塩原通緒のレビュー一覧

  • 数理モデルはなぜ現実世界を語れないのか 社会的な視点から科学的予測を考える

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    ネタバレ

    「あーこれこれ、これが言いたかった」が詰まった一冊。
    どんなものでもいいけど、データから何かモデルを作ったことがある人なら納得できる内容よねー。

    データを用いてモデルを作ろうとする時点で、ある種の論理/倫理/バイアスに縛られている。というより、まずはモデルありきなんだろうなぁ。仮説を立てて、データを集めて、正しい結果が得られるかどうか確認する。(いわゆるPDCAサイクルというやつだ)
    それが選べる中で最良である手段なのはわかるけど、一方で最初に立てた仮説が軸になってしまう。そのモデルが過去の現象を上手く説明できてしまえば修正する必要もない。

    『ブラック・スワン』のタレブが「過去50年間で、

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    2025年11月03日
  • 数理モデルはなぜ現実世界を語れないのか 社会的な視点から科学的予測を考える

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    数理モデル化と現実世界とのギャップ、そこへの向き合い方的な話で良い。なんとなく感じていたことが丁寧に論証されていく感じ。
    良いのだけれどこの本を読みたいと思う人には多分当たり前のことが書いてあり、読まない人にこそきちんと把握して欲しい内容なのでなんだかなあと思ったり

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    2025年09月18日
  • 疫病の世界史(下)――消耗病・植民地・グローバリゼーション

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    2018年に上梓、この版にはCOVIDの経験が追加されている。
    人間は過去の経験に学ぶこともあるし、学ばない事もあるけれど、螺旋状に進歩してきたのでは(歴史は螺旋状に進むと言ったのはE.H.カーだったか⁇)。
    英国ビクトリア朝のあのゴタゴタしたインテリアが流行遅れになったのは、衛生観念の発達からだ、と言うのは面白かった(どうやって掃除していたのか、いつも不思議だった)。
    エビデンスに基づかない、風評で政策決定する政治家がいつの時代にも登場するのも面白い。

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    2025年07月30日
  • 技術革新と不平等の1000年史 下

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    我々は技術の進歩とともに豊かになれているのだろうか?。科学技術の進歩が必ず豊かさにつながると信じられている現代において警鐘を鳴らしている。技術による生産性バンドワゴンが正しく駆動するためには、単に技術を進歩させるだけでなく、いくつかの条件が必要であると説く。AI時代を迎える我々のこれからの社会を見通すために必読の一冊。

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    2025年06月18日
  • 言語はこうして生まれる―「即興する脳」とジェスチャーゲーム―

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    チョムスキー帝国を瓦解に導く強力な一撃。キーワードは、ジェスチャーゲーム、即興、ボトルネック、チャンキング。なにも難しい概念ではない。これらをもとに、人間の言語に関してまったく新しい視点が提供される。
    人間どうしの意思疎通の基本は身振りや音声を用いた即興的なジェスチャーゲーム。クリスチャンセンとチェイターはそう主張する。そのゲームが何度も繰り返されて様式化し(簡素なものへと変化し)、多数の人々の間で共有されれば、それが言語になる。世界に何千という言語があるのも、それぞれの人間集団が即興的なやりとりのなかでそれぞれの言語を生み出し、受け継いできたからだ。
    読みどころは4章と5章。チョムスキーのい

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    2025年05月07日
  • 技術革新と不平等の1000年史 下

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    第二次世界大戦後、アメリカは豊かだった。1950年代。
    これはよく聞く話。
    技術革新がなされ、それが労働者にも反映された、古き良き時代。
    しかしそれが続かなかった。
    機械化がどんどん進み、労働者は隅に追いやられた。切られた。
    必然的に労働分配率は下がる。
    理屈は分かる。それだけ設備投資に金が要るのだ。その金が利益を生む。
    。。ここでまた、ミルトン・フリードマンが登場する。
    企業は利益と配当だけ考えればいいと。フリードマン・ドクトリンと。
    悪のように書かれる。フリードマン信者としては心外だな。
    フリードマンは再配分を疑ってかかってる。私も同じ。うまくできるはずがない。
    必ず恣意的なものになる。権

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    2025年03月18日
  • 技術革新と不平等の1000年史 上

