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今年二月に世界を揺るがせた「重力波直接検出」という偉業は何を意味するのか。重力波そのものの解説に加え関係する科学者たちの苦悩と感動、喜びを初めて詳細に伝える待望の科学解説、緊急出版!
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Posted by ブクログ
“本書は、重力波--音による宇宙の記録、宇宙を描くサイレント映画を飾るサウンドトラック--の研究をつづった年代記であるとともに、実験を目指した果敢で壮大な艱難辛苦の営みへの賛辞、愚者の野心に捧げる敬意の証でもある。” この言葉に尽きる。
重力波直接観測成功に至るまでのプロジェクトチームLIGOの軌跡。 13章「藪の中」の原題はRashomonなのだとか!
アインシュタインがその存在を予測してから100年、2015年秋米国ルイジアナ州とワシントン州に置かれた検知器LIGO (laser Interferometer Gravitational-wave Observation)で、ついに重力波が人類によって捉えられた。長さ四kmのアームの中で、陽子の直...続きを読む径の一万分の一のレベルの時空の変化を捉えたものだ。観測実験技術として想像を超えるほどの高度なノイズ除去技術が必要なことが何も言われなくてもわかる。ノーベル賞がほぼ確実視される偉業であり、宇宙の観測に新しい手段を加えることによって、現在の宇宙論が抱えるダークマターやダークエネルギーという謎に関して新しい発見が今後期待できるものである。 本書は重力波自体についての解説本ではなく、重力検知までの長期わたったプロジェクトにおける個性の強い科学者たちの実に人間くさいドラマを描いたものである。大規模になる組織の中で、対立があり、失脚があり、失意がある。多くの人が重力波を追い求めて、その研究者人生を賭けている。重力波が検出できるかどうかも賭けである(実際に研究者の間で賭けが行われた)。多くの時間とお金がそこに賭けられてきたのだ。そして、運も必要で、それが引き起こす重力波が検知可能なほど大きな天体イベントが適切な時間内に発生することも条件だ。ソーン、ドレ―ヴァー、ワイスという個性的な面々が、ひとつの結果を求めて引き返せない道を突き進む。「この山登りの視界は頂上に向けてしか開けていなかった」中で、彼らは「空はけっこう騒がしい」という方に賭けたのだ。 「重力波の検出はリスクが大きく、論争の的になっており、技術的に不可能に近かった。しかし、重力理論に基礎分野として大きな関心が集まるようにするための唯一の道でもあった」と語る。この本が書かれ始めた時点では重力波が検出されていたわけではなかった。この本の準備もすでにそれほど勝ち目が高くなかった賭けでもあったのだ。 この本を読むと、科学研究というものが一種の賭けであることがよくわかる。賭け金は科学者自らの時間、報償は科学者としての名声。ノーベル賞が最終的な目標でもある。若いころに一発当てて名声を得て、大御所となる。その機会を逸したものは報われるものは少ない。ある意味では芸人の世界とも似ている。個人のタレントで戦う世界の構造は互いに似てくるものなのかもしれない。 もちろん違うところもある。言うまでもない。本書の中でもホイ―ラーの「世界に以前よりもいくらか余分に美と統一性を与えてくれるような世界のビジョンや地図や像を構築したいという衝動こそ、科学の探究を突き動かすものなのだ」。いや、あらためてもしかしたら芸人の想いも相似するところもあるのかもしれない。 現在の科学というものの一端を示してくれる本。これから科学者を目指すような若い人にこそ読んでほしい。 重力波検出という結果は、感動的でもある。そして彼らの重力波検出の裏で、密かに泣いている研究者が幾人もいるのだ。
重力波の検出に命を懸けた科学者たちの物語。著者自身が物理学者。当事者のインタビューを通じて、この壮大なプロジェクトの遂行がいかに難しかったかを浮き彫りにしている。
重力波検出に至る科学者たちの人間ドラマ。邦題も、原題の「BLACK HOLE BLUES」も実にしゃれている。
