平凡なタイトルからは想像もつかない深い内容。
意思決定について数学、計算機科学の立場からグダグダと書き連ねておりこの冗長さやこだわりが素晴らしい。
・秘書採用の面接などは最適停止問題と呼ばれるタイプの問題で、全面接者の37%(1/e)までは結論を出さずにただ見ておく。それ以降はこれまで見たどの候補
...続きを読む者よりもよい候補者にあったらすぐに採用するのがよい。日常生活でこのような場面は多く、駐車場での空きスペース探しや株の売買、結婚相手の選び方など、全体の試行回数や期間が決まっている場合に広く応用できる。
応募者三名の場合は一名(33.3%)を面接したあと、二人目が一人目よりも良ければその人を、そうでなければ3人目を採用する。この場合、最良の候補者を採用できる可能性は50%。1000名の場合は369名を面接した後で、これまでで一番よい人を採用する。この場合、最良の応募者を採用できる可能性は36.81%になる。最良の候補者を選べない可能性が73%というのは高く見えるかもしれないが、全くランダムに選ぶ場合、1000人であれば成功の確率は0.1%にしかならない。このアルゴリズムであれば候補者がいくら多くなっても37%は成功する
・チャールズ・ダーウィンは、いとこのエマ・ウェッジウッドにプロポーズすべきか、心を決めようとしていた。そこで鉛筆と紙を取り出して、結婚によって生じえるあらゆる結果を比較検討した。結婚のメリットとして、子ども、伴侶、「音楽と女性のおしゃべりのもたらす心地よさ」を書き込んだ。デメリットとしては、「多大な時間の喪失」、好きなところへ出かける自由の欠如、親戚を訪ねる負担、子育てに伴う支出と不安、「妻がロンドンを好まないかもしれない」という懸念、書籍代が減ることを記した。メリットの欄とデメリットの欄を比較した結果、かろうじて勝負がつき、ダーウィンは紙の下部に「結婚──結婚──結婚。Q.E.D.」と走り書きした。そして数学で証明が終わったことを表す「Quoderatdemonstrandum」をさらに自分の言葉で言い直した。「結婚する必要あり。証明終わり」
・カジノにスロットマシンが2台ある場合、片方でプレイしてみて勝てばそのまま、負けたらもう一台に代わる、ということを繰り返すのがよい。これは1952年Robbinsによって数学的に証明された。もっと一般的な場合、選択肢と機会が全部手いくつあるかが分かっている場合の解はランド研究所のリチャード・ベルマンによって求められたが、現実世界では実際に何回プレイできるかなど正確にわからないことがほとんど。
70年台にギッティンズ指数というものが発明され、これによると未知であることに価値がある。つまり、9勝9敗の機械よりは1勝1敗の機械を選ぶべき。シーズン初めに実績あるベテランよりも、実力が拮抗していると思われるルーキーを起用する価値が高い。
・バブルソートではnの2乗時間かかるが、マージソートではnLog(n)時間ですむ
・スループットと応答性はトレードオフの関係にある。複数のタスクを短時間で切り替える場合、応答性はよくなるが、タスクの切り替えにリソースを消費してしまうのでスループットは下がる。一時間集中してメールの処理をするなどすればスループットは上がるが、他の仕事が入ってきても応答できなくなる。これはOSのタスク管理ではよく問題になる。
伝説的なプログラマであるドナルド・クヌースはコンテキストスイッチを極力少なくしている。TeXソフトウェアの保守としては、2014年にそれまでの6年間に報告されたバグを全て修正し、「2021年のチューンアップをお楽しみに!」という報告書を残した。郵便物は三ヶ月に一度、FAXは半年に一度しかチェックしない。
・くじについて事前の情報が全くない場合、くじ全体の辺りの割合は
(当りの枚数+1)/(試行回数+2)
となる。一回引いたクジが当たってた場合、2/3が当たるくじだと期待すべき。3枚全てが当りだったら4/5。10回引いて5回あたっていたら6/12となる
■スモールデータとは、変装したビッグデータなのだ。ほんの数回(またはたった一回)の観察からすぐれた予想がしばしば可能なのは、人が豊かな事前確率をもっているからだ