塩原通緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・世界の不平等の歴史を探究する難題
・世界で最も裕福な1%の世帯が、世界の個人純資産の半分あまりを保有している
・「平等化の四騎士」=戦争、革命、国家破綻、伝染病が不平等を是正する
・本書の目的は、不平等が減少するのはなぜかという疑問に答え、平等化のメカニズムを突き止める。
・古代の遺跡や埋葬からも、ヒエラルキーや階層社会のような不平等社会はみられている。
・経済的な余剰の多寡が政治的不平等を発展させていることがわかる。たいした余剰生産のない集団は86%が政治的不平等の形跡がない。
・最初の「1%」ー少数のエリートを生み出す構造 →国家構造がうまく維持されている限り、エリート支配は安定していた。
・世界のリーダーとは、地位の低い農業生産者の搾取者にほかならなく、派手な消費をすることは、力関係を明らかにして強化する重要な手段であった。
・富の獲得方法は、歴史上2つしかない。作るか、奪うか。
・資源をおのずと権力者に集中させることが近代国家の特徴
・大きな暴力的破壊がないことこそが「不平等」の決定的な必要条件
・何百年と続いたエリートへの富の集中による不平等が、ヨーロッパと中東でおきた疫病によって一変する。人口が減ることで労働賃金は上がり、地代は減るのでエリート層の資産は下がる。
・日本は鎖国まではあまり不平等が進んでいなかったが、世界経済に向けて国を開いてから不平等化が進んだ。
・日本はかつては地球上で最も不平等な国の一つだったが、第二次世界大戦による劇的な展開で、類をみないレベルの平等化が起きた。日本は戦争由来の平等化の教科書的な事例。
・日本は開国してから不平等化が進み、地主、株主、企業幹部は莫大な利益を得ていた。
・ところが1938年の春に「国家総動員法」が制定されて、政府は日本の経済を戦争遂行のために自由に使うことができることになった。
・戦争は勝者は不平等が拡大し、敗者は平等化になる。勝者側の指導者層は利益を期待できるのに対し、破壊された側は不平等が縮小された。
・伝染病で土地の地価が下がり、労働賃金が上がるため、地主や雇用主が貧しく、労働者が裕福になり不平等が抑制された。
・「誰もが世界の終わりと思った」中世後期の伝染病の流行。ペストに感染すると細胞壊死と神経系の中毒症状がでて50〜60%は数日で死亡。肺ペストに感染すると肺から放出される飛沫で人間同士で直接感染する。こちらは死亡率ほぼ100%。
・ペストは一世代に2、3度発生して人口を抑制し、その結果1430年代のヨーロッパの人口は13世紀末と比べて半分以下になった。
・平和的な平等化に関しては確実な証拠は得られていない。土地改革、不況、民主化は功を奏する時があるものの、不平等を体系的に軽減する効果はない。
・未来はどうなるか。人体の改造も不平等の進展になる。富裕層だけがバイオテクノロジーや遺伝子改良を特権的に享受できるようになるかもしれない。
デザイナーズベイビーを創り出すことで、遺伝子操作やサイボーグ化による「持てるもの」と「持たざるもの」とにわかれ、最終的には2つの種に分岐することになる。それが遺伝子エリートとその他多勢=天然人
・こんにちの世界では平等化の最も有効なメカニズム=4騎士はどれも作用していない。
・時とともに人類は平和になってきている。
人類の平和化を強めている具体的な要因のひとつは人口の高齢化である。人口の高齢化が暴力的紛争の可能性を全体として減らすとみられている。
・次に疫病の可能性について。近代以前の感染爆発の規模に匹敵する厄災が発生すれば世界で何億人もの死者が見込まれる。おおむね発展途上国に限られるかもしれない。
また兵器製造技術でスーパー細菌がつくられるかもしれないが、そのような物資をばらまこうとする発想を国家の首脳が抱くことはまずありえないという。
・また、現代では疫病による経済的影響で所得と富の不平等が平準化するまでになるかはわからない。インフルエンザは貧しい人に影響はあるものの、経済全般にはほとんど害がない。
現代において真に破壊的な疫病が世界中で何億もの人命を奪うとすれば、少なくとも短期的には抑えられない。伝染病で疲弊した経済においては、やがてロボットが失われた労働者にとって変わるかもしれない。
