濱嘉之のレビュー一覧
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通称ヒトイチと呼ばれる警視庁警務部人事一課の監察係を主人公にした物語である。
一般人が考える社会正義と警察内部の考える正義が合致しているときはいい。
だが、責任問題に発展することを怖れる上司や幹部が自己保身に走ったとき、必ずどこかに歪みが生じることになる。
そしてその歪みは、一般人が暮らしている社会に影響を与えることになる。
同じ警察官からも理解を得にくい監察という仕事。
後ろめたいものを抱えている者も、清廉潔白な生活を送っている者も、監察官が訪れることを歓迎することはないだろう。
逆に言えば、だからこそ組織としての警察には必要不可欠な部署でもある。
けっして予断を許さない状況であっても、あ -
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監察とは、警察職員の規律の保持につとめ、不祥事案の絶無を目的としている。
いわば警察内部を捜査する役割をもっている。
新宿警察署組織犯罪対策課・課長代理の三田村洋一は、検挙率も高く署内でも一目置かれている、
匿名による内部告発で名指しされた三田村に対して、榎本たちは捜査を開始する。
濱さんの経歴もあって細部にわたって現実味のある物語となっている。
監察は諸手を挙げて歓迎されるような部署ではない。
けれど、不祥事が表沙汰になる前に誰かが不正の目を摘まなければならない。
榎本たちチームは、三田村に関する様々な情報を事細からに集めていく。
地味な仕事ではあるけれど、警察の自浄といった面から見れば大 -
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ネタバレ日本はスパイ天国だとよく言われる。
日本における最高刑は言うまでもなく死刑だ。
けれども刑法における条文のほとんどには「死刑又は〇〇に処する」か、「死刑若しくは〇〇に処する」と明記されている。
「外患誘致罪」のみが「死刑に処する」と言い切った表現になっている。
では「外患誘致罪」とは何か。
外国と通牒して日本国に対して武力を行使させた者に対する処罪である。
他国の人間が日本においてスパイ活動を行うのとは根本的に違う。
似た例は過去にもある。
戦時中に現在の中国において中国人李香蘭として活動していた山口淑子さんは、漢奸容疑で捕らえられたが日本人であることが証明され国外追放処分となった。
同時期に -
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日本に住んでいながら政治に関してはほとんど知らないに等しい。
たまにニュースをさらりと眺め、選挙のときには消去法で投票する人を決めていく。
こんな私のような人間にも選挙権はある。
硬い!!
とにかく硬い作品だ。
読みやすい作品でもないし、小難しい出来事が聞き慣れない単語といっしょに押し寄せ、途中で溺れそうになった。
でも、その硬さが魅力だ。知らない世界を垣間見れる、ちょっとした好奇心も満たしてくれる。
何よりも、「考える」きっかけをくれる。
政治は遠い世界の話かもしれない。
けれど、政治家が舵をきるその先には、まぎれもなく私たちの日常がある。
そんなあたり前のことを思い出させてくれた。
国会議 -
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主人公の小林健は、私たちが身近に知っている駐在所にいるおまわりさんとは少しだけ違う。
暴力団の担当刑事を指導する「全国指導官」であり、同時に山手西署組織犯罪対策課第四係長でもある。
暴力団関係者からは「鬼コバ」と怖れられ、警察上層部からも一目も二目も置かれる存在だ。
地域に根づき、住民たちとコミュニケーションをとり、情報の収集を怠らない。
分析し、把握し、未然に事件を防いだり、発覚していない事件を掘り起こしていく。
濱さんの他の作品と同じように、やはり小林も徹底したプロの警察官である。
けっして手を抜かず、奢らず、謙虚に仕事に向き合う姿勢は、他の作品の主人公たちとよく似ている。
事件に対して -
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青山望のファンである。
今回は 4人(藤中、龍、大和田、青山)の連係プレーということに
主眼があって、青山望が 鋭く謎解きする部分もあるが、
いまいち行動力的に ものたらない。
結婚間近な 青山望への ご祝儀みたいである。
今の時代の起きていることを公安的視点で読み解く
ところは おもしろいなぁ。
EU離脱、トランプ大統領の登場。
日本と韓国と中国を結ぶチャイニーズマフィア。
為替と詐欺事件にからむ経済的に巧妙になったヤクザ
覚せい剤を細かくパウダー化した雪ネタ。
それは、大学と軍隊が協働してつくった。
その雪ネタを扱っていたヤクザが プラスチック爆弾とテルミット
で粉々に なってしまう。3 -
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完黙で身元不詳のまま結審した人間の謎を軸にした作品。
同じように身元不詳のまま逮捕され、完黙を通した人物を取り上げた作品が他の作家にもある。
現職大臣の衆人の中での刺殺事件。
拡大していく事件のつながりをひとつひとつ追っていく。
何でもありの公安の捜査手法も知らない世界だけに興味深く、より早く情報を手にし分析していく捜査の流れが面白かった。
リアリティあふれる描写、「公安は国家のため」と言い切る捜査員。
世間に知られることなくひっそりと、しかし強く結びついている政治と闇の世界。
小説だとわかっていても、何やら薄ら寒くなるような内容で怖くもあった。
やはりこの人の作品は好みだ。 -
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イルミナティとかフリーメーソンとかが出てきて、これはどこまで本当で、どこまでが小説なのか。
元公安マンという筆者の素性を合わせると、いろいろ複雑な心境になれる一冊。
LINEがスパイウェアと名指しで書かれていたりするのも、LINEの会社は本気で対応を考えたほうがいいなと。(アドレス帳を送る機能は、選択できるように修正されているかと思うし、その手の機能を本気で止めるとそもそもスマホもインターネットもほとんど使えないのでは?)
割とテクノロジーで解決的な運びだが、情報セキュリティ系の記述については、誰か専門家がツッコミを入れてほしい。
でもゴルゴ13が好きな人は楽しく読めると思います。
お