【感想・ネタバレ】人体六〇〇万年史 下──科学が明かす進化・健康・疾病のレビュー

あらすじ

非力なヒトはなぜ厳しい自然選択を生き残れたのか。走る能力の意外な重要性とは何か。脂肪が健康を害するなら、なぜヒトの体は脂肪が溜まりやすくできているのか。2型糖尿病など、現代人特有の病はそもそもどうして現れたのか……。人類進化の歴史をさかのぼることは、不可解な病がどこから来たのかを教え、ヒトの未来を占うことにもつながる。「裸足で走ることへの回帰」を唱えて名を馳せた進化生物学者リーバーマンが満を持して世に問う、人類進化史の決定版。

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Posted by ブクログ

2型糖尿病、骨粗鬆症、がん(特に乳がん)、など現代病と呼ばれる病気が生物学的進化と文化的進化のミスマッチから生じていることを説明している。
まず、生物学進化によって人間がいかに効率的に糖を接種できる能力を獲得できたを示し、次に農業革命、産業革命を経て、人間がいかに過剰に糖を接種しやすくなったを示すことで、現代病の原因となる肥満になることが必然であることをわかりやすく説明している。

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2019年02月03日

Posted by ブクログ

本文だけで上下巻合わせて500ページを超える大作だが、著者の言うように、これでもまだ事象の表面をなぞっただけ、もっと深いところまで考察を進めたものを読みたくなる、そんな総論だ。
非常に壮大なテーマを高く掲げ、網羅的かつ論理的に、それでいて平易な言葉で分かりやすく見解を説いているという点では、ジャレド・ダイアモンド氏の「銃・病原菌・鉄」にも匹敵するようなスケールのノンフィクションといってもいいのではないだろうか。
和訳者がいい仕事をしているというのも同じく。
ベアフットランニングやパレオダイエットなどに代表されるように、現代の科学技術や文明の利器による恩恵を受ける前のあるべき人間の姿に戻ろう、という主旨のムーヴメントが近年、特にアメリカを中心に広がりつつあるが、そういった傾向を感覚的にではなく、進化医学や文化的進化といった概念を軸に、カチッと理屈で説明している、とも言える。
本論中のディテールに目を向けてみても、例えばカロリー消費における脳と腸のトレードオフの関係とか、人間が例外的に口呼吸を行う根拠、虫歯のメカニズムなどなど、興味深いトピックスは数多い。
学術論文とは違うので、著者の主観が強く反映されている箇所ももちろんあるが、そういった見方も含めて、読者が現代社会の抱える問題群を有機的に考える際に、有用な示唆を与えてもくれる。
そして考えれば考えるほどに、我々人類はおそらくは最近の数百年のうちに、もはやなかったことにすることは決してできない、致命的な過ちを一度ならず犯してきてしまったのだろう、ということが確信される。
個人的なレヴェルでささやかな抵抗を試みることは可能だが、種族として、慣れきってしまったこの大量生産・大量消費・大量廃棄社会を根底から作り直すことはできない。
ホモ・サピエンスという動物としてナチュラルに生きることよりも、利便性と経済性をとにかく優先して人間は月日を重ねてきた(つまり著者のいうところのディスエボリューション)、ということがここでも自ずと分かってしまうのだ。

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2015年12月26日

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人間は(すべての生物がそうであるように)子孫をできるだけ多く残す方向に自然選択を受けてはいるものの、座りっぱなしで画面や文字を凝視する時間が長く、加工食品ばかり口にするような先進国の現代的な生活をしながら健康体でいるように自然選択は受けていない。

近視、歯列の悪さ、婦人科系のトラブル…自分が医者にかかったことのある病気・症状の大半が予防可能なミスマッチ病だったことにがっくり。はっきり言って親の責任がかなりあるので、自分は繰り返さないように日々努力したい。