・四騎士が消えつつあることで、将来の平等化の見込みは薄い。
・経済的平等性を称える者すべてが肝に銘じるべきなのは、ごく稀な例を除いて、それが悲嘆のなかでしか実現してこなかったこと。 -
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暴力と不平等の歴史。一億総中流と言われた社会がかくも格差が広がった理由を知りたくて読んだ。結構難しく、読書カロリーは高め。ガチで論文のデータを載せているためである。
人類と不平等は農業畜産以前からの長い付き合いだが、時には不平等が是正されることもあった。その平等化のメカニズムは「戦争」「革命」「崩壊」「疫病」であるという。
この本では、なんとジニ係数を農業畜産以前まで持ち込むのがポイントだ。中世フランスイタリアの富裕税、オランダの家賃税、古代アステカの家屋サイズ、バビロニアの持参金の分配などを使うという。
前近代の文明については、漢、ローマ、スペインなどが挙げられる。これらは、経済的な影響ではなく政治的に下層民を搾取することで凄まじい上層部の富を生み出し、不平等を拡大させた。統治者が強権を持てばその財産が没収されることもあるが、そうでなければ不平等は広がるばかりであった。
そして、戦争。太平洋戦争では日本全体がボコボコになったのは周知だが、日本の富裕層でも例外ではなかった。株式といった収入が消え果て、所得税は年々上がり、戦争後半は戦略爆撃で苦しみ、不労所得者や企業幹部といった身分は消滅した。戦後もハイパーインフレ(日中戦争と比して消費者物価は18000%増加したとの推定すらある)で金の価値が減った。富裕層は財閥解体の対象にもなりますます富が下層に流出。これで海外進出して貧困日本人を救うという大義名分を破壊したのである。
第一次二次大戦の平等化は、富裕層でも、超富裕層に強くのしかかったらしい。フランスでは一次大戦で上位0.01%の富が3/4に、二次大戦で2/3に。一方で上位1%では半分弱しか減ってないらしい。エリートの富は戦争用に再分配、あるいは徴収された。『軍事大量動員と、累進税率と、所得上位のエリートの資産の狙い撃ちが、財政的な平等化作用の三本柱をなしていた』とのこと。 -
Posted by ブクログ
・人間の身体の進化の物語であり、人は何に適応しているのかを問う
・その問いに対して明快で単一な答えは見いだせないことが人体の神秘的な結論
・人類の身体は現代の食事や運動不足にうまく対応できるように適応できていない
・これまでの人類の生物学的進化に対して、文化的進化により私たちの身体は現代の環境に適応できず、ミスマッチとなる病気が起きる
・「食べたものが人をつくる」というが、進化の論理では、場合によっては「普通なら食べないものが人をつくる」
・チンパンジーは果実中心の食生活だが、アウストラロピテクスは果実の依存をなくし、土を掘って茎を摂取するなど食生活を多様化にした
・なぜ人類は他の動物よりも脳が大きく進化したか? 大きな脳にはそれだけ多くのエネルギーが必要となるが、人類は狩猟採取により多くのエネルギーを獲得できたことでコストを補うことができた
・遺伝的には常に自然選択により進化してきたが、加速度的に進化した文化的進化が遺伝的に適応できていないために現代のミスマッチ病(糖尿病やがん、うつ病などの現代病)がおきた
・ミスマッチ病を予防するには、昔ながらの食事や運動をし、タバコや炭酸飲料、ジャンクフードをやめること -
Posted by ブクログ
一言でいうなら、大著である。それだけに読む者にもそれなりの労力が求められる。
本書は、古代からの人類の悠久の歴史が、持てる者と持たざる者の不平等の歴史であること、両者の格差は拡大と縮小を繰り返してきたことを実証していく。そして、格差が是正され、平等化に近づくのは、常に暴力的事象の後であることを指摘する。すなわち、戦争、革命、国家の崩壊、疫病であり、著者のシャイデルはこれをもって「平等化の四騎士」と命名した。ただし、小規模な破壊やどちらかの一方的な勝利などは、平等化にほとんど影響しないか、限定的な効果しかない。四騎士の剣が振るわれるのは、壊滅的なまでの暴力のみである。
