーラ。マーラはアリソンの事をタフィーと呼び、部屋に招き入れた。
アリソンの現在と父親との暮らしが交互に描かれ、マーラの過去も入り混じり、幻想的ですらある。しかし、次第に家族に問題を抱えている事がわかってくる。
アリソンもマーラも言いたい事を我慢していた。孤独な二人は少しずつ歩み寄っていく。
ギリギリの生活なのに、アリソンは悪い方へは流れないし、病んで -
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散文詩形式で書かれた小説は初めて読みました。
主人公の心情が、まっすぐに心に刺さります。
暴力をふるう父親から逃げ、行き場を失った少女と、独りで暮らす認知症の老女。
こうした設定でありがちな心温まる交流ではなく、感動の結末が待っているわけではない。
もっとリアルに、混乱しながらも力強く人生は続いていく。
相手を利用することばかり考える若者と、厄介事を避けたがる大人たち。そんな世界で居場所を見つけるのは大変です。
嘘を重ねるうちに自分の存在感が薄れてしまうアリソン。相手に求められる姿を演じ続ける自分を透明人間と呼ぶ。
読者にも、事実と主観の境界があやふやになってきます。
マーラの記憶は安 -