人間が健康でいられるために自己責任でできることを挙げてみると:
・骨に負荷をかけるような運動を頻繁にすること。特に成長期にそうすることは一生の資産になる。
・加工度のできるだけ低い食品をバランスよく食べること(所謂地中海食。筆者も指摘する通り和食に限らず東洋の料理もよい)。また小さいうちは固いものを意識して噛ませること(著者はガムも推奨)。
・砂糖、砂糖を使った食品は食べない。
・特に子どものうちはできるだけ屋外で過ごす時間を長くすること。また幼少期・成長期に読む本などは、できるだけ目に負担がかからない、多様な色を使ったはっきりした印刷のものを選ぶこと。
・女性だったら出産したらできるだけ長い期間授乳すること。
・いうまでもなくタバコは吸わない、お酒はほどほどに(自分の場合、断酒かもしくは週に1回、1杯のみ)。
・CMは批判的な目で見て、惑わされない。

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2016年07月09日

Posted by ブクログ

表紙を一見して、人体の進化の歴史を上下巻で延々と説明した本、にも見えるが、副題にもある通り、進化の観点から、現代の人類を悩ます病気とその対策について考察した本である。

筆者はハーバード大学の人類進化生物学者という肩書きであるが、人類の進化の歴史に目を向けるのみならず、進化が現代の私達の体をどう作り上げ、それが文化的な発展と相まって、どういった健康上の問題を起こしているのか、そして、それを解決するにはどういった個人的、社会的な取り組みが必要なのか、といったテーマについて研究をしているらしい。(あとがきによると、進化医学というとか。)
現代に存在する病気は全て、体の進化が文化の進化に追いつかないことによる、「ミスマッチ病」であるという指摘は、目から鱗だった。
子供の頃からそこにあると思っていた、各種感染症、糖尿病、がん、心臓病、アレルギーから、近視や扁平足に至るまで、本書の指摘に鑑みれば、旧石器時代以前の人間には、確かに起こりようがなかったのかもしれない。
また、感染症はともかく、非感染性のミスマッチ病については、環境と遺伝子の相互作用が複雑に関連しあっており、原因遺伝子を少数に絞り込むことは実質的に不可能で、症状の緩和はできても、根本的な治療は難しいため、今後、画期的な治療法が見つかる可能性にも本書は懐疑的で、予防が肝要であるらしい。
では、これらのミスマッチ病を予防するにはどうしたらいいのか。
それは、旧石器時代の生活習慣を考察し、なるべくそれを実践することだ。
具体的には、本書で口を酸っぱくして繰り返し述べられているように、食習慣(植物、木の実、植物性の油脂、果実、動物や魚介類をバランスよく摂取し、過度な糖質や脂肪の摂取に留意すること)を見直すことと、定期的にある程度の激しさを持った運動をすること。
これらは、子供の頃から「健康的な習慣」として教えられてきたことである。
しかし、様々な情報が錯綜する現代では、果たしてそれらが正しいのか、そしてなぜ正しいのかを理解するこは困難だ。
また、本書でも述べられているが、経済的な圧力、同調圧力、また、目の前の安楽を優先しがちな人類の進化的な特性も考えると、なかなか実践は難しいのだ。
本書を読むと、これまでの研究の成果から、旧石器時代以前の人々はどういう生活を送っていたのか。
また、その生活習慣に適応した人類が、文化の急激な進化により、どういう不健康な状況に追い込まれているのか。
その結果、どういう病気が生じてきたのか。
そして、それがどういう社会問題につながり、どういう対策をとっていくべきか。
そういったことを一つ一つ、参考文献やデータを引用して丁寧に説明してくれており、巷にあふれる健康本とは一線を画す本だ。(参考文献が上下巻それぞれの20%にも及んでいる。)
恐らく筆者の専門や、現在の研究成果の限界もあるのだろうが、どういった食習慣がいいのかといった考察の部分には曖昧さと歯切れの悪さを感じたが、(例えば、過剰な動物性脂肪の摂取は問題なのか?といった部分。「かも」という表現が多い。)全体を通して非常に重要な内容だと感じた。
最終章で、国家財政を圧迫する巨額の医療費の問題と、本書で書かれている観点での予防に注力することで、それを大幅に圧縮できる点について考察されているが、その実現の困難さはともかく、我々人類にはもう、そこに取り組むしか道は残されていないように思われた。