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    技術革新が人のためになるとは限らない、というか、むしろ害悪の面が強いということを、様々な事例から説明するもの。現在のAIや宇宙開発、ゲノムテクノロジー、環境対策など、明るい未来を作ってくれると期待するが、その恩恵を受けるのは、発明者や投資家、有力者などの一握りであり、一般市民はむしろ虐げられたり、犠牲になったりする。スエズ運河やパナマ運河の開発、イギリスの産業革命、鉄道開発、など。都市伝説みたいな話かと思ったら、アセモグルさんの分析は明晰。こういうことを知っておくことは重要だと感じる。

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    2024年08月08日
  • 言語はこうして生まれる―「即興する脳」とジェスチャーゲーム―

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     タイトルから少し重たい本かな?と思い、ついつい積読をしていたのだが、読み始めると止まらず一気に読んでしまった。言語という文化への視野が増えたように思える。
     単語の意味を覚えたり理解するのではなく、如何にチャンク(かたまり)で前後と共に覚え、互いの背景、フィールドを理解してコミュニケーションをするのか。単語の意味に囚われていた私にとって、考え方を180度変えてくれた。
     AIの大規模言語モデルも、AIに一つ一つの単語の意味を教え込むのではなく、その文脈の確率を覚えさせているのだと言う。例えば「空」という単語の前に付く形容詞は「青い」が多く、「黄色い」が少ないように。そうやって、文脈の単語間の

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    2024年07月26日
  • 暴力と不平等の人類史―戦争・革命・崩壊・疫病

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    四騎士として戦争、革命、崩壊、疫病を挙げ歴史上それらが不平等の解消にどれくらい寄与したのかが細かいデータに基づいて述べられている。
    結論から言うと暴力を伴わない富の再配分は効果が薄く、累進課税制をはじめとした平和的な制度によるアプローチは論外でフランス革命や共産主義革命ですら効果は限定的だったという救いのない考察。個人的にはベターな選択肢として第三次世界大戦が始まるよりも格差のある平和な世界を望んでしまう。

    Chaos isn't a pit.Chaos is a ladder.
    読みながら「ゲームオブスローンズ」リトルフィンガーの言葉を思い出した。

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    2024年02月10日
  • 言語はこうして生まれる―「即興する脳」とジェスチャーゲーム―

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    コミュニケーションについて興味、関心があれば読むべき本。認知科学者二人による。事例による例示が多い。
    私自身の興味分野でもあり、かつ、かなりの分量、結論→説明の順でない、などの体裁により読むのには一苦労。1日かかってしまった。
    ヴィトゲンシュタインな哲学論考、言語ゲーム。コミュニケーションの基本となるジェスチャーゲーム。ノーム・チョムスキーの生成構文。などが本書のキーワード。
    本書における筆者の主張。そのひとつが言語に正解はないということ。また、法則があるようで実は例外もたくさんあるということ。生活や文化的な背景によりその言語の利用が制限されてしまうということ。
    言語に対する絶対視。正解を求め

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    2023年08月26日
  • 言語はこうして生まれる―「即興する脳」とジェスチャーゲーム―

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    普遍文法への真っ向勝負。 
    言語は文化的な産物なのだという主張は、近年の言語生得説に対する見方とは違う観点を学ばせてもらいました。

    最後のAIへの知見は、シンギュラリティ到達に戦々恐々としている私としては安心材料の補強になりました。ChatGPTが世間を賑わせていますが、無数のデータの蓄積を統計的に紡ぎ合わせているだけで人間的な相互関係を加味したやり取りにはまだ至っていないのだという。でも、ニューラルネットワークの底力はムンムン感じますよね。

    後は、「3000万語の格差」についての言及で、子どもに単に単語数を稼いで浴びせまくるのではなく、家族との会話に引き入れて相互作用を組み入れることが肝

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    2023年02月09日
  • 暴力と不平等の人類史―戦争・革命・崩壊・疫病

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    歴史的に見て、不平等が解消されるのは(大量動員)戦争、革命、国家崩壊、疫病という非常に大きなイベントが起きたときのみで、それ以外の状況では格差はどんどん拡大していくという内容。
    シンプルな内容だが、学術書としてデータ積み上げて事実を論証していく大著。

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    2022年05月08日
  • 物語創世 聖書から〈ハリー・ポッター〉まで、文学の偉大なる力

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    成毛眞氏がFacebookで「ボクにとって2019年最高の本になるかもしれない。」と太鼓判を押していた本なので、期待を込めて読んでみました。
    いやー読み応えあります。凄いです。
    3連休の後半は、この本、にどっぷり浸かりました。
    人類史上"文字"が生み出された事で遥か昔の事も後世に伝わることを、紀元前から現代に至り、更に世界中に渡って、物語(本の中では「基盤テキスト」と称される)が創られた背景に迫ってます。