ここ数十年、世界のグローバル化に伴い、所得と富の不平等が広範囲に拡大している(それでも大戦前の不平等よりはマシだという)。それらを抑制する暴力的衝撃である四騎士が力を失ったからだとシャイデルは指摘する。壊滅的な戦争も、大規模な国家の崩壊も現在ではほとんどない。
ちなみに本書の原著は2016年にまとめられ、2017年に刊行された。このため、疫病の観点から、昨今のコロナ禍に関する考察はない。コロナ禍の一年、株や債券を持つエリート層はさらに富を拡大させた。本書の論理は間違いではないかという声が聞こえてきそうだ。
しかし、コロナはかつてのペストのように人口の何割もが命を落とす性質の暴力ではない。人口が減少し、労働力が不足して、賃金が上昇するということもない。コロナ禍で失われたのは労働力ではなく、仕事そのものである。コロナはむしろ貧しい人々に深刻な影響をもたらした。ただ、コロナが収束し、経済活動が再開されれば、労働賃金が増し、平等化が推し進められる可能性はあるだろう。
歴史家であるシャイデルが積み上げたデータは膨大である。特にジニ係数と所得シェア率に注目して論を組み立てていくのは非常に興味深い。また、戦前戦後の日本にかなりのページを割いているのも、我々日本人の好奇心をかき立てる。
高齢化や移民問題を重要な課題としつつ、シャイデルは不平等是正の処方箋をいくつか検討してみせる。しかし、歴史を省みて、暴力的な破壊なしにそれが達成されることに悲観的である。
シャイデルから渡されたバトンをどう未来につなぐか、まずは目の前のコロナ禍への各国の対応に注目していきたい。 -
Posted by ブクログ
リサ・ランドール博士の本は初めてだったが読みやすくてユーモラスで好印象。素粒子標準理論などは知ってる前提で書かれてるので、ニュートンや図解シリーズを読んでおくことがオススメされる。
標準理論では多様な素粒子の存在が確立されているが、ダークマターにも多様な種類があるのでは?というアイデアはとても斬新で、そのモデルが観測とうまく一致しているのは衝撃的。銀河の回転運動に太陽系の垂直動作も加味されているとは知らなんだ。 素人的なデタラメだが、引力で引き合う通常物質、斥力を増大させるダークエネルギーがあるなら、ダークマターは一定距離以内で斥力、一定距離を離れると引力って特性を持ってるのかも、と考えてみたり。
約3500万年の一定周期で彗星がオールトの雲から来るとのことだが、木星ならもっと多い数がぶつかるのか?密度スカスカなのに一定周期なんてありえるのか?地球にぶつかるのシナリオ以外の考察は?オールトの雲は密度や形状が不明なのにダークディスクの影響で1個や2個、飛ばされるやつがあるとはどういうことか? など、疑問が多く残ってしまった。
ビッグファイブや古生物、地質学についてのテーマは省いてページを少なくしてほしかった。博士の専門外のことは詰め込まなくても、専門家の著書を読むので・・ 使われなくなった哺乳類型爬虫類と表現してたり、生命の起源は古代地球の浅瀬だとか、せっかく新しい本なのにちょっと古い言及があったりしたので気になってしまった -
Posted by ブクログ
過去では、大量に人が死ぬことで平等化されてきたんだよ、という話。
富裕層に余剰の資産があるのが常で、有事にはその余剰が没収され貧困層に再分配される、という極めてシンプルな市場原理を、4つのパターン(戦争、革命、崩壊、疫病)に分けて50個くらいの事例を用いて解説している。経済書と言うより歴史書。
めちゃめちゃ示唆に富んでいる。事例の網羅性がすごいので、過去に平等化が進んだケース、進まないケースの違いが様々な側面から示されている。
この本から何を持ち帰るか、と言う点では難しい。あくまで歴史書であり、現代に近い話はほぼ皆無なので。ここに、技術の介在などの現代の要素を取り入れることで、自分の意見にできるのだと思う。昨今の情勢を分析する視点を手に入れた、という意味で僕的には非常に読む価値があった。
如何せん事例が詳細すぎるし、世界中の歴史が出てきてついていけないし、書き方がP580にわたる論文なので、(索引がP140にわたる)読むにはめっちゃ体力が必要。が、趣旨自体はそこまで混み合ってないはず。おすすめです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・注釈なども入れたら800Pほどの大作.事例紹介が多くてかなり読み飛ばせるが.