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2016年01月24日

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 下巻では、「過剰」と「快適」が問題となっている。今では、少なくとも日本やアメリカのような24時間営業の店が、住んでいる地域にある人にとって、手軽に好きな食べ物や飲み物が手に入り、便利だ。しかし、摂取するものによっては過剰摂取になり、脂肪という余分なポイントをため込むことになり、臨界点を超えると様々な病気を抱えることになる。

 第13章で、「本当の適者生存」として、いくつかの方法を提案している。

1.問題解決を自然選択のふるいわけに任せる
2.生物医学による研究と治療にもっと投資する
3.教育して力をつけさせる
4.環境を変え
5.後ろを向きながら前へ進もう

 人体の歴史を踏まえて、どう健康であるかふと考えさせられる本だ。

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2016年01月05日

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適度な運動、バランスの良い食事のなぜが腹落ちする良書。最近、ジャンクフードは全く食べないが、よりよく子供にも説明できるようになりそう。

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2015年12月10日

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後半は人類進化を踏まえた人間の健康に関する内容。

中東では、新石器時代が始まってから身長が4cmほど高くなったが、7500年前から低くなり始めた。中国や日本でも、稲作が発達するにつれて8cm低くなり、メソアメリカでも農業が確立するにつれて5.5~8cm低くなった。感染症との闘い、断続的に起こる食料不足、長時間の農作業にエネルギーを費やしていたためと考えられる。ヨーロッパ人の身長は、1950年頃になって旧石器時代のレベルに戻り、その後上回るようになった。

狩猟採集民の標準的な栄養量は、炭水化物35~40%(日本人の摂取基準50~65%)、脂肪20~35%(同20~30%)、タンパク質15~30%(同15~20%)、食物繊維100g/日(同20g/日以上)、ビタミンC 500㎎/日(同100mg/日)、カルシウム1000~1500㎎/日(同650mg/日)、カリウム7000㎎/日(同2500㎎/日)。

睡眠中はレプチンの値が上がり、グレリンの値が下がり、食欲を抑制する。睡眠不足の状態が続くと、レプチンの値が下がり、グレリンの値が上がるため、栄養が足りていても食欲が旺盛になる。

週25km歩くだけでHDL値をかなり上げ、血中トリグリセリド値をかなり下げる。精力的な身体活動によって、新しい血管の成長を刺激し、血圧を下げることにつながり、心臓の筋肉や動脈壁を強化する。定期的に運動している人は、心臓発作や脳卒中のリスクを半分近くまで減らせる。運動の程度が激しいほどリスクの減り幅が大きい。

飽和脂肪酸は肝臓を刺激してLDLを多く産生し、動脈硬化のリスクを高める。不飽和脂肪酸はHDL値を高め、LDLとトリグリセリド値を下げて、心臓血管疾患のリスクを減らす。トランス脂肪酸は、LDLを増やし、HDLを減らす。

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2019年03月16日

Posted by ブクログ

農業と産業が人を不幸にしたという第2部、環境が変化するスピードにあわせて人体の仕組みを変えられないことから病を得るのだという第3部。たしかにとは思うが、第一部に比べて平凡という印象。

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2016年04月02日

Posted by ブクログ

購入。

下巻では農耕とはどのような生活かを人体に与えた影響から解説し、ミスマッチ病の説明をしている。

一例として、人体は一日に数キロ移動することに適応しているから動かないことによる病が存在する、というような指摘を著者はしている。面白いのは、だからエレベーターなどの動かなくてすむような機械を使わないようにすべきだ、という提案を行わないことにある。
著者の提案は万全だと思えないが、人がどのような存在かを理解する際にはよい内容だと思う。

現代が病気への対処は行うが予防には全然お金をかけていないという指摘があったのは嬉しかった。

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2016年01月19日

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