LIGO(レーザー干渉型重力波観測所)で2015年9月14日に直接観測された重力波。4キロメートルのパイプを2本、L字型に組み合わせた干渉計で重力波の直接観測に挑んだ科学者のドキュメンタリ。LIGOはアインシュタインの一般相対性理論の正しさを証明するための計測機関だ。大型の加速器と同様に建設するだけ...続きを読むでもおおごとな施設を、アインシュタインの最後の宿題を終わらせるために巨額の費用をかける。約2億ドルの予算で研究を進めるのだが、たかが(失礼!)ブラックホールの衝突を検出するために(アインシュタインの理論を証明するために)、科学者は大金を使えることに驚いた。2億ドル使って「何も成果はありませんでした」となる恐れだってある。これほどの大金を使う度胸は科学者の真理を追求する気持ちからくるものだろう。 さて、本書は重力波を解説した本ではない。重力波を直接観測するためにある意味では人生をかけた科学者の物語だ。新聞発表では報じられない人間の物語である。科学者の前に人間の物語がある。小説ではないドキュメンタリの強さを感じられる。難しい理論は出てこないので、科学好きなら難しく感じることもなく読めると思う。また、強引に自分の役に立つように読みたいのであれば、プロジェクトを推進するための予算取りや情熱、メンバーの選定、組織のありかたなどを学べるだろう。 最後に、長い研究期間で、重力波の直接観測に成功した中心的な科学者を挙げる。ライナー・ワイス、キップ・ソーン、デイヴィッド・ライツィー、フランス・A・コルドヴァ、ガブリエラ・ゴンザレス。そして、最終的にはLIGOにいなかった二人の科学者、ロン・ドレーヴァーとロビー・ヴォートの名前も記録しておく。物理学に興味がある人は覚えておいて損はない。きっとクイズ番組に出てくる。
アインシュタイン最後の宿題を成し遂げるための科学者たちの苦闘の歴史。重力波発見を巡る悪しき前例を乗り越えるべき開発した装置(LIGO)でも科学者たちが対立し軋轢を高めてゆく。それが約50年も続き、ようやくLIGOが稼働した直後に重力波を検出できたのは奇跡的だったのかもしれない。 今後、日本のKAGR...続きを読むAも稼働し世界的な重力波天文学が発展していくことを期待したい。 それにしても今年(2016年)のノーベル賞はこれだと思っていたのだが、来年以降に持ち越しなのか?
『重力波は歌う』、タイトルがいい。 アインシュタインが存在を予言し、2016年2月にその存在が確認された、ブラックホール同士の衝突で発生するエネルギー波。宇宙の遥か彼方で起こる極微な波をどう捉えるか、LIGOチームを追ったドキュメンタリー。 但し内容はサイモンシンのような本格的科学ドキュメンタリ...続きを読むーではなく、LIGOの主要メンバーであるワイス・ソイス・ドレーヴァー・ヴォードたちの人間模様を描いている。天才たちが集うと色々あるんだなぁと思いつつ、著者のジャンナ レヴィン氏自身物理学者なので、もうちょっと学術寄りの内容が読みたかったというのが率直な感想。ゴシップ感が強い。 重力波の直接観測は旬なネタでもあるので、普段科学に興味のない読者も取り込むような科学ドキュメンタリーにして欲しかった。
重力波の解説ではなく、それを巡る人間ドラマでした。 純粋さ、野心、欲望などなど同じ目的ではあるけれども、色んな人の思惑が錯綜するまさに”Rasyomon”。 STAP細胞もある程度はこういう感じだったのだろうが、如何せん科学的説明がなされなかった点が致命的に違う。もしかすると存命中は何ともならんかも...続きを読むしれないが、一貫した科学的態度の維持はこの世界で最も重要なものなんでしょうな。当方のようなど素人が言うまでもなく。
LIGOのプロジェクトの話。比較的、技術的・物理的な内容にも触れられていたが、こちらも人間関係の描写が主。個性の強い物理学者がお互いに衝突しながら巨大プロジェクトを進める。仕事のトラブルを思い出して、あまり読んでて嬉しくならない。ただし、LIGOの重力波発見前の、LHO、LLOが巨大プロジェクトとし...続きを読むて建設される過程を関係者に取材して書かれているので、冷静な分析資料としては価値が高いだろう。エピローグとして重力波を発見した時のことが追加されているが、全体には大きな影響を与えていない。
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重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち
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ジャンナ レヴィン
田沢恭子
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