塩原通緒のレビュー一覧
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まず、本書については一言で言うと、
『重い』(物理的にも、内容的にも)
ということに尽きる。
人類の歴史が始まって以来、人類の歴史は
持つ者と持たざる者との歴史
であると言って良いと思う。
本書をざっと読んでみて、平等を実現することがどれほど難しいということかが改めて確認できた。
農耕生活が始まる以前の
狩猟採取生活
が人類が最後に経験した平等であったのかもしれない。
本書で論じられる人類を平等化をさせる可能性のある四騎士
〇戦争
〇革命
〇崩壊
〇疫病
のうち、本当の意味である一定の社会を平等化できたのは
〇戦争→大量動員戦争である第二次世界大戦
〇革命→ソビエト連邦革命と中国共産党革命
だけだったのかもしれない。
〇崩壊(国の崩壊)
〇疫病(ペスト)
も多少の平等化は実現できたが、根本的な平等化とは程遠かった。
ただ、第二次世界大戦もソ連革命、中国共産党革命も圧倒的な暴力とその犠牲により成立しており、いずれも平等化されたからといって手放しで喜べるものではない。
では、今の社会で平等化は実現できるだろうか?
著者は悲観的である。
それこそ前述したような圧倒的な暴力による平等化は可能であろう。
つまり、それは核戦争などによって、
全人類が『平等』に死滅する
ということである。
この本を読んで、今までの人類の歴史では
「戦争や革命」はその固定化された社会を一旦リセットする
という役割があったということは、目からうろこが落ちる思いであった。
いずれにせよ、今の固定化された社会が平等化されるのはなんらかの大きな力が作用しなけれならないのであろう。かなり難しい問題である。 -
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後半は人類進化を踏まえた人間の健康に関する内容。
中東では、新石器時代が始まってから身長が4cmほど高くなったが、7500年前から低くなり始めた。中国や日本でも、稲作が発達するにつれて8cm低くなり、メソアメリカでも農業が確立するにつれて5.5~8cm低くなった。感染症との闘い、断続的に起こる食料不足、長時間の農作業にエネルギーを費やしていたためと考えられる。ヨーロッパ人の身長は、1950年頃になって旧石器時代のレベルに戻り、その後上回るようになった。
狩猟採集民の標準的な栄養量は、炭水化物35~40%(日本人の摂取基準50~65%)、脂肪20~35%(同20~30%)、タンパク質15~30%(同15~20%)、食物繊維100g/日(同20g/日以上)、ビタミンC 500㎎/日(同100mg/日)、カルシウム1000~1500㎎/日(同650mg/日)、カリウム7000㎎/日(同2500㎎/日)。
睡眠中はレプチンの値が上がり、グレリンの値が下がり、食欲を抑制する。睡眠不足の状態が続くと、レプチンの値が下がり、グレリンの値が上がるため、栄養が足りていても食欲が旺盛になる。
週25km歩くだけでHDL値をかなり上げ、血中トリグリセリド値をかなり下げる。精力的な身体活動によって、新しい血管の成長を刺激し、血圧を下げることにつながり、心臓の筋肉や動脈壁を強化する。定期的に運動している人は、心臓発作や脳卒中のリスクを半分近くまで減らせる。運動の程度が激しいほどリスクの減り幅が大きい。
飽和脂肪酸は肝臓を刺激してLDLを多く産生し、動脈硬化のリスクを高める。不飽和脂肪酸はHDL値を高め、LDLとトリグリセリド値を下げて、心臓血管疾患のリスクを減らす。トランス脂肪酸は、LDLを増やし、HDLを減らす。 -
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人類のこの1万年の文化的進歩、狩猟採集、農業、産業革命に体がついていっていないためのミスマッチを明らかにする。上巻ではその前提のどういう環境に初期人類から適合し、ホモサピエンスだけが残ったかを考える。
近視、虫歯、腰痛、がん、心臓疾患、アレルギー、糖尿病、親不知はミスマッチ病であり現代では対処療法により自然選択を妨げない形で対応されておりこれからも特に新興国の経済成長とともに増えるだろう。これら快適とのトレードオフを防ぐ方が対処療法より経済合理的であるが予算は割かれていない。
昔に戻る必要はないが、運動とバランスのとれた食事は重要である。 -
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上巻の約8割は、サルから新人類に至るまでの進化の過程、とくに身体的特徴について焦点をあてて説明されている。
サル→原人→旧人→新人という過程の中で、身体的にどこが変わったのか、そしてその進化は自然淘汰上、何に優れていたのか。
知っている人にはかなり退屈かもしれない。
上巻の最後の2割は下巻のイントロである。それがサブタイトルにもなっているように、健康と疾病である。
新人類が登場して数千年がたつが、そこから劇的な身体的な特徴の変化はなくなっている(ように見える)。
細かく見ると、身長や皮膚の色などは地域ごとに差が出ており、自然淘汰の結果だそうだ。
しかしその代わりに、文化的な側面で劇的な変化を経験しており、それによりある問題を引き起こしたという。
それは、本来人間の環境には適合しないはずが、文化(道具)によってそれを克服しているように見えていながら身体に影響を与えるという問題であり、本書ではミスマッチ病と呼んでいる。
稲作技術や食物の保管方法が確立される前は、その日の食料を取ることが中心的な課題であり、それ故にその日に摂取した食物を長く保持できるように、脂肪を効率よく蓄えられるように進化した。
しかし、現代の過剰ともいえるような食生活によって引き起これる糖尿病は、現代の環境と身体の進化のミスマッチによって引き起こされる病気の代表例ともいえる。
下巻はこれらについて詳細な考察がなされるのだと思う。