いやあ、いいなあ。
よく味の染みたおでんと、
女将が趣向を凝らした季節の一品料理。
美味しいお酒と、
そしてもう一つの酒の肴
他人の「婚活話」。
だって、楽しいし、ワクワクするし、幸せな気分になるじゃない。
この先人生を共に歩む相手のことを真剣に考える人には、「頑張れ!」って背中を押してあげたくなったり、悩みを聞いてあげたくなるじゃない。
別に婚活のための食堂ではないんだ。もと売れっ子占い師だったがパワーがなくなり、おでん屋に転向した玉坂恵のカウンターのみ十席ほどの「めぐみ食堂」。常連さんには婚活中の吉本千波や娘に変わって婚活中の千々石茅子や出産適齢期を考えるとそろそろ焦りがないわけではない40代キャリアウーマン左近由里や結婚は意識していない31歳の好青年、見延晋平がいる。
全国に12もの医院をもつ一大美容整形外科の令嬢でセレブ専門の結婚相談所に登録しているが、なかなかこれといった相手に巡り会えない千波。女手一つで娘を育てた派遣社員の茅子から見れば千波は「恵まれているから、何かを犠牲にしてでも結婚したいと思わないから相手が見つからない」のだが、そんな境遇の全く異なる客同士が相手を傷つけることなく、優しくアドバイスするのだ。当の本人がいない時には「そういえば〇〇さんの婚活進んでるのかな」などが話題に。
仕事も暮らしの境遇も全く異なる客達が、古くて小さいが温かくて家庭的なおでん屋の中で婚活を語り合うのが何ともワクワク。
こんなカウンター席だけの食堂って、知らない客同士が仲良くなったりするんだなあ。私も身軽になったら行ってみたいなあ。
そして、いつの間にか客同士で「いい感じ」にもなってたりするんだなあ。
恵は元占い師というだけあって人を見る目があるんだなあ。例えば茅子が結婚させたい娘の咲子が客で来た時、容姿も性格も悪くないのに会話力が不足しているのに気づく。「性格を変えることは出来ないが、少しいいところを磨いて自分をプレゼンする能力を付けることが婚活には必要」って自己啓発本よりこの小説読んでたほうが勉強になるじゃない。
茅子の娘、咲子は結局自分で相手を見つけたが、母の望むような相手ではなかった。千波に相応しい相手も「何不自由ない暮らしをさせてくれる相手」ではなかった。
「何不自由ない暮らし」をさせてくれる相手が欲しいのか「苦労を共にしてでも支えたい」相手が欲しいのか。「同じ境遇」の人がいいのか「気の合う」人がいいのか。
婚活って生き方についてものすごく考えることだなあ。人生に一回しか出来ないこと(上手くいけば)だから、人の婚活を見てワクワク幸せな気分になりたい。