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    2019年10月19日
  • 138億年宇宙の旅

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    面白いし非常にわかりやすい。
    今まで量子力学の本をいくつも読んだがその中でも1番わかりやすいと思う。
    また宇宙の果てから小さい量子の世界まで順に説明される。
    分かりにくかった場の量子論もブラックホールの蒸発も何となくわかったような…気がする。

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    2019年03月09日
  • 人体六〇〇万年史 下──科学が明かす進化・健康・疾病

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    2型糖尿病、骨粗鬆症、がん(特に乳がん)、など現代病と呼ばれる病気が生物学的進化と文化的進化のミスマッチから生じていることを説明している。
    まず、生物学進化によって人間がいかに効率的に糖を接種できる能力を獲得できたを示し、次に農業革命、産業革命を経て、人間がいかに過剰に糖を接種しやすくなったを示すことで、現代病の原因となる肥満になることが必然であることをわかりやすく説明している。

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    2019年02月03日
  • 人体六〇〇万年史 上──科学が明かす進化・健康・疾病

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    2型糖尿病、骨粗鬆症、がん(特に乳がん)、など現代病と呼ばれる病気が生物学的進化と文化的進化のミスマッチから生じていることを説明している。
    まず、生物学進化によって人間がいかに効率的に糖を接種できる能力を獲得できたを示し、次に農業革命、産業革命を経て、人間がいかに過剰に糖を接種しやすくなったを示すことで、現代病の原因となる肥満になることが必然であることをわかりやすく説明している。

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    2019年02月03日
  • ダークマターと恐竜絶滅 新理論で宇宙の謎に迫る

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    宇宙の誕生から原子が出来、そして星が出来ることを解説する。この太陽系の特徴を述べ、ダークマターが恐竜絶滅の引き金を引いたかもしれないと仮説を述べる。ダークマターの部分は良く分からないが、それまでの所は興味を引かせる書きっぷりで、著者は天文学者ではないが、宇宙の神秘を感じさせてくれる。

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    2018年10月19日
  • ダークマターと恐竜絶滅 新理論で宇宙の謎に迫る

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    ダークマターと彗星と恐竜、これらは(本文中で著者も語っているが)、自分の中の5歳児の心を魅了する。もちろん私も大好きなテーマだ。加えて、リサ・ランドール博士の著書は読んでいて楽しい。「ワープする宇宙」を読んだ時も、物理の楽しさを味わった(内容は難しかったけど)。本書は難しい理論も数式も出てこない。でも宇宙の構成から恐竜まで見事に解説する。しかもランドール博士が提唱するDDDM理論は、私の中の5歳児の心をくすぐる。銀河の中に薄いダークマターの円盤が存在することで、定期的な生物大量絶滅を説明できることにワクワクした。科学書だけど、読んでいて面白い。ランドール博士の筆力と翻訳者の実力に脱帽だ。

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    2018年04月10日
  • 人体六〇〇万年史 上──科学が明かす進化・健康・疾病

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    ・600万年前、Last Common Ancester (LCA)から人類の祖先(サヘラントロプス・チャデンシス、アルディピテクス)とチンパンジーが分かれる。人類の祖先は果実食だったが、気候変動に伴い二足歩行で省エネしつつ、遠くまで食べ物を探しに行くようになった。また、栄養的により粗悪な食べ物である葉、茎も食べなければならず臼歯が発達した。
    ・400~100万年前にアウストラロピテクスが出現。イモ類を掘って食べる。
    ・190万年前、ホモ・エレクトスが出現。よりカロリーが高くミネラルも豊富に含む肉を食べる。
    ・旧ホモ属(ホモ・ハイデルベルゲンシス、ホモ・フロレシエンシス、ホモ・ネアンデルターレ

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    2016年07月04日
  • ダークマターと恐竜絶滅 新理論で宇宙の謎に迫る

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    ネタバレ

    第1部”宇宙ができあがるまで”では、ダークマターの総量が宇宙マイクロ波背景放射に影響を及ぼすこと、ある程度の広さの領域が収縮すると、ダークマターがほぼ球状のハローと呼ばれる領域を形成し、その内部で通常の物質のガスが冷えて中心部に凝集し、星になったこと、第2部”活発な太陽系”では小惑星と彗星にはどちらもアミノ酸が含まれており、そのうちのいくつかの種類は、この地球上で生命の一部になっていること、第3部”ダークマターとは何か”では、ダークマターが彗星衝突を引き起こした可能性があることを知りました。読み応えアリ。

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    2016年06月18日