・不平等の発生は資本が蓄積可能になっていることが前提(狩猟採取から農耕牧畜型の生活にシフト)
・それは経済発展と権力者による搾取的行為により拡大した.
・その解消には「暴力的衝動」が必要不可欠だったと歴史が語っている.歴史を見ると戦争・革命・崩壊・疫病.
・しかし暴力的衝動は相対的な格差を縮めたというだけで当然,人々の死や社会の混乱を引き起こしておりこれを迎合することも難しい.
・人為的な,平和的な施策では不平等の解消の効果は「暴力的衝動」のそれには到底及ばない.
政治家などの不平等解消を説得する演説も大抵が抜本的なものになり得ないだろう.
不平等の解消には「貧者が持つもの(労働力)の高騰」「富者の持つ資本の価値低下」「富者の持つ資本の分配」のどれかが強く働かないとダメで,人為的/平和的にそれを執り行うのは困難.ブラックスワン的「暴力的衝動」でしかそれができないんだろう.
・テクノロジーの発展などにより近代以前とは世界の様相は変わったが,不平等の拡大は止まらないだろう.
次なる不平等の緩和をもたらすものは核戦争?シンギュラリティ?少子高齢化による社会の崩壊?何だろうね. -
Posted by ブクログ
人間は(すべての生物がそうであるように)子孫をできるだけ多く残す方向に自然選択を受けてはいるものの、座りっぱなしで画面や文字を凝視する時間が長く、加工食品ばかり口にするような先進国の現代的な生活をしながら健康体でいるように自然選択は受けていない。
近視、歯列の悪さ、婦人科系のトラブル…自分が医者にかかったことのある病気・症状の大半が予防可能なミスマッチ病だったことにがっくり。はっきり言って親の責任がかなりあるので、自分は繰り返さないように日々努力したい。
人間が健康でいられるために自己責任でできることを挙げてみると:
・骨に負荷をかけるような運動を頻繁にすること。特に成長期にそうすることは一生の資産になる。
・加工度のできるだけ低い食品をバランスよく食べること(所謂地中海食。筆者も指摘する通り和食に限らず東洋の料理もよい)。また小さいうちは固いものを意識して噛ませること(著者はガムも推奨)。
・砂糖、砂糖を使った食品は食べない。
・特に子どものうちはできるだけ屋外で過ごす時間を長くすること。また幼少期・成長期に読む本などは、できるだけ目に負担がかからない、多様な色を使ったはっきりした印刷のものを選ぶこと。
・女性だったら出産したらできるだけ長い期間授乳すること。
・いうまでもなくタバコは吸わない、お酒はほどほどに(自分の場合、断酒かもしくは週に1回、1杯のみ)。
・CMは批判的な目で見て、惑わされない。 -
Posted by ブクログ
人類と類人猿の最終共通祖先(last common ancestor=LCA)=約600万年前。
サヘロントロプス・チャデンシス(約720~600万年前/チャド)
オロリン・トゥゲネンシス(約600万前/ケニア)
アウストラロピテクス(約400~150万年前)
ホモ・エレクトス(約190~20万年前)
ホモ・ネアンデルターレンシス(約35万~2万年前)
ホモ・サピエンス(現生人類/約20万年前~)
第一の変化:二足歩行(LCA)
第二の変化:主食(果実)以外の食物適応(アウストラロピテクス)
第三の変化:脳の進化と狩猟の開始(ホモ・エレクトス)
第四の変化:更なる脳の進化と体の巨大化(ホモ・ネアンデルターレンシス)
第五の変化:言語・文化・協力という特殊能力の獲得(ホモ・サピエンス)
(第六:農業革命、第七:産業革命)
進化とミスマッチとディスエボリューション(有害な進化)