早見和真のレビュー一覧
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「高校野球の話だからおすすめ」と同僚に勧められて手に取ったものの、いつまで経っても野球が始まらない。どうやら同僚は『アルプス席の母』と間違えて勧めたらしい。
期待していた爽やかな青春物とは真逆の展開で、とにかく重たい。それでも、自分の知らないこうした世界が確かに存在するのだと思い知らされる作品だった。
重い内容にもかかわらず読む手は止まらず、ページをめくるほどに嫌悪感や憤りのような感情が膨らんでいく。読後にはどっと疲労感が残った。
そして、最後まで明らかにならない主犯の存在に強いモヤモヤを覚えたのは私だけだろうか。この答えの出ない感覚こそが作者の意図した「余白」なのだとしたら、この重たい気持ちはしばらく引きずることになりそうだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ死刑宣告を受けた時に、「生まれてきて、すみませんでした」と謝る人の人生はどれだけ悲惨だったんだろう。死が幸乃にとって唯一の救いなら、慎一や翔の行動は誰のためのものだったんだろう。手紙を読んだ幸乃は死ぬ前に、少しでも「自分のために動いてくれる人がいる」と思えたんだろうか。
「死にたい」と思っている人に「死ぬな」と言うのは簡単で無責任だよな、と思う。「いつでも死ねるのだという大切な選択肢を奪われてしまいそうで、思わずカッとなったのを覚えている。」という幸乃の言葉からも、死にたい人が求める言葉はそれじゃないんだよな、と思った。
かつての自分も同じようなことを言ったことがあるし、それによって苦しめていたのかもと後から思ったので、読んでいて苦しかった。 -
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中学受験に取り組む中で家族の幸せの形を見つけてゆく物語。当事者だったこともその親だったこともないので、現実としてどうなのかはそもそも判断できない。中学受験ってこんなに大変なものなのかと、まずは思ってしまった。
両親と二人姉妹の4人家族の姉である十和。十和は父といるのが苦手。母に強引に中学受験を決められ、塾通いを始めるものの、志望校も決められない。その中で祖母の暮らす大阪の私立中学への進学を決め、父と二人三脚で勉強を始め、その中で家族と向き合ってゆく。
おばあちゃんのことは良いのかどうかわからないが、小説はハッピーエンドである。十和の人生はまだ始まったばかりなので、エンドでも何でもないのだが。
小学生の勉強三昧の日々がそんなに充実したものなのか、スポーツの部活みたい‥と思っていたら、作中で十和がそのようなことを言っており、そんなものなのかと思った。意外とそういうものなのかもしれない。合否がゴールととらえるのであれば確かに。
この小説を読んで家族の形を40字以内で答えないといけないのかな?それが中学受験?
山本店長、谷原さん、大西賢也先生登場。バカ店長シリーズを読んでいなくても支障はないが、読んでいた方が十和の印象がはっきりするような気がする。 -
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2026.8.28
言葉にトゲがなくなったからこそ、よりすごみを増したと言えそうです。
『お前はこわい顔で仕事しすぎだ。馬に緊張を与える態度を見せるな。ウソでも笑ってろ』
自分が何かを成し遂げたわけではありません。ただ成功者のそばにいるだけです。そんな当たり前のことを自分に言い聞かせていなければ、一般のお客様よりずっといい席にいられることを勘違いしてしまいそうな予感がありました。
そもそもそのうしろめたさ”の正体こそが、まさに楽しさ”なんじゃないですか?
僕はたくさんのものを背負っていらっしゃるオーナーが好きなんです。いや、それはべつに馬主に限りませんね。たくさんの人の思いを引き受けている人間が好きなんです。意外と少ないですからね。背負っているふうの人はたくさんいますけど、きちんと背負えている人ってあまりいない。
目の前の何かを心から楽しんでいる大人ってカッコいいじゃないですか。こんなふうになりたいって思わせてくれる稀有な人 -
Posted by ブクログ
ネタバレ早見和真さん著者、『イノセント・デイズ』。
【あらすじ】
元恋人、その妻と幼い双子を殺害した罪で死刑判決を受けた女性・田中幸乃の人生と、事件の真相を描く物語。
【感想】
読み進めるほどに、幸乃が犯した罪よりも、彼女がそこに至るまでに何を失ってきたのかが気になり、「自分なら彼女をどう見るのか」を考えさせられた。
プロローグの時点ですでに救いのなさを感じ、タイトルから真相を予想していたが、それでもエピローグに近づくにつれ、わずかな救いを求めるように、何度も呼吸を整えながらページをめくった。
読み終えた後、感想を言葉にしようとするほど、どの言葉もしっくりこず、答えを探してはいけないような、そんな感覚だけが残った作品。
幸乃が慎一からの手紙に心を揺さぶられ、死刑執行の直前にもなお、それを救いのように感じていた描写がとても印象に残った。それでも死を望んでしまう結末は、これまでの人生で何度も「救い」を求めたからこそ将来の希望を見出してはいけないといった覚悟が、最後まで彼女の選択を変えさせなかったのではないかと感じた。
また、それぞれの章で描かれる登場人物たちと幸乃との関わりからは、「正義とは何か」を突きつけられる。事件を知りながら、自分のため、あるいは誰かのために関わらないという選択は、時に非情にも思えたが、それでも自分が同じ立場に置かれたとしたら、本当に彼らを責められるのだろうかと考えさせられた。
ドラマ版では、慎一が幸乃と面会する場面が描かれており、結末そのものは変わらない。それでも、読者が望んでしまう展開の一つだったように思う。誰かのほんの一つの行動が違っていたら、すべてが変わっていたのかもしれない。そんな憶測は多様な解釈を想像させ正解はないのだろうなと思い馳せる。
「正義とは?幸せとは?」といった疑問視や「偏見と決めつけの怖さ」におけるテーマを深く考えさせられる。
自分ならどう解釈をするのかといった投げかけを持っておすすめしたい作品。